- [米・イラン/2週間の停戦合意が成立]米国とイランは、2週間の停戦に合意した。トランプ米大統領は、自身のSNSで「イランがホルムズ海峡の完全かつ即時かつ安全な開放に同意することを条件として、2週間にわたりイランへの爆撃及び攻撃を停止する」と発表した。この内容はホワイトハウスの声明としても公表されている。その約40分後、イランのアラグチ外相も、最高国家安全保障会議を代表する形で声明を発表し、イランに対する攻撃が停止されれば同国も攻撃を中止すること、さらに2週間の間、イラン軍との調整を通じてホルムズ海峡の安全な通行を確保することを、自身のXに投稿した。
トランプ大統領は同投稿で、イランから提示された10項目の提案を交渉の基盤とする考えを示しており、アラグチ外相も、トランプ大統領がその枠組みを受け入れたとの発表を踏まえたものだとしている。なお、イランの10項目提案には、イランに対する再攻撃の禁止保証、レバノンにおけるイスラエルの空爆停止、米国による対イラン制裁の全面解除、ホルムズ海峡通過船舶への通行料(1隻200万ドル)の徴収などが含まれるとされる。ホワイトハウスのレビット報道官は、米東部時間4月8日朝にヘグセス国防長官とケイン統合参謀本部議長が詳細を発表する予定であると、自身のXで明らかにした。
また、米国とイランの交渉を仲介したパキスタンのシャリフ首相も、「イラン・イスラム共和国と米国、およびその同盟国が、レバノンを含むあらゆる地域で即時発効の停戦に合意した」とXに投稿し、「最終合意に向けたさらなる交渉のため、4月10日にイスラマバードへ両国代表団を招請する」と発表した。米国からはバンス副大統領が参加する見通しである。
停戦発表を受けて、115ドル台まで上昇していたWTI原油価格は96ドル台まで急落するなど、市場は即座に反応し、短期的には緊張緩和への期待が広がった。それでも、今回の合意はあくまで2週間の暫定的措置に過ぎない。今後は、米国およびイスラエルによる対イラン攻撃が実際に停止されるか、イスラエルによるレバノン空爆の行方、4月10日に予定される交渉の実施と進展、さらにヘグセス国防長官が示す米軍の今後の対応などに注目が集まる。
- [ナイジェリア/原油石油増産]4月2日、ナイジェリア上流石油規制委員会(NUPRC)は3月の原油生産量が日量184万バレルに達したと発表した。
石油輸出国機構(OPEC)に加盟し、アフリカ最大の産油国であるナイジェリアは、原油産出地域での治安悪化と組織的な盗難、油田の維持管理への投資不足による生産性の減少などを理由に、2005年のピーク時の日量250万バレルの生産量を下回る状況が続いている。2026年のOPECによるナイジェリアの生産割当量は日量150万バレルだが、1月は148万バレル、2月はさらに落ち込んで131万バレルと、割当量を下回る生産に留まっていた。NUPRCは2月の生産量の急激な落ち込みは、主要生産施設での事故と、日量22万バレルが生産可能なBonga深海油田のメンテナンスのためだったと説明。しかし、世界的な油価高騰はナイジェリアの原油生産にとって強い追い風となることから、日量200万バレルまで生産量を拡大するとの意気込みを示している。
OPECは4月6日、5月のOPEC加盟国8カ国の生産量割り当てについて20.6万バレルの増産を認める発表を行ったが、ナイジェリアは含まれていなかった。しかし、中東情勢を受けて油価が高騰し、供給が不安定な状況が続く中、ナイジェリアは2月まで割当量以下の生産量に留まっていたことから、直ちにOPECがナイジェリアに補償減産(compensation cut)を求める可能性は低いとみられる。
東アフリカを中心に中東産の石油輸入に依存していたアフリカ各国にとって、ナイジェリアからの原油・石油輸出はまさに「頼みの綱」となりつつある状況だ。ナイジェリア最大のコングロマリット企業であるダンゴテ・グループは、日量65万バレルの精製能力を持つ同社の石油精製施設をフル稼働しており、2028年までにさらに日量140万バレルまで拡大する計画だ。アフリカ各国で石油の調達需要が高まっている中、ダンゴテ社のアリコ・ダンゴテCEOは、3月23日にFOB(船上渡し)条件で、石油精製品45万トン(12船積み分)をコートジボワール、カメルーン、タンザニア、ガーナ、トーゴ向けに輸出したと発表(4月7日付、ロイター通信)。同氏は輸出にあたっての最大の課題は船舶の調達であり、運賃は中東情勢悪化前の4倍に跳ね上がっていると指摘している(4月7日付、Africa Report紙)。ダンゴテ社はナイジェリア国営石油会社(NNPC)が生産する原油を用いて、石油精製のみならず、年間300万トンの尿素肥料生産も行っている。これまでの主要輸出先はブラジル、米国、アルゼンチン、南アフリカ向けだったが(2024年、国連貿易統計)、ダンゴテ氏はアフリカ各国で肥料の需要が高まっていると述べている。
世界銀行のエコノミストは4月7日、ナイジェリアの2026年の実質GDP成長率を4.2%と予測。1月時点の4.4%成長の予測からは下方修正されたが、産油国のナイジェリアでは中東情勢の悪化による経済への打撃が比較的軽微であるとの見通しを示している(4月7日付、ロイター通信)。
ナイジェリア以外にも西アフリカの産油国では製油所の拡張計画が相次いでいる。コートジボワールは日量75,000バレルの精製能力を持つコートジボワール石油精製会社(SIR)の精製容量を17万バレルまで拡大する計画だ。コートジボワールは沖合の深海油田での原油生産を拡大させている一方で、マリ、ブルキナファソといった内陸国への石油精製品輸出のハブとなっている。西アフリカ最古のセネガル国営精油会社(SAR)を持つセネガルも現在の日量約30,000バレルの精製能力を10万バレル程度まで増強する意向を示している。セネガル産石油はマリやギニアといった周辺国のほか、大西洋を通行する船舶のバンカー燃料向けの需要が大きい。ガーナでも、日量45,000バレルの精製能力を持つテマ国営製油会社(TOR)の拡張計画がある。
世界最大の原油・石油生産地域である中東での紛争により、サプライチェーンの混乱と見直しが起こる中、アフリカ域内でも原油・石油・肥料の地産地消の志向が高まっていく可能性がある。
- [ベトナム/「五柱」が決定]4月7日、ベトナム国会はトー・ラム書記長を国家主席に選出した。任期は2031年まで。国会は4月6日より開催されており、会期は2回にわたり実施される。1回目会期は4月6~12日、2回目会期は4月20~23日の予定。議会・司法・立法の主要人事や、社会経済発展5か年計画や国家財政・予算計画など中期計画の評価・検討が主な議題。
ベトナム共産党は、序列別に書記長・国家主席・首相・国会議長の「四柱」ポストによる集団指導体制を採用することで、個人への権力集中を防いできた。国家主席のポストについては、チョン前書記長時代に当時のクアン国家主席が任期中に死去したことを踏まえて2018年10月以降にチョン氏が就任するなど、書記長が兼任する期間も例外的に存在したが、後任が決定されてからは兼任が解消されていた。今回は国会にて正式にトー・ラム氏による国会主席兼任が決定された形である。
トー・ラム氏は出身母体の公安省に所属していた際より、チョン前書記長が進めてきた汚職撲滅運動を通じて、グエン・スアン・フック氏やヴォー・ヴァン・トゥオン氏(いずれも元国家主席)など党内の最高指導部である政治局内の政敵を排除してきたと指摘されている(NPR、2026年1月19日付記事)。2024年8月に書記長に就任以降は、トー・ラム氏と同じく公安省出身のルオン・タム・クアンホーチミン市共産党委員会書記やグエン・ズイ・ゴックハノイ市共産党委員会書記が政治局員入りするなど、公安省出身者を優遇しているのではないかとの懸念が浮上している。これらを踏まえ、今後トー・ラム氏及び公安出身者への権力集中が進むのではないかとも懸念される(The Diplomat、2026年4月7日付記事)。
他方で、行政機関のトップである首相のポストと立法機関のトップである国会議長のポストと異なり、国家主席のポストはあくまで憲法上の国家元首として規定されているだけで、儀礼的なポストでしかないとの指摘もある(The Vietnamese、2021年7月25日)。そのため、兼任がトー・ラム氏への権力集中を招く可能性は低いとの考えも存在する。
なお、2026年1月の党大会にて決定された中央委員200人の構成に関し、人民軍出身者が26人、警察出身者が7人と人民軍・公安省間のバランスを取った形となっている。 また、4月7日、国会はレ・ミン・フン中央組織委員長を首相に選出した。同氏は埼玉大学への留学経験もある知日派であり、2016年には史上最年少で中央銀総裁に就任した。任期中は、不動産セクターの不良債権処理などで実績を残している。
- [中南米/自動車市場]中南米の自動車市場は、2026年に入り予想を上回る勢いで拡大している。経済成長率が必ずしも高くない中でも、自動車販売は力強さを見せている。
メキシコでは、2026年第1四半期の新車販売台数は38万1,632台となり、前年同期比で3.7%増加した。2025年の経済成長率が1.49%にとどまる中でも、2017年に記録した過去最高水準を上回る水準となっている。ブラジルでも市場は拡大を続けており、3月単月の新車登録台数は25万7,801台(前年同月比31.8%増加)に達した。
市場拡大は、中国メーカーの存在が大きい。BYDは、2026年第1四半期にブラジルで3万7,637台を販売し、前年同期比で73.7%の急成長を遂げ、ブラジル市場で販売台数5位のブランドとなった。現在、ブラジルの電気自動車販売の8割以上を中国ブランドが占めている。
この傾向はブラジルだけでなく、チリでは、中国ブランドが2月に約8,000台を販売し、市場シェアは35%に達した。これは日本ブランドを9%上回る水準となっている。メキシコでは、MGが2026年1月に6,100台を販売し、前年同月比で54%増加して販売ランキング7位に急浮上した。BYDも同国のプラグインハイブリッド車および電気自動車販売の約7割を占めている。さらに、コロンビアではBYDが公共交通向けに電動バスのシャーシを現地組立し、アルゼンチンではグレートウォール・モーターがディーラーネットワークの拡充を進めている。
各国政府は、こうした中国勢の急拡大に対し、関税という形で一定の歯止めをかけようとしているが、その対応は国ごとに大きく異なる。ブラジルでは、電気自動車の輸入関税が段階的に引き上げられ、2026年7月までに35%に達する予定である。これは国内生産を行うメーカーに有利な環境を作る狙いだが、BYDやグレートウォール・モーター、長安汽車など中国メーカーは現地生産を開始している。
一方、メキシコはより強硬な姿勢を取っている。2026年1月から、自由貿易協定を結んでいない国の完成車輸入に対して50%の関税を導入した。
USMCAの見直しも、メキシコ市場の先行きを不透明にしている。現在、メキシコの自動車部品の約92%はUSMCAの免税対象だが、協定が弱体化または破棄されれば、国境を越える車両1台当たり約3,000ドルの追加コストが発生すると試算されている。
さらに、ホルムズ海峡を巡る地政学的緊張が状況を複雑にしている。原油価格が高騰し、内燃機関車の燃料コストは大幅に上昇し、電気自動車への需要を押し上げる要因となる。ただし、火力発電への依存度が高い国では、製造、輸送、充電を支える電力コストも上昇するため、問題は複雑化している。内燃機関から電気自動車への転換と、欧米メーカーから中国メーカーへの主導権移行という二つの大きな転換点に同時に直面している。
- [日本/実質賃金プラス]厚生労働省によると、2月の実質賃金は前年同月比+1.9%と、2か月連続のプラスになった。上昇率は、1月(+0.7%)から拡大した。内訳を見ると、現金給与総額(名目賃金)が+3.3%で、1月(+2.5%)から拡大し、2025年7月以来の大きさになった。一方で、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+1.4%と2か月連続で2%を下回った。ともに実質賃金のプラス要因になったものの、物価上昇率の縮小の影響が大きい。なお、共通事業所ベースの名目賃金は+3.1%と、1月(+2.3%)から拡大した。2025年12月(+3.2%)以来の3%台だった。
名目賃金の内訳をみると、所定内給与(基本給)は+3.3%、2か月連続で3%台になった。一般労働者の基本給(+3.7%)に加えて、パートタイム労働者の時間給(+4.2%)も上昇率を拡大させた。また、所定外給与(残業代)は+3.3%、1月(+3.2%)並みを維持した。振れが大きい特別に支払われた給与(ボーナスなど)は+7.1%、1月(▲8.6%)からプラスに転じた。
実質賃金のプラスが継続することで、これまで失われてきた実質購買力が持ち直すことが期待される。2026年度の春季労使交渉の結果を踏まえると、2025年度をやや下回るペースの賃金上昇が継続すると予想される。しかし、足元にかけての中東情勢を受けて、実質賃金の下振れリスクが高まっている。事態が深刻になるほど、ボーナスなど一時金や残業代などが調整され、名目賃金に下押し圧力がかりやすくなる。一方で、エネルギー価格の上昇により、物価には上昇圧力がかかっている。そのため、年初にあった実質賃金がプラスを維持するという見通しの確からしさは、低下していると考えられる。
- [オーストラリア/エネルギー危機]オーストラリアは世界有数のLNG・石炭輸出国である一方、国内では東部州を中心にガス・電力価格の高止まりが長年の政策課題となっている。また、近年の精製所閉鎖を背景に液体燃料(ディーゼル・ガソリン・ジェット燃料)の輸入依存度は約9割に達し、供給構造の非対称性が拡大している。今回の中東情勢悪化により、同国ではガス不足以上に液体燃料の輸入途絶リスクが意識され、ガソリンスタンドでの供給不安や国内物流への影響懸念が浮上。3月30日に連邦政府は国家燃料安全保障計画を発表した。
オーストラリア政府は、短期的な供給不安に対しては既存の貿易関係を軸に対応。日本・韓国・中国・ASEANなどとのエネルギー相互依存関係を背景に、LNG輸出継続姿勢を示すとともに、液体燃料の供給継続について協議。エネルギー相は燃料輸入契約が少なくとも5月中まで確保されていると強調している。
制度面では国内ガス不足時に輸出制限を可能とするADGSM(豪州国内ガス安全保障メカニズム)があり、政府はガス会社に対して発動の「可能性」を正式通知。既存の長期契約には影響しないが、増産ないしスポット販売の抑制による国内供給確保を求めるもので、5月中旬までに判断する方針。政府は既存長期契約の順守と供給国としての信用維持も重視している。
今回の危機は、オーストラリアの精製能力低下、在庫日数の少なさ、インフラ投資承認の遅れなど構造的脆弱性も改めて浮き彫りにした。中長期的な対応策として、電化加速、蓄電池整備、国産バイオ燃料利用拡大などを求める声が上がっている。
- [ロシア/原油高の恩恵は4月以降]2026年3月、中東情勢の緊張を背景に、Urals原油価格は約77ドル/バレルまで上昇したが、税収算定のタイムラグにより財政への即時効果は限定的となっている。同月の石油・ガス関連歳入は前年同月比43%減少し、企業が2026年2月の低水準価格(44.6ドル)を基準に納税していたことが主因である。原油高の恩恵は2026年4月以降に表れる見通しで、現在の価格水準が持続すれば、2026年通年の石油・ガス歳入は予算計画(8.9兆ルーブル、約1,100億ドル)を上回る可能性がある。
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