- [タングステン管理強化が国内事業に波及]中国でタングステン資源の管理が一段と厳格化する中、中国の大手鉱山会社である洛陽モリブデン(CMOC)と厦門タングステンが2002年から共同で運営してきた白タングステン回収会社「洛陽豫鷺鉱業」が、原料供給の停止により事実上の操業停止に追い込まれたと、中国紙が報じている。
7月1日、厦門タングステンは、CMOCがモリブデン選鉱後に発生する選鉱廃さい(尾鉱)の供給を停止したため、生産の継続が困難となり、同社がほぼ全面的に操業を停止したと発表した。同社はCMOCの河南省・三道庄モリブデン鉱山から排出される選鉱廃さいのみを原料としており、供給停止によって生産は完全に途絶えた。
CMOCは供給停止の理由について、「国家のタングステン資源に関する法令順守を確保するための措置」と説明している。背景には、中国政府が近年進めてきた戦略鉱物管理の強化がある。輸出段階では、商務部と税関総署がタングステン関連品目を輸出管理の対象に追加し、採掘段階では自然資源部が毎年、全国のタングステン精鉱の採掘総量枠を設定して超過採掘を厳しく禁止している。さらに、2025年施行の新「鉱産資源法」および2026年施行の同法施行条例では、タングステンを国家戦略鉱物に正式指定し、国家計画による管理、生産量の総量規制、採掘主体の限定、新規鉱区の許認可権限の中央政府への集約などの保護的な制度を導入した。
こうした制度整備により、鉱山会社は採掘だけでなく、選鉱廃さいの処分や副産物の回収といった資源の総合利用についても、従来以上に厳格なコンプライアンス対応を求められるようになった。
洛陽豫鷺鉱業では、CMOCが資源を、厦門タングステンが資金と低品位白タングステンの回収技術を提供する形で事業を展開してきた。モリブデン鉱山の選鉱廃さいから白タングステンを回収する中国最大級の企業であり、資源企業と加工技術企業が連携する代表的なモデルとされてきた。しかし、今回の操業停止は、中国の戦略鉱物管理が輸出だけでなく、国内における資源利用やリサイクルにも及び始めたことを示す事例となっている。2025年の同社売上高は3億6300万元、純利益は1億2300万元で、厦門タングステンの連結純利益の約2.7%を占めていたが、操業停止の期間は未定であり、業績への影響については現時点で見通せないとしている。
- [ペルー/国に港の監督権認める]ペルーの裁判所は、中国が運営するチャンカイ港をめぐり、これまで規制当局の関与を制限していた判断を覆し、国家による全面的な監督権を認めた。
今回の争点は、民間、しかも外国資本によって建設されたインフラであっても、公共の役割を担う場合、誰がルールを決めるのかという問題だった。ペルーの上級裁判所は、港が一般利用に供されている以上、その運営会社は単なる所有者ではなく、公共サービスの提供者であり、国家の規制下に置かれるべきだと判断した。
もともとチャンカイ港は、中国国有海運大手コスコ・シッピングが主導し、約13億ドルを投じて建設された深水港である。国家の直接的な許可や運営関与が限定的な形で整備されたが、裁判所は公共性を重視した。つまり、誰が資金を出したかではなく、誰のために使われるかが規制の判断基準となると明確に示したのである。
従来の判断では、規制当局は料金の見直しなど限定的な権限しか持たないとされていたが、今回の判断により、日常運営の監督、検査、規制、さらには違反への制裁まで含む広範な権限が国家側に認められた。これにより、港の運営全体が公的監視の対象となる。
コスコ側は強く反発し、完全に民間資金で建設された港については、原則として国家規制の対象外とすべきだと主張した。しかし裁判所はこの立場を退けた。この判断はチャンカイ港にとどまらず、今後、民間資金で整備される公共インフラ全般に影響する前例となる可能性がある。
背景には地政学的な要素もある。チャンカイ港は南米とアジアを結ぶ新たな物流拠点であり、航行時間を大幅に短縮できる戦略的施設である。中国の国有企業が過半数を所有することから、アメリカは安全保障上の懸念を示しており、中国による影響力拡大の象徴と見なしていた。さらに、この判断はペルー国内の政治とも密接に関わる。2026年7月より新大統領となるケイコ・フジモリ新政権がどの程度国家の関与を強めるかは、対中関係や対米関係の方向性を測る試金石となると考えられている。
投資家にとっては、港の統治構造が明確になったことで不透明性が低下した一方で、たとえ民間資本であっても公共性があれば国家の規制を免れないことが確認され、将来の投資判断に慎重さが求められることになった。
もっとも、運営会社がすべての判断に従わなければならないわけではない。個別の規制措置が過度である場合には、通常の行政手続きの中で異議申し立てを行う余地は残されている。ただし、今回の判決によって、規制当局をあらかじめ排除することはできなくなり、国家は港の外部ではなく、運営そのものの中に関与する立場を確立したといえる。
- [日本/月例経済報告(6月)・消費動向調査(6月)]6月30日、内閣府は6月の月例経済報告を発表した。国内の景気の基調判断は「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」との表現で、4か月連続で判断を据え置いた。
個別項目では、内需の中心の個人消費については表現を2か月ぶりに変更し「持ち直しの動きがみられる」とした。消費者マインドは4月を底に持ち直しの兆しが出てきており、5月までの「ただし、消費者マインドがこのところ弱い動きとなっていることに注意が必要」との但し書きを削除した。米国とイランの合意で、中東情勢への懸念がやや後退したことが反映された。
輸出は「このところ持ち直しの動きがみられる」に16か月ぶりに上方修正した。世界的なAI需要を背景とした情報関連財輸出の増加などにより、5月の「おおむね横ばいとなっている」から引き上げた。中東向けの輸出は減少しているが、アジア・EU・米国向けについて持ち直しの動きが見られるとした。
倒産件数の判断は「おおむね横ばいとなっている」に17か月ぶりに上方修正した。5月は「増加がみられる」としていたが、増加傾向が足元で落ち着いた。
14項目中、そのほかの11項目は5月から据え置かれ、設備投資は「持ち直している」、雇用情勢は「改善の動きがみられる」とした。
また、7月1日、内閣府は6月の消費動向調査の結果を発表した。消費者態度指数は、今後半年間の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識を調査するもの。
6月の消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整値)の前月差は+0.2ポイント(5月33.6→6月33.8)と2か月連続でプラスとなった。6月の消費者マインドは、「弱含んでいる」として基調判断を据え置いた。
指数を構成する4項目の意識指標に関して、「暮らし向き」が前月差+0.8ポイント、「耐久消費財の買い時判断」が+0.2ポイント、「雇用環境」が+0.1ポイント、「収入の増え方」は横ばいとなった。3月、4月はこれらの項目で前月差マイナスか横ばいだったが、5、6月はプラスか横ばいとなり、消費者心理は若干上向いてきているといえる。
日頃よく購入する品目の価格に関する1年後の見通しについて、「上昇する」と見込む割合は93.3%で▲0.2ポイントとなった。また、「5%以上上昇する」と見込む割合は54%で、5月の56.0%から▲2.0ポイントとなったが、4か月連続で半数を超えた。一方、「低下する」と見込む割合は2.2%で、5月の1.9%から+0.3ポイントと、4か月ぶりにプラスとなった。食品の値上げは続いているが、コメ価格が高騰時から大きく下落していることが消費者心理に影響していると考えられる。
全体として改善傾向はみられるものの、基調判断は「弱含んでいる」に据え置かれ、「収入の増え方」の意識指標は横ばいとなり、半数以上が1年後の物価について「5%以上上昇する」と見込んでいる状況に鑑みると、消費者の積極的な購買意欲向上には繋がっていないとみられる。
- [米国/6月の雇用統計]労働省によると、6月の非農業部門雇用者数は前月から5.7万人増加した。増加ペースは、5月の12.9万人から減速し、市場予想(10~11.5万人増)を下回った。また、4月は17.9万人増から14.8万人増へ、5月も17.2万人増から12.9万人増へ下方修正され、4~5月の速報時点から雇用者数の減少幅は計▲7.4万人になった。雇用者数は増加しているものの、先月までの想定に比べると、減速感が強まったようだ。
内訳を見ると、教育・ヘルスケア(+6.9万人)や専門・ビジネスサービス(3.6万人)、建設業(1.1万人)で雇用者数の増加が目立った。一方で、娯楽・接客業(▲6.1万人)や情報(▲0.9万人)などで減少幅が大きかった。接客・娯楽業では、期待を集めていたサッカーワールドカップの雇用創出効果は限定的だった。
また、失業率は4.2%で、5月から▲0.1ポイントの低下だった。2025年11月(4.5%)を直近ピークにして緩やかに低下している。労働参加率は61.5%(▲0.3pt)へ低下した。2021年3月(61.5%)以来の低水準であり、コロナ禍前の2020年2月(63.3%)を下回ったままだ。コロナ禍後に高齢者層が労働市場を退出してから戻ってきていない上、移民政策の変更なら労働供給が減少していることも影響している。
平均時給は前年同月比+3.5%、5月から0.1ポイント拡大したものの、4月(+3.6%)よりも小幅に低い。2026年始めには、+3.7%と3%台後半だったので、やや鈍化した。
雇用・所得環境は総じて底堅さを維持しているものの、雇用者数の増加ペースが減速しているなど、懸念も残る内容だった。物価抑制のために、今後、政策金利が引き上げられる方向にあることを予想していることに変わりないものの、雇用懸念などから、今後の会合で据え置かれる可能性は6月の雇用統計発表前に比べて高まったとみられる。
- [チリ/銅生産の現況]2026年5月のチリの銅生産は前年同月比▲12.9%減の42万3,623トンと、4月の▲13.8%に続く大幅減産となった。鉱業生産指数も前年同月比▲10.6%と低迷。世界最大の銅生産国であるチリの供給停滞は、銅価格を下支えする一因となっている。チリ政府は2030年までに年間生産量を600万トンに引き上げる目標を掲げている。
こうした中、国営銅会社Codelcoの高コスト体質と重い債務負担が競争力低下の要因として指摘されている。ロイターが入手した内部資料によると、同社の直接生産コスト(C1)は国際資源大手を57%、チリ民間鉱山を72%上回るほか、純債務EBITDA倍率は3.8倍と同業他社を大きく上回る。鉱石品位の低下よりも、拡張投資に伴うコスト超過や事故、運営効率の低さが収益性を圧迫しており、新会長は投資・生産計画の見直しを進めている。一方、CodelcoはAnglo Americanとの間で、隣接するLos BroncesおよびAndina鉱山を一体運営することで2025年9月に合意し、2026年6月に最終決定した。これにより、今後21年間で年間12万トンの追加生産や約15%のコスト削減を目指す。
民間企業では、BHPがアタカマ砂漠に位置するCerro Colorado銅鉱山について、15億ドルを投じて再開を目指す計画が報じられている。当該鉱山は地元の反対を受けて水利用許可を取得できず、2023年末から操業停止となっていたが、脱塩水・処理済廃水の活用などを盛り込んだ新たな環境許認可を申請しており、承認されれば今後20年間の操業継続が可能になる見通し。水資源制約への対応も、チリにおける今後の銅生産拡大の鍵になるとみられる。
- [ロシア・ウクライナ戦争の波及拡大]7月2日、ロシア軍がウクライナの首都キーウに対し、ミサイル約70発、無人機約500機を投入する大規模攻撃を実施し、少なくとも20人が死亡、85人が負傷した。一方、ウクライナ軍もロシア国内で4番目の規模のニジニ・ノヴゴロド州の製油所を長距離ドローンで攻撃し、火災が発生した。ロシア・ウクライナ戦争は、前線の消耗戦に加え、双方によるドローン・ミサイル攻撃の応酬が激化する新たな局面を迎えている。
一方、戦場ではロシア軍の損耗も拡大している。戦略国際問題研究所(CSIS)は、2022年以降のロシア軍損失を約140万人(死傷・行方不明者含む)、うち戦死者を40万~45万人と推計しており、前線は歴史的な消耗戦の様相を呈している。
他方、ロシアにおけるガソリン不足の影響は中央アジアにも波及し始めた。7月1日、ロシア産燃料への依存度が高いキルギスはカザフスタンやウズベキスタンなど近隣諸国に燃料供給支援を要請した。現時点で深刻な不足には至っていないものの、ロシア国内の供給混乱が周辺国のエネルギー安全保障に影響を与え始めた。タジキスタンでは当局が不足を認めていないものの各種燃料価格が上昇しており、ウズベキスタンではガソリン価格が急騰し、国営ウズベキスタン航空もジェット燃料不足を理由にロシア便の一部を減便した。カザフスタンも燃料不足を防ぐため、国境管理の強化や一部石油製品の鉄道輸出禁止措置を導入している。こうした状況の中、カザフスタンでは8月23日に議会(クルルタイ)選挙、ロシアでは9月20日に議会選挙が予定されている。戦争長期化に伴う燃料供給不安やインフレ圧力、社会不満が各国の内政にどのような影響を及ぼすのかが、今後の地域情勢を占う重要なポイントとなろう。
- [EU/クリーンエネルギー投資]欧州委員会と欧州投資銀行(EIB)は、EU加盟11か国における51のエネルギー関連プロジェクトを支援するため、「Modernisation Fund」から新たに25億ユーロを拠出すると発表。この基金の財源はEU排出量取引制度(EU ETS)の排出枠競売による収益から賄われており、2021年1月の設立以来、提供された資金の総額は232億ユーロに達している。
近代化基金は、2016~18年における1人当たり国内総生産(GDP)がEU平均の75%を下回る低所得のEU加盟13か国を対象に、クリーンエネルギーへの移行を連帯して支援するための制度。今回の資金提供の対象国は、チェコ、エストニア、ギリシャ、クロアチア、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニアの11か国となっている。
投資の主な目的は、エネルギー、産業、運輸部門におけるエネルギー効率を向上させてエネルギーシステムを近代化し、温室効果ガス(GHG)の排出量削減を支援すること。また、再生可能エネルギーによる発電や電力の貯蔵を促進し、強靭なエネルギーインフラを整備することで、EUの化石燃料輸入への依存を減らし、EU産業の競争力強化と各国の気候・エネルギー目標の達成に貢献する。
承認された51のプロジェクトには、チェコやクロアチアにおける地域熱供給システムの脱炭素化、エストニアやラトビアでの公共交通機関のゼロエミッション化(電気バスの導入など)、ハンガリーやスロベニアでの電力網のデジタル化・開発が含まれる。また、ギリシャやリトアニアでの産業施設の生産プロセスの効率化、ルーマニアでの独立型蓄電池設備の開発、ポーランドの農村地域における多世帯住宅の効率化なども対象。
- [スーダン内戦/米国経済制裁]6月26日、米・財務省外国資産管理局(OFAC)は、スーダンの内戦で武器調達や徴兵に関与している8つの個人および団体に対して制裁を発動した。OFACは内戦の当事者であるスーダン国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」に対して即時かつ無条件の3か月間の人道的な停戦を受け入れ、実施するように求めた。
2023年の内戦ぼっ発直後から米国はSAF、RSFの双方に関係する企業・個人への制裁措置を課してきた。今回の発表でも、SAFに武器・弾薬等を供給している、スーダン最大の防衛企業・DIS傘下のターゲット・マルチアクティビティーズ社(TMAC)や、TMACに爆発物を供給するインドのSBLエナジー社を制裁対象とすると同時に、RSFのコロンビア人傭兵の徴集を支援しているコロンビア・パナマ人にも制裁を課した。制裁を課された団体・個人は米国内もしくは米国人の所有・管理下にある財産がすべて凍結されると共に、凍結対象者に直接・間接的に関与する団体も凍結対象となる。
他方で、スーダンの内戦開始から3年が経過したにも関わらず、依然として停戦に向けた動きは停滞している。これまで数万人が死亡したほか、現在も1千万人弱が国内外に避難を強いられるなど、深刻な人道危機が続いている。SAFは首都ハルツームや紅海のポートスーダンを含む13州を掌握する一方で、RSFはチャド国境付近のダルフール5州を実効支配しており、スーダン国内は事実上2つに分断されている。そして互いの戦闘はドローンによる攻撃が中心となっている。特にSAFとRSFの戦闘の最前線となっているのが、SAFが統治するコルドファン3州だ。国連人道問題調整事務所(OCHA)は6月30日、北コルドファン州の州都エル・オベイドでドローン攻撃が激化しており、2025年10月にRSFによる大規模な攻撃を受けた北ダルフール州の州都エル・ファーシルのような状況に陥る恐れがあると警鐘を鳴らしている。
停戦の調停はこれまで米国やサウジアラビアが続けてきたが、目立った成果があがっていない。SAFに対してはエジプト、トルコ、サウジアラビアが支援を行う一方で、RSFに対してはアラブ首長国連邦(UAE)が全面的に支援を行っていると広く指摘されている。さらにはUAEに協力する形でエチオピアやチャドもこれまでRSFを間接的に支援してきたことも内戦長期化の要因となっている。米国にとって中東における重要な同盟国であるUAEに対して米国が圧力や制裁を強める動きがみられないことも、泥沼のスーダン内戦が終結しない一因となっている可能性がある。
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