- [サブサハラ/インフレ加速]イラン情勢を受け、サブサハラ各国でのインフレが加速傾向にある。6月17日、南アフリカ(南ア)統計庁(Stats SA)は5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で4.5%だったと発表した。中東紛争開戦直後の3月の同3.1%、4月の4.0%からさらに加速した形だ。南ア準備銀行(SARB)がインフレターゲットとしている3%±1%を上回っているが、市場関係者の予測を下回ったことから7月下旬の金融政策委員会(MPC)での追加利上げの可能性は低いとみられている(6月17日付、ロイター通信)。SARBは5月のMPCで政策金利を25bps引き上げ、7.00%としたばかりだ。
南アでのインフレ加速の要因はガソリン・ディーゼルなどの燃料価格の急騰によるもので、Stats SAは燃料価格が前年同月比で28.7%上昇したと発表。南アは国内の石炭を活用した石炭液化(CTL)技術により日量約15万バレルの石油精製品を生産しているが、不足分を中東諸国などからの輸入に依存しているため油価高騰の影響がインフレに反映されやすい。燃料を除くCPI上昇率は前年同月比3.7%で、中銀の目標範囲内に収まっていることから、いかに燃料価格の上昇がインフレを加速させる要因となっているか明白だ。
5月も石油精製品のほぼ全量を中東諸国から輸入している東アフリカでインフレ加速が顕著で、ケニアは6.7%と4月の5.6%から加速。エチオピアも4月の11.7%から5月には13.4%に加速した。エチオピアの5月のインフレ率上昇の最大の要因は食品(前年同月比+15.0%)だった。
サブサハラ最大の産油国である西アフリカのナイジェリアも、世界的な油価高騰が市場に供給される燃料価格の上昇を招くことから、5月のインフレ上昇率は15.9%と4月の15.7%からじわじわと加速している。他方で同じ西アフリカでも、「西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)」加盟国(注)では、フランス政府の兌換保証によりユーロとペッグされた通貨CFAフランを用いていることから為替の変動の影響を受けにくく、1%台のインフレ上昇率で推移している。
なお、中東紛争直後はサブサハラのほとんどの国で安全資産回帰の流れもあり自国通貨安が進んだ。しかし、米・イラン間の停戦交渉が進展に伴って油価の下落がみられる中、通貨も開戦前の水準近くに回復している国も少なくない。
(注)コートジボワール、セネガル、マリなど8か国が加盟
- [アルゼンチン/テスラとMOU]国営石油会社のYPFが、テスラとMOUを締結し、電気自動車(EV)向けの高速充電ネットワークの整備やエネルギー貯蔵プロジェクトの検討を進める方針を示した。これは、将来的な包括的パートナーシップの第一歩と位置付けられている。
YPFはアルゼンチン最大の燃料小売企業であり、同国の主要なシェール油田であるバカ・ムエルタの開発でも中心的な役割を担っており、この動きは単なる実証的な試みではなく、国家レベルのエネルギー戦略にも関わる可能性がある。
合意の内容は大きく三つの分野に分かれている。第一に、全国のサービスステーションにEV用の急速充電器を設置することである。YPFはすでに数百規模のガソリンスタンド網を持っており、これを活用することで効率的にインフラを整備できる。
第二に、エネルギー貯蔵の分野である。これは再生可能エネルギーの不安定さを補うために不可欠な大型蓄電システムであり、電力需要のピーク調整や停電リスクの低減など、電力網の安定化に大きく寄与する。
第三に、電動モビリティやエネルギーシステム全般に関する広範な技術協力である。これは具体的な個別案件に限定されず、今後の市場変化に柔軟に対応するための枠組みといえる。
ただし、この合意はあくまで意向表明書であり、法的拘束力はないため、実際の投資や建設がどの程度進むかは不透明であり、現段階では具体的な成果よりも「方向性を示した」という意味合いが強い。
石油会社が電動化に投資する背景には、EVの普及が進む中で、従来のガソリン需要は長期的には減少すると見込まれている。YPFは既に優良立地のサービスステーションを多数保有しており、これを活用すれば将来もエネルギー供給ビジネスを維持できる。また、充電や蓄電に早期参入することで、収益源の多様化とリスク分散を図る狙いもある。
一方、テスラは、アルゼンチン市場での存在感は限定的だが、YPFとの提携により既存インフラや地域ネットワークを活用し、短期間で拠点を拡大できる。特に同国では政府がEV輸入の関税免除枠を設けているものの、対象車両には価格上限があるため、この制度は相対的に低価格な中国メーカーに有利であり、高価格帯のテスラ車は恩恵を受けにくい。そのためテスラは「車両販売」ではなく「充電インフラ」という形で市場参入を図る戦略を取っていると考えられる。
アルゼンチン政府は外国投資の誘致とインフラ近代化を重視しており、今回の合意はその方向性に沿った事例といえる。また、中南米全体でEVインフラの主導権を巡り、米国、中国、地元企業が競争している構図も浮かび上がってくる。
- [日本/訪日外客数(5月推計)]6月17日、日本政府観光局(JNTO)は訪日外客数の5月推計値を公表した。5月の訪日外国人数は355万9,900人で、前年同月比▲3.6%と2か月連続のマイナスとなった。最も多かったのは韓国で95万1,300人(+15.2%)、次いで台湾で61万6,800人(+14.6%)、米国で33万3,700人(+7.0%)と、いずれも5月として過去最高となった。
また、中東は3万9,000人(+67.8%)、インドは5万6,500人(+31.3%)と、単月での過去最高を記録した。中東では、特にトルコが2万4,300人(+160.1%)と増加した。
花見と夏休みシーズンの狭間の5月は多くの市場で訪日需要が落ち着く時期だが、祝日やスクールホリデーに合わせた訪日需要の高まりもあり、多くの市場で増加が見られた。
一方、中国は31万3,000人(▲60.4%)と、中国政府による渡航自粛要請などの影響を受けて、2025年12月以降6か月連続で前年同月比マイナス(マイナス幅は▲45.2%~▲60.7%)。
2026年1~5月累計は1,793万6,000人と、2025年1~5月累計の1,814万590人から微減(▲1.1%)で進捗している。新型コロナウイルス感染症の影響が収束した2023年以降、年間の訪日外国人数は増加しており、2025年は4,268万3,837人に達した。
政府は2026年3月策定の第5次観光?国推進基本計画にて、2030年までに訪日外国人数を6,000万人とする目標を掲げている。増加する観光客に対し、オーバーツーリズム対策として地域住民と観光客で施設入場料に差をつける二重価格の導入や、宿泊税の導入・引上げの動きが相次いでおり、観光産業の振興と地域住民への配慮、環境保全の両輪が求められている。
- [米国/FOMC金利据え置き]6月17日、連邦準備制度理事会(FRB)は、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(FF金利誘導目標レンジ)を3.5~3.75%に据え置くことを決めた。据え置きは4会合連続。全会一致の決定は2025年6月以来、1年ぶりのことだった。
発表された声明文の文言は簡素化され、文量は半分程度に削減された。前回3月会合で反対意見が出ていた緩和バイアスを含む文言は削除された。ウォーシュFRB議長は、これまでフォワードガイダンスについて懐疑的な見方を示しており、今回会合後の記者会見でも、フォワードガイダンスが現局面では適していないという点で一致したと説明した。その一方で、雇用の最大化と2%の物価安定の目標について確約しているという表現も削除された。物価上昇率が2%から乖離する現在、物価安定目標の達成のためには利上げが必要になる中、据え置きという判断に支障をきたす文言だった可能性もある。
また、FOMC参加者の経済見通しが発表され、2026年の経済成長率は下方修正、物価上昇率は上方修正された。その一方で、失業率は小幅に下方修正されており、雇用環境の底堅さがうかがえる内容だった。こうした見通しを踏まえて、政策金利(中央値)は2026年に1回引き上げられると予想されている。前回3月時点の見通しでは、2026年内1回の利下げだったため、見通しが利上げ方向に転じた。ただし、今回の見通しの内訳を見ると、3回利上げ(1人)、2回利上げ(5人)、1回利上げ(3人)、据え置き(8人)、利下げ(1人)と、利上げと据え置きで見方が割れていた。さらに、2027年について1回利下げという見方は変わらず、政策金利が高い状況が続く見通しになっている。
- [IEA石油月報、最悪期脱しても警戒緩めず]6月17日発表の国際エネルギー機関(IEA)月報は、米イラン間の停戦暫定合意(6月19日署名予定)を前提に、2027年までの見通しを示している。今後、中東の紛争で大きく落ち込んだ石油供給・需要ともに回復し、2027年には再び供給が需要を上回ることを想定している。但し、供給正常化には時間を要すること、世界の石油在庫が大きく落ち込んでいることなどに警戒を示し、今後「過剰供給」が生じても、在庫補充とエネルギー安全保障の強化に充当すべきとの考えを示している。
2026年の世界需要については前年比日量▲110万バレルと、前月予測からさらに下方修正した。需要減少の「中心地」は中国であり、原油輸入量が紛争直後から約4割減少して世界市場のリバランスにも寄与した。石油化学原料としての消費削減のほか、EV稼働率の大幅上昇・航空便減便・鉄道旅客キロ数の大幅増加など、輸送燃料需要の一部が不可逆的な減少になる可能性を示唆。今後の世界の需要回復も、国地域や精製燃料の種類によりまだら模様になることが予想される。
ホルムズ海峡の機雷撤去や、通航秩序を巡る合意の未解決点なども残り、中東原油の供給には下振れリスクが残る。ロシアではドローン攻撃により精製能力が大幅に低下しており、原油を輸出に回しているが、製品供給のタイト感は継続する見通し。
米国と日本を中心とするIEA加盟国の公的備蓄放出により、商業原油在庫は比較的安定を保ったが、公的備蓄は1990年以来の低水準となっており、商業部門の石油精製品在庫も減少している。このため新たな供給ショックに対してはなお脆弱な状況となっている。
- [ロシア/インフレ期待の低下と金融政策判断への含意]2026年6月、ロシア中銀の最新調査によれば、家計の期待インフレ率は12.4%へ低下(前月比▲0.6ポイント)し、約2年ぶりの低水準となった。実感・観測インフレも14.2%へ低下し、家計の価格認識にも緩和の兆しがみられる。特に貯蓄保有層では期待インフレが11%まで低下しており、インフレ抑制への意識変化が進展している。インフレ期待の低下は、消費の前倒しや企業の価格転嫁圧力を抑制するため、金融引締め効果を補完する重要指標であり、中銀の利下げを後押しする材料と評価される。
6月19日、中銀は金融政策決定会合を予定しており、市場では政策金利(現行14.5%)を14%へ引き下げるとの見方が優勢である。また、ナビウリナ総裁は約2週間の不在から復帰し、同会合に出席する予定であり、政策判断の方向性に一定の注目が集まる。
- [フィンランド/安全保障]6月17日、フィンランド議会は1980年代から続いていた核兵器の全面禁止を解除する法案(原子力エネルギー法などの改正案)を賛成125、反対61票の賛成多数で可決。法案は今後、大統領の承認を経て正式に成立する見込み。これにより、同盟国の防衛作戦の一環として、フィンランド領内における核兵器の持ち込み、輸送、供給および保有が法的に可能となる。
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、フィンランドは数十年にわたる軍事非同盟政策を放棄し、2023年4月にNATOへ加盟した。ハッカネン国防相は、従来の核兵器規制はもはやNATO加盟国としての地政学的現実にそぐわないと指摘し、今回の改革によって「フィンランドとNATO全体の安全保障が強化される」と意義を強調する一方、「国内に核兵器を恒久的に配備する計画はない」とも明言。同国はロシアと1,300km以上の国境を接しており、最近も首都近郊の空域にドローンが侵入した疑いがあるなど、安全保障上の強い警戒が続いている。
フィンランドは、マクロン仏大統領が提唱している「フランスの核戦力を活用して欧州大陸の安全保障を強化するプログラム」への参加も視野に入れている。オルポ首相は、このフランス主導の欧州独自の核抑止力構想に対して関心を示しつつも、「現時点では最終的な決定には至っていない」と発言。
6月17日の今回の決定は、野党からの批判はあるものの、フィンランドがNATOの核抑止力政策と完全に歩調を合わせ、欧州の防衛体制へとより深く統合していくための極めて重要なステップと位置づけられている。
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