- [オーストラリア/燃料危機と鉱業]オーストラリアでは2009年以降、石油精製能力が7割削減され、現在稼働しているのは老朽化した製油所2か所に留まる。今般の中東情勢を受け、燃料輸入依存という脆弱性が露呈するなか、政府関係者はアジアなどからの追加調達を急いでいたが、そんな矢先にビクトリア州Geelong製油所で火災が発生し、稼働が低下する事態となった。
燃料供給不安は同国鉱業、とりわけ西オーストラリア(WA)州の鉄鉱石・金・鉱物資源分野において、ディーゼル依存という構造的課題を改めて浮き彫りにしている。採掘機械・大型運搬トラック・自家発電・長距離輸送などで大量のディーゼルを使用しており、燃料の安定確保は操業継続の前提条件となっている。
今回の燃料危機の影響は真っ先に遠隔地の中小鉱山に及んだ。同国内の燃料流通はパイプラインでなく道路輸送に依存しており、遠隔地の鉱山では数日分の燃料備蓄はあっても長期の供給途絶には脆弱だ。WA州の金鉱山を運営するBlue Cap Miningは3月中旬、燃料供給の不確実性を理由に従業員の一部を一時帰休させた。鉄鉱石ジュニア企業のFenix Resourcesも3月下旬、サイクロン接近による供給混乱とも重なり、燃料不足が事業に影響し始めたとして非中核業務を縮小した。今会計年度の鉄鉱石販売予測は維持する一方、燃料費高騰で利益率が低下したと説明し、燃料の安定供給を前提とした事業モデルの再考が必要との認識を示した。
こうした状況を受け、企業の対応には違いがみられる。BHPの幹部は3月下旬の講演で、地政学的分断により資源エネルギーが「貿易財」から安全保障上の戦略的資産へと位置づけを変えつつあり、現時点では脱炭素よりもエネルギーの安定確保と価格競争力が優先されつつあると指摘。それは投資判断や脱炭素の進捗ペースにも影響が及んでいるとした。同社は排出量削減に向け再エネ導入や電動機械の導入を進めているが、大型トラックなどでのディーゼル削減は技術的制約がまだ大きいとしている。一方、鉄鉱石大手Fortescueは燃料危機を化石燃料依存のリスクと捉え、再生可能エネルギーと蓄電を利用したピルバラ鉄鉱石事業の脱ディーゼル化の目標を前倒しして2028年とする方針を掲げている。
- [ロシア/景気減速が鮮明に]4月15日、プーチン大統領は経済問題に関する政府会合で、2026年1~2月の国内総生産(GDP)が前年同期比で1.8%減となったことについて政府高官を厳しく叱責し、新たな成長促進策の策定を指示した。特に工業生産や建設部門の落ち込みに強い懸念を示し、企業活動の支援や付加価値の高い雇用構造への転換に向けた追加措置を早急にまとめるよう求めた。
ロシア経済発展省の月次推計では、1月のGDPは▲2.1%、2月も▲1.5%と低調で、年初から景気減速が鮮明となっている。背景には、インフレ抑制を目的とした金融引き締めによる投資・消費の抑制に加え、西側制裁の長期化による民間部門の停滞があるとみられる。一方、防衛関連部門は一定の成長を維持しているものの、民需部門では需要の弱さが広がっている。
政府は現在、2026年の公式成長率見通しを1.3%としているが、年初実績の弱さを受け、4月中にも下方修正される可能性があると報じられている。金融緩和や財政支出拡大の余地が限られる中、成長回復策の具体性と実効性が今後の焦点となる。
- [ハンガリー/議会選挙後の情勢]ハンガリーでは、マジャール氏率いる野党が選挙で圧勝し、オルバン首相による16年間の支配を終わらせた。次期首相に就任予定のマジャール氏は、オルバン政権下で崩壊したEUとの関係修復を新政権の最優先課題に掲げている。
マジャール氏の最大の目標は、法の支配への懸念から凍結されているEU資金の凍結解除。マジャール氏の政党は議会で3分の2の絶対多数を握っており、大統領の妨害を懸念することなく、欧州検察庁への参加や司法の独立回復といった改革を迅速に進める構え。EU側も、フォン・デア・ライエン欧州委員長が協力姿勢を示しており、選挙からわずか5日後にはEU代表団がブダペストに派遣され、法改正を支援する技術的な協議が開始された。
一方、EU側は資金提供の政治的条件として、ウクライナ支援やロシア制裁に対するハンガリーの拒否権撤回を求めている。マジャール氏は、ウクライナへの900億ユーロの融資を妨害しない意向を強く示唆している。さらに、前政権がドルジバ・パイプラインの損傷などを理由にスロバキアと共に拒否権を発動していたEUの第20次対露制裁についても、マジャール氏の勝利によって膠着状態が打破されるとの期待が高まっている。
ただし、マジャール氏はウクライナのEU加盟手続を例外的に早期加盟することには慎重姿勢を示しており、ほかの国と同様に実力主義に基づく審査を求めている。また、ロシアとは距離を置く方針を示しつつも、現在の高い対ロシア依存は直ちに低減できないことなどを背景に、引き続きロシア産石油の購入を希望しており、新政権とEUによる資金と支援を巡る議論の行く末に注目が必要である。
- [イスラエル・レバノンが10日間の停戦で合意]トランプ米大統領は、イスラエルとレバノンの間で10日間の停戦合意を仲介し、米東部時間4月16日午後5時(日本時間17日午前6時)に停戦が発効すると発表した。レバノンではちょうど午前0時にあたり、首都ベイルートでは祝砲が鳴るなど、一時的な戦闘停止を歓迎する動きが見られた。停戦期間中、双方は恒久的な安全保障・和平協定に向けた直接交渉を開始する予定であり、誠実な協議が続けば停戦の延長も検討される。
今回の合意は、米国による集中的な外交努力の成果である。4月14日にルビオ米国務長官がイスラエルおよびレバノンの駐米大使との三者会談を実施したことを皮切りに、トランプ大統領自身もネタニヤフ首相やレバノンのアウン大統領と相次いで電話協議を実施した。トランプ氏は今後、両国首脳をホワイトハウスに招いて会談させる意向も示しており、長年実現していない直接対話の再開に期待を表している。
もっとも、この停戦は不安定な要素を多く含む。イスラエルは自衛権を留保しており、必要と判断すれば攻撃を行う可能性を残している。一方、レバノン政府には、国内で強い影響力を持つヒズボラによる対イスラエル攻撃を抑止する責任が求められるが、同組織は停戦交渉に直接関与しておらず、その対応は不透明。ヒズボラは停戦を歓迎しつつも、イスラエルの出方次第で行動を決めるとする曖昧な立場を示している。
イスラエルとヒズボラの衝突は、2月の米国およびイスラエルによる対イラン攻撃をきっかけに再燃し、レバノン側では2,000人以上が死亡するなど被害が拡大していた。イスラエル側でも死者が出ており、双方の緊張は高まっていた。さらに、イランは米国との停戦交渉において対レバノン攻撃の停止を求めており、今回の停戦は米・イランの停戦交渉にも影響する重要な要素となっている。実際、米国がイスラエルに停戦受け入れを促したとの報道もある。
ネタニヤフ首相は「歴史的な和平の機会」と評価する一方、ヒズボラの武装解除は達成されていないとして強硬姿勢を維持し、レバノン南部に部隊を留める方針を示した。イスラエル国内ではこの停戦に対する批判も強く、野党や与党内からも「北部住民への裏切り」との声が上がるなど、政治的な圧力に直面している。
今後の焦点は、レバノン政府がヒズボラをどこまで統制できるか、イスラエルが南部レバノンからの撤退を受け入れるのか、そして停戦が恒久的な和平に発展するかにある。専門家の間では、ヒズボラの弱体化により大規模衝突の再燃リスクは低下しているとの見方がある一方、武装解除を巡る対立が新たな不安定要因になる可能性も指摘されている。今回の停戦は地域の緊張緩和と米・イラン交渉の進展に寄与する可能性があるが、依然として多くの不確実性を抱えた暫定的な措置にとどまっている。
- [サブサハラ/地域別経済見通し]4月16日、国際通貨基金(IMF)はサブサハラ・アフリカ(以下、サブサハラ)の「地域別経済見通し」を発表した(4月15日付デイリー・アップデート参照)。IMFは2025年のサブサハラの実質GDP成長率は4.5%と、過去10年間で最も高い伸び率だと評価。世界的な食料・原油価格の下落のほか、各国通貨の上昇や、各国での金融引締め政策の結果、インフレが減速し、成長が加速するとともに財政状況も改善したとの見解を示した。
その一方で、中東紛争がサブサハラ経済の先行きを不透明にしていると指摘。2026年のサブサハラ全体の成長率は4.3%と、紛争前の4.6%から引き下げた。中東紛争は、石油、ガス、肥料価格と輸送費の急騰をもたらすとともに、サブサハラへの観光客の減少や海外からの送金にも打撃を与える可能性が高いとしている。その結果、インフレ率の中央値は2025年末の3.4%から、2026年末までに5.0%に上昇すると予測している。
また、ナイジェリアやアンゴラなど、原油輸出国の多くは輸出収入の増加とそれに伴う政府支出の拡大により経済成長が加速する一方、多くが石油輸入国であるサブサハラの低所得国では成長が鈍化すると指摘。経常収支も原油輸出国では対GDP比で1.1%改善し、金属価格(金、銅など)の上昇により非原油資源依存国(ザンビア、コンゴ民主共和国など)でも0.7%改善するが、資源集約型ではない国々では経常収支が▲1.4pt拡大するとの見通しを示している。財政赤字は原油輸出国も含めおおむね悪化すると予測し、2026年の財政赤字の中央値は対GDP比で2025年の3.0%から3.2%に拡大するとしている。すでにサブサハラの1/3の国々が債務危機のリスクが高い、もしくは債務危機に陥っているため、債務脆弱性がさらに高まる恐れがあると警鐘を鳴らしている。
さらに、中東紛争が長期化するほど各国での生産活動は減少し、インフレ上昇圧力になると指摘。派生するリスクとして、肥料の高騰・供給不足は、農業生産性を低下させ、気候変動の影響も相まって、食料安全保障上の問題を招く可能性があること。また、燃料や食料価格の高騰を背景に社会的な緊張が高まり、2025年にみられたマダガスカルのZ世代による抗議活動や、ベナンやギニアでのクーデター未遂、タンザニアでの選挙時の暴力などのように、各国の政治的・安全保障上のリスクを高める恐れがあると指摘している。
- [オーストラリア/製油所での火災]4月16日、石油精製大手ビバ・エナジー社の保有・運営するGeelong製油所で大規模な火災が発生した。ボーウェン・エネルギー相によると、火災は設備の故障によるものである可能性が高いとのこと。Geelong製油所の原油処理能力は1日当たり12万バレルで、ガソリンや軽油、液化石油ガス(LPG)、ジェット燃料などを精製している(ロイター通信、2026年4月17日付記事)。ビクトリア州内の石油需要の50%、国内の石油需要の10%をカバーしている(NNA Asia、2026年4月17日付記事)。今回の火災により、特にガソリン・小型飛行機に使用する航空用ガソリンの精製に支障が生じる一方で、軽油・ジェット燃料については生産量を減らしつつ精製は継続する予定(稼働率を80%にとどめている)。同製油所のほかに、アンポル社の保有するクイーンズランド州ブリスベンのリットン製油所(原油処理能力は1日当たり12万バレル)の2大製油所が同国の石油需要の約2割をカバーしている。
国内の石油需要は1日当たり115万バレルである一方で両製油所の合計処理能力は約23万バレルと石油精製能力が不足しており、国内需要の8割を輸入に依存している。特に韓国(約3割を依存)・シンガポール(約2割を依存)・マレーシア(約1割を依存)などアジア諸国からの輸入額が大きい。石油備蓄日数も49日分と、IEAの定める目安(90日分)を大きく下回っている。石油の湾岸諸国への輸入依存度は低いが、主要輸入先である韓国・シンガポールが湾岸諸国の輸入原油を基に石油を精製しているため、ホルムズ海峡の実質的閉鎖による原油の供給途絶が石油輸入の減少に直結することになる。既に供給不足の影響は顕在化しており、3月24日、ボーウェン・エネルギー相が、国内の600以上のガソリンスタンドにて1種類以上の燃料が品切れ状態となっていると議会にて述べた。今回の火災により石油の国内生産に支障がきたされ、石油の供給不足に拍車がかかることが懸念される。
これらを踏まえ、政府は主要輸入先であるアジア各国からの石油の安定供給確保に向けて働きかけている。アルバニージー首相は4月10日にシンガポールのウォン首相と会談し、シンガポールから石油製品を安定供給する代わりにオーストラリアからはLNGの供給を継続させることを確認した。また16日にはアンワル首相と会談し、ペトロナスが生産した余剰分の石油をオーストラリアに優先的に供給することを確認した。オーストラリアは、シンガポールにとってインドネシア・マレーシアに次ぐ天然ガスの輸入先国であるほか、マレーシアにとっては天然ガスの最大の輸入相手国であるため、石油・ガスについてお互いに輸出規制を実施せずに相互補完的に融通する狙いがあるとみられる。また4月16日、アルバニージー首相は輸出信用機関である輸出金融公社(EFA)による金融支援も活用し、ブルネイと韓国から合計約1億リットル分の軽油の供給を確保したと発表した。
これと並行し、政府は4月30日に、ガソリンと軽油の燃料税を4月1日から6月末までの3か月間で半減させるほか、軽油の燃料品質基準を緩和すると公表した。これらにより、石油の供給不足・価格高騰を抑制することを目指している。
オーストラリア統計局が4月16日に発表した3月の失業率は、4.3%と前月から横ばいとなった。自然失業率は4.5%との推計が多いため、労働市場はやや逼迫気味であることを示す。ただし今後上記燃料不足などイラン情勢の影響が顕在化するにつれて、失業率・インフレ率双方の上昇を招く可能性がある。一部エコノミストは原油価格が今後も高止まりした場合、失業率が6.0%まで上昇することが懸念されるとしている。チャルマーズ財務相は、5月に公表される予算案(2026年7月~2027年6月)において追加の家計・企業支援を検討していると表明している。
インフレ懸念を踏まえてオーストラリア準備銀行(RBA)による利上げ観測も高まっている。RBAは3月の政策決定会合にて政策金利を25bps引き上げて4.1%としたが、政策決定委員9人のうち利上げ賛成が5名・反対(据え置き)が4名と僅差での決定となったことから、次回5月会合は据え置き予想が多かった。ただしイラン情勢の影響が当初想定より大きくなっていることも踏まえ、直近では5月会合においても25bpsの追加利上げを予想する声も増えている。
- [中国/口蹄疫流行の懸念]中国新疆ウイグル自治区(伊寧県)と甘粛省古浪県で、南アフリカ型(SAT1)の口蹄疫が確認された。3月末、中国農業農村部は両地での発生を公表し、発病牛の殺処分や消毒、流行調査などの措置を実施したと発表した。SAT1型は中国で初めて確認された血清型であり、従来主流であったO型やA型ワクチンでは防御できない。このため当局は緊急に2種類のワクチンを承認し、4月初旬には各地で接種を開始したが、免疫獲得までには最大3週間を要し、その間にも感染が広がる可能性がある。
口蹄疫は牛・羊・豚など偶蹄類に感染する極めて伝染力の強いウイルス性疾病で、最近では中東や西アジアにも拡散している。発症率はほぼ100%に達し、特に子牛の死亡率は50%に達することもある。潜伏期間が長く、症状が従来型と類似するため発見が遅れやすいことも特徴である。
他方で、今回の発表には不透明な点が多いとの指摘がある。新疆と甘粛の約2,400km離れた地点で同時に発生したとする説明は不自然であり、実際にはほかの地域にも感染が広がっている可能性がある。緊急ワクチンの広域配布や、山西省など他地域での発生報告も、感染拡大を示唆する材料とみられる。また、政府は簡潔な公告を出したのみで、国営メディアによる大規模な注意喚起は乏しく、情報公開が限定的である点も疑念を強めている。
こうした構図は、2018年に中国へ流入したアフリカ豚熱(ASF)と類似する。ASFもアフリカ起源のウイルスで、当時は東欧やロシアを経て中国に侵入したが、初期段階での過小報告や不自然な発生分布の後に全国的な感染拡大が起こった。今回のSAT1型口蹄疫でも、同様に実態把握の遅れや情報統制が、感染拡大のリスクを高める可能性が懸念されている。
- [チリ/改革案の提示]カスト大統領は、経済成長の回復と雇用の安定を目的とした包括的な改革パッケージの詳細を公表した。改革パッケージにはおよそ40の施策が盛り込まれており、政府は五つの主要目標を掲げている。具体的には、チリの税制上の競争力を高めること、正式な雇用を拡大すること、過度な規制を見直すこと、法制度と規制の予見可能性を高めること、そして公共支出を抑制することである。カスト大統領は、議会に対して速やかな審議と可決を求めた。
カスト大統領は選挙戦を通じて、チリが組織犯罪の拡大や財政の脆弱化といった深刻な問題に直面しているとして、経済の立て直しと治安の回復を同時に進める必要があると強調してきた。政府は、経済成長率を前年の約2.5%から中期的に4%程度へ引き上げる目標を掲げているが、市場関係者の間では、その実現可能性に対して慎重な見方も出ている。
改革の中心となるのは、法人税率を現在の27%から23%へ段階的に引き下げる案である。政府は以前から、数年をかけて税率を引き下げる方針を示してきたが、野党の一部は、減税が投資や雇用にどの程度の効果をもたらすのか、現時点では明確でないとして、慎重な姿勢を示している。このほかの税制措置として、賃金支払いに対する税額控除の創設も盛り込まれている。これは、正式な雇用が企業にとって不利にならない制度設計にすることで、正規雇用を増やし、400万人以上の労働者が保護されると説明している。政府は、これらの改革を通じて投資環境を改善し、経済活動の活性化と社会的安定の両立を図る考えを示している。
ただし、政治面での制約が大きくなってきている。カスト政権は議会で過半数を確保しておらず、主要法案の成立には中道勢力や一部野党との合意形成が不可欠となる。就任以降、世論の支持も目に見えて後退しており、燃料価格の上昇が家計に直接的な負担をもたらしたことに加え、安全保障や外交、経済運営をめぐる不満などから、カスト大統領の支持率は就任直後の57%から1か月足らずで41%まで大きく下落している。このため、政府が議会で円滑に支持を得られるのは、対立の少ない限定的な施策にとどまる可能性が高く、財政への影響が大きい提案は、野党や一部中道勢力の強い抵抗に直面することが予想される。カスト大統領は議会に対し、これらの法案を緊急案件として扱うよう求めているが、当初描いていたスピード感で改革を実現できるかは不透明であり、今後の焦点は、政治的な妥協を通じてどこまで政策の実質を維持できるかに移りつつある。
- [ECB/金利据え置きへ]欧州中央銀行(ECB)は4月16日、3月理事会(3/18~19)の議事要旨を公表した。4月理事会で示した基本シナリオは、イラン戦争の影響は短期にとどまるという前提によるものであり、悪化シナリオや深刻シナリオはエネルギー価格の急上昇や不確実性の広がりなどが前提条件になっている。入手されるデータが悪化・深刻シナリオの可能性を示唆しない限り、性急な行動をとらないことが重要だと指摘されていた。4月理事会で、より多くの情報が得らえると期待する一方で、結論を出すには時期尚早の可能性があるという指摘もあった。2%の物価目標に対する脅威が存在するか否かを判断するのは、依然として難しいとも議論されていた。
また、シュナーベルECB専務理事は4月16日、ECBがインフレショックに強い立場で臨んでいると述べた。過去10年間で、経済が耐性を高め、不均衡が解消されているため。ショックを分析する上で、必要な時間をかける余裕があるとして、急ぐ必要はないと話しており、4月会合での据え置き支持を示唆した。
ミュラー・エストニア中銀総裁は4月16日、4月30日理事会までに政策を判断するために十分なデータが得られないと述べた。足元にかけて物価上昇率は再拡大する動きを見せているものの、物価抑制のために利上げが必要になることを示すデータが得られない可能性がある。6月理事会であれば、よりデータが集まるため、判断しやすくなると話した。ただし、4月利上げの可能性を完全に排除しないと、予め政策金利の経路を定めないことにも配慮した。足元の物価上昇率は拡大。ECBは二次的波及効果の定着を警戒している。
デマルコ・マルタ中銀総裁は4月16日、物価抑制のために金利変更を急ぐべきではないと述べ、政策金利の据え置きを支持する姿勢を示した。市場が予想する年内2回利上げは、妥当な見通しになるだろうと語った。その一方で、長期的なインフレ期待が安定しているので、忍耐強く、決定を急ぐ必要はないとして、データが何を示しているかを見極める必要があると指摘した。
このようにECBの中では、4月理事会で政策金利据え置き支持が増えている。足元の物価上昇率は拡大傾向にあるものの、それが一過性なのか、それとも間接効果や二次効果をもたらすものなのか、現状を認識した上で、次の一手を打つ方針とみられる。
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