- [中国/コルビー米国防次官の訪中を用いて圧力]米中首脳会談後、両国間では軍事対話再開に向けた動きが進む一方、中国政府は、エルブリッジ・コルビー米国防次官(政策担当)の訪中計画について、トランプ政権が総額140億ドル規模の対台湾武器供与をどう扱うかを見極めるまで、事実上承認を保留していると『フィナンシャル・タイムズ』紙などが報じている。
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙は、米国防総省が数週間以内に高官代表団を北京に派遣し、ヘグセス国防長官の訪中について調整を進める方向だと報じており、コルビー氏の訪中もその一環とみられている。
先週のトランプ大統領の訪中では、米中双方が緊張緩和の維持を望んでいることが示された。ヘグセス国防長官も、トランプ氏とともに訪中していた(米大統領の訪中に国防長官が同行したのは初めて)。習近平国家主席も会談で、政治・外交・軍事分野の対話ルートをより有効活用すべきだと述べており、中国側も軍事関係の改善に前向きな姿勢を示している。
しかし、中国側は米国の台湾に対する武器供与を問題視し、売却の延期や縮小を求めている。トランプ政権は2025年12月に111億ドル規模の対台武器売却を発表しており、さらにパトリオット迎撃ミサイルやNASAMS防空システムを含む追加パッケージの売却を準備している。トランプ大統領自身は、この武器供与を「(中国への)非常に良い交渉カード」と表現し、実施を一時保留していることを示唆した。
中国側としては、武器売却そのものを完全に止められないことは理解しつつも、少なくとも9月に予定される習近平主席の訪米前まで、大規模な対台武器売却の発表を回避したい思惑があるとみられる。
- [日本/物価上昇]総務省によると、4月の消費者物価指数(総合)は前年同月比+1.4%であり、3月(+1.5%)から上昇率を縮小させた。1~4月は+1.3~+1.5%のレンジであり、おおむね横ばい圏を推移している。
物価の基調を表す生鮮食品を除く総合(いわゆるコア指数)は+1.4%であり、3月(+1.8%)から縮小した。3か月連続で2%を下回り、2022年3月以来の小さな伸びになった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア指数)は+1.9%、3月(+2.4%)から縮小し、2024年7月以来となる2%割れだった。物価の基調はやや弱くなっているものの、特殊要因の影響も大きい。
エネルギー価格は▲3.9%と引き続き低下した。ガソリンの暫定税率の廃止や電気・ガス代補助金など政策効果によって全体の物価を▲1.08ポイントほど押し下げている。また、私立高校授業料は▲68.8%、2026年度から私立の就学支援金の所得制限を撤廃し、支給上限が45.7万円に引き上げられた影響が表れている。また、学校給食(小学校)は▲98.0%と下落した。これは、2026年4月から小学校の給食無償化が始まったためだ。なお、令和の米騒動で2025年5月に101.7%まで急騰したコメ類は足元で+0.6%と落ち着気を見せている。ただし、加工品はまだ高めの上昇率で、例えば、おにぎりは+4.9%だった。
なお、生活実感に近いとされる持家の帰属家賃を除く総合は+1.5%、3月(+1.6%)から小幅な縮小にとどまった。財とサービスに分けてみると、財は+1.7%で、3月(+1.5)%から上昇率を拡大した一方で、サービスは+0.9%と3月(+1.4%)から縮小した。またサービスのうち民営家賃は+0.6%、3月(+0.7%)並みの上昇だった。
引き続き、政策効果によって物価上昇率が抑制されている。それらがなければ、2%超の物価上昇が継続しているとみられる。そのため、特殊要因を除いた物価の基調は、見た目ほど弱まっていないようだ。
- [チリ/経済成長法案下院通過]カスト大統領が掲げる包括的な経済成長法案、いわゆる「メガビル」が、5月20日、下院本会議において、承認された。これにより、法案は次の審議段階として上院へ送付されることとなった。上院では、大幅な修正を伴うとはみられているものの、承認される可能性が高まった。
この法案は、カスト政権の政策の中核をなすもので、各種規制の簡素化、雇用創出のためのインセンティブ、税制の変更、公共支出の抑制策などを盛り込んだ内容となっている。
同法案では財政負担として最大で約0.7%の歳出増を数年に渡り伴うとみられるが、政府は、この負担を経済成長率の引き上げと、継続的な歳出削減によって相殺できると説明していたが、この見通しについては楽観的すぎるとの指摘もあり、法案の実効性と財政規律の両立が大きな争点となっていた。
カスト政権は上下両院で過半数を確保しておらず、本来であれば段階的に審議されるべき多岐にわたる施策を、単一の法案として提出した。政権発足直後のいわゆる「ハネムーン期間」は、イラン戦争への対応や、前政権から引き継いだ厳しい財政状況を理由とする燃料価格の大幅な引き上げ決定によって早期に損なわれており、カスト大統領の支持率は、3月11日の就任直後の57%から1か月で43%に低下していた。
しかし、今回の下院審議で主要施策について支持を取り付け、法人税率の引き下げ、大規模投資に対する最長25年間の税制上の安定保証、そして事業許認可手続きの簡素化が承認された。下院通過は、政治的にはカストにとって追い風となる。最終的な成立までの道のりは平坦ではなく、上院では、経済効果や社会的影響をめぐって激しい議論が予想されている。特に法人税減税や長期の税制安定制度については、富裕層にのみ利益をもたらし、十分な財源措置が伴っていないとの批判が強く、世論調査でもこれらの施策に対する支持は分かれていることから、難航が予想されている。
政権は6月までに立法プロセスを完了させたい考えを示していたが、実際には、議論と承認の手続きは年後半まで続く可能性が高いとみられている。
- [チリ/銅生産の過大申告問題]世界最大の銅生産国である南米チリの2025年銅生産量は、累計約542万トンと前年の550.6万トンから微減だったと発表されている。しかし、2025年12月は特に目立った増産がなかったにもかかわらず、生産量が53.9万トンと前月の44.9万トンから急増、特に国営Codelcoは13.1万トンから18.1万トンへ大幅増となっており、従来から「12月の数字が不自然」との指摘が出ていた。
Codelcoは12月の急増により、年間生産量は143万9,600トンと2年連続で前年を上回り、生産低迷がようやく底を打った印象を与えていたが、市場の一部では「帳尻合わせではないか」との見方もあった。
5月21日付報道によると、Codelco取締役会は、Chuquicamata鉱山から採掘された約2万トンについて、販売可能な状態に達していないにもかかわらず2025年12月の生産量として計上したとして、予算・統括管理部長の解任を決定した。さらにMinistro Hales分6,875トンを含め、合計約2.7万トンが本来は仕掛品として処理されるべきだったことを内部監査で確認。この数量は公表済み年間生産量の約2%に相当する。Bloombergによると、修正後のCodelcoの2025年生産量は1998年以来の低水準となる可能性がある。差分は2026年生産で計上される見通し。
Codelcoでは近年、操業問題や大型プロジェクト遅延により生産見通しの下方修正が続いており、巨額債務問題も抱える。チリ政府は監督強化を進めているが、2030年までに生産量をコロナ前水準の年間170万トンへ回復させる目標の達成には不透明感が強まっている。最大生産国であるチリが生産水準の維持だけでも苦慮している状況は、銅の供給懸念の根強さを浮き彫りにする。
- [南アフリカ/自動車販売・生産台数]5月18日、南アフリカ(南ア)自動車製造業者協会(NAAMSA)は、2025年の新車販売台数(乗用車、商用車含む)が前年比15.7%増となる59万7,338台だったと発表した。新車販売台数が最も多かった2015年の61万7,650台に次ぐ実績となった。NAAMSAは販売台数の増加の理由について、企業・消費者の南ア経済に対する信頼感の改善、通貨ランド高の進展、2024年以降6回にわたる中銀の利下げなどを挙げた。
OEM別のシェアではトヨタが24.8%で46年連続首位の座を維持した。2位はインドからの完成車輸入を伸ばしているスズキ(12.0%)で、フォルクスワーゲン(10.7%)、現代(6.1%)、フォード(5.8%)が続いた。しかし、南アでは30万ランド前後(約270万円)の低価格帯の中国メーカーの自動車の販売台数が近年増加している。中国勢のシェアは2024年の11.2%から、2025年には16.8%に拡大するなど日韓欧米メーカーを猛追している。南アでの電気自動車(ハイブリッド、バッテリー車)の販売台数は前年比で微増の1万6,716台で、全体の3%程度に留まった。
NAAMSAによると2025年の自動車生産台数は前年比2.9%増の60万473台で、世界ランキング21位となった。アフリカでは近年、欧州市場向けの輸出拠点となっているモロッコでの自動車生産が増加し、南アに迫る勢いを示していたが、2025年の生産台数は前年比10%減となる50万1,965台に留まった。南アでの自動車生産に関しても中国勢の動きが目立っており、1月に日産は南ア工場を奇端汽車(チェリー)に売却すると発表している。
自動車輸出台数は前年比5.9%増の41万4,271台で、自動車輸出額とともに過去最高を記録した。最大の輸出先は前年と同じくドイツで、輸出額は975億ランド(約8,800億円)だった。ベルギー、英国、米国、スペインがそれに続いたが、米国向け輸出額は前年比約3割減と大きく落ち込んだ。1962年通商拡大法232条に基づく輸入自動車への25%関税が影響しているとみられる。アフリカ域内向けの自動車輸出額は全体の17%を占めた。依然として経済連携協定(EPA)を締結している欧州向けが6割強を占めている。
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