
- [中国]最近、中国国内では、少数民族出身の幹部も特別な配慮を受けることなく摘発されるケースが増えていると、『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙が報じている。
2025年に入ってからは、チベット自治区のチザラ(斉扎拉)元自治区人民政府主席、広西チワン族自治区の藍天立・元自治区主席兼党委員会書記、寧夏回族自治区の劉卉・政治協商会議秘書長の3人が、いずれも汚職容疑で調査対象となった。彼らはいずれも地方政府において党書記に次ぐ要職に就いていた。これらの摘発は、従来少数民族出身の幹部に対して存在していた「特別扱い」が崩れつつあることを示している。
習近平政権の反腐敗政策は徹底しており、2024年には88.9万人の党員が処分を受け、2013年の4倍以上に達した。かつては「民族問題」を理由に、逮捕や処刑を避けるなどの寛大な処分が原則とされていたが、現在ではそのような配慮は通用しなくなっている。
専門家によれば、こうした動きは少数民族幹部を標的としたものではなく、党の規律強化の一環であり、「民族的背景による免責は認められない」というメッセージだという。
中国の少数民族政策は変化してきており、かつてのソ連型「多文化・自治」モデルから、近年は「民族融和・一体化」政策への転換が進んでいる。2014年以降、「中華民族共同体意識」の強調が始まり、2017年には新疆ウイグル自治区の陳全国党委書記(当時)が、「二重人格(表向きは従順だが、裏では分裂主義と通じる)幹部」の取り締まりを宣言した。それ以降、多くのウイグル族出身幹部が粛清された。
中央委員会における少数民族の割合は長年10~11%前後を維持していたが、2022年には8.5%と過去最低を記録した。また、2025年5月に藍天立が失脚したことで、205人の中央委員のうち、少数民族出身の正委員はわずか8人となった。かつては少数民族出身の幹部が中央や国家機関で昇進する例も見られたが、現在ではその数は減少している。さらに、国家民族事務委員会のトップ人事も2020年以降は漢族が占めるようになり、少数民族の「権利代弁機能」は弱体化している。
- [スイス/米国]トランプ政権がスイスに対して31%の関税を課す方針を示したことで、時計市場、特に中古市場に変化が生じる可能性が指摘されている。かつてスイスにとって中国や日本が主要な時計輸出先だったが、現在ではアメリカが最大の顧客となっている。
中でも、スイス製高級時計の最大の消費者層は世代別に変化しており、長年にわたり年配のコレクターが支配してきた市場は再編されつつある。2023年にボストン・コンサルティング・グループが公表した調査によれば、Z世代の回答者の半数以上が高級時計への支出を増やしており、サザビーズは時計販売の約3分の1が30歳以下の買い手によるものと推定している。彼らは高級時計をステータスシンボルとして受け入れ、TikTokやInstagramに投稿することでその価値を可視化している。
Watchfinder & Co.が2024年発行したレポートによると、Z世代の愛好家は2023年に平均で2.4個の新品を購入し、1.4個の中古品を入手している。一方で、年配のコレクターよりも価格に敏感であるとされており、関税がかからない国内の中古品に引き寄せられているという指摘もある。彼らは高級時計を「社会的通貨」として認識しており、自らのステータスに反映されることを理解しているからこそ、ソーシャルメディアで積極的に発信し、熱狂的な需要を生み出しているとの見方もある。
それでは、中古品価格が大きく上昇しているかというと、必ずしもそうではない。Watch Chartのデータによれば、過去1年間でRolexの中古品取引価格インデックスは▲2.3%となっており、価格が上昇しているブランドは下落しているブランドよりも少ない。売り圧力が強まっているのか、あるいは中国や日本の買いが鈍る中で、米国のZ世代の需要だけでは価格を支えきれていない可能性がある。
仮に、米国によるスイスへの関税が今より引き下げられることになれば、スイスの対米貿易黒字が減少しない可能性もあるため、スイスは欧州内や中東など、比較的所得水準の高いほかの市場を開拓する必要に迫られるだろう。
- [カタール/コンゴ民主共和国(DRC)/ルワンダ]8月17日、カタール政府はDRC東部で紛争を続けるDRCとルワンダ系武装勢力「M23」の双方に対して和平協定案を提示したと複数のメディアが報じている。カタールはDRCとルワンダが支援するM23の直接和平交渉の仲介を、米国が仲介するDRCとルワンダの国家間の和平交渉と並行して進めてきた。7月19日にカタールの首都ドーハでDRCとM23は停戦に向けた「原則合意(Declaration of Principles)」に署名。8月8日までの直接和平交渉の開始と、8月18日までに「最終和平合意」に署名するとのタイムラインが設けられた。
しかし、M23はDRCが拘束している700人以上の捕虜の即時釈放とM23が実効支配する東部のゴマへの移送を交渉開始の条件としていたが、DRCは「恩赦についてはケースバイケースの対応をとる」とM23側の要求を拒否。この意見の相違により8月8日の期限までに直接交渉は開始されず、8月11日にはM23が再びDRC国軍に対して攻撃を開始するなど「原則合意」に違反する対応がとられている。
そのような状況をふまえカタールは、当初停戦最終合意の目標としていた8月18日の前日に「両者はカタールに対して交渉継続の意思を表明した」と述べることで、当初の期限は順守できなかったものの引き続きカタールが仲介を続けていく姿勢をアピールする狙いがあったとみられる。M23は実効支配地域を統治する正統性の付与(M23らを合法的な政治組織とする)をDRCに要求しているが、DRCはルワンダが代理勢力を通じてDRCの領土と主権を侵害していると批判しており、最終的にどのような内容で停戦合意に至るか不透明な状況が続いている。
なお、ルワンダはM23への支援を一貫して否定しているが、7月に国連の専門家らが発表した報告書によると、紛争が激化した1~2月には約6,000人のルワンダ国防軍(RDF)がDRC東部に越境して派遣され、高度な軍事支援を提供したと指摘している。
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