- [米国/ガソリン税引き下げ]5月11日、トランプ大統領は連邦ガソリン税の一時凍結を支持すると発言した。連邦ガソリン税は、ガソリンに対してはガロン当たり18.4セント、ディーゼル燃料に対しては24.4セントを賦課するもので、1932年から施行。これまで同税制が停止された前例はないが、課税を止めるためには連邦議会による立法措置が必要となる。2026年3月に野党・民主党がガソリン税の一時停止を求める法案を提出した経緯もあることから、少なくとも上院では超党派の合意を得られる見込みがある。米国では連邦ガソリン税に加えて、各州による燃料税が付加されることも一般的で、インディアナ州、ジョージア州などではすでに燃料税の一時停止が始まっている。ガソリンの全米平均価格が4.5ドルを超える現状では、連邦ガソリン税の停止に伴う消費者への経済的メリットは限定的と目されているが、トランプ政権としては消費者の負担感軽減に向けて、出来得る限りの措置を講じていくものと推察される。
- [アルゼンチン/新投資誘致構想]2026年5月、アルゼンチンのミレイ大統領は、既存の大型投資奨励制度であるRIGIを大幅に強化した新制度「SUPER RIGI(スーペルRIGI)」を導入する方針を公表した。これは2024年に始まったRIGIの上位制度として構想されており、従来の優遇措置では動かなかった超大型・長期の外国直接投資を呼び込むことを狙うもの。大統領は、本制度を法案として議会に提出する考えを明らかにしたが、現時点では法案段階にあり、最終的な条文は確定していない。
本制度の根本的な狙いは、資源を掘って輸出するだけの経済構造から、付加価値の高い産業拠点への転換にある。これまで、銅やリチウム、天然ガスといった資源を原材料のまま輸出する比重が高かったが、政府は今後、電池や電気自動車、再生可能エネルギー関連機器、AI向けデータセンター、原子力関連、LNG設備といった分野での製造・加工投資を呼び込みたい考え。
SUPER RIGIでは優遇内容がさらに強化され、法人税率は現行RIGIの25%固定から15%へと引き下げられ、設備投資については初年度に60%を一気に償却できる加速度的な減価償却が想定されている。輸出税は完全免除、プロジェクトに必要な資本財や部品の輸入関税は即時ゼロとされる見通しが示されている。さらに、州の売上税や市町村税といった地方税にまで踏み込み、参加する州については税率に上限を設け、市町村税はゼロとする構想もある。想定される投資規模は、1案件あたり数十億ドル規模とされる。
政府によれば、既存RIGIの下でも審査中・計画中の案件は累計で約1,000億ドル規模に達している。特に、鉱山開発から精錬、さらに電池や電気自動車生産までを一体で行う垂直統合型の大型案件にとっては、制度の方向性は合理的である。一方で、法案がまだ成立していないこと、為替や資本移動規制の完全解除が実現していないこと、そして政権の政治基盤が弱いことから、市場の関心を引く可能性は高いが、法的な確定を待つまでは具体的な検討にまで至るかは未知数と言える。
また、最大の不確実要因として、ミレイ政権は連邦議会の上下両院で安定多数を持っておらず、野党勢力や州代表からは大企業や外資に対する過度な優遇、税収の空洞化といった批判が強い。とりわけ、地方税に上限を設ける設計は、連邦制の原則を侵害するとの反発を招きやすく、州政府との調整は難航が予想される。また、投資規模の要件が大きいため、国内の中堅・中小企業からは、自分たちは恩恵を受けられないとの不満も出ている。
今後の展開としては、参加を希望する州を募る方式で制度を動かし、資源と製造を組み合わせた超大型案件が実現する可能性もあるが、議会での対立が解消されず、SUPER RIGI自体が形骸化することもあり得る。
- [日本/慎重さうかがえる個人消費]総務省によると、3月の実質総消費動向指数は前月比0.0%と、2か月連続で横ばいだった。2026年第1四半期(Q1)は前期比+0.1%であり、2025年Q4(+0.0%)に続いてほぼ横ばいだった。2025年Q2とQ3がともに+0.5%だったことを踏まえると、ここ半年の個人消費は慎重な動きだったと言える。
ただし、名目の総消費動向指数は3月に前期比+0.3%となり、2月(+0.1%)から加速した。26年Q1は前期比+0.5%と、25年Q3(+0.7%)やQ4(+0.8%)から減速した。名目の変化率が実質を上回っている分だけ、物価上昇の大きさがうかがえる。
また、3月の実質総消費動向指数は前年同月比+0.8%であり、2025年2月から2026年1月まで1%台だった伸び率から縮小した。その一方で、名目は+2.7%となり、2月(+2.9)から縮小した。2025年1~11月は4%台の伸び率からも縮小している。
一方、総務省「家計調査」によると、3月の実質消費支出(2人以上の世帯)は、前年同月比▲2.9%と、4か月連続のマイナスになった。内訳を見ると、食料(▲2.9%)は2か月連続で減少した。特に、酒類(▲19.8%)が12か月連続で減少したことが目立った。また、その他の消費支出(▲8.0%)は6か月連続で減少した。そのうち、こづかい(使途不明)(▲26.6%)が大幅に減少し、交際費(▲18.5%)も2桁減になった。その他では、自動車購入(▲52.5%)が大幅に減少した。自動車購入時にかかる「環境性能割」が3月末で終了する前に、買い控えが影響したとみられる。
- [ウクライナ/ゼレンスキー大統領元側近捜査]5月11日、ウクライナメディアは、国家汚職対策局(NABU)などが、ゼレンスキー大統領の最側近だったイエルマーク前大統領府長官を、マネーロンダリング(資金洗浄)に関与した容疑で捜査していると本人に通知したと報じた。報道によると、イエルマーク氏は首都キーウ近郊の高級住宅の建設計画に絡み、約4億6,000万フリブニャ(約16億4,000万円)の資金を洗浄した疑い。資金は犯罪収益だったとみられる。イエルマーク氏は在職時、政権中枢の人事を掌握したほか、外交などで絶大な影響力を行使し、「影の支配者」と称されていた。
ウクライナを揺るがす「ミンディッチゲート」と呼ばれる大規模な汚職スキャンダルへの関与が指摘され、イエルマーク氏は2025年11月に既に解任されたが、ゼレンスキー氏の任命、監督責任が改めて問われる可能性もある。
- [英国/ブリティッシュ・スチール国有化に向けた動き]英国のキア・スターマー首相は、ブリティッシュ・スチールの完全国有化に向けた法案を議会に提出すると発表した。この国有化の動きは、国家の安全保障の確保、重要インフラの維持、そして経済の支援という「公共の利益テスト」を満たすものとして位置づけられている。
同社は2020年初頭に中国企業Jingyeによって買収されたが、Jingyeはスカンソープ工場にある英国で最後となる高炉2基を閉鎖する計画を立てていた。高炉が失われれば、英国は鉄鉱石から新しい鉄を製造する一次鉄鋼生産能力を失うことになるため、2025年4月に、政府は緊急介入し、工場の日常運営を引き継いで実質的な政府管理下に置いていた。その後、政府はJingyeとも協議を続けていたが、売却合意には至らず、最終的に完全な国有化への移行が決断された。
政府の管理下での運営には巨額の費用がかかっており、現在、1日約100万ポンドが支出されているとされている。このままでは2028年までに15億ポンドを超える可能性があると指摘されており、今後、国有化に伴いJingyeへの補償額などを算定する独立した企業価値評価が行われる見込みだ。
この政府の決定に対し、労働組合や、業界団体のUK Steel(英国鉄鋼業界団体)は歓迎している。ブリティッシュ・スチールは、国内の鉄道網などのインフラ向けに戦略的に重要な鉄鋼を供給しており、3,500人の従業員だけでなく、サプライチェーン全体で数万人の雇用を支えている。同社は1967年に設立されたのち、サッチャー政権下で民営化されていたが、今回の法案が成立すれば、1988年以来となる本格的な政府管理下に置かれることになる。
- [フランス・アフリカサミット]5月11~12日にかけて、フランス・ケニア政府主催の「Africa Forward Summit」がケニアのナイロビで開催されている。これまで「フランス・アフリカ首脳会議」として過去28回開催されていたが、今回から名称が変更されたほか、アフリカの英語圏での開催は初となった。同サミットにはマクロン大統領、ケニアのルト大統領、約30のアフリカ諸国首脳のほか、ナイジェリアのダンゴテ・グループ、仏資源大手・トタル・エナジーズなどの企業幹部が参加。仏・アフリカの官民あわせ総額230億ユーロの投資がコミットされたと報じられている(5月11日付、ロイター通信等)。
2017年に就任したマクロン大統領は、アフリカの旧植民地がフランスの経済的支配下におかれているとの批判(フランサフリック)を受け、アフリカとの関係を「再構築する」ことを公約に掲げた。同氏はこれまでアフリカ20か国以上訪問するなど、歴代の大統領の中で最も積極的にアフリカにアプローチしてきた人物だ。しかし、それと逆行するように旧植民地で反仏感情が高まり、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、ガボン、ギニアでクーデターが発生。フランス駐留軍が撤退するなどむしろ存在感は低下の一途を辿っている。そうした中で、マクロン大統領は東アフリカおよびインド洋へのゲートウェーであるケニアをはじめ、歴史的なわだかまりのない非仏語圏のアフリカ諸国との関係強化に乗り出している状況だ。
ケニアのルト大統領は2022年の就任以来、米国や欧州との関係を強化する一方で、中国や中東諸国との良好な関係を維持するなど強かな外交を続けている。ケニアとフランスは4月に防衛協定を締結。また、ケニアは6月にフランス・エビアンで開催されるG7サミットにも招待国として招かれる予定だ。
しかし、マクロン氏が仏語圏アフリカで反感を買った理由は、同氏の不器用かつ高慢な態度との厳しい専門家の見方もある(5月11日付、Le Monde紙)。マクロン大統領の退任が2027年に予定されている中、非仏語圏で巻き返しを図ることができるかに注目が集まる。
- [フィリピン/サラ副大統領の弾劾訴追]5月11日、フィリピン下院は本会議にてサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾訴追案を可決した。訴追案可決には下院議席数318議席のうち3分の1(106議席)の賛成が必要となるが、今回は賛成257・反対25(棄権9)と賛成が議席全体の3分の2を上回った。
2028年には次期大統領選挙が実施されるが、フィリピンの憲法では大統領再選が禁止されているため、マルコス現大統領は出馬できない。その中で、サラ氏出馬の可能性が高まっている。同氏は、2022年の大統領・副大統領選ではマルコス大統領と共闘し選挙戦に勝利した。ただその後は、2023年にサラ氏の機密費流用疑惑に対しマルコス陣営が追及したことや、2024年11月にサラ氏が大統領夫妻を殺害するための「殺し屋を雇った」と発言する等が契機となり、両家の対立は決定的となった。これらを踏まえ、マルコス陣営主導でサラ氏に対する弾劾手続きが実行された。2025年2月には、公的機密資金の流用、マルコス大統領夫妻等に対する暗殺脅迫を根拠に下院が弾劾訴追を開始。訴追案は下院にて可決されたものの、フィリピンの憲法では同一人物に対し1年以内に複数の弾劾手続きを開始してはならないとの規定を受け、最高裁は弾劾訴追自体に違憲判決を下したことから訴追は無効となった(2024年12月に、市民団体が3件の弾劾告発状を下院に提出)。2026年2月に、最高裁判所が定めた禁止期間が明けたため、下院は再度弾劾手続きを開始した。4月には下院の司法委員会が弾劾審理を開催し、今回の下院本会議での訴追案審議に至った。
大統領選挙の実施までなお2年を残す中で、今般マルコス陣営が弾劾手続きを進めた背景として、マルコス大統領の支持率低下とサラ氏の支持率上昇が挙げられる。マルコス氏が大統領に就任後、2022~24年までは主に高インフレによる生活苦、2025年以降は国会議員・官僚が幅広く関与した治水事業への汚職問題発覚を背景に支持率が低下している。2026年3月時点では36%と50%を下回り続けている。その一方で、サラ氏への支持率は2026年3月時点で55%と堅調に推移しており、政治的な支持が厚いことが分かる。ドゥテルテ元大統領の支持基盤を引き継いでいることや、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕・拘束により有権者から同情を得られたことなどが背景にある。仮にサラ氏が大統領に当選した場合は、マルコス氏及びマルコス陣営に対する政治的な報復措置が取られるとの懸念もある(East Asia Forum、2026年2月8日)。マルコス氏としては、今回の弾劾訴追により公職就任、更には大統領選挙への出馬資格自体を剥奪することで、そのような懸念を解消した狙いがあると考えられる。
今回の下院での訴追可決後、上院にて開催される弾劾裁判にて有罪判決が下されれば、サラ氏の公職就任が正式に禁止されることになる。他方で、5月11日の下院での弾劾訴追案可決の直前に突如、ドゥテルテ派を中心とする13人の議員の動議によりビセンテ・ソット上院議長が解任され、ドゥテルテ家の長年の盟友であるアラン・ピーター・カエタノ議員が新たな上院議長に就任した。副大統領の弾劾裁判は上院議長が裁判長を務めることとなっているため、議長交代により弾劾裁判がサラ氏に対し有利に働くのではないかとの指摘がある(South China Morning Post、2026年5月11日付記事)。
- [『中国の次世代産業政策』レポート]5月11日、米シンクタンクのロジウム・グループは、米商工会議所向け報告書『中国の次世代産業政策』を公表し、中国の産業政策が新たな段階に入ったと警告した。従来の「中国製造2025」が半導体やEVなど重点産業の育成を目的としていたのに対し、現在の中国は、素材、エネルギー、物流、サービス、先端技術までを含む経済全体を国家主導で再編しようとしているという。
同レポートは、中国の政策を「あらゆるものの産業政策」と表現し、補助金や低利融資、輸出管理、規制を総動員して、重要鉱物、化学、自動車、工作機械、ロボット、AIなど幅広い分野で競争力を高めていると指摘する。特に、供給網全体を囲い込む形での支配力強化を重視している。
同レポートによれば、中国の市場シェア拡大が現在のペースで続けば、2030年までにG7諸国の製造業輸出の約12%、最大6,500億ドル分が直接的な影響を受ける可能性がある。とりわけ自動車、機械、化学産業への打撃が大きいとされる。
背景には、中国の輸出競争力の急速な上昇がある。中国は太陽光パネル、高速鉄道、リチウム電池で世界的な優位を築き、EVや産業ロボット、AI分野でも急速にシェアを拡大している。さらに、国内市場では輸入品の国産化も進み、輸入依存を低下させている。2019年以降、中国の財貿易黒字は約2兆ドル規模へと倍増したが、レポートはこれを「中国ショック2.0」と位置付けている。国内需要低迷の中でも過剰生産能力を維持し、海外市場への輸出攻勢を強めているためだ。
また、中国は輸出管理や規制を通じ、他国によるサプライチェーンの多角化を阻止しようとしているとも分析している。レポートは、西側諸国の対応は依然として断片的だと警告し、「有効な対応を取れる時間は限られている」として協調対応を促している。
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概要
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