- [日本]総務省「家計調査」によると、9月の2人以上世帯の実質消費支出は前年同月比+1.8%と、5か月連続のプラスになった。 内訳をみると、家具・家事用品(+0.5%)や教養娯楽(+6.4%)が増加した。また、増加した保健医療(+11.1%)では医療診療代、交通・通信(+11.5%)では自動車購入が目立った。中古車や軽自動車への支出が増加しており、2024年に台風の影響で外出機会の減少に伴い支出が抑制された反動も表れたようだ。また、コメが15.5%増加した。これも、2024年8月の南海トラフ地震臨時情報や台風などの買いだめからの反動減が表れた。なお、実質消費支出の前月比の上昇率は▲0.7%となり、3か月ぶりのマイナスだった。
「消費動向指数(CTI)」によると、9月の実質総消費動向指数は前月比+0.1%となり、2024年11月から増加が続いている。その間ゼロ%(横ばい)が含まれており、今後その月がマイナスに修正される可能性があるものの、ならしてみれば、2024年4月ごろから緩やかに増加し続けている。これらを踏まえると、個人消費は、持ち直していると言える。
- [EU/メルコスール]11月6日、EUは南米のメルコスール諸国との大規模な貿易協定の承認に向けて前進がみられた。EU加盟国は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイを含むメルコスール諸国との貿易協定に関連する保障措置に暫定的に合意した。この措置は、EU域内の農業・食品生産者を、低価格の輸入品や急激な輸入増加から守ることを目的としている。特にフランスなど一部の加盟国は、農民に対する影響を懸念しており、欧州委員会はその懸念に対応する形で保護策を提案した。
このメルコスールとの貿易協定は、EU史上最大規模のものであり、25年以上続いた交渉に終止符を打つことになる。 この協定は、世界最大級の自由貿易圏(人口7億人以上)を創設するものであり、EUの輸出品目の91%、メルコスールの92%の関税が撤廃される予定となっている。欧州委員会の試算によれば、EUの輸出企業は年間約40億ユーロの関税削減効果を享受できるとされている。特に自動車(現行関税35%)、機械(14?20%)、化学製品(最大18%)などの主要産業が恩恵を受ける。EUからメルコスールへの輸出は最大39%(約490億ユーロ)増加し、EU域内で44万人以上の雇用創出が見込まれるなど、広範な経済波及効果が期待されている。
ドイツ、スペイン、ポルトガルなどの輸出志向国は、産業界の強い支持を背景に協定批准を推進。欧州産業連盟や自動車産業団体(ACEA)は、国際競争力強化とサプライチェーンの多様化を理由に早期批准を要請。一方、フランス、ポーランド、オーストリア、アイルランドなどの農業国は、安価な南米産農産物の流入による国内農業への打撃を懸念し、反対姿勢を強めていた。
協定が批准されれば、両市場のアクセスが大幅に拡大する。また、米国のトランプ大統領による関税政策が世界貿易体制に混乱をもたらし、中国が重要鉱物の輸出を制限している状況を踏まえると、この協定はEUと南米諸国の経済的結びつきを強化する意義も持つ。
両地域は12月20日にブラジルで開催されるメルコスール首脳会議において、正式な署名を目指している。
- [カメルーン]11月6日、首都ヤウンデでポール・ビヤ大統領の就任宣誓式が実施された。10月12日に実施された大統領選において、53.66%の得票率で勝利した同氏は2032年まで8期目の任期を務めることとなる。現在92歳で、現役大統領として最高齢の同氏は任期満了時には99歳に達する見込みとなる。ビヤ氏は、野党候補のイッサ・チロマ・バカリ氏(得票率35.19%)が選挙結果の不正を主張し、全国で抗議デモを主導し犠牲者が出たことを受け、哀悼の意を示すとともに、「無責任な政治家」とチロマ氏を暗に非難した。選挙後に自身の集計ではビヤ氏に勝利したと宣言したチロマ氏は現在も勝利を主張しているが、身の安全の確保のために隣国のナイジェリアに避難したとの報道もある(10月31日付、All Africa紙)。
最大都市ドゥアラや、チロマ氏の地盤である北部のガルアなどで発生した反政府抗議デモに対して治安当局は暴力的な対応をとり、国連は少なくとも48人が死亡、1,000人以上が逮捕されたと報じている(11月4日付、英ロイター紙)。EUやアフリカ連合(AU)は抗議活動の暴力的な抑圧を非難し、国連も調査を求めているが、憲法評議会がすでに結果を確定していることから、これが覆る可能性は極めて低い。特にビヤ氏ら仏語圏政権に反対し、分離・独立を求めて紛争が続く英語圏(北西州、南西州)では治安悪化により投票が困難な状況であるにもかかわらず、選挙管理委員会は同地域の投票率は約50%、ビヤ氏の得票率は約8割と発表するなど、選挙結果が大幅に改ざんされているとの疑念を強めている。国際危機グループ(ICG)は「与党、野党双方の支持者とも譲歩する意思を示していないため、混乱が悪化するリスクが高い」と分析している(10月29日)。
人口約3,000万人のカメルーンは人口の中央値が18歳である一方で、高齢の指導者が40年以上にもわたり権力を固持していることに大半の国民の間には諦観がひろがっている。しかし、米・外交評議会などはビヤ大統領が永遠には統治を続けられないため、「遅かれ早かれ転換点を迎える」と指摘。カメルーンはクーデターが発生したサヘル地域の国々や、ガボンに接しており、また、アフリカ域内でマダガスカル、ケニア、モロッコなどで起きた反政府活動の動きをカメルーン国民も「吸収」していることから、早晩政権交代が行われる可能性を示唆している。
ビヤ大統領は就任から2年後の1984年に起きたクーデター未遂事件以来、クーデターを経験していない。しかし、2023年にガボンで56年にもわたり続いたボンゴ家のクーデターを受けて、2024年に軍幹部らを再編するなど警戒感も強めている。後継者候補としては53歳の息子・フランク・ビヤ氏が有力との見方が強く、「ビヤ家王朝」が今後も継続される可能性がある。こうした権威主義の長期化と民主主義の弾圧に異議を唱える声も多い一方で、米・ロバート・ランシング研究所は、中央アフリカにはカメルーン以外にも長期政権の国が多いため、周辺国もビヤ政権を容認する立場にあると指摘。また、旧宗主国のフランスはビヤ氏との長期の関係で築いたカメルーンとの強固な同盟関係やフランス企業による利益を確保したい意向から、今回の選挙結果を公に非難していないとの見方を示している。同様に、過去十数年でカメルーンにとって最も重要な経済パートナーとなった中国も既得権益を維持するために政権の不安定化は望んでいないこと、また軍事協力関係を結んでいるロシアも現政権との関係維持を図りたい意向であると指摘。こうしたカメルーンでの政権交替に対する国際社会の消極的な介入が、超長期政権の継続を可能にしているとの見解を示している。
- [ポーランド]11月6日、国防省は、全国民を対象とする大規模な軍事訓練を始めると発表した。ロシアとの武力衝突への懸念が広がっているためと思われる。国防省はサイバー安全保障などの基礎教育、戦時を想定したサバイバル訓練、応急処置(ファーストエイド)などのプログラムを提供し、11月22日から試験運用することにした。年内に合計で10万人が参加する見通しで、2026年には全人口のおよそ1%にあたる最大で40万人が訓練を受ける。ポーランドではロシアによる「ハイブリッド攻撃」が頻発し、準戦時モードに入っている。9月にロシア軍のドローン約20機がポーランド領空を侵犯し、主要インフラを狙った破壊工作やサイバー攻撃も急増している。ポーランドは2024年、ロシアおよびベラルーシとの国境沿いの新たな防衛計画を発表し、国境警備システムの近代化に2,585万ズウォティ(約700万ドル)を割り当てている。
- [デンマーク/中国]デンマーク当局は、中国製電動バスに遠隔操作の脆弱性が存在するとの指摘を受け、緊急調査に乗り出した。 発端は、ノルウェーの公共交通当局「ルーター」が、中国の「宇通客車」製バスの制御システムに、ソフトウェア更新や診断のためのリモートアクセス機能が残されていることを発見したことにある。これにより、外部からバスを停止させることが理論上可能であるとして、今後の調達においてセキュリティ要件の強化が必要であると発表した。ルーターは隔離環境下で、オランダ製バスと宇通製バスの2台を検証し、宇通製バスにリスクがあることを確認した。SIMカードを抜くことで遠隔停止を防ぐことは可能だが、通信や運行管理も遮断されるため、この方法は採用されなかった。
デンマーク最大の公共交通会社「モビア」は、中国製電動バスを469台運用しており、そのうち262台が宇通製である。最高執行責任者イェッペ・ガード氏は、「これは中国製特有の問題ではなく、インターネット接続を持つすべての車両に共通する課題だ」と述べた。
国家危機管理庁「サムシック」は、現時点で遠隔停止の事例は確認されていないとしつつも、カメラやGPSなどの通信機能が潜在的な脆弱性となり得るとして、政府が今後、関連機関と連携し、車両購入時の安全基準の見直しを進めていく方針を示した。
宇通側は、EU域内のデータはフランクフルトのAWS拠点に保管されており、暗号化と顧客承認を経たアクセス管理が行われていると反論、EUのデータ保護法に準拠していると主張した。
一方、中国依存に警鐘を鳴らすデンマークの政治家は、「安全保障上の観点から、価値観の異なる中国への依存は脆弱性を残す」と批判している。
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