- [南アフリカ/反不法移民デモ]6月30日、南アフリカ(南ア)のダーバンやヨハネスブルグなどの主要都市で不法移民の国外退去を求める大規模なデモが実施された。参加者はダーバンだけでも1万人を超えたと報じられている(6月30日、Mail & Guardian等)。同デモは、南アの市民団体「マーチ&マーチ」が事前に呼びかけたもので、6月30日を「National Shutdown」と設定し、国内に滞在する不法移民の退去を求めていた。南アの人口約6,300万(2024年、政府統計)のうち、合法的に滞在している移民人口は約300万でその比率は4~5%と世界的には低い水準だ。しかし、30%を超える失業率や、1%前後に低迷する経済成長、公共サービスの質・量の低下などを背景に、国民の怒りの矛先が立場の弱い不法移民に向かったとの見方が一般的だ。南ア警察は、こうした外国人排斥運動の高まりを受けて、これまで2万5,000人を国外に強制送還した。その多くは地域の中で比較的経済規模が大きい南アでの就業機会を求めるマラウイなど周辺国の国民だ。
2021年にジェイコブ・ズマ前大統領の収監に反対した同氏の支持者らが扇動した大規模デモや商店等への略奪(約300人以上が死亡)の再来が危惧されていたが、警察および連携した民間警備会社が事前に主要な抗議スポットに配置されていたことから、おおむね平和裏に終了したと捉えられている。ただし、抗議参加者の一部が暴徒となり、移民への暴行を行った点も報じられている。
マーチ&マーチのリーダーを務めるジャシンタ・ンゴベセ=ズマ氏(ズマ前大統領との血縁関係はない)は、以前から暴力を伴わない平和的なデモを呼びかけてきたが、今後6か月間にわたり不法移民がいなくなるまで毎週デモを実施すると述べている(6月30日、Daily Maverick)。国内ではマーチ&マーチや、別の反移民団体「オペレーション・ドゥラドゥラ」の動きは政治的な動機に結びついているとの指摘が少なくない。南アでは11月に5年ぶりの統一地方選が実施されることも、マーチ&マーチが6か月間デモを続けるとの発言と関係があるとみられる。実際に、ズマ前大統領が率いる南アの第一野党「民族の槍(MK)」や、「Action SA」もマーチ&マーチへの活動への支援を表明している。特にMKはズールー族のズマ氏が地盤とするクワズールー=ナタール州に潜在的なデモ参加者のネットワークを有しており、2021年の大規模な騒動・略奪も同州で最も過熱した。今回の反移民デモに関しても同州最大都市・ダーバンで最大規模の動員が行われたことは、マーチ&マーチのジャシンタ=ズマ氏が同氏の出身であることと、MK支持者(多くはズールー族)が多いことも影響したとみられる。
ラマポーザ大統領は国民の間で高まる反移民感情を鎮めるために、6月27日に南アの伝統的君主らに協力を呼びかけた。同氏は、「南アではいかなる人種差別や外国人排斥も許されない」とのアパルトヘイト廃止以降の南アの基本理念を示しているが、総じて政府の対応は消極的だと非難を受けている(6月30日、The Guardian)。
- [インド/戦略備蓄新設を検討]6月30日、インド経済紙Economic Timesは、インド政府が原油・LPG及びLNGの戦略備蓄インフラを新設する予定であると報道した。
インド石油・天然ガス省によると、3月時点でインドの石油備蓄日数は約60日分であった。また備蓄能力は約74日分と、他のアジア新興国に比べて高い水準である。他方で、備蓄全体のうち政府による戦略石油備蓄は合計で約3,900万バレルと、純輸入量の約10日分と少ない。これまでは石油精製・国内販売を担う複数の国営石油会社による商業備蓄が十分に在庫を持っていたために国全体での備蓄日数を相応の水準に維持できていた。今回のイラン紛争において、特にLPGの供給不足が深刻化した。LPGは石油製品の中でも備蓄日数が約30日分と特に少ない一方で湾岸諸国には輸入の約9割を依存している。イラン紛争勃発後の3~4月にかけて、特に家庭向けのLPG供給が不足したことを受け、政府は石油会社に家庭向けLPG供給を産業・商業向け供給よりも優先するよう指示した。5月以降は米国からの輸入を急増させたことなどで供給不足が解消した。
報道によると、政府は新たに5か所の戦略石油備蓄設備を新設するもよう。インド石油ガス公社や地場インフラ大手(メガ・エンジニアリング・アンド・インフラストラクチャー)などが建設・運営を担う予定である。これにより、現在の備蓄日数は約10日から40日分まで増加する見込みである。並行して、国営石油会社は原油の調達先を多角化する見込みである。国営石油会社の原油調達のうち、約半分は長期契約・残り半分はスポット市場での調達が占める。長期契約は湾岸諸国との契約が大宗を占めていたため、今後は湾岸諸国以外の国からのスポット市場での調達を増加させるもよう。具体的には、米国、ブラジル、ガイアナなどの国からの調達拡大を目指している。
石油製品に加え、政府はLNGの備蓄確保も目指している。インドはLNG輸入の約7割を湾岸諸国に依存している一方で備蓄が実質的には存在しない。政府はエネルギー安全保障確保のため、30日分の備蓄確保を目指しているもよう。一部報道によると、備蓄確保にあたり、インド政府は日本政府との間でLNG備蓄協力に向けたタスクフォースを立ち上げるもよう。日本政府はPOWERR Asiaの枠組みの下でアジア各国の原油・石油備蓄タンクのインフラ建設等を支援する方針を示しているが、今回のインドとのタスクフォース立ち上げも、POWERR Asiaに基づく支援の一貫とみられる。
- [中国政治局会議、極端気象が議題に]6月30日に開かれた中国共産党政治局会議では、洪水対策および干ばつ対策が主要議題となり、「今年の雨季は極端な気象・気候現象が平年より多く、洪水と干ばつが各地で同時に発生する」との予測と警戒が示された。その上で、関係部門に対し「大規模な洪水、大規模な干ばつ、強い台風」を想定した最悪の事態への備えを指示し、「最悪の事態を前提とした危機管理」の考え方の徹底を求めた。
会議では、人命最優先を原則として、気象・水文観測の精度向上、危険地域からの迅速な避難、大河川・湖沼の治水能力の確保、河川管理の強化を指示したほか、「干ばつから短期間で豪雨へと急変する現象」への警戒を強調した。また、重要インフラや建設中プロジェクトの安全確保、農業基盤施設の保護、救援部隊や資機材の事前配置、被災者支援の充実なども求め、国家防災・減災総指揮部を中心とする統一指揮体制の強化を指示した。
中国気象局や水利部は、2026年春頃から夏の気象について警鐘を鳴らしてきた。国家気候センターは、2026年夏はエルニーニョ現象の発達に伴い、極端気象が増加すると予測している。雨季には、北京・天津を含む華北・東北地域と、浙江・福建・広東など華南沿海部の二つの地域で豪雨や洪水リスクが高まる一方、湖北・湖南など長江中流域では降水不足による干ばつが懸念される。また、高温による熱波の頻発や、台風の北上に伴う内陸部での大雨にも警戒が呼び掛けられている。
中国政府は、洪水と干ばつが地域ごとに同時進行し、さらに短期間で両者が入れ替わるような極端な気象が新たな常態になりつつあるとの認識を強めている。今回の政治局会議は、こうした複合的な自然災害への対応を国家レベルで改めて徹底する狙いがあるとみられる。
- [メルコスール首脳会議]6月30日、パラグアイで開催された第68回メルコスール首脳会議は、設立35周年という節目である一方、加盟国間の政治的対立も垣間見えるものとなった。会議では域内の協調維持と対外経済関係の強化が主軸となり、域内の結束、対外通商政策、そしてインフラと治安が議論された。
特に注目された成果としては、日本との経済連携に関する交渉開始であり、これまで実務レベルで進んでいた枠組みが正式に政治決定として確認され、日・メルコスール間の包括的経済連携協定(EPA)交渉が本格的に始動した。これにより、日本側は自動車部品など工業製品の関税引き下げを期待し、メルコスール側は農産物や鉱物資源、エネルギーの輸出拡大を目指す構図が明確になった。またブラジルは、中国との自由貿易交渉を推進する必要性にも言及し、カナダ、インド、ベトナムに加えてアジア市場への関与を一層強める方針を打ち出した。
一方で、EUとの貿易協定をめぐる内部調整も重要な議題となり、2026年1月に正式署名された協定に基づく輸出枠の配分について、農畜産物を中心に加盟国間で調整が続いている。特に牛肉や農産物の輸出 quota(無関税枠)を巡って各国の利害が対立しており、合意形成の難しさが改めて示された。
さらに、域内インフラ整備としてバイオセアニコ回廊の推進が議論された。この計画はブラジルからパラグアイ、アルゼンチンを経由しチリの太平洋側へ至る物流ルートを整備するものであり、地域経済の統合を強化する鍵と位置付けられている。同時に、投資環境の安定化を目的として組織犯罪や麻薬取引への対策でも協力を強化する方針が確認された。
会議の終盤では共同声明が採択され、メルコスールが保護主義の高まりに対抗するために引き続き戦略的に重要な枠組みであるとの認識が共有された。また、議長国はパラグアイからウルグアイへと引き継がれ、今後半年間の議論の方向性をウルグアイが主導する体制となった。
出席者に関しては、おおむね主要国の首脳が参加したが、アルゼンチンのミレイ大統領が欠席したことが大きな関心を集めた。公式には国内政権幹部の汚職問題による辞任とそれに伴う政権再編への対処が理由とされたが、ブラジルのルーラ大統領との政治的対立が背景にあると広く見られている。ミレイ大統領は市場重視・自由主義的な立場から、ブロックとしての統合に懐疑的であり、二国間協定を重視する姿勢をとっている。このため、多国間主義を推進するルーラ大統領との対立が顕在化しており、今回の欠席は意図的に距離を置いた行動と解釈されている。
今回の首脳会議は、メルコスールが内部分裂のリスクを抱えながらも、対外的には市場拡大と経済多角化を模索している現状を象徴している。日本やアジアとの関係強化を進める一方で、加盟国間の方向性の違いをいかに調整するかが、今後の持続性を左右する重要な課題となる。
- [日本/完全失業率(5月)・有効求人倍率(5月)]6月30日、総務省が発表した4月の完全失業率(季節調整値)は2.5%で、4月から横ばいとなった。完全失業者数は185万⼈(前年同月比+2万⼈)で、10か⽉連続で増加した。求職理由別では、「新たに求職」が54万⼈(+6万⼈)へ増加した。物価高にて、より良い条件を求めての転職が増えていると考えられる。
就業者数は6,890万人で、前年同月比+52万人と、4か月連続で増加した。 産業別では、増加したのは「宿泊業、飲⾷サービス業」で+20万⼈、「医療、福祉」で+18万⼈、「教育、学習⽀援業」で+11万⼈。減少したのは「農業・林業」で▲12万人、「運輸業、郵便業」で▲2万⼈、「⾦融業、保険業」で▲1万⼈、「学術研究、専⾨・技術サービス業」で▲1万⼈。
雇用者数は6,231万人(+57万人)と、51か月連続で増加した。そのうち正規の職員・従業員数は3,745万人(+22万人)、31か月連続の増加。非正規の職員・従業員数は2,133万人(+32万人)と、2か月連続の増加。
また、同日に厚生労働省が公表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍と、4月から0.01ポイント低下した。有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す求職者1人あたり何件の求人があるかを示すもの。全国では引き続き1倍を上回っており、一般的には相対的に労働需要が強いことを示唆するものの、足元にかけては人手が集まらない状況になっている。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍と、4月から横ばい。
新規求人倍率(季節調整値)は2.11倍と、4月から横ばい。新規求人数(原数値)は72万人と前年同月比▲8.9%減少した。産業別では、「生活関連サービス・娯楽」が▲16.9%、「卸売業・小売業」が▲16.8%、「宿泊・飲食サービス」が▲14.4%。より細かい内訳では中東情勢の悪化に伴い石油関連産業での低下がみられ、製造業のうち「石油製品・石炭製品製造業」で▲30.8%、「化学工業」で▲18.8%。
全体として、日本の雇用環境は引き続き堅調であることを示す結果となった。
- [ドイツ・フランス/物価上昇率の鈍化]ドイツの連邦統計庁(Destatis)によると、6月の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+2.4%だった。上昇率は5月(+2.7%)から鈍化し、市場予想(+2.5%)を小幅に下回った。
内訳を見ると、政府が燃料減税を導入したこともあり、エネルギー価格が+3.4%と5月(+6.6%)からほぼ半減した影響が大きかった。この上昇率は4月(+10.1%)には2桁だった。政府は4月13日に、ガソリンとディーゼル燃料の税金を1リットルあたり17セント引き下げると発表した。2か月間の期間限定の措置(計16億ユーロ規模)。そのため、期限切れとなると、再びエネルギー価格の上昇率が拡大する可能性がある。
その他では、食品は+0.4%、5月と同じだった。
また、財は+1.7%で4月(+2.9%)、5月(+2.2%)から2か月連続で上昇率を縮小させた。サービスは+3.1%で、5月と同じだった。物価の基調を表す食品とエネルギーを除くは+2.5%で、5月から横ばいだった。
フランスの国立統計経済研究所(INSEE)によると、6月の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+2.0%だった。上昇率は5月(+2.8%)から6か月ぶりに鈍化し、市場予想(+2.3%)を下回った。
内訳を見ると、エネルギーが+11.2%と、5月(+16.6%)から鈍化した。食品は+0.9%と5月(+1.1%)から、サービスも+1.8%と5月(+2.1%)から上昇率を縮小させた。特に、食品では、生鮮食品が5月(+3.4%)から+2.8%へ縮小した影響が大きかった。財は▲0.9%となり、5月(▲0.6%)から下げ幅を拡大した。
こうした物価上昇率の鈍化はユーロ圏ではおおむね共通した動きになっており、欧州中央銀行(ECB)高官らの間では、物価上昇率の高止まりへの警戒感が残りつつも、追加利上げを急ぐ姿勢は弱まっており、状況を見極める時間があるという認識が広がりつつようだ。
- [AlcoaがSouth32のアルミ資産買収]6月30日、米AlcoaはSouth32(オーストラリア)のアルミ関連資産を最大48億ドルで買収すると発表した。オーストラリアのBoddingtonボーキサイト鉱山・Worsleyアルミナ精錬所、南アフリカHillsideアルミ製錬所、ブラジルMRNボーキサイト鉱山およびAlumarアルミナ・アルミ事業を買収し、上流アルミ事業の強化を図る。現在操業停止中のモザンビークMozal製錬所は取得対象に含まれない。取引完了は2027年上期を予定。
Alcoaは本買収により、オーストラリア・ブラジル既存資産との統合を進めるとともに、南アフリカに新たな事業拠点を獲得し、上流アルミ企業としての地位強化を図る。統合により約9億ドルのシナジーを見込む。統合後ベース(Pro forma)の2025年生産量は、アルミ約320万トン、アルミナ約1,480万トンとなる見通し。
中東の紛争によりアルミ供給が減少し、アルミ価格は上昇したが、同地域の製錬所による原料調達が減少し、アルミナ価格は下落した。今後、EV、送電網、再生可能エネルギー、航空宇宙向けを中心にアルミ需要は拡大が見込まれ、Alcoaは生産・資源基盤を強化する。South32は2015年にBHPから分離独立した経緯を持ち、今後は銅・亜鉛・銀・鉛など高収益資産への集中を進める方針。
- [カナダ/新パイプライン建設構想]カナダ連邦政府とアルバータ州は、アルバータ産のオイルサンド由来ビチュメン(超重質油)を太平洋岸まで運び、アジア市場へ輸出する新しい西海岸へのパイプライン構想を前に進めようとしている。5月15日の実施合意では、アルバータ州が2026年7月1日までにMajor Projects Office、つまり大型国家プロジェクトを迅速化する連邦窓口へ提案を出し、連邦政府は10月1日までに「National Interest Project」として指定する方向で動く、という工程表が示されていた。指定されれば、2027年9月1日までに建設条件文書を出す努力をする、という建て付け。最大の問題は、まだ民間企業の正式な事業主体がいないこと。カーニー首相は以前から「民間の提案者がいなければパイプラインはない」と明言しており、ブリティッシュコロンビア州のエディ首相は「会社も資金も沿岸先住民の支持もない」と批判している。
AP通信はこれについて、民間支援の不在、ブリティッシュコロンビア州と沿岸先住民の強い反対に加えて、タンカー規制の問題を主要な障害として整理した論評をまとめている。この政策の背景には、カナダの対米依存がある。2025年時点でも、カナダの原油輸出の90.1%は米国向け。2024年は93%まで上昇し、Trans Mountainパイプラインの拡張で非米国向け輸出は増えたが、依然として米国依存は非常に大きい。カナダはトランプ政権による関税・通商圧力を受けて、「米国との市場統合は強みだったが、今や脆弱性にもなった」という認識を強めている。アルバータ州のスミス首相は、アジア向けに日量100万バレル超を流せば「一人の顧客」に依存しなくて済むとしているようには輸出先の多様化は急務でもある。そのため、この西海岸までのパイプラインは単なるエネルギー案件ではなく、カナダが中堅国として米国一極依存を下げ、自国の資源・インフラ・輸出能力を使って戦略的自立を高められるかという国家戦略ともいえる。
この構想の興味深さは保守的な「化石燃料輸出拡大」と、リベラルな「脱炭素・炭素価格」を一つに束ねているに象徴される。つまり「オイルサンドは輸出する。ただし、炭素価格とCCUS(二酸化炭素の回収・貯留)を組み合わせ、低炭素化されたカナダ産エネルギーとして売る」ことを目標としている。政治的には巧妙ともいえるが、投資家から見ると損益が分かりづらく複雑な案件となるので、民間投資を進まなくしている。
政府だけでは事業はできない。税金の使い方、環境への配慮、住民との合意でコスト上昇につながるなら尚更。10月までにカナダの国家プロジェクトとして指定されるかが注目されるが、超えるべきハードルは高く、数も多い。
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