- [マダガスカル/民政移管]6月29日、南部アフリカ開発共同体(SADC)は臨時総会をオンラインで開催し、民政移行期間中のマダガスカルに対して、明確な期限と透明性のあるプロセスを通じて、憲法に基づく体制を回復するよう強く求めた。また、マダガスカルの「再建」大統領を務めるミカエル・ランジアニリナ前大佐に対して、政治犯の釈放のほか、「ジェネレーションZ」のメンバーに対する恣意的な逮捕の停止、政治亡命者の帰国を求めた。
マダガスカルでは拡大する貧困と格差や、電力・水道供給の不安定化をきっかけに2025年9月以降、「ジェネレーションZ」を中心とする若者らの抗議が活発化した。10月にランジアニリナ氏率いる軍特殊部隊が全権の掌握を発表するなど事実上のクーデターが発生。ランジアニリナ氏は24か月以内の民主的な選挙の実施と民政移管を公約に掲げ、暫定的な再建政府を運営している。
このクーデターを受けて、アフリカ連合(AU)はマダガスカルの参加資格を停止処分とした。一方で、SADCは停止処分を課さず、事実関係の調査や対話を継続し、マダガスカルの民政復帰を支援する立場を取ってきた。マダガスカルは2009年にクーデターが発生した際には、AUとSADCの双方から参加資格を停止され、国際社会から孤立する中で投資、援助、貿易が激減したことから、再建政府としてはSADCによる参加資格停止は回避したい状況だ。
2027年10月までに選挙を行うスケジュールから逆算して、5月から新憲法制定に向けた国民協議を行い、新憲法の草案を作成し、2027年6月に国民投票を行う予定だったが、いまだ国民協議は実施されていない。そのため、選挙の実施はさらに後ろ倒しになる可能性があるとの指摘もある(6月23日、RFI)。
また、ランジアニリナ氏率いる再建政府も不安定な状況が続く。同氏はこれまで2回、自身の殺害未遂事件が発生したと述べているほか、早くも3月に内閣の解散を実施。4月の反政府デモの参加者を逮捕・拘留したことに批判が集まるほか、フランス外交官がクーデター未遂事件に関与したとして国外追放するなど旧宗主国フランスとの外交関係も悪化している。クーデターにより国外に逃亡したラジョエリナ前大統領は現在も帰国しておらず、旧政権幹部や同氏の支持者だった企業幹部などはさまざまな容疑で逮捕、拘束、捜査されるなど「粛清」に近い状況との指摘もある。
こうした背景から、SADCは民政移行まで「明確な期限」を設けること、そして政治犯の釈放などを求めたとみられる。SADCはマダガスカルの改革を支援するため、首都アンタナナリボに連絡事務所を新設することも発表したが、順調に民政移管プロセスが進むか、不透明な状況が続く。
- [アルゼンチン/ガスPG進展]アルゼンチンの巨大シェール層「バカ・ムエルタ」を巡るガス輸出計画は、イタリアのエネルギー大手ENIと、アブダビ国営石油会社系の投資部門XRGが参入したことで、実現に向けて大きく前進した。両社は6月29日に、アルゼンチン国営企業YPFが保有するガス開発プロジェクトの持分を取得する契約に署名した。今回の取引では、3つのガスブロックについて、ENIとXRGがそれぞれ32%を取得し、YPFが残りの36%を保有する構成となる。運営は引き続きYPFが担う。
これらのブロックで生産されるガスは、将来的にアルゼンチンのLNG輸出プロジェクトに供給される予定で、輸出施設の完成前にガス供給源を確保し、資源確保と輸出体制構築を同時に進めることになる。
ENIは浮体式液化設備(FLNG)に強みを持つ企業であり、XRGは中東を中心に世界各地でガス事業を展開している。両社が今回の投資に踏み切った背景には、世界的なガス需要の高まりがあり、地政学リスクの比較的低い新たな供給源としてアルゼンチンへの関心を高めている。
バカ・ムエルタは世界有数のシェールガス資源とされており、開発が進めば安定的な供給源となる可能性がある。XRGもこの点を評価し、同地域を世界で最も魅力的なガス資源の一つと位置付けている。今回の参入により、アメリカ、アゼルバイジャン、モザンビークなどに続く同社の国際エネルギー投資網がさらに拡大する形となる。
輸出計画の中核となるのが「アルゼンチンLNG」と呼ばれるプロジェクトで、もともとはマレーシアのペトロナスと進められていたが、提携が解消されたため、YPFは新たなパートナーを探していた。今回のENIとXRGの参入は、その空白を埋める形となり、計画の実現可能性を大きく高めたといえる。
アルゼンチンにとって、このプロジェクトの成功は単なるエネルギー開発にとどまらない。外貨不足に悩む同国にとって、LNG輸出は外貨収入の柱となり得る重要な戦略である。ミレイ政権は経済安定化を最優先課題としており、エネルギー輸出による外貨獲得はその中核に位置付けられている。今回のような大手企業の参入は、資金面だけでなく、国際的な信頼性の向上にも寄与する。
さらに、この動きは南米全体のエネルギー地図にも影響を与える可能性がある。将来的には、周辺国がアルゼンチン産ガスの輸送や購入を巡って競合する構図が生まれるとみられる。ただし、課題は依然として残っている。実際に輸出を開始するためには、浮体設備の建設、資金調達、規制承認などをすべてクリアする必要がある。どれか一つでも遅れれば、計画全体に影響が及ぶ可能性がある。それでも、今回の投資はバカ・ムエルタの潜在力を現実の輸出ビジネスへと近づける重要な転機であり、具体的な資金とパートナーを得たことで、実行段階に入りつつあると評価できる。
- [ユーロ圏/物価上昇率の鈍化]EU統計局(Eurostat)によると、6月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+2.8%だった。上昇率は5月(+3.2%)から鈍化し、5か月ぶりに前月から低下した。2026年上半期を振り返ると、上昇率は1月に+1.7%、2月に+1.9%とほぼECBの中期目標の2%並みだったものの、中東紛争の発生後、5月の+3.2%にかけて拡大してきた。なお、物価の基調を表す食品とエネルギーを除くコア指数は+2.4%と、5月(+2.6%)から縮小した。上昇率は2か月ぶりに2%台前半になり、2月と同じだった。
内訳を見ると、食品が+1.6%と5月(+1.9%)から縮小した。中東情勢が緊迫化する中で、1月の+2.6%から5か月連続で上昇率は縮小しており、2か月連続で2%を下回った。一方、エネルギーは+8.7%と高い伸び率であり、4か月連続でプラスになった。ただし、4~5月(いずれも+10.8%)の2桁上昇から鈍化しており、一時期よりも勢いを失ったように見える。その他の財は+0.9%で横ばい。サービスは+3.2%となり、5月(+3.5%)から低下し、1~3月(+3.2~+3.3%)並みになった。
域内を見ると、マルタ(+1.9%)やフランス(+2.0%)は目標の2%程度にとどまった。それに対して、リトアニア(+5.5%)やブルガリア(+5.3%)が5%を上回るなど、高い伸び率だった。主要国では、ドイツ(2.4%)が2%台前半だった一方で、イタリア(+3.1%)やスペイン(+3.6%)では高めの上昇率だった。
こうした状況を受けて、ラガルドECB総裁は1日、物価の上振れと経済の下振れリスクは、数週間前よりも均衡しているという認識を示した。このまま物価上昇率が縮小に向かえば、追加利上げの必要性が低下する一方、再び拡大に向かえば、その抑制のために追加利上げが求められることになる。
- [日本/鉱工業指数(5月速報値)]6月30日に経済産業省が公表した鉱工業指数の5月速報値は、生産・出荷で前月比上昇、在庫で低下した。 生産指数(2020年=100/季節調整値)は103.0で前月比+0.5%と、4月と同じ上昇率で、2か月連続上昇した。基調判断は「一進一退」に据え置いた。
5月の生産を業種別でみると、全15業種のうち7業種が前月比上昇し、8業種が低下した。上昇したのは輸送機械工業(除、自動車工業)で+4.6%(航空機用発動機部品等)。そのほか、無機・有機化学工業で+3.7%(ポリエチレン、パラキシレン等)、石油・石炭製品工業で+9.1%(ガソリン、灯油等)となり、中東情勢による供給制約の反動から上昇したとみられる。
低下したのは、汎用・業務用機械工業で▲6.2%(分析機器、コンベヤ等)、電気・情報通信機械工業で▲5.1%(ノート型パソコン、半導体・IC測定器等)、生産用機械工業で▲3.6%(フラットパネル・ディスプレイ製造装置、産業用ロボット等)。
また、先行き2か月について、主要企業の生産計画から算出した生産予測指数は、6月は+3.7%と増産を見込んでいる一方、7月は6月の計画から横ばいの見込み。ただし、生産計画は生産実績より上振れする傾向があり、前月調査時の5月生産計画は5.1%だったが、実際には+0.5%となった。
上昇を見込んでいる6月の計画について実績との間で生じるズレを統計的に補正すると+2.6%となり、さらに7月の横ばい予測も勘案すると、中東情勢への懸念は和らぎつつあるものの、生産は当面一進一退の状態が続きそうだ。
出荷指数は101.6と、前月比+0.6%と2か月連続で上昇した。全15業種のうち6業種が上昇、9業種が低下した。 設備投資の一致指数として注目される資本財出荷指数(除く輸送機械)は107.4で▲6.2%と、2か月ぶりに減少した。2026年1月6.1%、2月▲5.5%、3月▲1.1%、4月+4.8%と変動が大きく、中東情勢の影響を受けて企業の設備投資動向が揺らいでいるとみられる。
在庫指数は95.4と、前月比▲0.6%と3か月連続で低下した。全15業種のうち9業種で低下、6業種で上昇した。 低下は、自動車(▲5.4%)、電気・情報通信機械工業(▲3.0%)、生産用機械工業(▲1.8%)など。 上昇は、石油・石炭製品(+3.6%)、鉄鋼・非鉄金属工業(+0.5%)、電子部品・デバイス工業(+1.5%)など。
- [ENIとMercuria、世界規模のエネルギートレーディングJV設立へ]7月1日、イタリア石油大手ENIとスイスの資源商社Mercuriaは、石油・LNG・天然ガス・LPG・バイオ燃料などエネルギー関連商品のグローバルトレーディング事業を手がける合弁会社(JV)の設立で契約を締結したと発表した。出資比率はENI52%、Mercuria48%。報道ベースでは、規制当局の承認を経て、2027年の事業開始が見込まれている。
新会社では、ENIが持つ上流・中流・下流資産や物流網と、Mercuriaのトレーディング、リスク管理、市場分析機能を組み合わせ、物理的なエネルギーフローの最適化や市場アクセス強化を図る。市場環境の変化やエネルギー市場の複雑化を背景に、両社の強みを組み合わせることでサプライチェーン全体の競争力向上を図るとしている。
近年はロシア・ウクライナ戦争や中東情勢などに伴う市場のボラティリティ拡大を背景に、エネルギートレーディング部門の収益力は急速に高まっている。欧州石油メジャーのShell、BP、TotalEnergiesのトレーディング部門は今年第1四半期だけで巨額の利益を計上し、独立系のTrafiguraやMercuriaも大幅な増益が続く。近年はVitolやTrafiguraなどが資産取得を進める一方、石油メジャーはトレーディング機能を強化しており、今回のJVは両者の境界が薄れつつあることを象徴する動きとして注目される。
- [ウクライナ/大統領選実施論が浮上、ザルジニー氏は出馬意欲示す]ウクライナで大統領選挙の実施を巡る議論が活発化している。7月1日、ウクライナ主要メディア『ウクラインスカ・プラウダ』によると、前軍総司令官のザルジニー駐英大使がゼレンスキー大統領と面会し、秋に大統領選が行われれば出馬する意向を示したと報じた。ザルジニー氏は国民の間で人気が高く、次期大統領候補の一人とされる。面会は、先週、キーウで行われたと、同メディアは報じた。大統領選の出馬意向を問われたザルジニー氏は「出馬するつもりだ」と明言。多くの人が自分に期待しているとし、「彼らの信頼を裏切る理由がない」と話したという。ゼレンスキー氏とその周辺は、ザルジニー氏との対立が国内社会の分断を招くことを懸念。高官らが、両氏の争いは「国家にとってのリスク」だと説明したが、ザルジニー氏の意向は変わらなかったとされる。世論調査によると、第1回投票では、投票先を決めている有権者のうち約33%がゼレンスキー大統領を支持し、ザルジニー前総司令官は約22%、ブダノウ国防省情報総局長は約14%の支持を得ている。
しかし、『ウクラインスカ・プラウダ』が引用した調査結果では、決選投票になった場合、ゼレンスキー大統領はザルジニー氏に敗れる見通しで、支持率はそれぞれ約32%対37%となる。一方、ブダノウ氏との対決ではゼレンスキー氏が勝利とされているものの、その差はごくわずかにとどまっている。
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