- [日本]経済産業省によると、10月の鉱工業生産指数は前月比+1.4%となり、2か月連続のプラスになった。基調判断は「一進一退」に据え置かれた。全15業種のうち自動車(+6.6%)や電気・情報通信機械(+4.2%)など10業種が上昇した一方で、電子部品・デバイス(▲6.7%)や汎用・業務用機械(▲1.8%)など5業種が低下した。先行きについて、製造工業生産予測指数は11月に▲1.2%、12月に▲2.0%と2か月連続のマイナスであり、年末にかけて生産は力強さを欠きそうだ。
また、経済産業省によると、10月の小売業販売額は前月比+1.7%となり、2か月連続で増加した。ただし、基調判断は「弱含み傾向にある」と、9月と同じだった。猛暑が長引いた影響もあり、衣料品の売れ行きが鈍く、飲食料品が伸びた。一方で物価高の影響からドラッグストアでの食品販売が堅調だった。なお、サポート切れなどからPCなど情報家電の販売額が大幅に増加した。
総務省によると、10月の完全失業率は2.6%で、8月以降横ばいになっている。雇用者数は増加基調にあり、特に正規の職員・従業員のうち女性は1,380万人と、比較可能な2013年1月以降で最多になった。
厚生労働省によると、10月の有効求人倍率は1.18倍(▲0.02pt)へ低下した。2022年1月以来となる1.2倍割れになった。また、正社員の有効求人倍率は0.99倍と、2022年6月以来の1倍割れ。都道府県(就業地)で見ても、39か月ぶりに全都道府県が1倍超という状態ではなくなった。年収の壁の調整や最低賃金引き上げに伴う求人の見直しなども見られたという。
総務省によると、11月の東京都区部の消費者物価指数(総合)は前年同月比+2.7%となり、10月と同じだった。引き続き食料価格伸びが高止まりする中、電気・ガス代補助金政策の終了によって、光熱・水道(+2.4%)は10月(+1.9%)から拡大した。なお、東京都の0~2歳の第1子の保育料無償化によって、保育所保育料(▲60.4%)が大幅に減少した。物価上昇の継続が改めて確認できる内容だった。
- [EU]11月27日、欧州議会及び欧州連合理事会の交渉担当者は、決済サービスに関する新規制に合意したと発表(今後両機関での採択手続きを経て発効することが見込まれる)。
プレスリリースによると、新規制は銀行などの各種決済機関が提供する決済サービス、決済サービスを支援する技術サービスプロバイダ、電子通信事業者やオンラインプラットフォームにも適用される。この規制は、対策認可・監督権限の整備を通じて決済サービスの向上や詐欺対策を図り、特にへき地における現金へのアクセス改善を目的としたもの。
決済サービスプロバイダは厳格な顧客認証を確保し、適切な詐欺防止策を実施しなかった場合、顧客の損失を補償する責任を負う。新規制では、不正取引が行われた際の決済サービスプロバイダの返金義務なども規定されている。手数料に関しては、支払い開始する前にすべての手数料(為替手数料やATM手数料など)について顧客に通知されなければならないとされている。
また、特に遠隔地や農村部における現金アクセス改善の目的で、小売店で顧客が商品を購入せずに、最大150ユーロまでの現金引き出しができるようになる。
- [カナダ/エネルギー]11月27日、カナダ連邦政府のカーニー首相とアルバータ州のスミス首相が覚書を締結した。覚書の冒頭には「世界的な転換期において、連邦政府とアルバータ州はパイプライン・鉄道・発電・送電網・港湾その他インフラ整備に必要な条件を整える必要がある。西部カナダの天然資源生産・輸送を活性化し国際的な輸出目標を達成し、AIを含む新技術を開発可能にする。温室効果ガス排出削減にも貢献する」とある。2050年の炭素中立目標を維持したまま、カーニー政権が目指す「エネルギー超大国」に向けた歩みを進める。
合意には、アルバータ州産の重質原油を太平洋岸へと輸送する石油パイプラインの建設に向けて協力し、連邦政府がエネルギー生産への投資奨励のため気候変動関連規則を一部緩和する内容や、CCUS(炭素回収・貯留・利用)プロジェクトの支援、電力インフラ整備などが含まれる。気候変動対策に力を入れてきた連邦政府と、原油増産のためのパイプライン建設を長く求めてきたアルバータ州政府との対立を緩和し、トランプ米政権の貿易政策の脅威からカナダ経済の強化に向けて団結する画期的合意として報じられている。
長年、カナダの原油輸出の大半は米国向けだった。また米国の原油輸入においても、近年は約6割をカナダ産が占めていた。しかし2024年にアルバータ州から太平洋岸へのパイプラインが拡張され、アジア向けの原油輸出が拡大。米国との関係悪化で、米国依存の低減が急務となっていた。今回の合意では新たなパイプラインの建設・資金調達は民間が担うことを想定し、先住民族との共同所有や経済参加の機会を設ける可能性にも言及されている。環境団体などは環境規制の巻き戻しだとして批判。トルドー前政権下で環境大臣を務めたケベック州選出のGuilbeault(ギルボー)議員は閣僚辞任を表明した。
- [米国/南アフリカ(南ア)/G20]11月26日、トランプ米大統領は自身のSNS「Truth Social」上で、「南アは2026年にフロリダ州マイアミで開催されるG20サミットの招待を受けない」とのメッセージを投稿した。
11月22~23日に南ア・ヨハネスブルグで開催されたG20サミットは、南アとの二国間関係の悪化を理由に米政府が参加をボイコットする中、首脳宣言が採択された(11月25日付デイリー・アップデート参照)。会期直前に、米政府は閉会式でG20議長職を在南ア米国臨時代理大使に引継ぐよう南ア政府に要求したが、南アは「(閉会式の場で)ジュニア外交官には渡さない」とこれを拒否。会議後に米大使館職員への引継ぎが行われたが、米国の提案を受け入れなかった南アへの「報復」としてトランプ氏がSNSへの投稿を行ったとみられる。
トランプ氏は南アを招待しない理由として、「南ア政府がオランダ、フランス、ドイツ系移民の子孫であるアフリカーナー達が被っている恐ろしい人権侵害を認めず、対処していないからだ」と主張。さらに、「最悪なのは、間もなく廃業する過激左派メディアのニューヨーク・タイムズやフェイクニュースがこれを報道しないことだ!」との自説を展開したうえで、「南アへの全ての支払いと補助金を停止する」と締めくくった。
このトランプ氏の投稿に対して南ア政府は、「南アが米国との外交関係を再構築しようと努力し、数多くの試みを行ったにもかかわらず、トランプ氏が我が国に関する誤った情報や歪曲に基づいて南アに対する懲罰的措置を継続していることは遺憾(regrettable)である」と反論している。
次回G20サミットは、2026年12月にトランプ氏が経営するマイアミのドラル・ゴルフリゾートで開催される予定。G20は非公式の国家・機関の集まりであるため、トランプ氏の発言のとおり、南アの参加を公式に排除することはできないが、米政府が南アからの出席者へのビザ発給を停止することにより実質的に参加を阻む可能性がある(11月27日付、Al Jazeera)。
南ア政府は他のG20加盟国に対して次回G20サミットに出席できるよう個別のロビー活動は行わないと表明している。一方で、トランプ氏の発言を受けてドイツのメルツ首相は「G7や、G20は正当な主張がない限り縮小するべきではない。私は(トランプ大統領に)南ア政府も招待するよう説得しようと思う」との意見を示すなど、南アを擁護する国もある(11月27日付、英Reuters紙)。
トランプ氏が南アを一方的に嫌う理由には、白人虐殺や農場の強制収容が行われていると疑っているほかにも、南ア(特に最大政党「アフリカ民族会議(ANC)」)の反イスラエル姿勢や、南アが中・露・イランとの良好な関係を構築しているなど複数の要因が関係している。米国が南アに対して30%の相互関税の課税や、HIV/AIDS対策向け援助の削減といった報復的措置をとる中で、南ア政府は対米関係の見直しの必要に迫られている。そうした中で、最大の貿易相手国である中国との政治・経済面での協力強化と同時に、伝統的に友好関係を維持しているEU・英国とのさらなる関係強化にシフトする動きが見られる。
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