- [中国/習近平氏、米中首脳会談で日本を批判]『フィナンシャル・タイムズ』紙は複数の米側関係者の話として、2026年5月に行われた米中首脳会談において、習近平国家主席が日本の高市早苗首相と日本の「再軍備」を激しく批判したことを明らかにしたと報じた。習氏は、日本の防衛費増額や安全保障政策を「軍国主義化」と非難し、この問題が2日間の会談の中で最も激しいやり取りとなったとしている。トランプ大統領はこれに対し、北朝鮮の脅威があるため、日本はより積極的な安全保障姿勢を取らざるを得ないと応じたという。
日本政府は近年、中国を最大の戦略的脅威と位置づけ、防衛力強化を進めている。日本の防衛白書は2023年以降、中国を「最大の戦略的挑戦」と表現しており、2026年版草案でも、中国の軍事活動の活発化や中露の軍事協力への懸念が強調されている。特に、高市首相が2025年11月の国会答弁で「台湾有事が起こり、米軍が介入した場合、日本の存立危機事態になり得る」と発言したことに、中国は強く反発し、それ以降、レアアースの輸出制限なども含め、日本への圧力を強めている。
一方で、元米政府高官のクリストファー・ジョンストン氏は、中国の対日強硬姿勢は、日本国内や周辺国の警戒感をむしろ高めているとの見方を示し、「中国自身の行動が、より強い日本の出現を加速させている」と指摘した。豪州、フィリピン、韓国などが日本との安全保障協力を拡大している背景には、中国への不安があると分析した。
また、記事は、トランプ政権の対日姿勢に対して日本が不安を抱いているとも記している。トランプ氏は中国との関係安定化を重視しているとみられ、日本防衛への関与や台湾問題への対応に曖昧さがみられる。また、米国は日本向けトマホーク巡航ミサイルの納入遅延を伝えており、さらに台湾向け大型武器売却についても「中国との交渉材料」と発言している。こうした動きが、日本や同盟国に対する対米不信を生じさせているとしている。
- [メキシコ/EUとの自由貿易協定署名]2026年5月22日、メキシコとEUが自由貿易協定に署名した。トランプ政権下で強化された関税措置の中で、米国への過度な依存を減らすことも目的とされている。
今回の協定は、2000年に発効したメキシコ・EU貿易協定を大幅に拡張するもので、従来は主に工業製品の貿易に限定されていたが、新たな枠組みではサービス、政府調達、デジタル貿易、投資、農産品など幅広い分野が対象となる。2025年には基本合意に達していたが、政治的・戦略的配慮から署名までに時間を要していた。
署名式には、シェインバウム大統領、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、コスタ欧州理事会議長が出席し、シェインバウム大統領は、製薬、農業、技術開発、電動モビリティなどの分野で大きな機会が生まれると述べ、経済成長への期待を示した。
この協定の背景にある米国との貿易関係については、メキシコは自動車や鉄鋼、アルミニウムといった主要輸出品に対して高い関税を課されており、対米依存のリスクが顕在化している。実際、メキシコの輸出の80%以上が米国向けであり、輸出先の多様化は長年の課題であった。
新協定により、メキシコ政府はEU向け輸出が現在の年間約240億ドルから、2030年までに約360億ドルへ拡大すると見込んでいる。一方、EUからメキシコへの輸出は年間約650億ドルに上る。両者間の貿易額は過去10年間で75%増加しており、輸送機器、機械、化学品、燃料、鉱業製品が主要品目となっている。
また、この協定では、ほぼすべての品目に対して関税が撤廃される。メキシコ産の鶏肉やアスパラガス、EU産の粉ミルク、チーズ、豚肉などが対象であり、一部には輸入割当が設けられるものの、両地域間の市場開放は大きく進展する見込みとなっている。
EUは同時期に南米のメルコスールや、インドネシア、インド、オーストラリアとも貿易交渉を進めており、グローバルな経済連携の強化を図っている。一方でメキシコは、USMCAの見直し交渉を控えているため、対米関係を過度に刺激しないよう慎重に対応してきた経緯がある。
今後、この協定は欧州議会での承認を経て正式に発効する見通しである。フォン・デア・ライエン委員長は、この協定は多くの雇用と価値を生み出すための基盤となるとして、経済だけでなく戦略的観点からも重要な意義を持つことを強調している。
- [米国/消費者マインドの悪化]米ミシガン大学の「消費者調査」によると、5月の消費者信頼感指数は44.8(4月から▲5.0ポイント)へ低下した。2022年6月を下回り、過去最低の水準になった。2月末の中東紛争の発生後、ガソリン価格の上昇などをはじめとした生活費への懸念から、消費者マインドが悪化している。内訳を見ると、現状を表す現況指数は45.8(▲6.7ポイント)へ、先行きを表す期待指数は44.1(▲7.0ポイント)へそれぞれ低下した。特に、低所得者層を中心に消費者マインドが悪化している。
また、共和党支持層の消費者マインドも84.6(▲5.8ポイント)へ悪化した。現況・期待一数ともに4月から悪化している。水準自体も、中東紛争前から第1期トランプ政権時より低い状態が続いている。秋の中間選挙に向けて、米政権は消費者マインドがさえない状況が続く事態を回避したいと考えるはずであり、今後、財政拡大や政策転換などがあるかもしれない。
なお、1年後の期待インフレ率は4.8%で、4月時点の4.7%から上昇した。4年先も4月時点の3.5%から3.9%へ上昇した。今後、高めの物価上昇率が継続するという見方が広がっている。足元の物価上昇率に加えて、中期的な期待インフレ率が高止まりすると、連邦準備制度理事会(FRB)も政策金利を据え置くか引き上げるという選択肢を検討することになるだろう。
- [石炭価格上昇、インドネシアの政策変更、中国の炭鉱事故など]中東情勢の緊迫化を受けて石油・液化天然ガス(LNG)価格が高騰する中で、一般炭の価格も堅調に推移している。北東アジアの指標となるオーストラリア産高品位一般炭(6,000kcal/kg)は3~4月に一時140ドルを超え、いったん小緩んだあとも高値圏を維持。インドネシア産の低品位一般炭(4,200kcal/kg)は5月22日週に64.43ドルと約3年ぶり高値を付けた(Argus評価価格、ロイター報道ベース)。
2025年には中国・インドが国内石炭生産を進め、輸入需要が低下したことで、価格は軟調に推移していた。中国は自給率向上策として、発電燃料以外にも化学品・燃料・ガス化などに国産炭を活用している。しかし、2026年4月の生産量は過去最高だった3月の4億4,062万トンから大幅減の3億8,563万トンにとどまり、1~4月累計生産量は前年割れとなる一方、火力発電量は1~4月期に3.6%増えており、輸入需要が高まる兆候があった。週末に山西省の原料炭鉱山で発生したガス爆発事故では少なくとも82人の死亡が確認されており、当局が石炭セクターの安全管理と是正措置を強化する場合、さらなる供給減少の可能性が浮上している。
一方、インドネシアは価格下支えのため、2026年の石炭採掘割当を大幅に削減した。5月20日には、一次産品輸出の管理強化のため、石炭などの輸出を国営企業経由に一元化する方針を示した。制度運用には不透明な点が多く、貿易フローへの影響が懸念される。こうした中でインドでは熱波、日本や韓国ではLNG価格上昇に伴う石炭火力発電の稼働増などにより、足元では輸入量が増加傾向にあり、価格を下支えしている。
- [アルメニア/激化する対ロ貿易摩擦]ロシアとアルメニアの関係は、アルメニアの対欧州連合(EU)接近を背景に、貿易摩擦が急速に激化している。ロシアは5月、安全基準違反を理由に、花卉・果物・野菜・ミネラルウォーター「ジェルムク」やコニャックなど主要輸出品の輸入を相次ぎ停止し、事実上の圧力を強化した。
アルメニアは輸出の約24%をロシアに依存し、特に農産物や酒類はロシア市場向け比率が極めて高く、輸出停止は国内の生産・雇用に直接打撃となる。また同国は、対ロ制裁後に並行輸入のハブとして機能し、再輸出が国内総生産(GDP)の一部を占めるなど、ロシア経済との結び付きが強まってきたが、これも縮小傾向にある。さらにロシアはガス供給や鉄道インフラなどの経済的レバレッジを保持しており、アルメニアの対欧州志向に対抗する圧力カードを依然として有する。6月7日、アルメニアは議会選挙を控えており、ロシアが介入する恐れがある。ロシアには、アルメニアにおいて自国の影響力を確保する狙いがあるとみられる。総じて、本摩擦は単なる通商問題にとどまらず、アルメニアの対欧州接近とロシアの影響力維持を巡る地政学的対立の一環であり、長期化する可能性が高い。
- [インド・UAE/欧州首脳会談]5月15日から20日にかけて、インドのモディ首相は、UAE及び欧州各国(オランダ、スウェーデン、ノルウェー、イタリア)を歴訪した。各国首脳との間で会談を実施したほか、ノルウェーで開催された第3回印北欧サミットに出席した。
UAEとの間では、今年1月にも首脳会談を実施している。1月の会談の際には、インド国営石油公社ヒンドゥスタン・ペトロリアムがADNOCから新たに30億ドル規模のLNGを購入することや2032年までに両国間の貿易総額を現在の約2倍である2,000億ドルまで拡大させることなどで合意していた。今般の会談では、インド戦略石油備蓄公社(ISPRL)とアブダビ国営石油会社(ADNOC)との間で、UAEのインド戦略石油備蓄への供給量を3,000万バレルに拡大することに加えて、ADNOCが国営石油公社インド石油会社向けのLPG長期契約などについて合意された。インドではイラン紛争が激化した3月より、LPGの供給不足が深刻化している。防衛面では、「戦略的防衛パートナーシップ」の枠組みに合意した。1月の会談時には、本枠組みの合意に向けてインド・UAE双方が符合意に向けた前向きな姿勢を示していたが、イラン紛争を踏まえて合意に至ったものと考えられる。本枠組みでは、防衛装備品の輸出・購入に留まらず、先端技術の共同開発など幅広い分野で両国間の協力を進めるとしている。
より広い視点では、今回の会談はイスラエルも交えた3国間での関係強化も目指した動きと考えられる。インドと地政学的に対立するパキスタンは、UAEが外貨預金(約35億ドル規模)を引き出し、サウジアラビアから約30億ドル規模の新規預金預け入れを受けたことも踏まえ、サウジアラビアとの間での関係を深化している。他方でUAEはOPECからの脱退も受けてサウジアラビアとの関係対立が深化している。またイスラエルは2020年のアブラハム合意以降、UAEとの間で防衛面・経済面で関係を深化させている。そのような中で、インドはパキスタン・サウジアラビアの外交関係強化に対抗すべく、イスラエル・UAEとの3国関係や、アメリカも含めた4国関係「I2U2」の枠組みに重点を置くようになっている(Modern Diplomacy、2026年5月24日)。
3国関係を経済面で補強するのが、「インド・中東・欧州経済回廊」だ。同回廊は、インドのムンバイ港を起点に、UAE・サウジアラビア・イスラエルを陸路で通過し、最終的には欧州に海路に繋がる回廊で、全長約 4,800 kmに及ぶ。本回廊が完成した場合は、既存の輸送手段に比べ輸送時間が 40%削減、輸送コストが 30%削減されると見込まれている。本回廊の整備によりインド・UAE間の貿易額増加が期待できることに加え、インドから欧州向けの輸出も活発化することでインドの産業発展も見込める。他方で本回廊については。イラン紛争を受けて整備が停滞することが懸念されている。
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