- [南アフリカ/26年度予算案]2月25日、エノック・ゴドングワナ財相は2026/27年度予算案(2026年4月~2027年3月)を発表し、政府の公的債務対GDP比は2025/26年度の78.9%をピークとし、2026/27年度は同77.3%に低下するとの見通しを示した。南アの公的債務(対GDP比)は2008年のリーマンショック時点の25%未満から増加の一途を辿っていたが、実際に減少に転ずれば17年ぶりとなる。ゴドングワナ氏は、基礎的財政収支(プライマリーバランス、歳出から利払いを除いた額)は2023/24年度から3期連続で黒字を達成し、2028/29年度までに対GDP比で2.3%まで黒字幅が拡大すると予測。また、格付け大手S&Pによる16年ぶりの南ア長期国債の格上げ(外貨建て:BB、国内通貨建て:BB+)や、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)による南アのグレーリストの除外などを受けた南アの信用向上により、債務の利払いコストは歳入比で2025/26年度の21.3%から2028/29年度には20.2%に低下するとの見通しを示した。その結果、財政赤字は2025/26年度の対GDP比4.5%から、2028/29年度には3.1%に改善する見込みだ。
ゴドングワナ氏は、南アの実質GDP成長率は2025年の1.4%から2028年には2.0%に拡大すると予測。インフレ率の低下を受け、GDPの6割強を占める個人消費が堅調に伸びていること、また金やプラチナなどのコモディティ価格の上昇により鉱業部門などの企業業績の回復を理由としている。また、前年度に発表した予算案時点よりも、個人所得税や配当税などが想定より200億ランド(約2,000億円)上振れしたため、当初想定していた200億ランドの増税を撤回すると発表した。2025年の予算案発表時に同氏は、財政赤字の穴埋めのために1%の付加価値税(VAT)の増税を提案。しかし、低所得者層への影響が甚大だとして、連立政権(GNU)内第2党で、親ビジネス派の「民主同盟(DA)」が猛反発したことによりVAT増税の即座の実施は見送られた。しかし、今回の税収の予想外の拡大を受けて増税の方針自体が一旦完全に撤回されたものとみられる。
また、ゴドングワナ氏は、政府による債務持続性の監理を今後も徹底するため、「義務」ではなくあくまで「原則」に基づく「財政アンカー」の導入を発表した。詳細は例年10月頃に財相が実施する「中期予算政策(MTBPS)」において発表される見込みだ。南アの財政安定化が進展しているとの発表を受け、通貨ランドは予算案発表前と比べて0.8%増となる1ドル=15.86ランドに上昇(2月25日付、ロイター通信)。ヨハネスブルグ証券取引所(JSE)のトップ40指数は前日比1.7%上昇し、ベンチマークとなる2035年満期長期国債の利回りも11.5bps低下し、7.825%となった。
南ア経済の回復が鮮明になりつつある中、依然として電力・水道供給や物流・港湾のボトルネックが成長の下方リスクとなっている。特に都市部で自治体による水道の管理不備によって供給問題は深刻化し、国民の不満が高まっていることから、2月12日にラマポーザ大統領は「施政方針演説(SoNA)」にておいて水問題対策への強化を発表。実際に2026/27年度の歳出は全体で前年度比3.9%増となった中、水インフラへの公共投資を含む「経済開発」の歳出は同5.8%と、伸び率としては歳出費目の中で最も高くなった。
- [米中貿易統計差の背景]中国から米国への輸出について、2025年度は中国の対米輸出額と米税関統計との間に過去最大の差が生じた。これは、米国の関税を回避する違法スキームが急増したためとみられている。
2025年の中国の対米輸出額は約4,210億ドルであったのに対し、米税関統計における対中輸入額は約3,084億ドルにとどまり、過去最大となる約1,120億ドルの差が生じた。これは、中国からの輸出のうち最大で約4分の1が関税を回避した可能性を示している。過去のFRB(米連邦準備制度理事会)の分析では、統計差の約3分の2が関税回避に起因していたとされる。
主な手口は、「DDP(関税込み渡し)」を利用したものとみられる。WhatsAppやメールで「関税込みの格安輸送」をうたう広告が出回っており、海外業者が輸入者となって、商品の価格を過少申告したり、品目を偽装したりする手口が広がっている。さらに、実体のないペーパーカンパニーを輸入名義人とし、当局の追及を受ける前に解散させることで責任を回避するケースもある。米国は非居住企業による輸入者登録を認めており、悪用されやすい制度となっている。
税関当局は、対策強化やAIによる監視、告発制度の導入を進めているが、捜査には数年を要する場合もあり、国外業者への追及には限界があるとブルームバーグは報じている。その結果、関税政策は地下経済を拡大させ、法令順守企業を不利にし、米企業間の不公正な競争を助長する構図となっている。
- [アルゼンチン/製造業の苦戦]国内の製造業の苦戦が続いている。政府によれば、ミレイ大統領が2023年12月に就任して以来、22,000社近くが倒産し、約29万人が職を失っており、特に製造業が深刻な打撃を受けている。2月18日には、アルゼンチンの主要タイヤメーカーであるフェイト社が操業を停止し、大手製造業としては、ミレイ政権下で初めての閉鎖となった。以前より、中国製タイヤの急増に苦しんでいたが、輸入自由化の進展が最終的な引き金となったとみられる。
政府は、製造業が長年の保護主義に依存し、国際競争力を欠いていると批判的な態度をとっている。しかし、製造業側は、税負担の大きさ、国際的にも高い賃金、中国のダンピング的価格、さらに国内市場依存構造と需要低迷が重なり、輸入品との競争が不利だと反論する。また、実質通貨高により輸入は加速しており、2025年の輸入量は前年より30%以上増加した。とりわけ消費財は53%、車両は110%、資本財は45%増と大幅な伸びを示した。こうした輸入拡大は国内生産の圧迫要因となり、民間消費が2025年後半に再び失速したことも製造業の重荷となっている。
一方、ミレイ政権の産業政策は、コスト削減と市場競争の強化を重視している。輸入関税の引き下げや規制緩和、価格統制の撤廃などが進められ、企業設立手続きも簡素化された。加えて、労働改革や税制改革を通じて企業側の負担軽減を図っている。しかし、生産構造の転換が進まない企業の多くは生き残れない状況にある。製造業は都市部の雇用を支える重要な基幹産業であり、その縮小は中期的に社会・政治の両面に影響を及ぼすとみられている。
特にアルゼンチンでは、製造業が実質GDPに占める比率が15%程度と高く、生産縮小は経済成長率を直接的に押し下げる。製造業全体の生産は2025年に前年比1.6%増加したものの、2023年の1.8%減、2024年の9.4%減を取り戻すにはほど遠い。特に、繊維製品、衣料・靴、ゴム・プラスチック、金属製品の4分野は昨年(2025年)も縮小しており、中国製品への置き換えが急速に進み、さらにECプラットフォームの拡大も輸入販売を拡大させ、逆風となっている。また、ミレイ政権による輸入関税の大幅引き下げ(2024年に35%→16%)が決定的な打撃となり、国内メーカーの競争力を大きく奪っている。
政府には、2億ドル超の大規模投資を誘致するRIGI制度があるが、この枠組みはエネルギー・鉱業など資源関連産業に偏っており、2026年2月時点でRIGIの恩恵を受けるプロジェクトは10件にとどまる。
アルゼンチンの製造業は構造的な課題と政策変更の狭間で困難な局面にある。改革が長期的には競争力を高める可能性を持つ一方、移行期には多くの企業が生き残れず、社会的・経済的影響が深刻化することが避けられない状況となっている。
- [日本/景気は緩やかに回復]2月の「月例経済報告」によると、景気判断は「緩やかに回復している」に据え置かれた。据え置きは18か月連続。ただし、景気回復といっても「米国の通商政策の影響が残るものの」という枕詞付きになっており、1月時点の「米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの」から修正されている。
個別項目では、企業収益と消費者物価の2つが修正された。企業収益は、1月の「米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる中で、改善に足踏みがみられる」から、2月の「米国の通商政策の影響が残るものの、改善の動きがみられる」へ上方修正された。また、消費者物価は下方修正された。物価上昇率が足元にかけて縮小していることを反映させ、1月の「上昇している」から2月の「このところ上昇テンポが緩やかになっている」へ下方修正された。
その他の個別項目は据え置かれた。個人消費は「持ち直しの動きがみられる」、設備投資は「緩やかに持ち直している」と、内需は持ち直している。ただし、法改正を受けた住宅投資は「弱含んでいる」と、駆け込み需要からの反動減の影響が残っている。公共投資は「底堅く推移している」となり、 輸出と輸入は「おおむね横ばいとなっている」と評価された。
先行きについて、「雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される」として、1月から据え置かれた。
- [銀高騰とメキシコ鉱山治安問題]メキシコの治安悪化が貴金属供給リスクとして再認識されている。象徴例が2026年1月のVizsla Silver Corp(カナダ)鉱山労働者拉致事件で、10人が連れ去られ、少なくとも5人の死亡が確認されている。業界ではこの事件を契機に、鉱山リスクはテールリスクでなく構造問題として認識され始めている。
2月22日、メキシコ国防省は、最重要指名手配されていた麻薬カルテルCJNGの指導者エル・メンチョが、治安作戦で死亡したと発表した。これを契機に暴力が拡大し、道路封鎖や物流遮断、インフラ破壊が各地で発生した。
2026年に入り、銀価格は歴史的高値に高騰している。メキシコは世界最大の銀生産国だ。貴金属鉱山は固定資産であり、物流ルートが予測可能で、高額の現金収益を生むことから、犯罪組織にとって極めて魅力的な標的となる。近年は資材強奪や物流支配に加え、操業継続の見返りとして鉱石生産量に連動した「疑似ロイヤルティ」徴収まで行っているとされる。企業側は支払いか撤退かの選択を迫られるが、対価支払いは対テロ規制上の法的リスクも伴う。
鉱床分布の地質条件と、統治の弱い山岳地域の地理条件が重なるため、鉱山と犯罪組織活動圏は構造的に重複しやすい。現時点で全国的な操業停止には至っていないが、銀は構造的な供給不足局面にあり、不確実性の高まりは価格のボラティリティを高める可能性がある。
- [独中首脳会談]2月25日、就任後初めて中国を訪問中のドイツのメルツ首相は、習近平国家主席および李強国務院総理と会談し、両国間の協力関係を強化していくことで一致した。今回の訪問にはAdidas、Bayer、メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、シーメンス、DHLなどの企業をはじめとするビジネスミッションが同行した。
2月26日、メルツ首相は紫禁城を訪問し、メルセデス・ベンツ・グループと意見交換した後、杭州市を訪問した。同市で浙江省トップの王浩書記に迎えられ、その後ロボティクス企業のユニトリーおよびシーメンス・エナジーを訪問し、帰国する予定。
2月25日、メルツ首相は習国家主席との会談に先立ち、李国務院総理と会談を実施し、二国間関係を深化させることで一致した。一方で、公正な協力と開かれた対話の必要性を強調した。メルツ氏は「(両国の)協力に関して非常に具体的な懸念があり、改善して公正なものにしたい」と述べた。また、ドイツの拡大し続ける対中貿易赤字は中国の過剰生産能力によるものだと指摘し、「こうした状況は健全ではない」とした上で、「われわれはこれに対処しており、貿易赤字を削減する方法を見つけたいと考えている」と発言した。李国務院総理は、ドイツ側に対し、中国は自動車や化学製品などの分野のほか、人工知能やバイオ医療などの新興分野でも協力したいと話した。そのうえで、中国が欧州航空機大手エアバスに対し、120機の発注を行ったことを発表した。
習近平国家主席との会談の主な成果は以下のとおりである。
・独中政府間協議:コロナ禍などもあり中断していた独中政府間協議の再開を確認した。
・包括的な戦略的パートナーシップ:両国は世界三大工業国に属するとして、両国政府は「相互尊重と開かれた対話のもと」、戦略的パートナーシップをさらに深化・発展させることを確認した。メルツ首相は記者会見で、共通点を強調し、共に課題に立ち向かうことが重要だと述べた。
・現在の国際的な課題:国際貿易には議論すべき課題があるとしつつも、メルツ首相は「非常に良好な」枠組を基盤に、協力していくことを確認した。
・地域情勢(ウクライナおよび台湾):ロシアのウクライナ侵略から4年が経過する中、メルツ首相は、侵略戦争終結に向けて中国政府が影響力を行使するよう重ねて要請した。また、中国がロシアに対してデュアルユース物品を供給しないことも求めた。
さらに、メルツ首相は台湾問題についても提起し、中国と台湾の再統一や統一に向けた取り組みは、軍事的手段ではなく、あくまで平和的な手段によってのみ行われるべきだと明言した。ドイツの有力週刊誌『シュピーゲル』は、メルツ氏が台湾や中国国内の人権問題について「指導しているような印象を与えないよう努めた」と指摘した。メルツ氏は中国が覇権主義的な傾向を強めているとの批判を抑え、関係構築を優先させたとみられる。
米国政府の不透明な通商政策もあり、欧州経済における中国の重みが増す一方で、重要鉱物などの経済安全保障や貿易赤字といった観点から中国への懸念も高まる中での訪問となった。ドイツ政府は人民元安、市場をゆがめる補助金、そして中国輸出業者の過剰生産能力を問題視している。欧州が、不確実性が増す米国との新たな関係構築に苦慮する中、中国は信頼できる経済パートナーとしてアピールしようとしており、李総理は「一方的主義と保護主義が台頭し、一部の国や地域では支配的になっている」と述べ、米国を念頭に置いた発言を行った。
- [イラン/邦人拘束]イランの首都テヘランで、NHKの日本人記者が当局に拘束されていたことが明らかになった。日本政府は2月25日、邦人1人が現地時間1月20日に拘束されたと発表し、その後2月23日にテヘランのエヴィン刑務所へ移送されたことを確認した。尾崎官房副長官は、政府としてイラン側に早期解放を強く求めていると説明し、本人や家族と連絡を取りながら必要な支援を行っていると述べたが、詳細な経緯や容疑については明らかにしていない。NHK側も「従業員の安全確保を最優先している」としつつ、具体的なコメントは控えている。
報道によれば、拘束されたのはNHKテヘラン支局長で、政治犯や外国人が収容されることで知られるエヴィン刑務所に収監されているという。移送の事実が外部に伝わったことで今回の報道につながった可能性がある。拘束理由は不明だが、イランで続く大規模抗議活動の取材に関連しているとの指摘もある。抗議活動をめぐっては、当局が強硬な弾圧を行い、多数の市民やジャーナリストが拘束されている。
日本政府は1月16日にイラン全土に対して退避勧告(危険レベル4)を出していた。現在、米イラン間の緊張が高まる中で、外国人拘束は政治的メッセージや交渉カードとして使われる可能性もあり、過去の同様の例からも短期的な解決を前提とするのは難しいとも思われる。今後の展開は、日本政府がすでに行っていると考えられる水面下の外交交渉のみならず、米イラン関係や国内抗議の推移などにも左右されることになるだろう。
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