- [トランプ大統領、イラン攻撃を一旦中止]イランと米国は、パキスタンを仲介役として停戦・和平交渉を続けている。5月18日、イランは14項目からなる新たな提案を米国側に提示し、ホルムズ海峡の通航再開や海上封鎖解除、戦争終結の保証などを求めたと発表した。また、報道によると、米国が核問題を巡り、IAEA(国際原子力機関)の査察を条件に、イランによる限定的な平和目的の原子力利用を一定程度認める方向で柔軟な姿勢を示したとされる。さらに、米国はイラン産原油への制裁緩和や、凍結資産の一部解除にも応じ始めているという。
しかし、ホワイトハウスはイランの新提案を「不十分」と判断しており、トランプ大統領は交渉継続と軍事行動の両方を視野に入れている。実際、イラン攻撃計画は複数回延期されてきたものの、米政府内では依然として軍事オプションの協議が続いている。
そうした中、カタール、サウジアラビア、UAEの首脳らはトランプ氏に対し、イラン攻撃延期を要請し、「交渉によって受け入れ可能な合意が成立する可能性が高い」と訴えた。背景には、イランからの報復によって自国の石油・エネルギー施設が攻撃され、中東経済全体が混乱することへの強い懸念がある。その結果、トランプ氏は5月19日に予定していたイラン攻撃を一旦見送ると自身のSNSに投稿した。ただし、「合意が成立しなければ、大規模攻撃を実施する準備は整えている」とも警告している。
現在は、「交渉継続」と「軍事衝突寸前」が同時に存在する極めて不安定な状況にある。中東諸国は戦争回避を強く望んでいるが、核問題を巡る米イラン双方の隔たりは依然として大きい。さらに、イスラエルや米国内の強硬派は軍事行動を強く主張しており、今後、小規模な空爆であっても発生すれば、イランがUAEやバーレーン、クウェートなどに報復する可能性が高い。その場合、世界のエネルギー市場やアジア・欧州経済にさらなる深刻な打撃が及ぶ恐れがあり、今後数日間の交渉が極めて重要な局面となっている。
- [コンゴ民主共和国/エボラ出血熱流行]5月17日、世界保健機関(WHO)はコンゴ民主共和国(DRC)を中心に拡大しているブンディブギョ・ウイルスによるエボラ出血熱が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると発表した。WHOの警戒レベルとしては2番目に高いが、最も高い「パンデミック緊急事態」には該当しない。アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)の5月18日の発表によると、DRC北東部でウガンダに国境を接するイトゥリ州を中心にエボラ出血熱の症例が急増しており、これまで死者105人、感染が疑われる症例が395件報告されている。隣国ウガンダの首都・カンパラでも死亡例が報告されたほか、イトゥリ州で活動していた米国人宣教師兼医師の感染も確認されている。
1976年にDRCで発見されたエボラ出血熱は、主にサブサハラ・アフリカに分布するオルソエボラウイルス群によって引き起こされる。人獣共通感染症のエボラウイルスは、果実コウモリなどからヒトに感染し、患者から排出される体液(嘔吐物、血液等)に接触することでヒト間での感染が広がる。サブサハラではこれまで17回にわたりエボラ出血熱の「アウトブレイク」が発生しているが、そのほとんどがザイール・エボラウイルスによるものだ。今回感染が拡大しているブンディブギョ・ウイルスも過去2回流行が見られたが、比較的小規模にとどまり、ザイール型と異なり有効なワクチンや治療薬が存在しない。そのためブンディブギョ型に関する科学的知見が蓄積されていないことが、初期の発見を遅らせ、症例の確認が急増している背景にあるとみられている(5月18日付、ロイター通信等)。
過去のブンディブギョ型ウイルスによるエボラ出血熱の死亡率は30%程度と米・疾病予防管理センター(CDC)は報告している。WHOはエボラ出血熱の平均致死率は50%程度との発表を行っており、ブンディブギョ型の致死率は相対的に低いが、DRCでの感染拡大の全容が把握できていない点が国際的な懸念を高めている。イトゥリ州はDRCを代表する金の採掘地であり、今回のアウトブレイクの中心地も金鉱業の中心であるモンブワルで発生した。世界的な金の価格高騰を受けて、銅地位では金の採掘活動に伴う激しい人口移動が起きている。金の採掘は主に小規模採掘者(ASM)の手により行われるため衛生対策も乏しい。また金の大部分は隣国ウガンダに輸出されているため、流通を通じてウガンダへの感染拡大も懸念される。さらに検査・医療活動を阻んでいるのが同地域の治安問題だ。イトゥリ州には豊富な金資源を背景に、イスラム国と関係のある「民主連合軍(ADF)」や「コンゴ開発協同組合(CODECO)」ら反政府武装組織がDRC・ウガンダ連合軍と戦闘を行っているほか、民間人への襲撃などを続けている。また、イトゥリ州の南部の北キブ州の大部分はルワンダの支援を受けた武装勢力「M23」が実効支配しているため、政府や国際機関が支援の手を伸ばしづらい。米国をはじめアフリカ向けの医療支援が減少していることも流行の封じ込めに影響を及ぼす恐れもある。
- [インド/米当局がアダニ・グループへの訴訟を取り下げ]5月18日までに、米国司法省はアダニ・グループ(AG)の創業者ゴータム・アダニ氏に対する刑事訴追を取り下げると発表したほか、財務省外国資産管理局(OFAC)も和解金(2億7,500万ドル)の支払いを条件に、アダニ・グループ傘下のアダニ・エンタープライズ(AEL)に対するイラン制裁違反に関する調査を打ち切ると発表した。また米国証券取引委員会(SEC)は5月14日に、アダニ氏と甥であるサガル・アダニ氏に対する民事訴訟について、両者より総額1,800万ドルを受け取ることでの和解することに合意したと発表した。なお刑事訴追取り下げとSECとの和解に関しては、連邦地方裁判所ニューヨーク東部地区の担当裁判官の承認が必要となる。
刑事・民事訴訟は、いずれもAG傘下のアダニ・グリーン・エナジー社およびアズール・パワーがインド政府から自社に有利な売電価格にて太陽光発電案件を落札するために、2020年から2024年にかけてインド当局者に対し合計2億5,000万ドル以上の賄賂を支払った疑惑を受けたもの。2024年11月にニューヨーク東部地区連邦検察がゴータム・アダニ氏らを証券詐欺・贈賄の疑いで起訴した。OFACによる調査は、AEL社がオ?マーン産・イラク産として輸入したLPGが、実際にはイラン産であったとの疑惑が浮上したことから、2025年より実施されていたもの。
今回の決定の背景には、アダニ氏が米国向け投資をカードとして利用したとの見立てが複数挙げられている。同氏はトランプ大統領が大統領選挙に勝利した直後にXにて米国向けに約100億ドル規模の投資を実施する予定である、それにより1万5,000人の雇用創出が期待されると投稿していた。4月には、アダニ側の弁護団を務め、過去にはトランプ大統領の弁護士でもあったサリバン&クロムウェル法律事務所のロバート・ジュフラ氏が司法省に対して、刑事訴訟が継続している限りはAG社が米国向けに投資を実施することは困難であると伝えたもよう(Wall Street Journal、2026年5月18日付記事)。トランプ政権は米国向け投資呼び込みを優先し、訴訟取り下げに至ったとの見方がある(Al Jazeera、2026年5月18日付記事)。
今回の決定により、AG及び参加企業の資金調達にポジティブに働く見込みである。同グループは2025年9月時点で約2.78兆ルピー(290億ドル)の純有利子負債を抱えているが、有利子負債のうち41%が海外の銀行・国際資本市場から調達したものである(CNBC、2026年5月15日付記事)。これまでは海外投資家よりリーガルリスクを忌避されたことで不利な条件でのリファイナンスを強いられたが、今回の訴訟取り下げによりリファイナンスの条件が改善することが見込まれる(Financial Times、2026年5月15日付記事)。
- [ブラジル/インフレ見通し上方修正]5月18日、ブラジル財務省は、2026年のインフレ率見通しを大幅に引き上げたと発表した。3月時点では3.7%としていた予測を、4.5%へと修正し、ブラジル中央銀行が設定するインフレ目標である3%に対し、上下1.5ポイントの許容幅を設けた際の上限にあたる。今回の修正は、中東情勢の緊張が原油や燃料価格を押し上げていることに加え、金融緩和のペースが当初想定よりも緩やかになるとの見通しを反映したものである。
財務省の経済政策事務局によれば、2026年の平均原油価格の前提は、2か月前の予測から約25%引き上げられ、1バレル当たり91.25ドルとなった。
金融政策について、政府は中央銀行が2026年3月に開始した利下げサイクルにより、年末時点の政策金利であるセリック金利が13%にとどまると見込んでいる。これは、従来想定していた12%から上方修正された水準である。現在のセリック金利は、中央銀行が2会合連続で0.25ポイントずつ利下げを行った結果、14.5%となっている。
こうした修正にもかかわらず、政府の見通しは依然として市場よりも楽観的である。中央銀行が実施する週次のエコノミスト調査では、インフレ予測が10週連続で引き上げられ、2026年のインフレ率は4.92%に達している。あわせて、市場参加者は年末時点のセリック金利を13.25%と見込んでおり、政府見通しよりも引き締まった金融環境を想定している。
実体経済については、政府は2026年の国内総生産成長率を2.3%と据え置いた。第2四半期から第3四半期にかけてはいったん減速するものの、年末に向けては小幅な回復を見込んでいる。一方で、エコノミスト調査の中央値では、2026年の成長率は1.85%にとどまると予測されており、政府と市場の間には依然として見方の隔たりが存在している。
原油価格が上昇することは、国内物価には逆風となる一方で、輸出収入と歳入を押し上げる要因になるとして、政府の想定では、GDP成長率は最大で0.36ポイント押し上げられる可能性を指摘している。実際、2026年第1四半期には、中国向けの原油輸出が前年同期比で約95%増加し、インド向けも約78%増加した。今回の財務省の発表は、原油高を起点とするインフレ圧力の強まりを公式に認める一方で、成長見通しについては比較的強気な姿勢を維持する内容となっている。
- [日本/GDP]内閣府によると、2026年Q1の実質GDP成長率は前期比年率+2.1%(前期比+0.5%)だった。増加は2四半期連続で、成長ペースは2四半期連続で加速した。前期比+0.5%成長のうち寄与度を見ると、内需が0.2ポイント、外需が0.3ポイントであり、2025年Q4のそれぞれ0.2ポイント、0.0ポイントに比べるとバランスのある成長だった。
個人消費は前期比+0.3%、2025年Q4(0.0%)から加速した。途中0.0%を挟みつつ、2024年Q3以降7四半期連続の増加だった。ガソリンの暫定税率の廃止や電気・ガス代補助金などの政策が実施されていることも、個人消費の下支えになった。民間住宅は+0.5%、2四半期連続で増加した。企業設備投資は+0.3%となり、2四半期連続で増加した。研究開発などが伸びた。政府消費は+0.1%で、4四半期連続のプラスだった。公共事業は+1.4%となり、3四半期ぶりのプラスだった。輸出は+1.7%、輸入は+0.5%でともに2四半期連続で増加した。
2026年Q1のGDPデフレーターは前年同期比+3.4%で、2025年Q4と同じだった。2024年Q4以降、3%台の上昇率が継続している。なお、名目GDPは前期比+0.8%(年率換算+3.4%)となり、2025年Q4(+0.9%)並みの成長ペースだった。2024年Q2以降、8四半期連続のプラス成長になった。
- [米政府、中国の米国産農産品購入拡大をアピール]5月18日、シカゴ農産物先物市場は大幅上昇。トウモロコシ・大豆・小麦いずれも前日比3%を超える上昇となった。
背景には、米中首脳会談後の5月17日付でホワイトハウスが公表したファクトシートがある。米国政府は、中国が2025年10月に約束された大豆購入目標とは別枠で今後3年間に少なくとも170億ドル相当の米国産農産物を購入すると述べた。
ロイター通信によると、この170億ドルと既存の大豆購入コミットメントを合わせると、中国の米国産農産物輸入額は年間280~300億ドル規模となる見通し。2022年のピーク(380億ドル)には届かないが、2024年の240億ドル、2025年の80億ドルを大きく上回る。
目標達成には、大豆に加え、小麦、トウモロコシ、ソルガムなどの飼料穀物、肉類、綿花、木材など幅広い品目の購入拡大が必要となる。中国は10月以降出荷の米国産新穀大豆の購入を開始するとみられているほか、豪雨被害を受けた北部向けにソルガムなど飼料穀物需要も増やす可能性がある。
一方、履行への懐疑論も根強い。2020年の第一段階合意(Phase One合意)でも、中国の購入達成率は2020年82%、2021年84%にとどまった。景気減速や豚肉市況低迷で中国の大豆需要自体が鈍化しているほか、ブラジル産大豆の価格競争力、米国産牛肉の高価格、関税問題なども障害となる。
また、中国が米国産農産物の購入を増やせば、ブラジル大豆、オーストラリア小麦、カナダ菜種など競合輸出国のシェア低下につながる可能性がある。
- [米国/さようならマイカー移動?]米CBSによれば、記録的なガソリン価格の高騰により、多くの米国人が移動手段として自動車から公共交通機関などの代替手段に移行していると指摘している。長期化するイランとの戦争やそれに伴うエネルギー価格の急騰により、米国のインフレ率はほぼ3年ぶりの高水準に達している。日々の食費をまかなうために食料支援への依存を余儀なくされる人々も増加しているとの指摘も増えている。こうしたガソリン代や食料品などの生活必需品のコスト上昇が市民の生活に直撃し、広範な生活苦は政権に対する直接的な不満に繋がっている。多くの世論調査では、岩盤支持層は依然として強固なものの、経済政策に対する市民の支持が低下していることが確認されている。そこで、経済の痛みを和らげる対策として、トランプ大統領は連邦ガソリン税の一時停止を企図している。イランとの戦争の余波によるエネルギー価格の急騰が「ガソリン離れ」や「フードパントリー(食糧支援)利用の増加」といった具体的な生活様式の変化を引き起こしているのは事実だ。それが現政権に対する政治的評価の低下という形で顕在化しているのが現在の政治と経済の関係図となる。
- [カザフスタン首都アスタナにLRT(軽量高架鉄道)が正式開業]5月16日、カザフスタンの首都アスタナにおいて、長年遅延していた軽量都市鉄道(LRT)が正式開業した。空港と新鉄道駅(終点)ヌルルイ・ジョル駅を結ぶ同路線は、2011年に建設が始まり、当初は2017年の国際博覧会に合わせた完成が予定されていたが、コスト増大や資金調達難により2013年に中断された。その後、中国企業との共同で再開が試みられたものの頓挫し、さらに2019年には約300億テンゲ規模の資金横領疑惑が発覚、関係者が有罪判決を受けるなど、プロジェクトは深刻なガバナンス問題を伴った。
それでも当局は建設継続を決定し、今回の開業に至った。総延長22.4km、18駅を有し、完全自動運転を採用、約40分で全区間を結ぶ近代的な都市交通システムとなっている。トカエフ大統領は本プロジェクトを国家的に重要と位置づけ、アスタナをユーラシアの交通ハブとする構想の一環である点を強調した。
また、今後は第2フェーズとして路線延伸(約26.5km、20駅)が検討されており、都市開発・交通インフラ整備の中核としての役割が期待される。一方、本案件は汚職・資金管理の失敗事例としての側面も持ち、中央アジアにおける大型インフラ事業のリスクと教訓を示す象徴的プロジェクトとも評価される。
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