- [世銀/サブサハラ経済見通し]4月8日、世界銀行(世銀)は「アフリカ経済アップデート(2026年4月)」を発表し、2026年のサブサハラ・アフリカ(サブサハラ)の実質経済成長率は4.1%で、2025年と同水準の成長との見通しを示した。しかし、中東情勢の緊張によるエネルギー価格ショックなどの下方リスクが強まっていることから、2026年の経済成長率を4.4%と予測していた2025年10月時点から▲0.3%下方修正した。
世銀によると、中東紛争は①貿易、②投資、③金融、④労働の4つの主要な経路を通じてサブサハラ経済に影響を及ぼすとのこと。①貿易については、中東からの石油・肥料の輸入比率が高い東アフリカ諸国への影響で食料生産コストが上昇し、インフレ上昇圧力となると指摘。また、サブサハラの金をはじめとする鉱物や農産品を輸入している中東諸国の経済の不安定化もサブサハラの輸出国に影響をもたらすとしている。②の投資については、2022~23年の2年間に限定してもアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタールといった湾岸諸国は東アフリカを中心とするサブサハラの国々の再生可能エネルギー、鉱業、物流などの分野で総額1,130億ドルの投資を行ってきたが、中東紛争による国内経済の打撃により、投資の優先順位を見直す可能性があるとの見解を示している。③金融については、世界的な安全資産や先進国通貨への逃避により、サブサハラの新興国通貨とのスプレッドが広まると指摘。④の労働については、湾岸諸国で建設業やサービス業に従事する多くのサブサハラの国々(特に東アフリカ)の移民労働者からの送金収入が減少する可能性があるとの見方を示している。
また、世銀は、サブサハラにおいても中東紛争による油価や肥料価格の高騰の影響は国ごとにまちまちとしながらも、エネルギーの純輸入国でインフレの上昇率が高く、財政再建の重しになると指摘。ナイジェリアやアンゴラのような産油国では原油輸出に関しては恩恵を受けるものの、石油精製品や食料など多くを海外から輸入していることから、油価高騰の効果は相殺されるとの見方を示している。
今回の世銀の発表では、サブサハラの多くの国で2026年の成長率見通しが2025年10月時点から下方修正された。域内最大の経済規模を持つ南アフリカは1.0%(前回は1.2%)、ナイジェリアは4.1%(同4.4%)、ケニアは4.4%(同4.9%)、コートジボワール5.8%(同6.4%)、アンゴラ2.4%(同2.6%)、モザンビーク0.9%(同3.0%)だった。一方で、上方修正された国にはエチオピア8.0%(前回7.1%)、ウガンダ6.8%(同6.4%)などがあった。
2026年で最も高い成長率が予測された国は、原油パイプラインの改修が進む南スーダンの20.3%で、シマンドゥ鉄鉱石開発プロジェクトが進展しているギニアが8.8%で続いた。2027年の成長率見通しでもトップはギニアの11.6%で、2026年末までに原油生産・パイプライン輸送プロジェクトが開始される予定のウガンダが8.5%と続いた。逆に、2026年にマイナス成長が予測された国は、原油の油井の成熟化が進み、原油生産量が減少している赤道ギニアの▲3.5%だった。
- [ASEAN/ISEASによるサーベイ]4月7日、シンガポールのシンクタンクであるISEASユソフ・イシャク研究所は、ASEAN加盟国の民間企業や政府、研究機関、NGO職員などを対象に実施した「東南アジアサーベイ」を公表した。本サーベイは同機関が毎年実施しているもの。
今回のサーベイのポイントと背景は以下のとおり。
ポイント1:域内で最も差し迫った課題として「気候変動リスク」が2年連続で選ばれた。
背景:本サーベイでは、地域で最も差し迫っている3つの課題をヒアリングしている。2024年は「失業と景気後退」が第1位の課題・気候変動リスクが2番目の課題として挙げられていたが、2025年には逆転。今回サーベイでは回答率が60.0%と2025年(55.3%)から上昇した。加盟国の中で特に回答率の高かった国として、フィリピン(71.1%)やインドネシア(67.4%)、ラオス(65.2%)が挙げられた。
インプリケーション:3月にはマレーシアにおいて熱波が断続的に発生しており、同月23日には政府が熱波警報を発令した。また2024年に発生しベトナムのハイフォンを直撃した台風ヤギも気候変動の影響を受けて規模が拡大したと指摘されるなど、気候変動リスクは発現しているとの指摘が多く、既に経済活動に悪影響を与えている。ASEANの人々にとり、気候変動は「リスク」でなく現在進行形で発生しているものであるとの意識が強いと考えられる。
ポイント2:最も懸念される地政学的要素として「トランプ政権の外交政策」が初めて選ばれた。
背景:本サーベイでは、最も懸念される地政学的リスク・要素3つをヒアリングしている。2025年のサーベイでは「中国の南シナ海における威圧的な振る舞い」(回答率51.6%)が「国際的な詐欺活動」(回答率48.1%)や「米国の新政権」(回答率46.9%)を抑えて1位であったが、今回サーベイでは「トランプ政権の外交政策」が首位に浮上した。
インプリケーション:トランプ政権による相互関税の課税や加盟国にとり不利と捉えられかねない貿易合意の締結が、回答者の米国に対する不信感を招いたことが今回の逆転の背景にある可能性が高い。
ポイント3:米中との二者択一を迫られた際に中国を選択する割合が過半となった。
背景:本サーベイでは、「中国か米国のいずれかとの同盟を結ばざるを得ない場合、どちらを選ぶか」との質問を実施している。2023年までは一貫して米国の回答率が中国を上回っていたが、2024年に中国の回答率が50.5%と米国を上回った。2025年に米国の回答率(52.3%)が上回ったものの、今回は再び逆転し、米国が48.0%、中国が52.0%となった。
インプリケーション:ポイント2と同様にトランプ政権による相互関税課税などが回答者の米国への不信感を招いたことが今回の逆転の背景にある可能性が高い。他方で一部の専門家は、米国の回答率がさらに下がってもおかしくなかったと指摘している。トランプ政権への不信感が高まる中でも、ASEANの人々としては中国との外交関係を急激に深化させるのではなく、あくまで両国間で中立的な姿勢を保とうとしていることがうかがえる。
このほかには、日本が8年連続で「最も信頼できる国・地域」に選ばれたほか、米国を「信頼する」と回答した割合が激減・「信頼しない」と回答した割合が増加した。なお中国・インドを「信頼する」と回答した割合が初めて「信頼しない」と回答した割合を超えた。対米不信感拡大から中国・インドなどへの信頼感が相対的に拡大したものとみられる。
- [ブラジル/軽油供給のリスク続く]4月7日、米国とイランは2週間の停戦に合意したと発表した。しかし、その後にホルムズ海峡の再封鎖が正式に発表され、停戦の実効性に対する市場の期待は急速に後退した。形式的な停戦合意が存在する一方で、実際にはエネルギー輸送と国際物流の大動脈であるホルムズ海峡の安全は確保されておらず、商船の運航再開は事実上停止した状態にある。
海運会社や保険会社は、停戦合意のみでは航行再開の判断材料として不十分であるとの立場を明確にしている。再封鎖によって、航路の物理的リスクだけでなく、突発的な武力衝突や拿捕の可能性が再び意識される状況となり、保険料率は急騰し、実質的に航行不能な環境が生じている。結果として、ホルムズ海峡を経由する原油、石油製品、LNG、肥料などの供給不安は一段と強まり、エネルギー市場全体のリスクプレミアムは再び拡大した。
こうした国際的な不確実性が急激に高まる中で、ブラジル政府は国内市場への影響を抑えるため、矢継ぎ早に緊急措置を打ち出している。短期間で講じられた価格調整措置や補助金政策は、選挙前のばらまき政策との批判を招きやすいが、政府は市場メカニズムを全面的に否定するものではなく、あくまで外生ショックへの危機対応であると位置づけている。特に、供給途絶が物理的に現実化しつつある局面において、需給の急激な歪みを防ぐことが最優先課題とされている。
これらの措置は、国有石油会社ペトロブラスの供給能力を維持する上でも重要な意味を持つ。ペトロブラスは国内ディーゼル消費のおよそ70%を担っているが、ホルムズ海峡封鎖を受け、通常であれば実施されるはずの設備定期メンテナンスを延期し、ほぼフル稼働での操業を余儀なくされている。新たに導入された輸入補助金は、ペトロブラスおよびその取引先にとって採算を一定程度改善し、国際価格が高止まりする中でも輸入ディーゼルを市場に供給する余地を生む制度設計となっている。
補助金導入以前には、国際価格と国内販売価格の乖離を理由に、採算悪化を懸念した事業者が新規の輸入契約から相次いで撤退していた。一方で、民間の大手燃料輸入業者は、補助金の返済条件や制度の持続性が依然として不透明であることを理由に、現時点では参加に慎重な姿勢を崩していない。ホルムズ海峡の再封鎖によって、原油・製品価格の上振れリスクが再認識される中、これらの企業が供給リスクをどう再評価し、市場に戻るのかが今後の重要な焦点となる。
足元の在庫水準と既存の輸入契約を勘案すれば、4月中のディーゼル需要はおおむね賄える可能性が高い。しかし、ホルムズ海峡の再封鎖が長期化し、国際市場での調達環境がさらに悪化すれば、輸入の停滞は避けられない。その場合、供給リスクは従来想定よりも早い段階で顕在化し、5月から6月にかけて需給逼迫が急速に強まるおそれがある。
ブラジルはディーゼル需要の最大75%を国内生産で賄うことができるものの、輸入途絶が長期化すれば、物流の遅延などが発生する可能性が否定できない。全国的な交通停止に直ちにつながるとは考えにくいが、輸出企業の収益を圧迫し、インフレ期待を押し上げ、トラック運転手による抗議行動や政治的緊張が再燃するリスクは明らかに高まっている。
- [ウズベキスタン・米国/投資評議会開催]4月6~9日、大統領府長官のサイダ・ミルジヨエワ氏(大統領の長女)が米国を訪問し、ルビオ国務長官や米国ビジネス界の関係者との面談を行ったほか、米国のトランプ大統領の別荘であるマー・ア・ラゴで、トランプ大統領の娘であるティファニー・トランプなどと面会した。今回の訪問は、新設された米・ウズベキスタン・ビジネス・投資評議会の初会合とも重なった。これにより、ミルジヨエワ氏は、投資評議会の共同議長として、今後、対米大型案件を監督する。
同評議会では、米国国際開発金融公社(DFC)や欧州復興開発銀行(EBRD)、国際金融公社(IFC)、アジア開発銀行(ADB)が参加する新たな投資ファンドが創設され、インフラなど戦略分野への投資を促進すると合意した。
また、二国間の取り組みの調整強化のため、2026年1月より在米ウズベキスタン大使館に大統領府所属の公使参事官のポストを新設し、対米の戦略プロジェクトを統括する。あわせて、フィラデルフィア、シカゴ、オーランド、シアトルに領事館を開設し、ビジネス界および在米ウズベキスタン人社会との連携を強化する。
さらに4月9日以降、ウズベキスタン居住者による米国向け投資送金は制限なく実施される。米国はウズベキスタンのWTO加盟を支援し、同国の経済制度改革・対外開放を戦略的に後援すると発表している。
- [トランプ大統領とルッテNATO事務総長の会談]4月8日、トランプ大統領は、米国とイランの戦争において、NATO諸国がホルムズ海峡の再開などで協力しなかったことに強い不満を抱き、NATOからの離脱をほのめかしていた。そのような中、ルッテ事務総長が米国を訪問し、トランプ大統領と会談した。会談はメディア非公開で行われ、2時間以上に及んだ。
ルッテ事務総長はCNNのインタビューに対し、この会談を「友人間の非常に率直でオープンな議論だった」と発言した。ルッテ氏は会談の中で、欧州の大部分の国は基地使用や上空通過、後方支援などで協力していることを説明するとともに、トランプ大統領の指導力によりイランの核の脅威が低下し、世界が安全になったと発言するなど、関係修復に努めた。
しかし、会談後もトランプ氏の不満は収まらず、SNSに大文字で「NATOは我々が必要な時にいなかった。今後もいないだろう」と投稿し、引き続き非難を展開した。さらに、以前NATO内で摩擦の原因となった「グリーンランドの領有問題」に対する怒りも再燃させている。
米国の法律では、大統領が議会の承認なしに単独でNATOを離脱することは禁じられており、完全な離脱は困難とみられている。そのため、トランプ政権は完全な離脱の代わりに、米国とイランの戦争に非協力的だった国から米軍を撤退させ、より協力的な国へと配置転換してパートナー国を「罰する」計画などを検討していると報じられている。
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