- [アルゼンチンの対米貿易協定に横やり]ブラジルは、2月10日に報じられた米国とアルゼンチンの新たな貿易協定について、メルコスール加盟国が第三国と結べる二国間協定の限界を超えている可能性があるとして、精査している。
メルコスールは、加盟国の交渉力を高めるため、各国が勝手に第三国と貿易協定を結ぶことに制限を設けている。こうした背景から、各国が独自の貿易関係を広げようとするたびに、内部で緊張が生じてきた。
2025年、アルゼンチンはメルコスールの共通対外関税を一時的に免除する例外枠の拡大を求め、ブラジルと同様に150品目の例外を認められた。ウルグアイとパラグアイにはさらに多くの例外が与えられている。
今回の協定を巡って、アルゼンチン政府関係者は「米国製品に対する関税引き下げは、認められた150品目の例外枠の範囲内だ」と説明した。一方、ブラジル側の関係者は、実際には約200品目が対象となっているように見えるとしている。
また、この二国間協定は関税以外にも、原産地規則や技術基準など、メルコスールが共同で扱う分野に影響を及ぼす可能性があるという。さらに、アルゼンチンのミレイ大統領が米国との一方的な交渉を進めていることが、既存の例外措置との整合性をより複雑にしているとの指摘もある。
メルコスールは35年前の設立以来、加盟国の独自路線と共同路線の間で繰り返し調整を迫られてきたが、今回のように第三国との大規模な協定が域外で単独に進むことはあまり前例がなく、ブロック内の緊張はさらに高まりつつある。
- [米国・西アフリカ関係]2月10日、米軍当局はナイジェリアに200人の兵士を派遣し、イスラム過激派組織対策を進めるナイジェリア軍を支援すると発表した(2月10日付、米WSJ紙等)。同部隊は数週間以内にナイジェリアに到着する見込み。すでに派遣されている小規模部隊と合流した後、国内各地に駐留してナイジェリア軍の訓練・情報提供を行うと報じられている。米軍は戦闘や作戦には直接関与しないと明言している。
ナイジェリアではイスラム教徒が多い北部を中心に、複数のイスラム系過激派組織や「バンディット」と呼ばれる強盗集団、武装した遊牧民などが乱立している。これらのグループはそれぞれの目的・動機をもとに、時に対立、時に協力しながら、住民に対する襲撃、強奪、誘拐などを繰り返しており、ナイジェリア政府は治安対策に苦戦している(2月6日付デイリー・アップデート参照)。米・トランプ大統領は「キリスト教徒が虐殺されている」との主張をもとに、12月25日にナイジェリアのイスラム系過激派組織を狙った空爆作戦を実施。その後も継続してナイジェリア軍と共同で対テロ作戦を実施する意向を示していることから、今回200人の追加派兵に踏み切ったとみられる。
トランプ氏の発言は、米国のテッド・クルーズ共和党議員など保守系キリスト教右派の重鎮らが治安対策に失敗しているナイジェリアに対する批判を強めていることを受けたものとみられている。こうした主張に対し、ナイジェリア政府は大半の犠牲者はキリスト教徒ではなく、イスラム教徒であり、キリスト教徒への迫害の事実はないと米国側の主張を否定しつつも、米国との軍事協力を強化する姿勢を示している。2027年初頭に実施される大統領選で2期目を目指すボラ・ティヌブ大統領はイスラム教徒だが、南西部(ラゴス)の出身であり、北部の支持基盤が比較的弱い。当選を確実にするためには人口の多い北部有権者の支持が重要であり、そのためには治安の改善が必要となることから米国との協力に前向きだと考えられる。
また、ナイジェリアのみならず、米国の西アフリカでのテロ組織対策や軍事政権の国々に対する姿勢の変化もみられる。2020~23年にかけてマリ、ブルキナファソ、ニジェールでクーデターが起こった際に米国は軍事政権を非難し、米軍による軍事協力や援助を大幅に削減した。その後、これら3か国は「サヘル諸国同盟(AES)」を結成し、ナイジェリアを中心とする「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」を脱退し、ロシアに安全保障を求めるなど民主主義を重んじる欧米と距離を置く姿勢を維持してきた。2024年に米軍はテロ組織対策の拠点としていたニジェールから完全撤退した。しかし、2月2日にマリを訪問した米国務省アフリカ局長のニック・チェッカー氏は「米国はマリの主権を尊重する」と表明。二国間でのテロ対策の協力を再開するとともに、ブルキナファソやニジェールとも同様の協力に向けた協議を期待しているとの方針転換を示した(2月2日付、英BBC)。この背景には、トランプ氏就任以降、米国の民主主義と人権への関心への変化があるとの見方が多い。トランプ氏のアフリカ顧問を務めるマサド・ブーロス氏も仏ル・モンド紙による「米国の対アフリカ政策」に関するインタビューにおいて「民主主義は常に評価されるが、我々の政策は他国の内政に干渉しないことだ。人々は自らに適した制度を自由に選択できる」と述べている。米国は、公平な選挙、文民政府、法の支配といったいわゆる「欧州型」の価値観よりも柔軟で、実利をとる姿勢をアフリカでも強めているようにみえる。米国のサヘル諸国との関係改善の意図は明らかにはなっていないが、①イスラム系テロ組織の拡大は将来的に米国にとっての脅威となりうること、②金、リチウム、ウランといった豊富な鉱物資源を有しているが不安定な情勢が米国企業の投資を阻んでいること、③ロシアとのみ蜜月な状況を作り出さないようにしたいこと、などがあるとみられる(2月8日付、ドイチュ・ヴィレ紙等)。
- [ウクライナ和平交渉]2月11日、ウクライナのゼレンスキー大統領は大統領選とロシアとの和平合意案の是非を問う国民投票について「安全が確保された上で実施すべきだ」と記者団に述べ、早期実施の観測を否定した。侵攻開始から4年となる2月24日に日程の発表を検討していると一部で報じられていた。ゼレンスキー大統領は「2月24日は特別な日だ。4年間の戦争で命をささげた人々のことを考えると、この日に選挙実施を発表することは絶対にない」と強調した。米国が戦闘終結後の「安全の保証」提供の条件として、大統領選実施を求めているとの指摘は「事実ではない」とした。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、トランプ米政権がウクライナに対し、5月15日までに大統領選とロシアとの和平案への賛否を問う国民投票を実施するよう求めていると報じた。ウクライナは、選挙実施には約半年かかるとして難色を示している。
- [4月の米中首脳会談]香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』は、4月に予定されている米中首脳会談について独占記事を報じている。当初、トランプ大統領の訪中は4月末頃と見られていたが、現在は4月初旬を軸に調整が進められているという。主な議題は経済問題になる見通しだ。記事の概要は以下の通りである。
米中両政府は、2025年10月に韓国・釜山で成立した貿易休戦の延長を検討しており、4月初旬に北京で予定されている首脳会談に合わせ、最大1年の延長で合意する可能性が高い。2025年10月の合意では、報復関税や輸出規制の一部が緩和され、中国は停止していた米国産大豆の購入を一部再開した。11月の米国中間選挙を控え、トランプ氏は目に見える具体的成果を求めており、中国による農産品の追加購入や、自動車・エネルギー分野での合意発表も視野に入っている。TikTokを巡る合意が、他分野における取引のモデルとなる可能性も指摘されている。
訪中日程は3月末から4月初旬の3日間程度が有力とされるが、清明節(4月5日)に重なる可能性もある。米国側は「公正な競争」と「デリスキング」を掲げ、対中デカップリングは否定する一方で、中国の巨額な対米貿易黒字の是正を求めている。これに対し中国側は、台湾問題が両国関係の「レッドライン」であり、これを越えてはならないと強調している。
中国側は台湾問題について米国からの譲歩を引き出すことを期待しており、現在米政府内で進められている台湾向け大規模武器売却パッケージについて、首脳会談の実施自体を危うくしかねないと警告しているとも伝えられる。米国の関心は経済問題に集中しており、台湾問題などで大幅な譲歩を行う可能性は小さいとの見方が広がりつつある。しかし、トランプ氏の言動は予測が難しく、国内外での駆け引きが今後も続くとみられる。
- [米国の雇用環境の底堅さ]労働省によると、1月の非農業部門雇用者数は前月比13.0万人増だった。市場予想(7.0万人増)を上回り、2024年12月(23.7万人増)以来の大幅な増加になった。なお、2025年11月は5.6万人増から4.1万人増へ、12月は5.0万人増から4.8万人増へ、それぞれ下方修正された。
1月の雇用者数の内訳を見えると、教育・健康サービス(13.7万人増)がけん引役だった。専門・ビジネスサービス(3.4万人増)や建設業(3.3万人増)なども増加した。それに対して政府(▲4.2万人)や金融(▲2.2万人)、輸送・倉庫(▲1.1万人)などが減少した。政府はここ4か月で▲24.2万人の減少だった。
今回、雇用統計の年次基準が改訂され、2025年3月までの1年間での雇用創出数は従来から86.2万人下方修正された。8月時点の速報では、▲91.1万人減と推計されており、市場予想は75~90万人の下方修正だった。また、年次改定が反映された結果、2025年通年の雇用者数は18.1万人増となり、前回時点までの58.4万人増から大幅に下方修正された。増加ペースは2024年通年(145.9万人増)から大きく鈍化した。
1月の失業率は4.3%となり、11月(4.5%)、12月(4.4%)から2か月連続で低下し、9月(4.3%)並みの低水準になった。2025年1月(4.0%)に比べればやや高いものの、4%台前半であるため、まだ低水準にとどまっている。
1月の平均時給は前年同月比+3.7%となり、12月と同じだった。5か月連続で4%を下回った。前月比の上昇率は+0.4%であり、12月(+0.1%)から加速したものの、10~11月と同じだった。賃上げペースはやや鈍化しているものの、高めの上昇率が継続している。
1月の雇用統計の結果から、雇用環境の底堅さが確認されたため、市場では早期利下げ観測が後退した。次の利下げ時期として、6月が有力視されていることに変わりはないものの、据え置きという見方も少なくない。5月までがパウエル議長の任期であり、ウォーシュ新議長がFOMCに初めて参加するのが6月であり、その時に利下げが実施されるのかが注目されている。
- [EU/カナダの「SAFE」への参加]2月11日、EU理事会はカナダの「欧州の安全保障行動(SAFE、防衛装備品の共同調達に際して加盟国を支援する制度)」への参加に関する二国間協定への署名を認める決定を行った。署名後、協定は暫定的に適用され、欧州議会の承認が得られて正式に発効することとなっている。初の非欧州国のSAFEへの参加となる。
カナダ企業が共同調達に参加できるようになり、同国防衛企業は欧州市場での事業機会が拡大することが見込まれている。
SAFEは、共通調達に際してEU加盟国を支援する 1,500億ユーロ規模の枠組であり、ウクライナ、EFTA及びEEA加盟国並びに個別に協定を結んだ国はSAFEに基づく共同調達に参加可能となる。欧州は防衛面での戦略的自律を高めるべく取組を進めており、SAFEによって域内産業への投資促進等を通じた防衛力の抜本的強化に取り組んでいる。
- [リビア 探鉱・生産ライセンス付与]リビア国営石油会社(NOC)が、探鉱・生産ライセンスを海外企業に付与し、外資の呼び戻しを本格化させている。これは2007年以来のライセンス付与となる。その象徴として、シェブロンが約15年ぶりにリビアへ復帰する方針を示したことが報じられている。
NOCは20ブロックの鉱区を提示し、そのうち5ブロックが落札されたと報じられている。落札者として言及されているのは、シェブロン、Eni/カタルエナジー、Repsol/BP、Repsol/MOLGroup/Turkiye Petrolleri、そしてナイジェリアのAiteo。また、投資を妨げていた条件を改め、収益性連動の明確化など利益配分とコスト回収の見通し改善など投資家を呼び込みやすい契約モデルを採用したと伝えられている。
15年ぶりとなるシェブロンのリビア復帰は米州偏重から開発が停滞していた地域へと回帰する流れの代表例としてFortune誌は報じており、同社もリビアの資源ポテンシャル(確認埋蔵量や生産の歴史)と、自社の技術力で支援できるとのコメントが紹介されている。また、Fortune誌は、需要ピークの懸念が残る一方で、米国シェール生産がピークアウト局面に入り得る中で、メジャーが長期資源確保へ再び動いている、という見立ても示している。
ただし、リビア固有の政治・治安の不確実性があるため楽観視はされていない。Al Jazeeraは、リビアが東西の対立で政治的に分断され、中央銀行や石油収入を巡る対立が主要油田の操業をしばしば混乱させると整理している。
- [トランプ・ネタニヤフ会談]2月11日、トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相がホワイトハウスで会談した。トランプ政権第2期以降、ネタニヤフ首相の訪米は6回目で、イスラエルでの会談も含めて両者は計7回会談しており、米・イスラエル関係の緊密さが改めて示された。今回の訪問は非公開で行われ、主な議題はイラン問題だったとみられる。特にネタニヤフ首相は、米国が核問題のみに焦点を当ててイランとの合意を結ぶことを警戒し、イランの弾道ミサイル計画や親イラン武装勢力への支援停止も含めた包括的な圧力を維持するよう求めたとされている。
会談後、トランプ大統領は両国関係が極めて良好であると強調しつつ、具体的な合意には至らなかったと説明した。ただし、イランとの交渉継続を支持し、合意成立が望ましいとの考えを示した。また、前回イランが交渉を拒否した際にはイランの核施設への軍事行動を含む強い圧力が加えられたと指摘し、今回も合意に応じなければ厳しい結果を招く可能性を示唆した。
今回の会談は、2月6日にオマーンで再開された米・イラン核協議を背景に行われた。ネタニヤフ首相が予定を前倒しして訪米したことから、イスラエル側が米国の外交姿勢に強い懸念を抱いているとの見方もある。また、イスラエル国内では早期選挙の可能性も指摘されており、対イラン強硬姿勢を維持する政治的要因もあると分析されている。
トランプ大統領との会談に先立ってルビオ国務長官と会談を行ったネタニヤフ首相は、米国が提唱するガザ暫定統治を監督する「平和評議会」へのイスラエルの参加に関する正式な手続きを行った。同評議会は2月19日にワシントンで初めての首脳会合を開き、ガザ復興資金の調達が主要議題となる見通しである。世界で20数か国が同評議会への参加を表明する一方、主要欧州諸国は参加を見送る姿勢を示しており、国際社会の対応は分かれている。
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