- [高市総理の英・伊訪問]欧州を訪問中の高市総理が実施した英国及びイタリア訪問の概要と主な成果は以下のとおり。
【英国訪問の概要と成果】
6月14日、高市首相はロンドンでスターマー英首相と会談し、両国が「強化されたグローバルな戦略的パートナー」として「準同盟国」とも言える関係を築いていることを確認した。
主要成果としては、「経済安全保障協力に関する日英首脳共同宣言」及び「日英フロンティア・テクノロジー・パートナーシップ」を発出した。前者は、経済的威圧や恣意的な輸出制限への懸念を共有し、重要鉱物やエネルギーなどのサプライチェーン強靱化を目指すもの。後者は、英国のソフトウェア・研究力と日本の高度な製造・ハードウェア能力を結集し、AI、量子技術、半導体などの先端技術分野での協力を推進することを目指すものとする。
また、英国のインフラ、不動産、洋上風力開発などへの投資を含め、180億ポンド以上の経済効果が見込まれる投資パッケージが発表され、クリーンエネルギーやインフラ整備における協力が強化された。安全保障・防衛協力面では、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)に基づく次期戦闘機の共同開発の加速や、新たな防衛能力産業協議会の立ち上げを通じた防衛産業間の協力深化で合意した。
【イタリア訪問の概要と成果】
6月15日、高市首相はローマでメローニ伊首相と会談し、両国間の「特別な戦略的パートナーシップ」の下、安全保障や経済安全保障の面で協力を一層拡大していくことで一致した。
主要成果としては、宇宙分野の連携を深化させるため、「宇宙協力に関する日伊共同声明」を発出した。宇宙安全保障強化に向けた協力、アルテミス合意に基づく月探査の推進、地球観測による災害リスク管理の向上、スペースデブリ対策などの宇宙の持続可能性の確保、並びに商業協力の促進において協力を強化することを確認した。
経済・エネルギー安全保障面では、半導体や重要鉱物を含むサプライチェーン強靱化に向けた政府間協力覚書、及び半導体分野での関係機関間の協力覚書が作成された。また、アジアにおけるエネルギー強靱化の枠組み「パワー・アジア」を通じた協力や、有事の際のLNGの融通などでも連携を推進するとしている。
安全保障面では、英国と同様にGCAPを通じた次期戦闘機の共同開発加速で合意したほか、日本企業が参画する「メッシーナ海峡大橋建設事業」をはじめ、日伊間の貿易・投資の拡大を評価した。
両国首脳との間では、中国や北朝鮮をめぐる課題を含むインド太平洋情勢への対応、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現、イラン情勢を受けたホルムズ海峡における自由で安全な航行の確保に向け、引き続き同志国として緊密に連携していくことを確認した。
- [アフリカ/航空業界への影響]6月12日、AP通信はイラン情勢によるジェット燃料価格の上昇がアフリカの航空会社の操業・経営に悪影響を及ぼしていると報じた。
アフリカ航空協会(AFRAA)によると2024年のアフリカの航空会社の旅客輸送量は約9,800万人で、うちエチオピア航空が1,740万人で最大だ。しかし、石油精製品のほとんどを湾岸諸国からの輸入に依存しているエチオピアでは、中東紛争後、ジェット燃料の価格がほぼ倍増。その結果、エチオピア航空の営業費に占める燃料の割合は、40%から50%に上昇したと報じられている(6月8日付、The Reporter紙)。同社は日量65万バレルの石油精製品精製能力を持つナイジェリアのダンゴテ・グループからのジェット燃料の調達に踏み切り、国際線路線を概ね維持する意向を示している。しかしAFRAAによると、燃料価格の上昇分の全額を燃油サーチャージとして顧客に転嫁することは困難なため、航空会社各社が損失を吸収せざるを得ないとの見方を示している。
国際航空運送協会(IATA)が6月8日に発表した「世界航空見通し」によると、アフリカ諸国は消費するジェット燃料の55%を海外から輸入しており、うち中東からの輸入が33%を占めるなど、世界で最もジェット燃料の中東依存度が高い(ヨーロッパは24%、アジア・太平洋は1%)。この背景にはエチオピア、ケニアといった東アフリカの国々には石油精製施設がないため、ジェット燃料全量を地理的に近い中東からの輸入に依存していること。また、国内に日量約35万バレルの精製能力を持つ南アフリカも国内需要の不足分を輸入しなければいけないこと。また、人口2億を超えるナイジェリア国内の石油精製品の需要が大きく、ダンゴテ1社の精製能力のみでは国外の需要に応えきれないことがある。
S&Pは4月にダンゴテは世界最大のジェット燃料輸出企業となったと報じたほか、ダンゴテも30か月以内に精製能力を日量140万バレルまで拡大する意向を示している。南アでは石炭液化(CTL)技術を有する化学最大手・サソールが廃食用油を利用した持続可能な航空燃料(SAF)の生産と欧州向けの輸出に向けた準備を進めている。純石油輸入地域である東アフリカでも、ウガンダでの原油生産の開始が見込まれているほか、ダンゴテによる日量60万バレルの石油精製施設の建設の計画が持ち上がっている。人口増加に伴って今後も長期的な航空需要の伸びが期待されるアフリカでは、域内でのジェット燃料の生産・供給拡大が航空業界にとってますます重要になっていくとみられる。
- [パキスタン/予算案]6月12日、パキスタンのアウラングゼーブ財務大臣は2026/2027年度予算案を公表した。総支出額は約18.8兆ルピー(日本円で約10.7兆円)。歳出の内訳に関し、利払費が全体の43%を占めるほか、防衛費も16%を占める。残りの約4割のうち主要項目としては、低所得者層向けの現金給付も含む交付金・移転支出が約14%、年金が約6%、各種補助金(主に電力部門向け)が約6%を占める。2026-27年度(FY27)の税収目標として15兆2640億ルピーが割り当てられているが、これは今年度見込み額より18%増加する想定である。
現在履行中のIMFプログラム(EFF、RSF)の下でのコンディショナリティ(各種達成目標)実現のために、インフラ開発予算(PSDP)を実質的に削減するほか、ガソリン・ディーゼル小売価格に一定額を上乗せして徴収する石油課徴金(PDL)を増額する方針である。他方でこれらは特に低中所得者層の購買力低下・生活苦拡大をもたらすと考える。特に石油課徴金に関し、パキスタンではイラン情勢を踏まえて既にガソリン・ディーゼル価格は既に2月末の水準から政府により引き上げられている中で(ガソリンは40%、ディーゼルは35%)、予算が昨年比18%増額されている。インフレ率は5月時点で11.7%と、3月の7.3%より急伸している。石油課徴金増額によるガソリン価格高騰がインフレに拍車をかけないか懸念される。
今回の予算では、防衛費が約3兆ルピー(日本円で約1.7兆円)と前年比17%と大きく増加した。特に防衛費のうち、戦闘機や防衛装備品などの有形資産を示す「Physical Asset」が前年比40%増額している。昨年5月に発生したインドとの国境紛争に加え、今年3月のアフガニスタンとの戦闘激化やイラン情勢を踏まえたものと考えられる。なおパキスタン政府は、防衛装備品の輸入・購入のみならず、特に海外向け輸出による外貨獲得を目指している。具体的には、中国との間で共同開発生産したJF-17戦闘機が想定されている。2024年の防衛装備品輸出額は2,200万ドルに過ぎなかったが、現時点では累計130億ドル規模のパイプライン案件が存在する模様。
加えて本予算では、不動産セクターへの税優遇措置が各種定められた。具体的には、物件売却時に、これまでは売却額の4.5~5.5%が現前徴収されていたが、これを一律2.5%まで引き下げることとした。また、これまでは賃料収入が発生していない物件に対しても、資産価値の約1%をみなし税として徴収していたが、これを免除することとした。これにより不動産取引・不動産開発が活発化するほか、セメント・鉄鋼・プラスチック配管、電気配線など関連産業への恩恵も期待される。
- [外資小売への圧力と食品安全問題]6月16日、中国市場監督管理総局は、米ウォルマート傘下の会員制スーパー「山姆(Sam's Club)」の責任者を呼び出し、食品安全問題について事情説明を求めた。当局は「一定期間にわたり、実店舗やオンライン店舗で食品安全上の問題が繰り返し発見された」として改善を要求したが、具体的な違反内容は公表していない。
フィナンシャル・タイムズ紙は、この問題を、中国市場で急成長を続ける外資系小売企業への打撃として報じた。山姆は中国本土で67店舗を展開し、過去1年間で9店舗を新設したほか、2026年4月期の中国売上高は前年同期比22%増の80億ドルに達している。中国経済の減速や消費低迷が続く中でも、好調を維持する数少ない外資系小売企業の一つである。
しかし、今回の問題は、単なる食品安全問題にとどまらないとする見方もある。背景には、最近大きな話題となった「清華大学の?腿(ガチョウの足)騒動」がある。北京市内の大学街で長年「ガチョウの足」として販売されていた商品が、実際にはアヒルの足だった疑惑が浮上し、SNS上で大きな批判を集めた。中国ではガチョウ肉やガチョウの足はアヒルより高価であり、こうした表示の食い違いは食品偽装問題として強い関心を呼んでいる。
中国の評論サイトやSNSでは、「山姆は品質管理の問題で即座に呼び出される一方、より深刻な食品偽装が長年放置されてきたのではないか」との声が上がっている。問題視されているのは山姆そのものだけでなく、中国の食品安全行政が、比較的高水準の企業に対して厳格である一方、街中の屋台や小規模店舗における慢性的な偽装や衛生問題には十分に対応できていないのではないかという不満である。
また、山姆自身についても近年の変化が指摘されている。経営体制の変化以降、中国の消費者の間では、アプリでの販促色が強まり、一般的な国産ブランド商品の取り扱いが増えるなど、従来の「厳選された高品質商品」という特徴が薄れているとの批判も出ている。
今回の政府からの呼び出しは、米中関係や外資企業規制といった側面だけでなく、中国社会で高まる食品表示や品質への不信感を反映した出来事といえる。中国の消費者が求めているのは、山姆のような高級スーパーの品質向上だけではない。ガチョウとアヒルの取り違えに象徴されるような食品偽装を含め、市場全体の「最低基準」の引き上げが求められている。
- [日本/第3次産業活動指数(4月)]6月15日、経済産業省は第3次産業活動指数(4月分)を発表した。4月の第3次産業活動指数は106.7と前月比+1.3%となり、1月以来3か月ぶりに上昇した。広義対個人サービスは+1.2%、広義対事業所サービスは+1.0%といずれも上昇した。全体として、第3次産業活動は、「一部に足踏みがみられるものの、持ち直し傾向にある」とし、基調判断を上方修正した。
業種別では、10業種中9業種で前月比上昇、1業種で低下となった。低下したのは、「電気・ガス・熱供給・水道業」で▲0.5%(内訳の「電気業」で▲0.7%)だが、「金融業、保険業」で+3.2%(内訳の「金融商品取引業、商品先物取引業」で+4.9%)、「情報通信業」で+2.0%(内訳の「情報サービス業」で+4.6%)など、ほかの9業種での上昇により全体でも上昇した。
上昇方向の要因として、「金融業、保険業」の「金融商品取引業、商品先物取引業」では「流通業務」の活発な株取引による上昇、「保険業」は「損害保険業」の上昇が寄与した。「情報通信業」の「情報サービス業」では「ソフトウェア業」が上昇、「インターネット附随サービス業」も上昇した。
低下方向の要因としては、「電気・ガス・熱供給・水道業」の「電気業」にて、平年と比べて気温が高かったことに伴う暖房需要の減少などが挙げられた。
- [米国]アメリカのアイスクリーム市場の調査はただの「甘い嗜好」の話にも映る。ただ、ここ数年の動きからは、そこには原材料価格、消費者心理、そして文化としての価値が折り重なった、興味深い構図が浮かび上がる。まず、象徴的だったのが、「どの州が一番アイスに熱狂的か」という話題だ。Google検索をベースにした分析では、ニュージャージー州を筆頭に、デラウェア、マサチューセッツ、ニューヨークといった北東部が上位を独占した。この背景には、単なる気候以上の要素がある。例えばバーモント州では、人口10万人あたり約18.5店という高密度でアイス店が存在し、街の中に溶け込んでいる。もはや日常のインフラといえそうだ。2026年のIDFA(国際乳食品協会)の調査では、1位はチョコレート、2位バターピーカン、3位バニラとなっており、濃厚でクラシックなフレーバーが上位となったが、なかでもチョコレートの1位返り咲きが注目される。この動きを読み解く上で鍵になるのが、ココア価格の異常変動だ。価格高騰によりチョコの使用量が減少し、ナッツやウエハースで「かさ増し」されたり、低カカオ・代替チョコが増加したりもした。つまり「チョコの質」が一時的に低下した。価格が落ち着くとチョコの使用量は戻り、アイスクリームのチョコは本来の姿に回帰したことで、需要も回復した。企業側も「今なら本物に戻した方が売れる」という判断に転換したようだ。
チョコ人気は価格だけでは説明しきれないところもある。価格高騰による需給の歪みが解消したことで消費は正常化し、濃厚・高満足志向にシフトした。また、不確実性下で「定番への回帰」という側面も指摘される。これは経済や社会の不透明感が増したことで「間違いない味」を選ぶ心理が作用したものとも受け止められている。チョコがおいしさを取り戻し、安心できる選択肢に戻った。一方で、健康志向も強いことから逆のトレンドも同時に進んでおり、低糖・高タンパクフレーバーも人気があるという。ただし現時点では、市場の主流は依然として従来型(乳製品・濃厚系) アイスクリーム市場では「健康」と「ご褒美」が分離しながら共存している。アメリカでも日本でも、アイスはもはや単なる嗜好品ではなく、地域コミュニティをつなぐ存在、家族で共有する時間、日常の小さなリフレッシュと大切な役割を担っている。
- [ウクライナ]6月10日、ウクライナのキーウ国際社会学研究所(KIIS)は、政治家・軍幹部に対する国民の信頼度に関する世論調査結果を公表した。ゼレンスキー大統領を「信頼する」と回答した割合は61%となり、4月の調査の58%から3ポイント上昇した。一方、防衛分野で最も信頼度が高かったのは、前軍総司令官で現在は駐英大使を務めるザルジニー氏の73%で、ゼレンスキー氏を上回った。ザルジニー氏は国民的人気が高く、将来の大統領候補の一人と見られているが、本人は選挙について語るのは時期尚早との立場を示している。ウクライナはロシアによる侵攻を受けて戒厳令下にあり、現行法上、選挙は実施できない。
このほか、ブダノフ情報総局長官と無人システム部隊のブロウジ司令官はいずれも70%と高い信頼度を示し、シルスキー軍総司令官は52%だった。KIISは、軍関係者への高い支持について、戦時下で「国家の防衛者」としての指導者像への需要が強まっているためと分析している。今後、戦争がウクライナに有利な条件で終結した場合、国民が求める指導者像は軍事的リーダーシップから復興・統治能力へと変化する可能性がある。政治的には、ゼレンスキー氏が依然として一定の信任を維持する一方、軍出身者の人気が戦後の権力構図や大統領選の有力候補形成に影響を及ぼす点に留意が必要である。
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