- [ブラジル/対米関係緊張高まる]トランプ政権の南米特使に先日任命されたばかりのダレン・ビーティー氏は、重要鉱物に関する会議へ出席するためサンパウロを訪問予定だったが、投獄中のジャイル・ボルソナロ前大統領を訪問する計画を示したことを受け、ブラジル外務省は入国を拒否した。この判断はブラジル政府が、強硬派で知られるビーティー氏の訪問を国内政治、特に選挙過程への干渉とみなしたことが背景にある。
ボルソナロ前大統領は、極右のポピュリストでトランプの盟友として知られ、クーデター未遂に関与した罪で27年の刑に服している。ビーティー氏はボルソナロ前大統領本人だけでなく、10月の大統領選でルーラ大統領と争う予定の長男フラヴィオ・ボルソナロ氏との会談も予定していたとされる。最近の世論調査では、フラヴィオ氏とルーラ氏の支持率は拮抗してきていた。
ルーラ大統領は今回のビザ取り消しについて、米国が昨年ブラジル閣僚およびその家族のビザを取り消したことへの対抗措置であると示唆した。これに先立ち、ブラジル最高裁はボルソナロ前大統領がビーティー氏の訪問を受け入れる権利を一度認めていたが、のちにその判断を覆していた。
今回のビザ取り消しは、2025年の対立激化から徐々に修復されつつあった米国とブラジルの関係を再び緊張させる恐れがある。トランプ政権は、ブラジル製品に最大40%の追加関税を課し、ブラジル司法によるボルソナロ前大統領の扱いを「魔女狩り」と批判した。また、複数のブラジル政府関係者のビザを取り消していたが、2025年9月以降、米国は一部の制裁を緩和し、関係改善に向けた動きもみられていた。
しかし、3月に入り再び関係に緊張がみられるようになっており、3月中旬に予定されていたルーラ大統領とトランプ大統領の会談の延期や、米国がブラジルの犯罪組織をテロ組織に指定する可能性も再浮上している。イラン紛争をめぐるルーラ政権の批判的な姿勢も米国側が警戒感を高める要因となっており、ルーラ大統領も、会談を実施すれば、この問題が扱われることを警戒しているとみられる。
- [日本/石油貿易]令和7暦年の日本の輸入総額は113.3兆円。うち、鉱物性燃料の輸入は22.1兆円で輸入総額の19.5%を占める。内訳は原油及び粗油が9.6兆円、LNG5.7兆円、石油製品2.5兆円、一般炭1.9兆円、液化石油ガス(LPG)0.8兆円という構成となっている。中東からの鉱物性燃料の輸入総額は10.8兆円なので燃料調達の約半分を頼っている。うち、9兆円が原油及び粗油で前年から価格下落したこともあって、その金額は前年比で12.4%は減少しており、数量は0.9%低下している。また、中東からのLNG輸入は0.6兆円なので、指摘されているようにLNGの中東への依存比率は一般的なイメージよりも小さい。
しばらくの間、石油は備蓄を取崩すことになるので、新規の原油輸入代金の支払いは大幅に減少することになる。年250営業日とすると、毎日430億円分のドル買いが発生していることになる。これを今の為替相場(1ドル=159円)で換算すると2.7億ドルに相当するが、中東からの原油及び粗油の輸入が停止していることから、貿易決済ではこの金額分のドル買いが減少する。石油製品はアジア近隣からの輸入で、置かれている状況は変わらないことから、石油製品の輸入も減少することになる。価格が高くなっても、調達できないものには資金需要は発生しないので、現下の状況でエネルギー価格の高騰によるドル買いが出るというのは、おそらくミスリード。ドル需要が強いなら、産油国の収入減による影響など要因は他にあるということ。長期化すれば、むしろ換金性の高い資産が売られやすい可能性もある。国際決済銀行や国際収支の動向からすると、我が国の場合は、円安にも関わらず、ドル建て資産の積み上げが見られてきた点には留意を要する状況。
- [仏地方選挙結果]3月15日、フランスで統一地方選の第1回投票が実施された。 2027年に予定されている大統領選挙において極右候補が勝利する可能性があり、今回の統一地方選挙は、極右政党がどこまで躍進できるか注目されている。
Politico誌によると、おおむね極右は躍進傾向にあるが圧勝とはいえず、第2回投票に向けた各党の連立交渉に注目が必要とされている。 首都パリでは、現職のイダルゴ市長(今回の選挙には立候補せず)が所属する中道左派の社会党の候補が得票率トップとなり、極右の得票は事前の世論調査を下回る可能性があるとされている。
一方、南部マルセイユでは左派の現職と極右の国民連合(RN)がほぼ拮抗しているとみられる。 フランスの統一地方選挙は男女同数拘束名簿式比例代表制であり、選挙後に各自治体の議会による投票で首長を選出するため、有権者にとっては実質的に首長を選ぶ選挙でもある。
第1回投票でいずれかの政党が過半数を得れば選挙結果が確定する一方、過半数の票を得た政党がなければ3月22日に第2回投票が行われる。
第2回投票には、第1回投票で有効投票の10%以上を得た名簿のみが進出可能(5%以上10%未満の名簿は単独では進出不可だが、他党と合流して一つの名簿に加わることで第2回投票に進出可能)。
第1回投票の結果が出てから第2回投票の立候補締め切りまでの間に各政党間で激しい連立交渉が行われるため、今後の情勢に注意が必要である。
- [対イラン攻撃と報復攻撃]開始から17日目に入った米国・イスラエルとイランの衝突は一段と激化し、戦場がイラン国内だけでなく湾岸諸国や周辺地域へ広がっている。3月15日未明にはイラン中部の都市イスファハンが攻撃され、死者が出たほか、イラン側は「第50波」とする報復作戦を発表し、UAE、バーレーン、クウェートの米軍関連拠点を標的にしたとしている。イラン国内では住宅被害や民間人犠牲も拡大し、戦争の長期化が鮮明になっている。
ホルムズ海峡と湾岸の石油インフラへの攻撃がこの戦争の核心になりつつある。米軍によるイランの重要な石油輸出拠点であるカーグ島に対する攻撃に対し、イランはUAEの石油輸出施設のあるフジャイラ港へのドローン攻撃による報復を行い、火災が発生し積み出しが一時混乱した。ホルムズ海峡は世界の石油・LNG輸送の要衝であり、ここが不安定化することで世界経済への影響が一気に高まっている。
一方、トランプ大統領はイランの軍事能力をほぼ破壊したと強調しつつ、停戦には消極的で、各国に海峡の安全確保への協力を求めている。ただ、実際にはイランのミサイルやドローン戦力はなお残存し、機雷や小型船を使った非対称攻撃の脅威も続くとみられる。日本を含め各国は艦船派遣に慎重で、米国主導の海上連合がすぐにまとまる見通しは弱い。米国内の世論調査でも、過半数が攻撃に反対の意思を示しており、政権の強硬路線には内外で温度差がある。
さらに、戦闘はレバノンやイラクなどにも波及し、人道・安全保障両面の危機を深めている。レバノンではすでに800人以上の死傷者と80万人以上の避難民が発生し、イラクでは米国大使館など米関連施設も攻撃対象となっている。今回の情勢は単なる米イラン衝突ではなく、中東全域の秩序、海上輸送、エネルギー供給を揺さぶる広域危機に発展している。
- [ルワンダ軍/モザンビークLNG撤退か]3月14日、ルワンダのヨランダ・マコロ報道官はXにおいて、モザンビーク北部カーボデルガード州に派遣されているルワンダ国防軍(RDF)の活動が評価されていないと政府が判断すれば、RDFを撤退させるのは当然のことだ、と述べた。
同州では、仏資源大手・トタル・エナジーズらは、総額200億ドル規模の液化天然ガス(LNG)プロジェクトを進めてきたが、2021年のイスラム系過激派組織による襲撃により工事の中断を余儀なくされた。その後、「南部アフリカ開発共同体(SADC)」合同軍と、EUの「欧州平和ファシリティ(EPF)」を通じてRDFが同地域に派遣され(注)、モザンビーク軍と共同で治安回復に取り組んできた。2024年にSAMIMが撤退した後も、1,000人以上が駐留しているRDFが最大の対テロ対策部隊として任務を遂行している。治安の改善を受け、1月にトタルがプロジェクトの工事再開を発表。しかし、RDFが撤退すれば再び治安が悪化し、再開したばかりのプロジェクトの進行に影響を及ぼす恐れがある。
これまでEUは、RDFのモザンビークでの活動を支援するため、2022年、2024年と2回に分けて総額4,000万ユーロをルワンダ政府に提供してきた。しかし、マコロ氏はルワンダの支出はその10倍を上回ると、治安安定に向けたルワンダの貢献の大きさを強調している。また、マコロ氏の投稿に同調する形で、ルワンダのオリビエ・ンドゥフンギレヘ外相は、対テロ作戦に向けた持続的な資金確保がなされなければ、ルワンダはモザンビークから撤退すると発言(3月15日付、同氏X)。また、ルワンダの介入によってLNGプロジェクトが再開したにもかかわらず、その恩恵を受けた国々からRDFが非難、中傷され、制裁を受けることは看過できない旨の投稿を行った。
同氏が言及した「持続的な資金確保」については、米・BloombergがEUのルワンダ向けの支援が2026年5月で期限切れとなり、延長はしない、とのEU関係者のコメントを報道したことを受けてとみられる(3月12日付)。また、「RDFへの制裁」については、米国が3月2日にコンゴ民主共和国(DRC)での大規模人権侵害にRDFが関与したとして、RDF高官向けに経済制裁を発動したことを指している(3月4日付デイリー・アップデート参照)。この米国の経済制裁の発表を受けて、EU報道官は「米国による制裁の影響を評価している」と述べており、これがEUのRDF向けの資金打ち切りの意思決定に影響している可能性がある(3月13日、Business Insider Africa紙)。
他方で、EUのルワンダに対する過去2回の資金拠出はEU内で満場一致で決定されたものではない。2024年の延長時には、LNGプロジェクトにオペレーター(トタル、ENI)、工事請負業者(Mota-Engil)として深くかかわるフランス、イタリア、ポルトガルは資金拠出に賛成した一方で、ベルギーはこれに強く反対。オランダ、ドイツ、英国、スウェーデンも消極的だったとみられている。ベルギーが反対した表向きの理由は、DRC東部でRDFが越境して戦闘行為を行っていることに国際的な非難が集まる中で、モザンビークでのRDFの活動をEUが支援することはダブルスタンダードと受け取られることがある。一方で、ルワンダ・DRC双方の旧宗主国であるベルギーが間接的にとはいえEU経由でRDFの支援を続ければ、DRC側から強い反発を受けるためとの見方もある(2024年7月Africa Report紙)。結果的にベルギーは投票を棄権したことにより、2回目の資金拠出はEU内で可決されたが、トタルのプロジェクトサイトで2021年に人権侵害が起こった疑惑を理由に、英国とオランダの金融機関はプロジェクトから撤退した。こうした動きもEUからの資金拠出の打ち止の理由となっているとみられる。
中東情勢の緊張と、それに伴うホルムズ海峡の封鎖や世界最大級のLNG生産国であるカタールの生産施設の被害を受けて、LNGの供給が不安定化している。モザンビークでの大型LNGプロジェクトの進展に注目が集まる中、RDFの撤退によりカーボデルガード州の治安が再び悪化すれば、将来的なLNG供給の見通しに影響を及ぼす恐れも生じる。また、米国輸出入銀行(EXIM Bank)はトタルのプロジェクトに対して47億ドルの融資をコミットしているほか、米資源大手・エクソン・モービルがトタルのプロジェクトサイトの近傍でLNGプロジェクトを進めようとしていることから、米国にとっても治安の安定は関心事項となる。そのため、ルワンダ政府によるRDF撤退の発言は、EUを非難するにとどまらず、RDFに経済制裁を課した米国に対して「揺さぶり」をかける意味もあるととれる。
(注)RDFの個人装備や後方支援の費用を賄うための費用
- [インド/LPG供給確保]3月14日、インド港湾・海路・水路省は記者会見にて、湾岸諸国から液化石油ガス(LPG)を輸送していたインド船籍のタンカー2隻が同日の早朝にホルムズ海峡を安全に通過したと発表した。タンカーは合計9万2,700トンのLPGを積載しており(インドにおける調理用ガス需要の約1.25日分に相当)、3月16日・17日にグジャラート州のムンドラ港・カンドラ港に到着する見込み。なおペルシア湾にはLPGタンカー6隻を含む計22隻のインド船籍の船舶が依然として立ち往生しており、インド政府はこれら船舶のホルムズ海峡通過に向けイラン政府等と協議を続けている。
インドは世界第2位のLPG消費大国であり(1位は中国)、LPG消費量のうち約6割を輸入に依存している。そのうち湾岸諸国のシェアは約9割を占めているため(ロイター通信、2026年3月6日付記事)、消費量のうち約半分を湾岸諸国からの輸入に依存していることになる。直近のホルムズ海峡封鎖措置により輸入が滞っており、3月9日から始まる週の輸入量は、2023年4月以来最低となる水準(約27万トン)にまで落ち込んだ。他方でホテルやレストラン、小規模飲食店ではLPGの在庫水準が十分でなく、商業用LPGの在庫はわずか1~2日、長くても2?3日分しか残っていない店舗が多いとの報道が存在する(デカン・クロニクル、2026年3月10日付記事)。一部店舗は既に休業したほか(タイムズ・オブ・インディア、2026年3月11日付記事)、LPGをIH調理器や木炭にて代替する店舗も出ているとの報道も存在する。
政府はLPG需要の抑制のため、3月7日に家庭用LPGシリンダー(14.2kg)当たりの価格を7%(60ルピー)引き上げ913ルピーとし、商業用もLPGシリンダー(19kg)当たりの価格も6.5%(114.5ルピー)引き上げ1,883ルピーとした。これにより、インフレ率が上昇することも懸念される。並行して政府は、米国、ロシア、カナダ、ノルウェーなどからの代替調達を進めようとするなど、LPGの供給確保に動いている。
インドのジャイシャンカル外相は米国・イスラエルによるイラン攻撃後に、イランのアラグチ外相と4回にわたり電話会談を実施したほか、モディ首相もイランのペゼシュキアン大統領と直接会談し、「エネルギーと物資の妨げのない輸送」がインドの最優先事項の一つであると言及していた。
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