- [セネガル/債務問題]2月18日、アミナタ・トゥーレ大統領上級顧問(元首相)は、巨額の「非開示債務」により凍結されている国際通貨基金(IMF)による財政支援につき、新規のプログラム開始に向け交渉を続けているとロイター通信に述べた。
セネガルでは2024年3月の総選挙で政権交代が実現。元税務官だったバシル・ファイ大統領は就任後すぐに公的債務監査を進めた結果、前マッキー・サル政権時代に70億ドルの「非開示債務」が存在していたことを明らかにした。これにより2024年末時点のセネガルの公的債務は対GDP比で74%から132%に拡大。IMFは実行中だった総額18億ドルのプログラムを急遽停止し、セネガル政府が海外で起債したユーロ債の利回りが上昇。利払い費の増加も受けて2025年度の財政赤字は対GDP比8.3%に悪化し、大手格付け機関も相次いでセネガルの格下げを行うなど信用不安がひろがっている。
こうした深刻な経済の状況下、市場関係者の間ではセネガルが債務不履行を防ぐためには、これまでザンビア、ガーナ、エチオピアなどのデフォルトに陥った国の債務再編を支援する「G20共通枠組み」の下での債務再編が必要との見方が拡大。IMFも新規プログラムの条件として債務再編を度々提案していたが、セネガル政府は「一度も返済が遅れたことはない」として再編を拒み続けている状況だ。今回のロイターの取材に対してもトゥーレ氏は、現段階で債務再編に取り組む意向はないことを明らかにしている。
セネガルがIMFの要求する債務再編に反対している大きな理由に国内の政治的対立がある。ファイ大統領は2024年の選挙時に当時野党だった「労働・倫理・博愛のためのセネガル愛国党(PASTEF)」のNo.2だった。しかし同党のオスマン・ソンコ党首が政府要人に対する誹謗中傷の容疑で有罪判決を受け、大統領資格を得られなかったことから、ファイ氏がソンコ氏に支持される形で大統領選に勝利した。その後、ソンコ氏は首相に就任したが、国内外問わず歯に衣着せぬ攻撃的な物言いで大衆から圧倒的な支持を集めるソンコ氏の政治的影響力は大きく、事実上ファイ氏とソンコ氏の二頭体制となっている。公人の姿としては控えめな姿勢を貫き、旧宗主国フランスやIMFなどの国際機関にも柔和な態度を示すファイ氏とは対照的に、ソンコ氏は強い反仏・西側諸国姿勢をとっているスタンスの違いが政策決定に時間を要する原因となっている。特にソンコ氏は、仮にG20共通枠組みの下で公的債権者委員会が設置されれば、二国間債務の大きさからフランスが議長になり、債務再編を主導することに対して嫌悪感を示しているとみられている。
また、こうした政治的対立は別として、セネガルは依然として債務不履行に陥っていないことも債務再編に消極的である大きな理由だ。セネガル経済は、沖合のサンゴマール油田とグレーター・トルトゥー・アメイム(GTA)ガス田からのエネルギー輸出の本格により2025年の実質GDP成長率は7%台に拡大。2025年には経常収支は黒字に転じた。今後も債務返済は続くが、「非開示債務問題」により新規のユーロ債発行が難しい中、セネガルも加盟する「西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)」地域内での資金調達を増やし、借り換えを行っている。UEMOA内は西アフリカ地域中央銀行(BCEAO)を有しており、共通通貨「CFAフラン」はフランス政府の保証によりユーロと固定レートでペッグされているため為替が安定している強みを持つ。この安定した制度と、高い経済成長を背景に加盟国のコートジボワールやベナン、トーゴは海外でのユーロ債発行を通じた資金調達を可能としている。しかし、セネガルの地域債大量発行による対外債務の借り換えは、UEMOAの信用や外貨準備を棄損するため2026年内が限界との見方がある(2月18日付、英FT紙)。
ユーラシア・グループは債務不履行に陥ることが明確にならない限り、ソンコ首相が債務再編に応じない可能性は低いと指摘。また、ファイ大統領との深刻な決裂がない限り、お互いの政治的資源を補完しあっていることから、ソンコ氏の解任・辞任はないとの見解を示している。
それでも今後の政権の安定性には不安要素がつきまとう。財政赤字の拡大を受けて政府はモバイルマネーなどの新規課税や電力料金の値上げに踏み切った一方で、公務員賃金の支払いや、大学生の奨学金給付などの未払いを続けている。これにより大規模な抗議活動やストライキがひろがるなど社会不安が高まっている。前政権批判という大きな風を受けて政権交代が実現したものの、当初PASTEFが公約として掲げてきた国民生活の改善は実現していない。債務不履行に陥ればさらに国民生活に負の影響を及ぼし、国民のプライドも傷つけることからPASTEF政権にとって強い逆風となる恐れがある。
- [インドネシア/平和協議会参加]2月17日、インドネシアのプラボウォ大統領は、2月19日(現地時間)に予定されるパレスチナ自治区ガザの暫定統治組織「平和評議会」の初会合に参加するためにワシントンに到着した。インドネシア以外には、ベトナムからトー・ラム書記長及びカンボジアからフン・マネット首相も参加を予定している。ワシントン訪問中にはトランプ大統領とも会談を実施予定であり、相互関税引き下げを含めた貿易協議も実施するもよう。
プラボウォ大統領の下では多国との外交関係深化を狙った積極的な外交姿勢が目立つ。特に2025年2月にトルコを訪問しエルドアン大統領の間で会談を実施、トルコ製ドローンのインドネシアでの現地生産促進について合意したほか、2025年12月のパキスタン訪問時にはシャリフ首相・ムニール国防軍総司令官と会談し教育・保健分野などでの両国の協力促進に合意するなど、国内の支持基盤であるイスラム保守派にも配慮する形で、ムスリム諸国との外交関係構築を目指している。
2024年6月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議では、同氏(当時は国防相)は、国連の要請に基づきPKO部隊をガザ地区に派遣する準備があると発言したほか、2025年9月に開催された国連総会での演説では、PKOの一環としてパレスチナ・ガザ地区に2万人の部隊を派遣する用意があると発言するなど、パレスチナ情勢に積極的に関与する姿勢を示していた。「平和協議会」の設立が公表された後の今月(2月)10日には、プラボウォ大統領は国際安定化部隊の一員として8,000名を動員する予定であるとしていた。
他方で米国との貿易協議に関しては非関税障壁などの論点を巡り合意に至っていない。2025年12月、Financial Times紙は、インドネシア側が事前に合意していた米国の工業製品および農産物の輸出に対する非関税障壁撤廃措置につき撤回したと報道した(Financial Times、2025年12月10日付記事)。プラボウォ大統領としては、「平和協議会」への参加を契機に貿易協議を前進させることを目指しているもよう。他方で平和協議会への参加により、これまでインドネシアが維持してきた外交面での中立性が阻害されるほか、イスラム保守層からの政治的反対を受けることも懸念される。
- [米・中/対台武器売却]2月16日(米国時間)、トランプ大統領は記者団に対し、台湾への武器売却について中国の習近平国家主席と話し合っていると述べた。「彼(習近平氏)とはこの件について話し合っている。建設的な議論が行われており、間もなく結論を出す予定だ」と語ったが、この発言は、米国政府が1982年以来維持してきた台湾に関する「六つの保証」に反するのではないかとの懸念を呼んでいる。
「六つの保証」とは、レーガン政権が中国との「八・一七コミュニケ(上海コミュニケ)」を発表する直前に台湾に示した約束であり、その一つに、台湾への武器売却について中国と事前協議を行わない、という原則が含まれている。
トランプ大統領は4月に中国を訪問する予定だが、中国側はそれまで台湾への武器売却を承認しないよう、米国に強く求めている。今回の発言は「六つの保証」からの逸脱に当たるとの見方があり、仮に最終的に売却が実施されたとしても、中国の要請に応じて検討すること自体が譲歩であり、新たな前例を与えたとして批判が出ている。
一方で、台湾への武器売却予定を中国に通知することなどはこれまでも行われており、武器売却について中国と「話す」だけであれば、必ずしも前例からの逸脱には当たらないとの見方もある。とはいえ、武器売却を交渉材料にしない限り問題はないとする専門家の間でも、あらゆる事柄を取引や交渉の対象にしようとするトランプ氏の姿勢が、結果として前例からの逸脱につながることへの懸念が示されている。
トランプ氏はすでに、安全保障に関わる貿易や技術規制を他国との交渉材料にしないという、米国の従来の方針を覆す前例を作っている。
- [メキシコ/インフラ計画]政府は2026年にGDPの約2%をインフラ分野に投入する目標を掲げている。これは、GDP比約2.5%の連邦予算に含まれる既存のインフラ支出を合わせれば、実質的な投資総額はGDP比で4.5%の水準まで引き上げられることになる。投資はエネルギー、鉄道、高速道路、港湾、医療、水資源、教育、空港の八つの戦略分野に重点的に割り当てられる。
計画では、政府資金の多くが、前年に国営石油会社ペメックス支援のために導入された手法と同様の金融商品を通じて調達される見込みとなっている。これらの金融手法は、負債と資本の双方の性質を持つハイブリッド商品で、表面上バランスシートの負債としてカウントされない工夫がされており、財政赤字や主要歳出を抑制する効果がある。また、残りの資金は、政府と民間が共同で融資する方針となっている。
インフラ計画のなかで最も大きな比率を占めるのがエネルギー分野であり、全体の約54%がこの領域に割り当てられる。これらのプロジェクトは、慢性的に不足している発電・送電能力を拡大することを目的としている。これまで十分に投資が行われなかった結果、産業界では電力供給の不安定性が企業活動の主要な障害となっており、送電網のボトルネックや電圧変動は、製造業の操業や新規投資計画に影響を与えており、改善は急務となっている。
今回の計画は、前AMLO政権が採用した国家主導での直接投資を最優先とする政策から一定の転換を示している。シェインバウム政権は国家を中心的な主体として維持しつつも、経済成長の鈍化とエネルギー需要の増大に直面し、より戦略的かつ民間にも開かれたアプローチを志向している。
しかし、規制緩和の遅延、エネルギーインフラの不足、水資源へのアクセス問題、老朽化した設備という構造課題は、未解決となっている。また、新計画は投資家が抱く制度的不確実性の懸念を解消するものではなく、特に司法改革の導入が大きな懸念事項となっている。再編後の司法機関は政治的影響を受けやすく、能力低下も懸念されており、政府との契約において紛争時の法的救済手段が弱まる可能性が指摘されている。さらに、政権が掲げる積極的な税収確保策とそれを支える法制度のあり方は、民間投資意欲を抑制する要因にもなる。政府は、インフラ投資が刺激となり、2026年の経済成長は市場予想(1.4%前後)を大きく上回る2.3?3.0%に達すると強気の予測を立てているが、経済成長と投資の本格的な拡大につながるかを疑問視する声もみられる。
- [米FOMC/利上げもあり得る]2月18日、連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(1月27~28日開催分)を公表した。1月会合では、政策金利(FF金利の誘導目標レンジ)は3.5~3.75%に据え置かれた。また、声明文から、雇用の下振れリスクに関する文言を削除していた。
議事要旨によると、会合では、政策金利の据え置きで大半の見解は一致していた。2025年の計75bp利下げ後、現行の金融政策姿勢は中立レンジにある。今回会合での据え置きは、追加の政策調整を決める上で良い位置にあるという認識が示されていた。その一方で、利下げ支持者から、現在の政策金利は制約的であり、物価の高止まりよりも雇用市場の弱体化リスクを懸念する声があがっていた。
先行きについても、意見が分かれていた。複数人(several)は、物価上昇率が見通しに従って縮小すれば、追加利下げが適切と主張し、何人か(some)は、新たな経済指標が入ってくる間、当面据え置きが適切になり得るという考えだった。これらの多く(a number of)は、ディスインフレの進展がしっかりと軌道に戻ることについて明らかな兆候がなければ、追加利下げが正当化されないかもしれないと述べた。また、複数人(several)は、物価上昇率が目標よりも高止まりするならば、利上げの調整もありうることを反映して、政策金利決定に両面の記載を支持した。利下げと利上げの可能性を支持した人がともに複数(several)と記載されており、拮抗した見解だったことが示唆されている。
また、雇用悪化への懸念が後退した一方で、物価上昇の高止まりへの警戒感が続いている。特に、物価上昇率について、「2%への進展は、一般に予想されるよりも遅く、不均一に進むかもしれない」という認識が示されていた。
- [米・イラン/軍事攻撃の可能性]トランプ米政権がイランへの軍事攻撃に踏み切る可能性を巡り、緊張が急速に高まっている。米CNNは、米軍が早ければ今週末にも攻撃を実行できる準備を整えていると報じ、米Axiosは、攻撃となればイスラエルとの合同作戦となり、2025年6月の核施設攻撃を上回る規模になる可能性があると伝えた。イスラエル側も数日以内の開戦シナリオを想定しているとされる。一方で、米議会関係者の中には「数週間かかる」との見方もあり、タイムラインは流動的だが、トランプ周辺からは強硬な発言が相次いでいる。
外交面では、2月17日に米・イランがジュネーブで核協議を実施し、イラン側は「進展」を強調するが、米側はレッドライン、すなわちイランが核兵器を取得しないことへの明確な対応が示されていないとして不満を表明している。報道によれば、イランは制裁解除と引き換えに3?5年間の濃縮停止を示唆したが、米国が求めるのは濃縮ゼロに加え、弾道ミサイルや代理勢力支援の制限を含む包括的な枠組みであり、核のみの部分合意では政治的に不十分とみられる。
軍事面では、空母打撃群の展開、戦闘機の大量移動、防空システムの強化など、実戦を想定した増強が進んでいる。これほどの戦力を前方展開した以上、後退した場合の政治的コストは高く、「攻撃するかどうか」よりも「いつ攻撃できる状態になるか」が焦点となりつつある。イスラエルの強い関与姿勢や、イラン体制の経済的・軍事的弱体化の印象も、米側の判断に影響を与え得る。
とはいえ、外交の余地が完全に失われたわけではない。2月17日の交渉で、イランは2週間以内に追加提案を示すとされている。ただし、それが時間稼ぎと受け止められれば、軍事オプションに傾く可能性は一段と高まる。今後数週間は、外交と軍事準備が同時進行する中で、情勢の帰趨を左右する重要な局面となる。
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