- [ミレイ、訪伯もルーラとは距離]アルゼンチンのミレイ大統領は、2026年7月25日にブラジル・サンパウロを訪問する。ミレイ陣営は今回の訪問を投資・貿易促進を目的とした対外活動だと説明しているが、実際にはブラジルの自由党(PL)が開催する政治集会への参加が主な目的とみられている。
ミレイは、2027年のブラジル大統領選挙を見据える保守派勢力との連携を強めている。今回の集会では、自由党所属の上院議員フラビオ・ボルソナロ氏への支持を表明する見通しであり、経済外交と政治的な同盟構築を狙う。
ルーラ大統領やブラジル政府との公式な二国間会談は予定されておらず、現在政治的には両国関係は冷え切っているといえるが、ミレイ大統領はブラジルとの経済関係は重視している。ブラジルはアルゼンチン最大の貿易相手国であり、自動車や小麦、天然ガスなど多くの主要輸出品の重要な市場となっている。アルゼンチン経済は長年にわたりブラジル市場への依存度が高く、国内景気が低迷する局面ではその重要性がさらに増す。そのためミレイは、アルゼンチンを規制緩和が進み投資しやすい市場として売り込み、ブラジル企業からの投資拡大を目指す。
一方で、両国関係の背景にはメルコスールをめぐる課題も存在する。ミレイ大統領はこれまでメルコスールの保護主義的な制度を批判しており、アルゼンチンが米国との自由貿易協定を優先できるよう制度改革を求めてきた。しかし、今回の訪問中にメルコスール関連の首脳会談や正式な貿易交渉が行われる予定はない。メルコスールとEUの自由貿易協定も依然として完全な発効には至っておらず、投資家の間では先行きへの不透明感が残っている。
訪問をめぐっては、ブラジルの元大統領ジャイル・ボルソナロとの面会も注目されていた。しかし、ブラジル最高裁判所のモラエス判事は、政治的・選挙的な目的を持つ訪問を認めないとの判断を示したため、ミレイの面会は実現しない。ボルソナロ元大統領は司法判断により行動が制限されており、面会できる相手も家族や弁護士、医療関係者などに限定されている。
ミレイ大統領はサンパウロ訪問後も積極的な地域外交を続ける予定であり、7月28日にはペルーで行われるケイコ・フジモリ大統領の就任式に出席し、その後はコロンビアやエクアドルも訪問する計画となっている。これらの動きは、中南米の保守派指導者との連携を強化し、地域政治への影響力拡大を図る戦略の一環とみられている。
今回の訪問は、アルゼンチンとブラジルの経済関係を重視する姿勢を示す一方で、ブラジルの現政権とは距離を置き、保守派勢力との結び付きを強めるというミレイ大統領独自の外交路線を象徴している。投資家や企業にとっては、将来的な規制緩和や投資機会の拡大につながる可能性がある一方、政治的な対立が二国間関係や地域経済協力に与える影響を注視する必要がある。 - [ドイツ/景況感]欧州経済研究センター(ZEW)によると、7月のドイツ景気期待指数は26.3(+15.8ポイント)へ上昇した。市場予想(17.5)を上回った。景気期待指数は中東紛争が発生する前の2月(58.3)から4月(▲17.2)まで低下した後、3か月連続で持ち直してきた。
ただし、調査期間は7月13日~21日で、足元にかけての中東情勢の緊迫化は十分反映されていない。内訳を見ると、「改善」の回答割合が38.3%(+10.2ポイント)へ増加した一方で、「悪化」は12.0%(▲5.6ポイント)へ減少した。また、「変化なし」も49.7%(▲4.6ポイント)へ減少した。
足元の状況を表す現況指数は▲77.6(+3.4ポイント)となり、マイナス幅を縮小した。内訳では、「良い」は0%で6月から変わらなかった一方で、「悪い」は77.6%(▲3.4ポイント)へ減少した。
バンバッハZEW所長は「経済見通しの改善が続いた。改革が効果を上げているようだ」と総括した。また、「特に国内需要とともに輸出志向部門が成長を続けている。それにもかかわらず、イラン情勢に伴う不確実性と原油価格が、ドイツ経済の回復に影響を及ぼす重要な要因のままである」と、中東情勢と原油価格の動向に警戒感を示した。
- [米国:重要材料・アルミ政策を同時強化]7月20日、トランプ米大統領は重要材料とアルミニウムに関する大統領令・布告を同時に発表した。重要材料の防衛調達ルールの厳格化と、一次アルミニウムの米国内生産設備への投資を促す関税優遇制度を導入・整備するもので、需要・供給の両面から国内サプライチェーンの再構築を加速する。
重要材料(Critical Materials)では、「大国間競争が再燃する時代」において米国の軍事的優位を維持すべく、米軍の調達体制見直しを掲げる。2027年1月1日以降、対象材料の調達に関する一部の免除措置の発行を原則として停止し、その他の免除措置も所定の例外に限定する。例外が認められる場合も、企業には非適合材料の供給源の特定、適合材料の調達に尽力したこと、または調達時点で適合材料を入手できなかったことの証明、非適合材料をサプライチェーンから排除するための措置、実施時期を含む緩和計画の提出を義務付ける。また、発令から180日以内に策定する政策・実施指針に基づき、防衛請負企業に対し、構成品、部品、設備、ソフトウエア、材料を原材料の起点まで追跡する部品表の提出や、サプライヤー・下請企業の審査を義務付ける方針。これにより、信頼できない外国供給者への依存低減を進める。戦争省(国防総省)は、人工知能(AI)を含む技術も活用して供給網の脆弱性、ボトルネック、単一障害点を分析し、重要サプライチェーンを可視化するとともに、代替供給源への切り替えを促す制度整備を進める。信頼できない外国供給者に代わる供給源を認定・採用できなかった企業については、法令や既存の契約条件に従い、個別発注(タスクオーダー)の停止・終了、契約オプションの不行使、既存契約の終了を検討できるとした。
一方、アルミニウムでは、通商拡大法232条に基づくアルミニウム関税を維持しつつ、米国内で一次アルミニウム生産施設の新設・増設・改修を行う企業に対しては、事業完了後に合理的に見込まれる年間生産量に相当する一次アルミニウムを毎年、通常適用される232条関税率の半分で輸入できる新たな優遇制度を創設する。企業には国内生産移転計画の提出が求められ、同計画には、米国内の一次アルミニウム生産施設を新設・改修・増設するとの確約に加え、2029年1月20日までに建設を開始するとの確約を盛り込む必要がある。計画に基づく約束を実質的に履行していないと判断された場合は、優遇措置の停止・取り消しが可能となる。不正行為を行った場合や、米国政府を意図的に欺いた場合には、法令で認められる範囲内で優遇措置をさかのぼって取り消し、追加関税を徴収することも可能となる。
重要材料では国内・同盟国からの調達を強化する方針を示し、アルミニウムでは関税を国内投資のインセンティブとして活用する仕組みを導入した点が特徴。防衛調達と民間投資促進の両面から国内供給能力の強化を進めることで、米国は重要材料・素材分野における国内供給能力の拡充を図る姿勢を鮮明にしている。
- [ウクライナ、軍総司令官更迭と指導部刷新]7月21日、ゼレンスキー大統領はシルスキー軍総司令官(60歳)を解任し、後任にミハイロ・ドラパティ統合軍司令官(43歳)を任命すると発表した。軍改革を進めてシルスキー氏と対立したフェドロフ前国防相(35歳)を更迭したばかり。総司令官の交代は2年5か月ぶりで、ドラパティ新総司令官は前線部隊や国民から高い信頼を集める「改革派」の指揮官である。2014年のマリウポリ周辺での戦闘や包囲下からの部隊救出で評価を高め、その後もクリヴィー・リフ防衛やヘルソン解放、ハルキウ州でのロシア軍攻勢阻止などで実績を残した。2025年には訓練施設への攻撃による犠牲発生を受け、自ら責任を認めて辞任しており、責任感の強い指揮官として知られる。ゼレンスキー政権は今回の人事を通じて、軍の統制強化と近代化を同時に進める狙いがあるとみられる。
今回、シルスキー氏の解任の背景には、7月15日に国防相ポストを外されたフェドロフ氏との確執がある。フェドロフ氏は記者会見で、シルスキー氏が軍の改革を妨げていると非難。ゼレンスキー氏に総司令官の交代を進言したが断られたと説明した。フェドロフ氏を支持するウクライナ国民は、7月16日から連日抗議デモを実施。それに応える形でゼレンスキー大統領は、保守派として知られるシルスキー軍総司令官を交代させ、現場経験が豊富で兵士からの信頼が厚く、ボトムアップ型の指揮を重視する人物として知られるドラパティ氏を起用した。 - [EU/電化計画]7月17日、欧州委員会は「電化行動計画(Electrification Action Plan)」を発表した。この計画の最大の目標は、現在約23%で停滞している最終エネルギー消費に占める電力の割合を、2040年までに2倍の46%に引き上げることである。従来の気候変動対策のみならず、経済競争力の強化とエネルギー安全保障の確立をより重視する方針へと転換する姿勢が顕著となっている。
この背景には、中東情勢などによる地政学的な危機がある。EUは地政学的ショックの影響で、2月の米国・イスラエルによるイラン攻撃後わずか111日間で化石燃料の輸入に500億ユーロもの追加費用を費やしたとされており、化石燃料への依存脱却が急務となっている。この計画が実現して46%の電化目標を達成できれば、石油需要を40%、ガス需要を70%削減でき、2040年までに化石燃料の輸入コストを年間最大2,600億ユーロ節約できると試算されている。
具体的には、化石燃料の三大消費部門である「産業、運輸、建築物」を主な対象としている。ガソリン車から電気自動車(EV)への移行、ガスボイラーからヒートポンプへの置き換え、産業プロセスの電化を推進する。たとえば、EVへの移行は化石燃料車と比較して最大78%のコスト削減につながり、ヒートポンプの導入は家庭の暖房費を最大60%削減できるメリットがあるとされる。さらに、電気自動車のスマート充電や双方向充電技術、公共建築物におけるヒートポンプ導入の義務化検討、地熱エネルギーの活用推進なども盛り込まれている。
しかし、目標達成にはいくつかの重大な障壁がある。現在、EU圏内では電気料金がガス料金の最大2.5~3倍も割高であることが、最大のネックとなっている。そのため欧州委員会は、税金や賦課金などを見直し、家庭向けでガス料金の2.5倍以下、産業向けで2倍以下へと電気・ガス価格比を抑える指標を設定する予定。また、初期投資の高さや送電網の容量不足、接続の遅れも課題であり、2030年までにエネルギー貯蔵能力を現在の水準から200ギガワットへ引き上げるなど、老朽化した電力網の近代化や大規模投資が不可欠である。
なお、2040年の46%という数値は現時点では「指標(indicative target)」にとどまっており法的拘束力はないが、2030年以降のエネルギーパッケージの一環として義務化が検討される予定である。欧州は化石燃料補助金の段階的廃止などを通じ、すでに電化率が30%を超えるアジア諸国にこれ以上遅れをとらないよう、エネルギー移行を急いでいる。 - [アフリカ/AI・データセンター]7月21日、国際通貨基金(IMF)は「サブサハラ・アフリカにおけるAI」と題した報告書を発表した。IMFは、サブサハラ各国のAI導入能力は、不安定な電力供給、ブロードバンド等のデジタルインフラの不足、人材不足、規制・制度の未整備等により制約されていると指摘。サブサハラの雇用の過半数は非効率な農業やインフォーマルセクター(小規模企業含む)で占められており、雇用の約4/5がAIへの関与が限定的であるとの推計を示している。こうした事実はAI導入・普及による生産性への影響が限定的である一方で、AIの導入が進む先進国等との間での生産性や経済格差の拡大を招く恐れがあることから、インフラや政策といった基盤整備を速やかに進める必要性を強調している。IMFによると、サブサハラ各国が迅速にAI導入を進めれば、域内全体で最大年間の実質GDP成長率が0.5%pt押し上げる効果をもたらすと試算している。
IMFはまた、現状ではサブサハラでのAI導入は他地域に比べ遅れをとっているが、過去に固定電話回線を飛び越えてモバイルネットワーク及びモバイル金融サービスが普及した「リープフロッグ」を経験した実績がある点を指摘(例:ケニアのM-PESA)。AIが安価で、安全に利用できる機会が提供されれば爆発的に普及拡大する可能性があるとの見方を示している。AI普及において欠かせない発電・送電・データセンターの整備に関しては、米・マイクロソフトとアラブ首長国連邦(UAE)のG42がケニアの地熱発電を活用した「グリーンデータセンター」など、外資系企業による投資が実際に行われていることに言及。また、アフリカでのAI活用では生産性の低さが課題となっている農業分野での事例がすでに過半数を占めており、例として小規模農家向けの作付け意思決定支援(ガーナのFarmarline)や機械学習を活用した灌漑の水利用効率化(セネガルのTolbi)などを挙げた。
他方で、AIの導入が容易な国は、電力、通信、演算能力が充実した一部の国に限られており、サブサハラ域内の160箇所のデータセンターのうち、約6割が南ア、ナイジェリア、ケニアに集中していると指摘。今後サブサハラ域内でAI導入格差が拡大していく恐れがあるほか、同じ国の中でもAIにアクセスしやすい都市部とそうではない農村部の格差、またAIによる補完業務との親和性も高い金融業をはじめとする大企業と、経営能力の不足からAI導入が遅れる中小企業との間の格差が生じうる点に懸念を示している。 - [バングラデシュ/ハシナ元首相の帰国報道]7月21日、ハシナ元首相は共同通信のインタビューに応じ、死刑執行のリスクを承知で年内(12月)に帰国し、自ら法廷に立つ意向を明言した(共同通信、2026年7月21日付記事)。
2024年8月に発生した反政権デモを受けてハシナ元首相がインドのコルカタに亡命して以降、バングラデシュ当局はハシナ氏の身柄引き渡しを求め続けている。他方でインド側はハシナ氏が帰国を望んでいないことに加え、2013年に締結された二国間犯罪人引き渡し条約の中で「政治的な性質を持つ犯罪」に該当する場合に引き渡しに応じない旨を定めた規定を根拠に、引き渡しに応じてこなかった。2025年11月にはバングラデシュで国内戦争犯罪を裁く特別法廷である「国際犯罪法廷」が人道に対する罪を根拠に死刑判決を下している。
ハシナ氏が党首を務めていたアワミ連盟(AL)は、前暫定政権時代に政治活動を禁止されたほか、幹部が投獄されるなど深刻な機能不全に陥っている。また党内はハシナ氏に固く付き従う忠誠派と、サベル・ホセイン・チョードリー元環境相などハシナ氏個人よりも党の理念や組織存続を重視する改革派に分裂しつつある。今年2月に実施された総選挙の際にも、ハシナ氏はコルカタからバングラデシュ国内のAL支持者に対して投票を棄権するよう呼びかけたが、支持者の約半数はインドから帰還しない同氏に失望しており、同氏に従わずにBNPに投票したと分析されている。ハシナ氏が死刑執行のリスクを冒してでも帰国を急ぐ背景には、自身が亡命を続ければAL内の分裂が更に深まり、自らの影響力が完全に失われるという危機感があると考えられる。
なおハシナ氏の帰国は、BNPにとっても野党間の分裂を促す機会になり得る。現在の野党第1・2党であるイスラム主義政党「Jamaat-e-Islami(JI)」及び学生主体の「国家市民党(NCP)」は、総選挙実施前よりBNPに比べて急進的な政治改革を主張しており、BNPとの間で対立が続いてきた。一部の専門家は、BNPがJI・NCPを牽制するために、両政党と比べて保守的な政治スタンスを取るALが野党として一定の機能を取り戻すことを暗に望んでいる可能性を指摘している。BNPとしては、ハシナ元首相の帰国を機にALの改革派を中心に政治活動再開を承認し、それにより野党間の分裂を広げることを企図しているとの見方もある(Hindustan Times、2026年7月15日付記事)。インド側にとっても、6月に実施されたバングラデシュ・中国間の首脳会談を受けて両国間の関係強化が懸念される中、同氏の身柄引き渡しによりバングラデシュとの外交関係を改善し、中国に対抗することも期待できる。 - [習近平演説と中国AI政策]7月17日、習近平国家主席は上海で開催された世界人工知能大会(WAIC)に初めて出席し、AIに関する包括的な基調講演を行った。WAICの開催と同時期に、Moonshot AIが大規模言語モデル「Kimi K3」を、HuaweiやMiniMaxなども新たなAIモデルや計算基盤を相次いで発表するなど、中国のAI技術力を内外に示す場となった。新モデルの発表をWAICの開催時期と合わせることで、習近平の演説と企業の技術的成果を同時に打ち出し、中国のAI戦略を体系的に示そうとする意図があったとみられる。
習氏の演説では、中国をAI分野における「開放的で協力的なパートナー」と位置づけるとともに、AIを人類共通の利益に資する公共財とした。国連を中心とした国際ガバナンスの構築や、グローバルサウスに対するAI能力構築支援を訴え、新設した「世界人工知能協力機構(WAICO)」を通じて国際的な影響力拡大を目指す姿勢を示した。また、「オープンソースAIを奨励する」と述べ、中国企業によるオープンウェイトモデルの公開を推進する従来方針を改めて確認したが、より踏み込んだ政策転換を示唆する内容は見られなかった。
また、習氏はAIの急速な進展を踏まえ、「状況の変化に応じて政策を調整し、AIのリスクが制御不能な状態に陥ることを防ぐ措置を不断に改善する」とも述べ、AI安全保障への対応を従来よりも強い口調で示唆した。AIの発展を推進する一方、安全保障や社会統制の観点から必要に応じて規制を強化する可能性を示した。
一方、中国はAI分野で米国との競争を強めているものの、なお米国の技術や人材を積極的に取り込もうとしていることもうかがえる。例えば、Kimi K3を開発したMoonshot AIの創業者である楊植麟氏は、清華大学卒業後に米カーネギーメロン大学で博士号を取得し、Google BrainやMeta AIでも研究経験を積んだ人物であり、中国の有力AI企業にはこうした海外経験を持つ研究者が少なくない。また、習近平は演説の冒頭でAI研究の起源として米国のダートマス会議に言及し、米国のAI研究が果たした歴史的役割にも触れた。中国が引き続き欧米を含む海外の先端技術や知見を取り込みながら、自国のAI産業の発展と国際的影響力の拡大を図る戦略を志向していることがうかがえる。
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