- [ロシア・ウクライナ/首都への攻撃の応酬]5月17日、ウクライナの無人機(ドローン)がロシアの首都、モスクワおよび周辺地域に対し、2026年最大規模の攻撃を実施し、3人が死亡、18人が負傷した。攻撃は石油関連施設や空港、テクノパークに加え、住宅にも被害をもたらした。
5月17日昼までの24時間で、ロシア国防省は、ウクライナ軍が投入した1,000機を超える無人機を撃墜したと公表した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領はSNS上でモスクワ地域への攻撃を認め、ロシアがキーウを攻撃したことに対する報復措置と説明した。
ロシア軍は5月13~14日にウクライナの首都キーウなどへ激しい大規模空爆を行い、子ども3人を含む24人の死亡が確認されたとウクライナ側が発表している。トランプ米国大統領が仲介した5月9~11日の一時停戦が不調に終わった後、ロシア・ウクライナによる攻撃の応酬に拍車がかかっている。和平協議の機運がしぼむ中、双方の首都を狙った攻撃の応酬が激しくなっている。
- [米国・イラン/UAEのバラカ原発に対する攻撃]5月17日、トランプ米大統領は、停戦状態が続く米・イラン対立を巡り、自身のSNSへの投稿でイランに対し「時間切れが迫っている」と警告し、軍事行動再開の可能性を強く示唆した。トランプ氏は、イランが核開発を巡る米側要求を拒否し続けていることに不満を強めており、5月19日には国家安全保障チームと軍事オプションを協議する予定とされる。一方、イラン側も「新たな攻撃には米軍基地や地域資産への壊滅的反撃で応じる」と警告しており、ホルムズ海峡を含む全面的エスカレーションへの警戒が高まっている。
こうした中、5月17日にはサウジアラビアが、イラク方面から飛来したドローン3機を撃墜したと発表し、「適切な時期と場所で反撃する権利」を表明した。また、UAEでも同日、バラカ原子力発電所周辺にドローンが飛来し、一部が施設近くの発電機に衝突して火災が発生した。放射能漏れは確認されていないものの、IAEAは「原子力施設を脅かす軍事行動は容認できない」と深刻な懸念を示した。UAE当局によれば、ドローンは西側国境方面から飛来したとされるが、現時点で犯行声明はなく、イランによるものか、あるいはイラクの民兵集団やフーシ派など代理勢力による攻撃かは不明である。
バラカ原発は韓国の協力の下で建設されたアラブ世界初の原発であり、UAE電力需要の約25%を担う国家的重要インフラである。米国との「123協定」に基づき、厳格な核不拡散管理下で運営されている象徴的施設でもあり、今回の攻撃は単なるインフラ攻撃を超える政治的意味合いを持つ。UAEは近年イスラエルとの関係を強化しており、イラン側は「イスラエルの陰謀に巻き込まれるべきではない」と警告を強めている。最近では、イスラエルがUAEに防空システムを展開したとの報道もあり、両国間の安全保障協力が進展しているとの見方が広がっている。
地域各国は事態の沈静化に向けて動いている。カタールやサウジはUAEへの攻撃を非難しつつ、外交による緊張緩和を呼びかけた。パキスタンはイランとの仲介外交を進め、トルコも米・イラン交渉再開に向けた水面下協議を継続している。米・イランの直接対立に加え、湾岸諸国へのドローン攻撃や代理勢力の活動が複雑に絡み合い、全面戦争の可能性と外交交渉が並行する極めて不安定な局面に入っていると言える。
- [ナイジェリア・米国/IS幹部殺害]5月15日、米・トランプ大統領は米・ナイジェリア共同軍事作戦によりイスラム国(IS)のナンバー2であるアル・ミヌキ氏が殺害されたと発表した。ナイジェリアのイスラム系過激派組織・ボコハラム出身のアル・ミヌキ氏は、ナイジェリア北東部のチャド湖盆地に潜伏し、ISの世界的な活動の調整やドローンをはじめとする武器の製造技術に関する指導も行っていたとみられている。同氏は2023年に米国に「特別テロリスト」指定を受けていた。非営利団体・ACLEDによると、2026年第1四半期のISによるアフリカでの活動は世界全体の86%を占めており、今やISの活動の中心地となっている。ISトップのアブドゥル・ムミン氏はソマリア北部に潜伏しているとみられるが、ナンバー2の死亡はISにとって大きな打撃となるとの見方がある(5月16日付、Le Monde等)。
トランプ氏は2025年後半頃から「ナイジェリアでキリスト教徒が虐殺されている」とナイジェリア政府に対する非難を始め、同年12月にナイジェリア北西部のイスラム系過激派を目標とした米軍による空爆作戦を実施した。背景には、トランプ氏の支持母体である米国内の保守系キリスト教徒や、在米ナイジェリア人ロビー団体からの働きかけがあったとみられる。これに対してナイジェリアのティヌブ大統領は、キリスト教徒が迫害されている事実はないと当初はトランプ氏に反論していた。しかし、ティヌブ氏はその後米国との関係改善に舵を切り、米軍と共同で過激派組織対策を進めてきた。今回の作戦後に両大統領は互いに感謝の意を示していることからも、二国間関係の劇的な改善がみてとれる(5月16日付、WSJ紙)。
一方で、ナイジェリア北部を含むサヘル地域における反政府勢力の活動が収束する傾向はみられない。ナイジェリアではボコハラム(現在はJASと呼ばれる)やイスラム国西アフリカ(ISWAP)が、ニジェールを中心にイスラム国サヘル州(ISGS)が、マリを中心にアルカイダ系組織・JNIMが軍や警察、民間人等への襲撃を繰り返している。サヘル地域の治安悪化がギニア湾岸諸国まで波及していく恐れがある。
- [マレーシア/元閣僚の与党離党]5月17日、マレーシアの元閣僚2人(ラフィジ元経済相とナズミ元天然資源相)が、下院議員を辞任すると共に、アンワル首相の所属する与党人民正義党(PKR)を離党すると発表した。その上で、新興政党マレーシア統一党(PBN)に加入すると発表した。
PKRを含めた与党希望連盟(PH)と国民戦線(BN)の両政党連合との間で、確執が深まっている。背景には、両者の政治的方針が根本的に異なることが挙げられる。PHが都市部の知識層・中間層、民族的には中国系マレーシア人を支持基盤とし汚職問題撲滅や制度改革を重視するのに対し、BNは農村部の農家、民族的にはマレー系を支持基盤としPHに比べ経済政策・制度改革面では保守的な立場を表明している。2022年の総選挙では、PHが最多議席数を獲得したが議席過半数を獲得するに至らず、BNとの連立により与党となった。但しその後は、政府系ファンド「1MDB」の資金流用の疑いで懲役刑を受けたナジブ元首相(UMNO出身)の恩赦を巡り立場の相違が明らかとなった。今月にはジョホール州にて州議会選挙が実施されるが、5月16日には、BNがPHと連立を組まずに議席を争うと表明した。それに対しアンワル首相は「(2027年以降に州議会選挙が実施される)ヌグリ・スンビラン州、スランゴール州、ペナン州、パハン州などでも全面的に戦う準備がある」と発言するなど連邦議会レベルに加え州議会レベルでも両党の対立が顕在化している。
与党連合間での対立に加え、PHの構成政党でアンワル首相が所属するPKR内部での対立が鮮明となっている。今回PKRからの離脱を表明した2人は、2025年5月に実施されたPKRの副総裁選敗北の責任を取る形で閣僚職を辞任したが、その背景にはアンワル首相の娘でPKR党員のヌルル・イザー氏が当選したことに対し、ラフィジ氏が縁故主義の現れとして批判したことがある。ラフィジ氏の辞任により、同氏がこれまで掲げてきたオクタン価95ガソリン向け補助金の制度改革が事実上棚上げとなった。燃料補助金に関し、逆進性などの観点から高所得層向けの支給を打ち切る案が浮上していたが、同氏辞任を契機として取りやめとなった。
マレーシア連邦議会下院の任期は2027年12月に満了するが、憲法上、遅くとも2028年2月までに次期総選挙が行われることになる。他方で直近では、BNがジョホール州議会選挙においてPHとの連立を組まないと表明したことを受け、アンワル首相が「このまま政府内の関係を悪化させる動きが続くのであれば、国民に信を問うために全国的な解散総選挙の実施を検討する」と発言したことを契機に、早期選挙実施観測が高まっている。他方で今回のアンワル首相の発言はBNを牽制することが目的であり、実際に下院を解散し総選挙を実施する可能性は低いとの見立てが多い(Channel News Asia、2026年5月17日付記事)。政治的な反対が大きい燃料補助金削減の前後に総選挙を実施することはPHへの支持率低下に繋がりえないことに加え、PKRの内部調査によると、仮に早期選挙を実施した場合も、同党が保有する議席(66)のうち僅か7議席しか確保できないと予想されているためである(Bloomberg、2026年5月17日付記事)。
- [EU・中国/規制対立が激化]EUと中国の間で、経済安全保障と規制をめぐる対立が急速に悪化している。EUは2023年に導入した「外国補助金規則(FSR)」に基づき、中国政府による補助金が市場競争を歪めているとして、中国企業への調査を強化している。その象徴的な事例となっているのが、中国の保安検査機器大手「同方威視(Nuctech)」を巡るEUの外国補助金調査であり、2024年4月には、同方威視に対する立ち入り調査を実施したほか、鉄道車両や太陽光分野でも中国企業への調査を進めている。
これに対抗して、2026年5月15日、中国司法部はEUによる同方威視への調査について、「不当な域外管轄権」に当たると公式に認定した。公告では、中国の「反外国不当域外管轄条例」に基づき、中国国内のいかなる組織・個人も、EU側の調査措置を執行したり協力したりしてはならないと通告している。さらに中国商務部も、EUが中国の金融機関に協力を強要し、無関係な国内情報まで要求していると批判し、「中国企業への不当な抑圧」だと反発した。
背景には、EU側の安全保障上の警戒感の高まりがある。EUでは、中国製インフラ機器が将来的にサイバー攻撃や供給網への圧力手段として使われることへの懸念が強まっており、重要インフラやハイテク分野で、中国依存を減らす「デリスキング(リスク低減)」政策を推進している。中国企業への技術移転要求や現地生産化を含む新産業政策、さらには中国企業排除につながるサイバー安全保障法制の整備も進んでいる。
一方、中国側も、EUや米国の規制に対抗する形で、輸出管理や反域外法制を強化している。企業は、中国法とEU法が相互に矛盾し始めていることに強い懸念を示しており、「どちらの法律を優先すべきか分からない」との声も出ている。
EUと中国は互いに「相手が経済や規制を武器化している」と批判しており、通商摩擦は単なる関税問題にとどまらず、法制度や安全保障を含む包括的な規制競争の段階に入っている。
- [ペルー/左派候補の政策]4月に行われたペルー大統領選の第1回投票において、左派候補ロベルト・サンチェス氏が、僅差で2位となり、6月に実施される決選投票で保守派候補のケイコ・フジモリ氏と対決することが確定した。今回の選挙では、開票作業が約1か月にわたって続き、不正疑惑も浮上した。特に、右派候補のアリアガ氏との差はわずか0.1%と、緊張感が高まっていた。4月下旬に公表された世論調査では、決選投票においてフジモリ氏とサンチェス氏はともに38%の支持で並んでおり、接戦になると予測されている。
サンチェス氏は、投獄中の元大統領ペドロ・カスティージョ政権で閣僚を務めた経歴を持ち、国家の抜本的改革を前面に掲げて選挙戦を展開してきた。左派政党「ペルーのために一緒に」に属し、新憲法の制定と多民族国家の樹立を訴えることで、農村部や先住民の有権者の支持を集めた。また、鉱業分野の大幅な改革を掲げ、投資家の懸念を招いている。
サンチェス氏の政策の柱は、1990年代にアルベルト・フジモリ元大統領の下で制定された現行憲法に代わる新憲法を起草することであり、現行制度は社会的平等を実現できていないとして、憲法改正の是非を国民投票にかける考えを示している。
天然資源については、国家の関与を強める方針を掲げ、鉱業やガス契約の見直し、企業利益への課税、高所得者への富裕税導入を主張している。これについて、企業の財産を没収するものではなく、資源が採掘される地域社会に利益を還元するにすぎないと説明し、長年にわたる鉱山開発にもかかわらず、鉱山地域が依然として国内で最も貧しい地域の一つである点を問題視している。また、カスティージョ元大統領との関係も、ペルーに投資する国際投資家の不安要因となっている。カスティージョ元大統領は、反乱や国家転覆の罪で起訴されているが、サンチェス氏は釈放を支持している。
外交面では、国際的なパートナーに対して公正な条件で開かれた国であり続けるべきだとし、技術移転、国内産業の育成、環境保護の重要性を強調している。
治安と汚職対策も主要な争点であり、汚職犯罪への厳罰化や生涯公職追放、司法制度の抜本改革を提案している。さらに、増加する組織犯罪に対処するため、軍が警察を支援すべきだと主張し、治安悪化は有権者の強い関心事項となっている。
もっとも、サンチェス自身も選挙資金や行政手続きに関する金融犯罪の疑いで捜査対象となっている。検察は虚偽申告や文書偽造を指摘しているが、本人および弁護士はこれを否定している。地元報道によれば、裁判に進むかどうかは5月27日に判断される予定とされている。
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