- [ハンガリー/大統領解任]4月の選挙で地滑り的勝利を収め政権に就いたマジャール首相率いるティサ党主導の下、ハンガリー議会はシュヨク大統領とポルト憲法裁判所長官の解任に向けた憲法改正案を採択。シュヨク大統領は、16年間にわたり政権を握ったオルバン前首相の腹心であり、マジャール首相は就任以来一貫して同大統領の自発的辞任を求めてきた。この改正は、オルバン前政権が構築した体制を解体するという公約の核心となっている。なお、大統領は主に儀礼的な役割を担うが、議会が可決した法案を議会に差し戻すなどの権限を持つ。 改正案の成立により、シュヨク大統領には、5日以内に法案に署名するか、憲法裁判所に付託するかの選択がある。憲法裁判所に付託された場合、マジャール首相は直ちに弾劾手続きを開始すると宣言しており、これにより大統領は自動的に停職処分となる(なお、憲法裁判所は手続き上の問題のみを審査可能であり、法律自体の違憲性を判断することはできない)。 今回の改正案には、憲法裁判所判事に70歳の定年制を導入することや、議員の3期(12年)までの多選禁止(現フィデス党議員の半数以上に適用)、汚職を追及する国家資産回収保護局の設立なども含まれている。 シュヨク大統領自身は、自分は独立した立場にあり、辞任の強要は憲法的危機を招くと反発している。一方、オルバン前首相は選挙での敗北以降ほとんど公の場に姿を見せておらず、フィデス党内では彼に対する怒りが広がり、党のナンバー2が辞任する事態に発展している。
- [米国/ホルムズ海峡再封鎖]米国とイランを巡る緊張が再び急速に高まり、中東情勢は6月の停戦合意成立後で最も不安定な局面を迎えている。イランによる商船への相次ぐ攻撃を受け、トランプ米大統領は、自身のSNSを通じてイランに対する海上封鎖を再開すると発表した。封鎖の対象はイランの港湾や石油ターミナルで、中立国の船舶についてはホルムズ海峡の通航を認める方針を示している。また、米国は海峡の安全を確保する見返りとして、輸送貨物の価値の20%相当を「安全保障費」として負担させる考えも打ち出した。 一方、イランは、自国の同意なくホルムズ海峡を通過を試みる船舶を攻撃するとの姿勢を崩しておらず、自らも「航行サービス料」を徴収する権利があると主張している。トランプ氏のSNS投稿に対し、イランのアラグチ外相は、米国の構想は、航行料徴収が必要であるとのイラン側の主張を裏付けるものだとの認識を示した。ただし、国際海事機関(IMO)は、国際海峡において特定の国が通行料を徴収することは国際法に反するとの立場を示しており、米国とイラン双方の主張には法的な問題が残る。 海峡封鎖の再発動は、米国とイランが署名した了解覚書に反する措置である。既に数日間にわたって報復攻撃が発生しており、6月の合意によって成立した「不安定な和平」は、事実上崩壊したと考えられる。米ユーラシア・グループは、現時点で米国が大規模な対イラン空爆に踏み切る可能性は高くないものの、双方が攻撃姿勢を強めるなか、ホルムズ海峡の船舶航行は大きく萎縮すると予測している。輸送量は戦前水準の5~15%程度まで落ち込み、原油価格は1バレル75~95ドルの高値圏で推移する可能性が高いという。 イランの狙いは、ホルムズ海峡における恒久的な影響力を既成事実化し、その影響力を外交・経済両面の交渉材料とすることにあるとみられる。米国による圧力の強化を受けても方針を転換する可能性は低く、今後も船舶への攻撃や湾岸諸国への圧力を継続すると考えられる。さらに、湾岸地域のエネルギー施設や紅海航路への攻撃を通じて、米国側への圧力を強めるリスクも指摘されている。 実際、ホルムズ海峡では通航船舶数が急減し、多くの船舶がイランの指定する航路を利用するなど、海上交通への影響が既に顕在化している。また、イランは湾岸諸国の米軍施設への攻撃を拡大しており、サウジアラビアとフーシ派の対立にも再燃の兆しがみられる。地域全体で複数の戦線が連動するリスクが高まるなか、ホルムズ海峡にとどまらず紅海を含むエネルギー輸送網全体への影響が懸念される。現時点では全面戦争に発展する可能性は限定的とみられるものの、中東情勢は当面高い緊張状態が続く公算が大きい。
- [エチオピア/初の利上げ]7月13日、エチオピア中銀(NBE)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を15.0%から16.0%に引き上げた。NBEは2024年7月に政策金利を導入したが、金利の変更は今回が初めてとなった。NBEはインフレ率が中東紛争前に一桁台にまで低下したものの、その後の燃料供給の混乱による輸送コストの上昇により直近5月には13.4%に再加速したと説明。NBEの中期的にインフレ率を一桁台で維持する目標達成には金融引き締めスタンスを維持すべきとの判断から、利上げに踏み切ったと述べた。 NBEはエチオピア経済について、セメント生産、発電などの製造業が活況なほか、サービス部門も観光客の大幅な増加や旅客・貨物輸送(国営エチオピア航空)が好調なことにより、2025/2026年度の実質GDP成長率は10.2%に達するとの予測を示した。また、今回のMPCでは、民間銀行の年間与信拡大上限(24%)が撤廃されたほか、外国為替手数料の2.5%から1.5%への引き下げ、物品輸出業者が得た外貨建て代金の銀行への強制売却要件が50%から30%に引き下げられた。 国際通貨基金(IMF)は7月2日にエチオピア向けの財政支援プログラム(ECF)を通じて約4.6億ドルを即時供与すると発表した。2023年にデフォルトに陥ったエチオピアは、10億ドルのユーロ債を保有する民間債権者との債務再編に関する「暫定合意」に達したと6月29日に発表。7月15日にも初回の返済となる1.8億ドルを支払うタイミングであることから、IMFが前倒しでつなぎ資金を供与した形だ。IMFは輸出、外貨準備、政府歳入の伸びや財政実績などマクロ指標は堅調であると好意的に評価。他方で、中東紛争は重大な外部ショックであり、特に石油輸入をすべて中東諸国に依存していることが構造的な問題だと指摘している。一方で肥料については年間需要の半分強がすでに納入済みのため食料生産への影響は限定的だとし、ドバイへの金の輸出や旅客・貨物輸送も大きな影響が生じていないとの見解を示している。 他方で、IMFは2024年7月の変動相場制移行後も通貨ブルの公式レートと並行市場レートの間に10%強のスプレッドが残存している理由について、依然として外国為替へのアクセスの制限が残っていること、銀行を介した取引コストの高さ、高い輸入税負担が密貿易・闇市場での外貨調達のインセンティブになっていると指摘している。
- [インドネシア/S&Pのソブリン格付け]7月13日、S&Pグローバル・レーティングス社(以下「S&P」)は、インドネシアの長期ソブリン信用格付を「BBB」に据え置いた。格付けの見通しも「安定的」のまま維持した。S&Pは据え置きの理由に関し、政府が財政赤字を法定上限以内(後述)に抑制することにコミットし続けているほか、今後2~3年間は実質GDP成長率が5%程度で堅調に推移すると見込まれることを挙げている。 2026年に入り、主要格付機関2社がインドネシアのソブリン格付見通しを引き下げている。1月にはMoody's、2月にはFitchがそれぞれ格付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。引き下げの理由に関し、プラボウォ政権下での政策の予見可能性低下や、無料給食プログラムなど歳出拡大による財政状況悪化懸念等を挙げている。両社は今後格下げの条件として、政策の更なる予見可能性低下や財政状況悪化、資本流出やルピー安を受けた外貨準備高減少を挙げている。 財政収支に関し、インドネシアでは財政法上で財政赤字のGDP比を3%以内に抑制することが義務付けられている。他方で2025年は、パーム油・石炭・ニッケルなど主要輸出品にかかるコモディティの市況価格が低迷したことでロイヤリティ・法人税収入が低迷し、財政赤字のGDP比は2.9%と法定上限付近まで上昇した(2024年は同2.3%)。2026年に入り、無料給食プログラムの予算執行ペースが前年より加速したことや、イラン情勢を受けた原油価格高騰を踏まえてガソリン向け補助金が増額したことで赤字幅が拡大してきた。1~3月の財政赤字幅は240兆1,000億ルピアと、前年の2.4倍まで拡大した。このように、財政状況悪化懸念を受けてルピアの対ドル為替レートは年初より減価し続けているほか、10年物国債利回りも上昇し続けている。 これらを受け、インドネシア政府は財政赤字抑制に向けた政策を実施している。例えば無料給食プログラムに関し、当初予算では335兆ルピアを計上していたが(歳出全体は3,843兆ルピア)、5月には268兆ルピアまで削減した。またロイター通信によると、政府はさらに40~50兆ルピア削減することを検討しているもよう(ロイター通信、2026年6月25日付記事)。政府による徴税厳格化も受けて、歳入は前年から増加している結果、6月までの財政赤字幅は前年よりも縮小した。7日、プルバヤ財務相が2026年の財政赤字をGDP比2.85%に抑える方針を示した。赤字幅は当初予算(同2.68%)より拡大するものの、法定上限以内に抑制する方針を改めて強調した形である。今回、S&Pがソブリン格付および格付見通しを据え置いたことで、市場関係者はインドネシアの財政状況に対して一定の安心感を持つと考えられる。
- [中国/経済学者による積極財政の提言]中国誌『財新』が、清華大学中国経済思想・実践研究院の李稻葵院長の中国経済に対する提言を取り上げている。李氏は、中国経済の最大の課題はAIの普及による「K字型格差」ではなく、経済全体の低迷が続いていることだと指摘している。低迷は3年間続いており、成長分野だけでは経済全体を押し上げられていないとして、中国経済の成長力には引き続き自信を示しつつも、現状に対する危機感を持つ必要があると述べた。 李氏は、特に注目すべき指標として広義失業率と固定資産投資を挙げている。広義失業率は、国家統計局のデータを基に、過去2年間にわたり仕事を見つけられず、公式統計では労働力人口から外れた人も失業者に含めて試算した独自の指標で、10.2%に達するという。長期失業者は約2,400万人に上り、そのうち約1,300万人が16~24歳の若年層とされる。また、固定資産投資は2025年に通年でマイナスとなり、2026年1~5月も前年同期比4.1%減となるなど、統計開始以来、例を見ない低迷が続いている。 李氏は、インフラ投資や不動産開発という従来の成長エンジンが縮小した一方、新たな成長源が十分に育っていないと分析する。不動産不況の影響は主として家計が負担してきたが、現在は地方政府の活動縮小や支出縮小が経済を下押しする主要因となっていると指摘する。地方政府によるインフラ投資や経常支出は、過去20年間にGDPの平均41%を占める最大の需要創出源だったが、現在は35%まで低下している。さらに、財政難を背景に企業向けの税制優遇措置の見直しや税収の前倒し徴収が進み、地方政府が経済から資金を吸い上げる存在になっているという。 また、地方政府は高金利債務の返済を優先しているため、資金が実体経済に十分回らず、企業への未払い金の発生や過度な徴税が企業活動を阻害していると分析している。金融面では、家計や企業の借入意欲が乏しい一方、地方政府は新規借入によって既存債務を返済する状況が続いており、債務圧縮策が講じられているにもかかわらず、地方債務はなお増加しているとした。 こうした状況を踏まえ、李氏は中央政府を含む政府部門全体の債務を積極的に拡大すべきだと提言している。2026年の政府新規債務は約12兆元だが、その規模は倍増以上に拡大できるとし、国債増発によって調達した資金を、空き住宅の保障性住宅(低・中所得者層向け住宅)への転用やREITsを活用した運営、農民工の市民化支援、地方債の借り換え、民生・消費支援などに充てるべきだと主張している。その上で、地方政府が再び経済転換を後押しし、新たな成長分野を育成する主体となるべきだとの考えを示した。
- [ペルー/国際投資紛争の増加]ペルー経済財務省(MEF)は、国際投資紛争解決センター(ICSID)における投資家対国家の紛争について、最悪の場合の賠償額と仲裁費用を合計すると約300億ドルに達すると試算している。鉱業、エネルギー、インフラといった主要分野における複数の大規模案件で提訴されており、この金額は国内総生産(GDP)の約10%にも相当する。 近年、ペルーはICSIDにおける提訴件数が最も多い国の一つとなり、現在も20件から24件程度の案件を抱えている。多くの官民契約には、一定額(一般的に2,000万ドル以上)を超える紛争を直接ICSIDに付託できる条項が含まれており、国際的な法的リスクが拡大している状況となっている。 ペルーのように外国資本に依存して鉱山開発やインフラ整備を進めている国にとって、ICSID案件の増加は単なる法的問題にとどまらず、紛争の増加は信用力の低下につながり、将来の資金調達コストの上昇や投資家の慎重姿勢を招く可能性がある。 現在係争中で最大規模の案件は、カナダの資産運用会社ブルックフィールドによる約27億ドルの請求で、リマ周辺の高速道路「ルタス・デ・リマ」のコンセッション契約に関し、通行料金の徴収制限が事実上の収用に当たるかが焦点となっている。この案件は、料金規制と投資保護の関係をめぐり、ペルーに限らず他の中南米諸国にも影響を与え得る事例として注目されている。 一方、既に裁定が下された案件でも課題が残る。カナダの鉱山会社ルパカ・ゴールドの案件では、2025年6月にペルー政府に対して約4,040万ドルの賠償支払いが命じられ、利息を含め2026年3月時点で約6,860万ドルに増加している。しかし支払いは遅れており、米国で執行手続きが進められている。さらに、鉱業やエネルギー分野でも紛争が拡大し、インフラ・公益事業分野におけるリスクが広がっている。 こうした中で、ペルー政府の対応は一貫していない。2026年1月には空港案件で約9,100万ドルの支払いを行い、さらに過去の債券紛争についても大幅減額で和解するなど、仲裁判断を尊重する姿勢も見せている。一方で、別の案件では支払い遅延や法的対応の不備が見られ、投資家からの信頼を損なう要因となっている。 今後の焦点は、新政権が小規模な裁定を迅速に履行し信頼回復を優先するのか、それとも支払いを先送りし財政負担の抑制を図るのかにある。請求額の増加が続けば、信用格付けや資金調達条件の悪化につながる可能性があり、特に鉱業やエネルギー分野の安定契約の見直し議論が進むかどうかも注目される。こうした動向は、ペルーの成長モデルそのものに影響を及ぼす可能性がある。
- [日本/国際収支統計(5月)]7月8日、財務省は5月の国際収支統計(速報)を発表した。海外とのモノやサービスなどの取引で生じた収支状況を示す経常収支は3兆9,683億円(前年同月比+6,478億円、+19.5%)と、2025年2月から16か月連続の黒字となった。 経常収支は、貿易・サービス収支のほか、海外投資に伴う利子や配当金等の収支状況を示す第一次所得収支、対価を伴わない無償資金協力・寄付・贈与の受払等を示す第二次所得収支の3項目で構成される。 5月の貿易・サービス収支は▲34億円(+3,628億円)と赤字幅縮小(うち、貿易収支は69億円(+5,040億円)と黒字転化、サービス収支は▲103億円(▲1,411億円)と赤字転化)、第一次所得収支は4兆2,756億円(+955億円)と黒字幅拡大、第二次所得収支は▲3,040億円(+1,895億円)と赤字幅縮小となった。 貿易収支は69億円の黒字。前年同月の▲4,971億円から黒字に転じた。輸出額は9兆3,602億円と前年同月比で+14.7%。アジア向けの半導体などの電子部品や、米国への自動車の輸出が増加した。輸入額は9兆3,533億円で+8.1%増加したが、差引で輸出額が上回った。 サービス収支は▲103億円の赤字。前年同月の1,309億円から大きく減少し、赤字に転じた。サービス収支は、海外へのシステム利用料の支払い超過などによるデジタル関連の赤字を旅行収支の黒字で補う状況が続いているが、5月は旅行収支が5,279億円(訪日客の消費額である受取は7,649億円、日本からの海外旅行による現地消費額である支払は2,370億円)と▲16.9%縮小したことが響き、サービス収支全体としては赤字となった。旅行収支は3か月連続で前年同月比マイナス。日本政府観光局によると、5月の訪日客数は356万人(▲3.6%)。中国政府の渡航自粛要請以降、中国からの訪日客数は大きく減少し、5月は31万人(▲60.4%)。 第一次所得収支は4兆2,756億円の黒字で+2.3%増加。内訳では証券投資収益が2兆4,069億円の黒字と+16.3%増加した。 サービス収支に関しては、デジタル関連サービスへの支払いは今後も拡大していくとみられ、当面の間のデジタル赤字は所与のものとすると、旅行収支の黒字を拡大することが期待される。中国の渡航自粛ムードは続いており訪日客数回復の兆しはみえないものの、そのほかの地域のインバウンドは堅調であり、いかに1人当たりの消費額を増加させるかが鍵となる。
- [太陽光・蓄電池の導入加速と中国製機器の浸透]世界各国で分散型太陽光発電や蓄電池の導入が加速している。背景には、地政学的な緊張やエネルギー価格の高騰を受けて輸入国側がエネルギー供給の安定化を急いでいることと、中国企業による低価格なクリーンエネルギー機器の大量供給がある。中国は太陽光パネルや蓄電池で圧倒的な生産能力を持つ一方、国内市場だけでは吸収しきれない供給能力を抱えており、海外市場の開拓を積極化している。 代表例がパキスタンだ。世界エネルギー統計(旧BP統計)は、Behind-the-meter(需要家設置型)やオフグリッド太陽光発電が2021年の2.1GWから23.4GWへ急拡大したと紹介しており、その結果、LNG輸入計画の見直しや長期契約の再交渉にまで発展したと述べている。 同様の動きは東南アジアにも広がる。2026年1~5月、中国からフィリピンへの太陽光関連製品輸出は前年同期の2倍超となり、フィリピンは初めて中国にとって最大の輸出市場となった。需要はマニラだけでなく地方都市にも拡大しており、電力不足や電気料金上昇を背景に屋上太陽光発電の導入が進んでいる。 また、米シンクタンクSAFE(Securing America's Futures Energy)は、中国の電池生産能力が2030年までに世界需要を上回ると予測。FTによると、蓄電池普及が進むオーストラリアは中国製蓄電池の輸出市場の中で最も急成長している国の一つとなっている。7月14日付Bloombergは、Huaweiの110億ドル規模のクリーンエネルギー事業を取り上げ、太陽光インバーターや蓄電池、エネルギー管理システムを組み合わせた事業を新興国中心に世界展開していると報じた。
- [ロシア/戦後ロシアを見据えた論稿]アンドレイ・メルニチェンコ氏(肥料大手ユーロケム、石炭大手SUEKのオーナー)は、The Economist誌への寄稿で、ウクライナ戦争後の国際秩序を安定させるためには、ロシアを新たな安全保障体制の中に組み込む必要があると主張した。同氏は、西側諸国が戦争を通じてロシアの主権を弱体化または剥奪しようとしていると指摘し、そのようなアプローチは将来的な不安定化を招くと警告している。 同氏は、西側で想定される戦後ロシアのシナリオとして、①西側に従属する国家、②中国の勢力圏に組み込まれた国家、③分裂・断片化した国家、④要塞国家化した国家――の4つを挙げ、いずれもロシアの主権を損なう望ましくない選択肢だと論じた。代わりに、国民の繁栄を重視しつつ国際社会にとって予測可能な「主権国家」への転換を支援すべきだと提言している。 さらに、西側制裁によってロシアの企業家や知識層が既存の国際秩序への信頼を失ったと述べ、自身もロシアで事業を行いながら西側で生活する従来のライフスタイルを失ったと説明した。 The Economist誌編集部は、同氏がプーチン大統領の退陣を求めてはいないものの、提唱する改革が実現すれば結果的に現在の個人支配体制の終焉につながる可能性があると評価している。
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