- [アフリカ/AI事情] アフリカがAI・デジタルインフラの次の成長地域として注目されている。9月13日付Fox Newsは、米国や欧州で電力不足、系統混雑、許認可、住民反対が強まるなか、南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、モロッコ、エジプトなどでデータセンター投資が拡大していると報じた。米国企業によるレソトのデータセンター・水力発電案件や、ガボン、コートジボワールでのインフラ投資も進む。アフリカ自身のクラウドやAI需要、政府や企業がデータを国内に置こうとする「データ主権」も追い風になっている。
一方、AIインフラは「デジタル産業」であっても、実態は大量の電力と水を消費する物理インフラである。9月13日付TechRadarによると、南アではケープタウン近郊の大規模データセンター計画を巡り、住民や人権団体から建設停止を求める声が上がっている。南アはアフリカのデータセンター容量の約7割を占める一方、長年の電力不足や2018年の深刻な水危機を経験してきた。AI向け設備に大量の水や電力を割り当てることが、地域住民や産業の負担増につながらないかという懸念は強い。
同時に、アフリカのAI基盤を誰が握るかを巡る米中競争も激しくなっている。9月11日付Breitbartは、米輸出入銀行が通信会社Africellに約1億ドルを融資し、アンゴラなどで通信網を拡張すると報じた。背景には、アフリカの通信インフラで大きな存在感を持つ中国Huaweiへの対抗がある。競争対象は携帯通信だけでなく、海底ケーブル、クラウド、データセンター、AI、さらにそれを支える電力まで広がりつつある。(経済部 本間隆行)
- [原油/厳しくなる需給見通し]国際エネルギー機関(IEA)は9月11日に発表した月次の石油市場報告書で、石油市場の先行きに一段と厳しい見方を示した。ホルムズ海峡の通航制限は年内も続く可能性が高まり、湾岸産油国の供給正常化時期の予測を2027年に先送りした。IEAは、在庫というバッファーが薄れるなか、今後さらに需要が減少しなければ需給ギャップを埋められないとし、需要破壊によってバランスを取る局面への移行を示唆している。
ホルムズ海峡経由の輸送量は8月時点で開戦前を日量1,310万バレル(b/d)下回る。これまで需給ギャップは、サウジアラビアやUAEによる迂回輸送、米国やブラジルなど湾岸域外の増産、IEA加盟国による3億バレル超の緊急備蓄放出などで埋められてきた。もう一つの調整弁が需要で、過去6か月の世界需要は2月を平均580万b/d下回った。それでも2月以降、世界の石油在庫は5億700万バレル減少した。IEAは2026年の世界石油需要予測を前月から94万b/d下方修正し、前年比▲250万b/dとした。
足元の価格は、先物以上に現物市場の逼迫を映している。9月9日のICEブレント先物が101.21ドル/バレルだったのに対し、現物指標のNorth Sea Datedは113.48ドル/バレル、Dubaiも110ドル/バレル超となった。中東からアジアへの原油輸送費も7月初めの約9ドル/バレルから9月初めには18ドル/バレル超へ倍増した。
さらに深刻なのが石油製品だ。中東とロシアからの輸出減少が重なり、米国のディーゼル価格は9月初めに200ドル/バレルを突破し、戦争前のほぼ2倍に上昇した。欧州やアジアでも急騰している。ディーゼルは物流、鉱業、農業など代替の難しい用途が多く、IEAは価格高騰が特に新興国の物価、実質所得、国際収支などへ波及するリスクを指摘している。
しかも北半球では冬場の中間留分需要期を迎える。高値で先送りされてきた暖房油などの購入も重なり、IEAは8~11月の需要増加幅が通常の2倍以上になると予想する。一方、精製設備の稼働率は高く、製品在庫も減少している。
IEAのベースケースでは、2027年に供給が正常化し価格が低下すれば需要も持ち直すが、戦前水準の回復は2027年末近くになる。ただし、今回のような供給ショックは1970年代の石油危機と同様、省エネや燃料転換を加速させ、収束後も需要が以前の成長軌道に戻らない可能性がある。IEAは2027年の需要見通しには大きな下振れリスクがあるとみている。(経済部 鈴木直美) - [中国/AI安全戦略]9月13日、中国の陳一新・国家安全相は『中国網信』最新号への寄稿で、人工知能(AI)が国家安全保障にもたらす「六大リスク」を示し、安全管理の強化を訴えた。リスクの内容は以下の通り。①生成AIやディープフェイクを使った政治的デマや「認知戦」による政権・制度・イデオロギーへの脅威、②AIを利用したサイバー攻撃と重要インフラへの侵入、③外国情報機関などによる機密・個人データの収集・流出、④先進国による技術封鎖や閉鎖的な技術体系の構築、⑤社会統治や法制度への影響、⑥AIによる戦争の「智能化」。
対応策として陳氏は、AIリスクの監視・早期警戒や法制度を整えるとともに、「党によるインターネット管理」、「党によるデータ管理」を徹底するよう主張した。また、AIの基礎理論や半導体、開発基盤など核心技術の自主開発も強調しており、AIを抑制するのではなく、国家・共産党が制御できる形で発展させる「発展と安全」の両立を目指す姿勢を示している。
外交的には、米中は9月24日に首脳会談を予定しているが、その際に取り上げる議題の一つとして、AI安全対話が検討されている。AIを利用したサイバー攻撃への対応や、米中のAI研究機関による安全情報の共有などが候補となっており、中国側はAI安全協力を首脳会談の成果の柱の一つにしたい意向とされる。8月の米中「1.5トラック」対話でも、AIリスクの防止が協力分野として確認されていた。
ただし、陳氏が発表した「リスク」には、「外国による技術封鎖」が含まれており、中国が協力を進める上で譲れない点もうかがえる。7月に上海で開催された「世界人工知能大会」で、習近平氏はAIを「安全で制御可能」にするため国際協力を進める一方、「国家安全保障」概念を過度に拡大し、一国の安全を他国の安全より優先することに反対すると表明した。これは米国による先端半導体やAI技術の対中規制を念頭に置いたものとみられる。
中国にとってAI安全協力とは、米国の技術規制を受け入れることではなく、技術開発の権利と国内統治に対する主権を確保した上で、サイバー攻撃やAIの暴走など双方に共通するリスクを管理しようとする枠組みといえる。(国際部 前田宏子) - [BRICS/首脳会合]9月12~13日に、ニューデリーでBRICS首脳会合が実施された。今回会合には加盟国・パートナー国首脳が出席したほか、加盟国以外ではASEAN議長国であるフィリピンのマルコス大統領やサウジアラビアのファイサル外相が参加した。
今回会談の共同声明は、具体的なイシューに踏み込まない玉虫色の表現ぶりにとどまった。例えば中東情勢に関しては、「緊張激化に対し深い懸念」を表明するとともに、「最大限の自制」と「対話と外交」を促すにとどまった。BRICS中核国の中でも米国・イスラエルとの関係が良好なインドが両国に配慮したことに加え、紛争当事国であるイラン・UAE双方に配慮した結果と考えられる。また、ロシア・ウクライナ戦争に関する記述は皆無であった。他方で5月の外相会合ではイラン・UAE間の対立が原因となり共同声明が発出できなかったことを踏まえると、内容いかんにかかわらず共同声明を発出できたこと自体に相応の意味合いがあったと考えられる。
今回の二国間会談で特に注目されたのが、習近平国家主席とモディ首相との間で実施された印中首脳会談だ。両国は2020年にインド北部のラダック連邦直轄地のガルワン渓谷にて両軍が衝突した後に関係が悪化していたが、2024年以降は関係改善傾向にある。今年8月にはドヴァル国家安全保障顧問と王毅外相が会談を実施し、紛争防止のために実効支配線における境界画定作業を進めることに合意した。今回会談では、習近平国家主席が7年ぶりに訪印した。会談後に中国政府外交部が発出した声明では、インドと中国は国境地域の平和・安定確保や経済・貿易関係の発展を促進すべきとしている。
なおモディ首相は、BRICS会合にて「技術や重要鉱物の『武器化』を目指すべきではない」と、国名を名指しせずに中国をけん制している。昨年来、中国政府はレアアースやリチウムイオン電池用正極材の製造技術の輸出規制を実施している。また二国間では、中国政府がインド在住の中国人エンジニアの帰国を命じているほか、2026年以降はインド人向けビジネスビザの発給を大幅に制限するなど、中国からインドへの製造業分野における技術移転を妨害するとも受け取れる動きが目立つ。インド政府としては、中国政府との関係は改善させつつも、中国政府による地経学的な手段の行使に対してはけん制したい狙いがあるとみられる。
今回の会談では、前々回・前回会談と同様に貿易・投資における現地通貨建て決済取引の増加を目指すことが確認された。これまで、二国間(例:インド・ロシア間、中国・ロシア間)では自国通貨を使用した貿易取引が活発化しているが、BRICS域内での各国現地通貨の利用を促進する制度は未整備だ。今回会談では、決済に関し各国決済システムの相互運用性を向上させることで加盟国同士の取引を容易にすることに関して合意されたほか、新開発銀行(NDB)による現地通貨建て融資拡大が確認された。NDBはBRICSを中心とする参加国向けに、主にソブリン向け融資を提供する多国籍開発機関である(加盟国以外も参加可能。例:バングラデシュ)。年間貸出額は50億~60億ドル程度と、世界銀行(同600億~800億ドル)などほかの多国籍開発機関に比べると依然として貸出規模が小さいが、これまでに順調に現地通貨建てでの貸出実績を積み上げている。貿易・投資双方およびそれらを支える決済インフラにて現地通貨建て取引が拡大することで、BRICS加盟国・NDB参加国としてはドルへの過度な依存から脱却することが期待できる。これにより、G7諸国による金融制裁の影響を緩和できるほか、為替変動リスクを抑制できることが期待される。最終的には、自国通貨がドルに対して減価した場合にも、輸入インフレを回避できるほか、公的債務の返済負担を抑制できる効果が見込まれる。 (国際部 土田慧)
- [米国/CPI]労働省によると、8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.4%だった。伸び率は7月と同じで市場予想通りとなった。上昇率は中東紛争が始まった2月(+2.4%)から5月(+4.2%)まで拡大した後、3%台で高止まりしている。また、物価の基調を表す食品・エネルギーを除くコア指数は+2.4%と、直近ピークの5月(+2.9%)から3か月連続で鈍化し、これも市場予想通りだった。
内訳をみると、エネルギー(+16.3%)が物価上昇のけん引役だった。特にガソリン(+27.4%)や燃料油(+52.0%)などが上昇した。エネルギーサービス(+4.0%)でも電気代(+3.8%)やガス代(+4.4%)が上昇した。また、食品(+2.7%)、食品・エネルギー以外の財(+2.4%)も2%を上回った。中古車・トラック(▲2.3%)が低下した一方で、新車(+0.6%)は小幅に上昇し、衣服(+3.6%)も上昇した。サービス(+3.0%)では、家賃(+3.0%)が引き続き上昇している。
また、瞬間風速とも言われるCPIの前月比は+0.4%、7月(+0.1%)から加速した。コア指数も+0.3%で7月(+0.2%)から加速した。内訳をみると、エネルギー(+2.1%)が3か月ぶりに上昇に転じた。ガソリン(+3.9%)や燃料油(+10.1%)などの上昇が目立った一方で、電気代(▲0.2%)やガス代(▲1.1%)は低下した。食品・エネルギー以外の財(+0.1%)は小幅に上昇し、サービス(+0.3%)は7月(+0.1%)から加速した。なお、電話料金プランの改定が反映された携帯電話サービス料金は前月比+5.9%と7月(+0.6%)から加速し、統計開始後で最大の伸びとなった。
前日に発表された8月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比+5.4%と、7月(+4.8%)から上昇率を拡大した。川上の物価上昇圧力の強さを印象づけた。また、7月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+3.7%で、6月と同じだった。上昇率は5月(+4.1%)から縮小した。コア指数も横ばいの+3.3%で、3月以降高止まりしている。9月15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)での市場が予想する利上げ確率は90%弱と、前日の約70%から上昇した。トランプ大統領が利下げを求める中、連邦準備制度理事会(FRB)は難しい決断に迫られそうだ。(経済部 鈴木将之)
- [アフリカの角/イエメン情勢影響]9月13日、国際移住機関(IOM)は、ジブチ北部の海岸にイエメンからの避難民約2,000人が上陸したと発表した。
イエメン北西部を実効支配する武装組織・フーシ派は、9月上旬以降、イエメン西海岸で政府軍との戦闘を強めている。フーシ派は紅海に面するモカ港に加え、バブ・エル・マンデブ海峡に浮かぶペリム島を掌握したと報じられている(9月13日、Al Jazeeraなど)。IOMによると、同戦闘によってイエメン国内で8万人以上の住民が避難を強いられており、その一部がペリム島からわずか20km程度の距離にある対岸のジブチに避難しているとみられる。
バブ・エル・マンデブ海峡は、世界の海上物流の約12%、日量700万バレルの石油が通行する海上交通の要衝だけに、実質的に同海峡を制圧した今後のフーシ派の動向に注目が集まる。ただし、フーシ派は敵対するサウジアラビア関連の船舶を標的にするものの、国際海運に脅威を与えるつもりはないとの意向を示している(9月11日、BBC)。
サウジアラビア西海岸からの石油輸出にあたり、バブ・エル・マンデブ海峡の使用が制約されれば、一部の船舶は紅海を北上してスエズ運河を通り、南アフリカの喜望峰を回る迂回ルートの選択を強いられる可能性がある。また、内陸国で1億3,000万人の人口を擁するエチオピアは、石油精製品のほぼ全量をジブチ港経由で中東やナイジェリアから輸入していることから、バブ・エル・マンデブ海峡の安定は安全保障に直結する課題となる。なお、米国、日本、中国などが基地を有するジブチは、近年サウジアラビアとの深い連帯を示している国のひとつだけに、今後フーシ派が勢力の拡大を続ければ、フーシ派との関係も見直していく可能性がある。
さらに、そのジブチ、バブ・エル・マンデブ海峡を抜けたソマリア沖のアデン湾では海賊による船舶の「ハイジャック」の増加が報じられている。米・国際危機グループによると、ソマリアの海賊による商船などのハイジャックは、2005~2011年の間に年間30件以上発生。その後は米国や欧州連合(EU)などの国際的な取り締まりにより、年間1件まで低下したものの、2026年に入ってからすでに6隻がハイジャックされており、この急増はイラン情勢を受けて各国の海軍が再編成されたことで、同海域での海賊対策が手薄になったためとの見解を示している。また、ソマリアの元漁民らで構成されているとみられる海賊は、フーシ派や、ソマリア国内のイスラム系過激組織「アル・シャバブ」の支援を受けているとの見方も示している。
アル・シャバブや海賊対策に関しては、ソマリア連邦政府(FGS)とトルコ軍が共同作戦を行っているが、8月にはトルコの軍事装備を輸送していたカメルーン船籍船がハイジャックされ、多額の身代金を支払ったとみられている。ソマリア中央政府と連邦構成政府との間の衝突も武装組織や海賊対策の妨げになっているとの見方も多いが、フーシ派の勢力拡大はソマリアやソマリア沖のさらなる不安定化をもたらす可能性がある。(国際部 髙橋史) - [韓国/中央アジア首脳会議 14~16日にソウルで初開催]9月14~16日、ソウルで「韓国・中央アジア首脳会議(Korea–Central Asia Summit)」が開幕した。カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの首脳が参加し、重要鉱物、エネルギー、物流、デジタル経済分野での協力拡大について協議する。今回の会議は、2007年に創設されたKorea–Central Asia Cooperation Forumを首脳レベルへ格上げするものであり、約20年にわたり構築されてきた韓国と中央アジアの関係が新たな段階に入ったことを示している。
近年、中央アジアでは中国の「中国・中央アジアサミット」、EUとの戦略的パートナーシップ、米国のC5+1、日本の「中央アジア+日本」など、多国間協力の枠組みが相次いで強化されている。中央アジア諸国は特定の大国に依存せず、多様なパートナーから投資や技術を呼び込む「多角外交」を推進しており、今回の韓国との首脳会議もその流れの一環と位置付けられる。
韓国側の最大の関心は、重要鉱物の安定確保とサプライチェーンの多角化にある。韓国政府は2024年にK-Silk Road Cooperation Initiativeを発表し、中央アジアを人口8,000万人超、豊富なエネルギー資源とレアアース、リチウムなどを有する戦略地域と位置付けた。従来の貿易中心の関係から、製造業、鉱物加工、先端技術、物流ネットワーク構築へと協力の重点が移行している。
なかでもカザフスタンは韓国の地域戦略の中核候補として注目される。過去5年間で韓国から約57億ドルの直接投資を受け入れ、自動車生産、重要鉱物開発、物流分野で協力が拡大している。さらに、中間回廊(Trans-Caspian Corridor)の重要拠点として欧州・アジアを結ぶ物流ハブ化が期待されており、韓国は釜山港と中央アジアを結ぶ新たなサプライチェーン構築を模索している。
今回の首脳会議は、中央アジアをめぐる国際競争の激化を象徴するとともに、日本企業にとっても重要鉱物、インフラ、エネルギー、物流分野での事業機会拡大と競争環境の変化を示唆する動きとして注目される。(国際部 ゴロシニコフ アントン)
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