- [米国/ベージュブック]3月4日、連邦準備制度理事会(FRB)は、「地区連銀経済報告(ベージュブック)」を公表した。米国経済については、12地区のうち7地区が「わずかから緩やかに拡大した」と総括した。「横ばい」から「縮小」は、前回の4地区から5地区に増加した。12地区のうち「横ばい」だったのは、ボストン、セントルイスの2地区であり、「縮小」だったのはNY、ミネアポリス、サンフランシスコの3地区だった。前回1月時点では、8地区が「わずかから緩慢に拡大」し、3地区が「変わりなし」、1地区が「縮小」していた。地域の景気もK字型になっているようだ。
個人消費は全体としてわずかに増加した。ただし、経済の不確実性、価格感応度の高まり、低所得者の買い控えなどから売上は鈍化した。寒波によって交通網が機能しなかったこと、移民政策が消費需要に悪影響を及ぼしたこともあった。自動車販売は減少した。アフォーダビリティ―が問題になっている。製造業は前回から改善した。8地区が上昇、2地区が低下した。新規受注、特にデータセンターやそれに関連してエネルギーインフラの需要が増加した。また、在庫の少なさとアフォーダビリティ―が重要な課題として残っているため、住宅用不動産はわずかに低下した。総じて先行きの期待は楽観的だった。大半の地区でわずかから緩やかな成長が期待されている。
雇用水準は安定している。7地区は変わりなかった。労働以外の費用が増加、需要の軟化、不確実性などが挙げられた。企業は効率性を高めるため、AIや自動化などに注目しており、労働者の配置転換よりも、生産性の向上を目的として強調していた。賃金上昇は熟練工を含む特定分野で人材獲得競争となったものの、緩慢から緩やかなペースだった。複数の地区では、健康保険料の引き上げから総人件費が上昇しているという声もあった。
物価は緩やかに上昇している。多くの地区で、保険料や公共料金、原材料価格など労働以外の費用の上昇が報告された。9地区は、関税がコスト高につながったという報告があった。関税コストを顧客に転嫁してきた企業もあれば、自社で吸収した後、転嫁に動いている企業もあった。ただし、大半の地区では、顧客がますます価格の変化に敏感になっているため、コスト高にもかかわらず、販売価格を据え置く企業の姿が報告されている。先行きについて、企業は物価上昇ペースがいく分減速すると予想している。
- [米国/教師の副業]米国の教師の平均年収は7万2,000ドルだが、3人に1人は生活が苦しく、Uberの運転手などの副業をしているとFortune誌が報じている。記事では教師たちにとって、教室での長い時間は経済的な安定には繋がっていないと論じている。
ギャラップとウォルトン・ファミリー財団の調査によると、小中高教師の半数以上が経済的に「かろうじてやりくりしている」と回答しており、5人に1人は現在の収入では生活が困難だと訴えている。こうした経済的な圧迫により、多くの教師が副業をせざるを得ない状況だ。教育関係者の約62%はスポーツコーチや家庭教師など教育関連の副業に従事しているが、そのうちUberの運転手、飲食業、夜間や週末の小規模事業など、教育とは無関係の第二の仕事をしている人もいる。労働統計局のデータによると、2024年の全職種の年収中央値は49,500ドルで、教師の年収はそれよりは高い。ただし、バラツキが大きい点は留意が必要だろう。例えば、カリフォルニア州のように10万ドルを超える地域もあれば5万ドルほどの地域もある。また、世代によっても年収水準は異なるなど、同じ教師という職業でも年収のバラツキは多い。さらに、2015年頃の調査では、教師の94%が、生徒のために鉛筆から食費、冬用のジャケットに至るまでなんらかの出費をしているとの報告がある。最近になっても自腹負担の話題は多く聞かれることから、改善は十分に進んでいないという指摘もある。そうなると、教師はもはや単なる教育者ではなく、事実上のセラピスト、ソーシャルワーカー、保護者としての役割を担うことになっているとも言える。
「安定と長期的な企業キャリアを追求した過去の世代とは対照的に、Z世代とミレニアル世代は、自己実現、多様な収入源、創造的な独立性を優先する独自の道を歩んでいる」との意見も見られるが、教師にとっての副業は起業家精神や創造的自由というより、生計を立てるために適応せざるを得ない教育者の現状を示す警告でもありそうだ。
- [米・イスラエル・イラン/攻撃の応酬]米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦が始まってから5日間で、イラン国内での死者が1,000人を超えた。スリランカ沖ではイラン海軍の戦艦が撃沈され87人が死亡したほか、イランが発射した弾道ミサイルがトルコ空域に飛来して迎撃されるなど、初めてNATO加盟国の空域に影響が及んだ。レバノンでもイスラエルによる空爆が続き、この3日間で72人が死亡、450人以上が負傷しており、紛争は中東全体へ拡大しつつある。一方、米上院ではトランプ政権による対イラン攻撃を停止させる決議案が否決され、軍事作戦の継続が事実上容認された。
湾岸地域でも戦闘は激化している。UAEやカタールなど湾岸諸国は、イランによるミサイルやドローン攻撃を迎撃するため大量の防空ミサイルを消費しており、防空能力の持続性に対する懸念が広がり始めている。イランは当初、湾岸諸国にある米軍基地を主な標的としていたが、現在は空港など民間インフラにも攻撃対象を拡大している。湾岸諸国は防空体制が維持可能だと強調しているものの、紛争が長期化した場合の負担増大が指摘されている。
エネルギー市場にも影響が及んでいる。カタールではイランのドローン攻撃でLNG施設が損傷し、国営カタール・エナジーが不可抗力条項(フォースマジュール)を宣言して生産を停止した。少なくとも今後2週間は生産再開の見込みがなく、完全回復には1か月以上かかる可能性があるとされる。カタール政府は民間インフラへの攻撃だとしてイランを強く非難している。UAEも戦争開始以降繰り返しミサイルやドローン攻撃を受けており、湾岸諸国の間ではイランへの軍事報復を検討する動きも報じられている。
今回の戦争の発端は、2月23日にイスラエルのネタニヤフ首相がトランプ大統領に対し、イラン最高指導者ハメネイ師と側近が同一地点で会合するという情報を伝えたことだったと米Axiosは報道している。CIAがこの情報を確認し、同時期に行われていた外交交渉も行き詰まったことで、トランプは攻撃を最終決断したとされる。米ユーラシア・グループなどの分析では、トランプ政権は短期間での勝利を想定していたが、その前提は崩れつつある。戦況は弾道ミサイル戦からドローン戦へと移行しつつあり、紛争の重心は湾岸諸国へ移りつつある。数週間以内に交渉による出口が模索される可能性が指摘される一方、紛争が長期化するリスクも依然として残っている。
- [イラン情勢/アフリカへの影響]米・イスラエルによるイラン攻撃がサブサハラ・アフリカ(サブサハラ)経済に与える影響は、石油価格の上昇や、為替安によるインフレ率の上昇が見込まれているが(3月2日デイリー・アップデート参照)、国別ではケニアやエチオピアへの影響が深刻だとの見方がある。3月4日付の仏Africa Report紙によると、ケニアは石油輸入の大半をサウジアラムコ、アブダビ国営石油会社(ADNOC)、エミレーツ国営石油会社(ENOC)との協定に依存しているため、ホルムズ海峡封鎖の長期化はエネルギー安全保障上の問題となると指摘。また、ケニア政府は4月末まで十分な石油備蓄があると発表しているものの、国内の石油貯蔵能力の制約から備蓄の拡大余地がないとの見方を示している。また、エチオピアについても石油の備蓄が2.4か月分ほどに限られており、今後石油価格が急騰した場合、外貨が不足し、さらなる自国通貨安が進む恐れがあるとの見解を示している。
同紙は産油国のナイジェリアについては、原油価格の上昇は理論的には輸出外貨を増加させ、財政を改善させる機会となるものの、国内の原油生産は油田の老朽化や武装勢力の攻撃を受けて不安定であると指摘。また依然として国内需要を満たすために石油精製品の輸入を続けていることから、油価上昇はインフレ率の上昇をもたらす可能性があるとしている。南アフリカについても、安定資産である金の価格高騰は国内の鉱業には追い風となるものの、原油の純輸入国であることが便益を相殺すると指摘。これまで通貨ランドは南アの信用回復を背景に順調に上昇を続けてきたが、イラン情勢を受けて対ドルで2%前後低下したことから、今後国内でのインフレ圧力が高まると指摘している。
こうしたエネルギーや為替といった経済への影響のみならず、より直接的、物理的に紛争の影響を受ける恐れがある地域が「アフリカの角」だ。国際危機グループ(ICG)が3月4日に発表した特別レポートによると、イランとの連帯を示しているイエメンの武装組織・フーシ派や、フーシ派と協力を進めるソマリアのアルカイダ系組織アル・シャバブが、アフリカの角地域にある米国、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)などの軍事資産を攻撃する可能性があるとのこと。具体的にはソマリランドのベルベラ港にあるUAEの軍事基地や、ジブチの米軍基地などを標的にする恐れがあり、ジブチにあるその他の国々の軍事基地(中国、日本、フランス、イタリア)も偶発的に巻き添えとなるリスクを指摘している。
また、同レポートでは、イランから報復攻撃を受けているサウジアラビアとUAEが、対イラン作戦を機に協力関係に転じることで、紅海周辺での両者の覇権争いが緩和される可能性があるとの見方も示している。地域のイスラム過激派の根絶と物流などの経済的利益を最優先とする戦略をとるUAEに対して、紅海周辺の安定が難民の流入を防ぐとして安定化を求めるサウジアラビアは、互いに代理戦争を繰り広げてきた。スーダンの内戦でもUAE、エチオピアは反政府系武装勢力「即応支援部隊(RSF)」を支援する一方で、サウジアラビア、エジプト、トルコ、イラン、パキスタンはスーダン国軍(SAF)を支援。ソマリランドの独立にあたってもUAEはイスラエルと協力して承認に回る一方で、サウジアラビアはエジプトやソマリアと連携してこれに反対する姿勢をとってきた。しかし、今後UAEとサウジがより多くの資源を共通の脅威である対イラン作戦に投じる必要が生じれば、こうした対立が弱まる可能性があるとの見方だ。
他方でICGは、イラン・フーシ派の弱体化によりイランの紅海/アフリカの角地域での影響力が低下すれば、再び、安定を求めるサウジアラビア・トルコ軸と、「修正主義的」なUAE、イスラエル、エチオピア軸との間の競争・緊張が拡大すると推測している。
- [インドネシア/格付見通し引下げ]3月4日、格付機関フィッチ・レーティングスは、インドネシア政府の長期外貨建て格付の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引下げた。格付はBBBにて据え置いた。
見通し引下げ理由に関し、フィッチ・レーティングスは、大統領の下で政策決定プロセスの中央集権化が進んでいる中で、同国の政策の不確実性が増大していることや、財政・金融政策のポリシーミックスの一貫性が損なわれていることを挙げている。
2月5日には、格付機関ムーディーズが格付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。引き下げの理由について、政策の実効性に関するリスクと、政府のガバナンスの脆弱化を挙げた上で「この傾向が続けば、堅調な経済成長とマクロ経済・財政・金融の安定を支えてきたインドネシアの長年にわたる政策信頼性が損なわれる可能性がある」と指摘している。2月26日には、格付機関S&Pレーティングズのソブリン格付担当者がアジア太平洋向けに実施したウェビナーの中で、同国の財政状況悪化が続いた場合は格付を引き下げる可能性があると言及するなど、主要格付機関3社による格付・見通し引き下げの動きが直近で相次いでいる。
1月に公表された2025年財政赤字GDP比は2.9%と、コロナ禍以来の最高値を記録しており、法定上限である3.0%まで迫っている。コモディティ価格高騰一服を踏まえたロイヤリティ収入低下も要因ではあったものの、無料給食配布プログラムや上記景気対策による歳出増加も響いた形となった。また1月には、中銀の副総裁候補に、自身の甥であり、財務副大臣であったトーマス・ジワンドノ氏を指名するなど(その後2月に副総裁に着任)、金融政策にも自身の意向を反映することが懸念視されている。
直近のイラン情勢悪化を踏まえた原油価格高騰が財政状況に与える影響についても懸念されている。同国ではガソリンなどの一部石油製品向けに燃料補助金を拠出しているが、原油価格・ガソリン価格高騰により補助金が増加し、財政赤字を拡大しかねない。プルバヤ財務相は財政赤字GDP比を3%に抑制させ続けると発言してはいるが、現時点で既に財政赤字GDP比が法定上限まで0.1ポイントまで迫る中で、どのように赤字を抑制させるのか、市場関係者の間では不透明感が残っている。なお財務省は、仮に原油価格が1バレル90ドルまで上昇した場合、財政赤字GDP比は3.6%まで拡大すると予測している。
- [ベネズエラ/鉱物への投資改革]ベネズエラの暫定大統領デルシー・ロドリゲス氏は、米国内務長官ダグ・バーガム氏とカラカスで会談した後、同国の主要鉱業法を改正する法案を数日以内に議会へ提出すると述べた。ベネズエラの現行鉱業法は1999年に制定され、すべての鉱山、鉱床を国有財産と明記していた。両者は鉱物資源分野での協力と投資拡大に向け、関係強化に前向きな姿勢を示した。バーガム氏は、20社以上の米国企業を率いてベネズエラを訪問している。これらの企業は、同国に数十億ドル規模の投資と雇用をもたらす可能性があるとされている。
表面上は、トランプ大統領はロドリゲス氏の協力姿勢を称賛しており、3月4日にも「素晴らしい仕事をしている」と述べて、石油の輸出が再び動き始めていると評価した。
しかし、こうした友好的な外交姿勢とは裏腹に、トランプ政権は舞台裏で圧力を強めている。米司法省は報道を否定しているものの、ロドリゲス氏自身の汚職やマネーロンダリング容疑の可能性を米政府が指摘し、また米国が引き渡しを望む元幹部らの拘束を求めていると報じられている。米国は、ロドリゲス大統領の協力が弱まれば、ベネズエラに対してより強硬な対応を取る可能性がある。
ロドリゲス大統領が議会に提出する予定の鉱業法改正には、金、ダイヤモンド、希土類(レアアース)などの資源について、外国企業が採掘に参入できるようにする条項が盛り込まれる見通しだ。しかし、20年前の大規模国有化によって政府は複数の外国企業(クリスタレックス、ゴールドリザーブ、ルソロ鉱業など)に対し多額の負債を抱えている。また、希土類については埋蔵量調査が実施されておらず、ベネズエラ国内で確認されているわけではない。2018年に政府が公表した鉱床報告は、埋蔵量と資源量が混同されており、2021年にはアンチモン、銅、ニッケル、コルタン、モリブデン、マグネシウム、銀、亜鉛、チタン、タングステン、ウランなどの存在は示されたが、具体的な量は記載されていなかった。これまでにイラン企業が二国間協定の一環として鉱山資源の探査を行っているものの、商業的な投資につながる成果は得られていない。こうした状況から、法改正が可決されても実際の投資拡大には、資源量の透明化、資産保護の信頼性、制裁環境の改善など複数の課題が残るとみられる。
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