- [お休みのお知らせ]2026年5月28日(木)はデイリー・アップデートはお休みいたします。ご了承ください。
- [ペルー/チャンカイ港急成長]ペルーのチャンカイ港は、2025年に商業運用を開始したが、2026年第1四半期の取扱量約9万9,560TEU(20フィートコンテナ換算)に達し、これまで北部の主要港であったパイタ港を上回り同国第2位のコンテナ港に急成長した。なお、最大の港であるカヤオ港は依然として国内コンテナ貨物の大半(約8割)をカバーしており、チャンカイ港との差は大きいが、新設港としての成長速度は際立っている。
この急伸の背景には、インフラ投資と立地の優位性がある。チャンカイ港は中国の海運大手コスコ・シッピングが建設・運営しており、第1期だけで約13億ドルが投じられた大規模プロジェクトである。2024年末に開港し、2025年に商業ライセンスを取得したことで本格的な運用が始まった。首都の北部に位置する地理的条件に加え、最新設備を備えたターミナルとして効率的な荷役が可能であり、短期間でコンテナ取扱量を伸ばした。
特に重要なのは、アジアとの直結性である。この港は中国・上海への直行航路を持ち、輸送日数が約35日から約23日程度に短縮できる点が大きな強みとなっている。従来は中継を経るケースも多く、輸送時間やコストが課題であったが、直行ルートの整備によって南米とアジア間の物流効率が大きく改善された。これにより、チャンカイ港は単なる国内港にとどまらず、太平洋をまたぐ貿易のハブとしての役割を担うことが期待されている。
また、この港の発展は地域経済だけでなく、国際関係の観点からも注目されている。中国資本による大規模インフラ投資は、南米における影響力拡大の象徴とされることが多く、チャンカイ港もその一例である。港湾整備を通じて物流ネットワークを押さえることで、貿易の流れそのものに影響を与える可能性があるため、周辺国や他の貿易相手国も動向を注視している。
一方で、今後の発展には不確実性も残る。運営会社は、さらなる拡張を含む第2段階の計画についてはまだ最終決定していないとしており、追加投資の規模や時期は不透明である。また、新興港としての地位を維持するには、安定した貨物需要の確保や、内陸輸送網の整備、他港との競争といった課題にも対応する必要がある。
それでも、チャンカイ港の急成長は、南米の物流地図が変わりつつあることを示している。アジアとの結び付きが強まる中で、この港がどこまで地域の中核拠点として機能するかが、今後の重要な焦点となる。
- [米国・アルメニア/戦略協定に署名]5月26日、米国のルビオ国務長官は、日米豪印外相会合(ニューデリー)に参加したのち、アルメニアの首都エレバンに短時間立ち寄った。ズバルトノツ国際空港でルビオ長官はミルゾヤン外相と会談し、アルメニアと「包括的戦略パートナーシップ協定」を締結した。協定は軍事、安全保障、原子力、先端技術、資源開発など広範な分野を対象とし、両国関係の格上げを意味する。特に安全保障分野では、米国からの兵器供給や防衛協力の具体化が明記され、将来的な致死性兵器供与の可能性も示唆された。また、エネルギー分野では小型モジュール炉(SMR)の導入や半導体供給網への参入が議論され、産業高度化を後押しする構想が打ち出された。経済面では、アゼルバイジャンとナヒチェヴァンを結ぶ輸送構想「TRIPP(トランプ回廊)」を推進し、アルメニアを地域の物流ハブへ転換する戦略が示された。さらに、モリブデンなどのレアメタル開発に関する協力も盛り込まれ、米国は重要鉱物供給網の多角化を図る。
これらの動きは、アルメニアがロシア依存からの脱却とEU(欧州連合)、米国への接近を進める中での象徴的展開と位置付けられる。一方、ロシアは輸入規制など経済面で圧力を強めており、今後は対ロ関係の一層の緊張と、国内政治(2026年6月7日の議会選)への波及が注目される。
- [EU/エネルギー]Euronewsの報道によると、欧州連合(EU)の老朽化した電力網の更新に向けた新法案「ヨーロピアン・グリッド・パッケージ」を巡り、許認可手続きにおける「黙示の承認」制度が大きな政治的争点となっている。
この措置は、行政手続きによる計画の長期停滞という、2050年の気候変動対応目標への最大の障害を打開するために提案されたもの。現在、電力プロジェクトの稼働には配電網で約3.5~7.5年、送電網で7~10年かかっており、許認可の遅れが遅延の主因となっているとされている。この事態を重く見た欧州委員会は、審査当局が一定期間内に明示的な判断を下さない場合、プロセスの中間的な許認可や行政決定が自動的に承認されたとみなすルールを提案した。
しかしこの提案に対し、デンマークやオランダなどが賛同する一方で、フランス、ドイツ、オーストリアなどは強く反対している。反対国は、これを単なる手続きの合理化ではなく、本質的には土地利用計画や環境規制といった「国家主権」にかかわる権限がEUに委譲されるものであると警戒している。さらに、自動承認により法的確実性が揺らぐことや、EUの圧力で事業を承認したとして各政府が国内の強い反発を浴びることへの懸念も根強く存在している。
気候変動対策の「緊急性」と「国家主権」維持の板挟みとなる中、EU議長国のキプロスは妥協案を模索している。欧州委員会が求めるような「全プロセスでの義務化」を避け、導入を各国の任意(選択制)にするか、許認可の最終決定のみに限定するなど、制度に柔軟性を持たせる方向で調整が行われている。キプロス議長国は、6月26日のエネルギー相会議での基本合意を目指し、加盟国間の溝を埋める交渉を続けている。
- [米国/停戦を求めるアラブ・イスラム諸国にアブラハム合意への参加を要請]トランプ米大統領は、イランとの新たな和平合意交渉を進める中で、停戦を強く求めるアラブ・イスラム諸国に対し、イスラエルとの国交正常化を定める「アブラハム合意」への参加を強く促した。トランプ氏は、米国がイラン問題解決のために多大な努力を払っている以上、少なくとも関係国の大半が同時にアブラハム合意へ署名すべきだと主張し、特にサウジアラビアとカタールが率先して参加するべきだと訴えた。
トランプ氏が同要請を行った電話会談に参加していた国々は、サウジアラビア、カタール、パキスタン、トルコ、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンである。ただし、UAEとバーレーンはすでにアブラハム合意に参加している。また、トルコはイスラエル建国翌年から外交関係を維持しており、エジプトとヨルダンもそれぞれ1979年と1994年にイスラエルと平和条約を締結しているため、今回の要請で特に影響を受けるのは、サウジアラビア、カタール、パキスタンであると考えられる。米ニュースサイトのAxiosによれば、トランプ氏の国交正常化要請に対し、多くの首脳は沈黙したという。
最大の焦点はサウジアラビアである。トランプ政権は以前から、サウジとイスラエルの国交正常化をアブラハム合意最大の成果と位置付けてきたが、2023年10月に始まったガザ紛争以降、署名に向けた動きは停滞している。サウジ側は、パレスチナ国家樹立への「不可逆的な道筋」が示されない限り、イスラエルとの関係正常化には応じない立場を維持している。パキスタンも、独立したパレスチナ国家が樹立されるまでイスラエルを承認しないとしており、カタールも依然としてイスラエルと正式な外交関係を持っていない。一方で、カタールは米国の重要な同盟国であり、米国は中東秩序再編の中で各国を取り込もうとしている。
今回の動きの背景には、トランプ政権がイランに譲歩しすぎているのではないかと米国共和党議員らから批判を受けていることから、イランとの新たな合意と引き換えに、イスラエルへ外交的成果を提供しようとしているとの見方がある。また、イスラエルも米・イラン合意案には強く反発している。イスラエル高官らは、現在検討されている停戦・和平案が、イランの核開発、弾道ミサイル、代理勢力支援といった核心問題に十分触れていないことを問題視している。特に、制裁緩和や停戦延長によってイランが経済・軍事両面で立て直す時間を得れば、将来的に再び対抗することが難しくなるとの懸念が強まっている。
- [インド/Quad外相会合]5月26日、デリーで米国、インド、オーストラリア、日本の外相によるQuad外相会合が開催された。会合では日本側より、高市首相による「進化」したFOIPに関して説明があった。会合後に発表された共同声明の中で、イラン革命防衛隊を念頭に、商船への攻撃及びホルムズ海峡を通過する船舶からの通航料徴収に反対すると共に、中国を念頭に東シナ海・南シナ海における状況を懸念していると表明されている。
Quadは2021年に首脳会合が開催されて以降、年に1回の頻度で定期的に実施されてきた。他方で2025年は、トランプ大統領がインド・パキスタン国境紛争の停戦仲介への関与を主張したほか、トランプ政権がロシア産原油を購入するインドに対し、合計で50%の関税を課すなどインド・米国間の外交関係が悪化したことで、首脳会合実施は見送られた。今回の外相会合実施の背景には、中国へのけん制を強めたいというルビオ国務長官個人の強い考えが背景にあるもよう。インドとしても、あらゆる国・陣営とも関係を深めつつ、自国の外交方針を他国に依存しない「戦略的自律」を掲げる中で、本枠組みへの関与を再開することを希望していたもよう。
今回の会談では、経済安全保障分野と海洋監視分野で、4か国間での具体的な協力が確認された。重要鉱物分野では、日米豪印重要鉱物枠組みが公表された。これは、官民合わせて最大200億ドルの支援を動員し、4か国での重要鉱物の採掘・加工/精製・リサイクル分野での協力を支援するもの。オーストラリアは世界有数のリチウム、コバルト、レアアースの埋蔵国・生産国だが、一次加工後は海外に輸出され、精製されている。オーストラリアとしては、今後国内精製事業を育成することで、国内で創出される付加価値を拡大することを狙っている。米国・インド・日本としても、輸出規制等を実施しうる中国でなくオーストラリアで精製された重要鉱物を輸入できれば、重要鉱物の安定供給に繋がる。エネルギー分野では、4か国で原油・ガス及び石油製品の供給などで協力するインド太平洋エネルギー安全保障イニシアティブが公表された。日本政府は、本イニシアティブを、アジア各国への原油・石油融通やこれらの調達資金を提供する枠組みであるパワー・アジアと連携させる意向であるとした。オーストラリアはLNGの輸出国であるほか、米国も原油の輸出量を増やしているため、これらを日本を介してアジア諸国に融通することを狙っていると考えられる。またインド太平洋の海洋監視での協力開始も発表した。安全な海域を確保するために、船舶情報などを即時に共有するものである。ホルムズ海峡における商船への攻撃や航行停滞を念頭に入れたものと考えられる。
なお、茂木外相は会合後の記者会見にて、首脳会合の具体的な日程等は決まっていないと発言しており、首脳会談の実施有無については未だ不透明である。
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