- [日本/貿易統計(6月速報)]7月22日に財務省が発表した6月の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は▲4,069億円と、2か月連続の赤字となった。
輸出額は10兆9,290億円で前年同月比+19.3%と、10か月連続でプラスとなった。輸出数量指数は+0.2%と4か月連続の増加だが、増加幅は僅かであり、輸出額の増加は単価上昇に起因する。金額ベースの内訳では、半導体等電子部品が+53.8%、非鉄金属が+47.8%、自動車が+23.0%伸びた。輸入額は11兆3,359億円で+25.4%と、5か月連続でプラスとなった。輸入数量指数は+1.1%と3か月ぶりに増加した。金額ベースの内訳では、半導体等電子部品が+49.2%、非鉄金属が+74.4%伸びた。
為替レートは1ドル159.69円で、前年同月比10.9%円安。
原粗油に関しては、中東情勢の影響により輸入量は882万キロリットルと▲13.7%減少した一方、輸入額は1兆375億円と+59.3%増加し、輸入単価上昇が継続している。地域別では、中東からの輸入量は569万キロリットルと▲40.6%減少した。代替調達先として米国からの輸入量は272万キロリットルと+459.5%増加した(5月は58万キロリットル)。さらに輸入額は3,358億円と+907.4%に達し、米国からの輸入総額の約2割を占めた。ASEANからは7万キロリットル(+106.6%)となった。
中東からの原粗油輸入量は、2026年1月には1,264万キロリットル(1キロリットルあたり6.6万円)だったが、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始した2月には1,073万キロリットル(6.4万円)、3月には1,045万キロリットル(6.8万円)、4月には384万キロリットル(10.2万円)と大きく落ち込んだのち、5月には397万キロリットル(11.4万円)、6月は569万キロリットル(11.8万円)と、数量は徐々に回復傾向を示している一方、単価は高止まりしている。中東情勢が不透明さを増すなか、企業間のモノの取引価格動向を示す企業物価指数は6月に+7.1%と高い伸び率となり、輸入原油価格の高騰が川下まで波及し始めていることを示している。今後、企業収益への下押し圧力となる可能性や、個人消費の落ち込みに繋がる可能性がある。
- [英国/物価上昇率]英国立統計局(ONS)によると、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.6%だった。上昇率は5月(+2.8%)から縮小し、2025年3月以来の低さとなり、市場予想(+2.7%)を小幅に下回った。物価の基調を表す食品とエネルギーを除くコア指数は+2.6%であり、5月と同じだった。
内訳をみると、財(+1.7%)は5月(+2.0%)から縮小した一方で、サービス(+3.6%)は5月(+3.7%)からの小幅な縮小にとどまった。食品(+1.6%)が5月(+2.1%)から縮小し、衣服・履物(▲0.5%)は5月(+0.2%)から下落に転じた。また、交通(+5.7%)は5月(+6.8%)から縮小し、ガソリン価格の低下などを反映した。実際、ガソリン価格(+21.3%)は5月(+24.6%)から縮小した。
イングランド銀行は、物価上昇率が2026年Q3も目標の2%を上回ると予想している。ただし、バーナム首相は、電気代の付加価値税の引き下げ(5%→ゼロ%)を10月から実施すると発表した。これは、2027年3月までの時限措置であり、冬季の暖房費用の引き下げを狙ったもので、物価を押し下げる方向に寄与する。財源への懸念もあり、どのように実施されるのかが注目される。また、足元の中東情勢の緊迫化もあり、原油などエネルギー価格の上昇を通じて、物価上昇圧力が再び高まる可能性も否定し難い。なお、市場では、英中銀が7月末の会合で政策金利を据え置くものの、年内に利上げを実施すると予想されている。
- [ベルギー/化学品メールの苦境]ベルギーのクエン酸メーカーCitribelの苦境はEUが直面する「チャイナショック2.0」を象徴する事例として注目されている。Citribelは1929年以来、食品・医薬品・洗剤向けのクエン酸を生産してきたが、中国さんとのメーカーの大規模増産と価格競争により過去3年間赤字が続いている。EUは中国産クエン酸に対し最大42%のアンチダンピング(AD)関税を課しているものの、米国の156%と比較すると低く、欧州企業からは防御策として不十分との声もある。
背景には、中国政府の産業政策や補助金を背景とした過剰生産能力の拡大があるとみられている。さらに欧州企業は、高エネルギー価格、脱炭素対応コスト、需要低迷といった複数の課題が相互に影響し合う「polycrisis(ポリクライシス)」に直面しているとの指摘もある。EU化学工業連盟(Cefic)は、この複合危機が欧州の産業競争力を大きく損なっていると警告している。
こうした状況を受け、EUは従来の自由貿易重視から、経済安全保障と産業防衛を重視する方向へ政策を転換している。AD関税に加え、「デリスキング(対中依存低減)」戦略の下で、外国補助金規制、投資審査、公共調達規制、新たな過剰生産能力対策などを進めている。ECBや欧州委員会は、中国との競争が繊維や玩具ではなく、化学品、EV、電池、機械など欧州の中核製造業へ広がっていることを強く警戒している。Citribelの事例は、EUが中国との競争を単なる価格問題ではなく、「産業基盤維持と経済安全保障の問題」として捉え始めたことを示す象徴的なケースといえる。 - [カザフスタン・中国]7月15~17日、カザフスタンのトカエフ大統領は中国を訪問し、上海で習近平国家主席と首脳会談を行った。両国は2027~2030年の貿易経済協力プログラムに署名し、2025年の貿易額487億ドルを将来的に1,000億ドル規模へ拡大する目標を掲げた。また、中国企業CATL社による中央アジア初の蓄電池工場建設や、鉄道・港湾インフラ整備など、総額150億ドル超の70件以上の合意文書が締結された。
また、今回の訪問は従来の資源・物流中心の協力から、人工知能(AI)やデジタル分野を軸とした戦略的パートナーシップへの発展を示す重要な機会にもなった。トカエフ大統領は上海で開催された世界人工知能会議(World Artificial Intelligence Conference:WAIC 2026)に参加し、AIを国家発展の中核に位置付ける姿勢を強調した。カザフスタンは中国とのAI協力やデジタル経済統合を推進するとともに、自国を中央アジアの「デジタル・ハブ」へ発展させる方針を示した。
物流分野では、税関電子化や貨物追跡機能を備えた「Smart Cargo(スマートカーゴ)」構想を通じ、中欧を結ぶミドルコリドーの競争力向上を目指す。これにより、カザフスタンは単なる通過国からデジタル物流ハブへの転換を図っている。 - [サブサハラ/インフレ・金利]中東紛争による油価高騰、サプライチェーンの混乱の影響は依然としてサブサハラ・アフリカ各国でも続いている。7月22日、南アフリカ統計庁(Stats SA)は2026年6月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比で5.0%だったと発表した。5月の4.5%からさらに加速し、約2年ぶりに高いインフレ水準となった。食料・非アルコール飲料のインフレ率は1.6%と、5月の1.9%から鈍化したものの、運輸部門のインフレ率が12.7%に加速し、最大の寄与要因となった。背景には燃料価格が過去1年間で34.3%上昇したことにより、ミニバスタクシーの運賃や配車アプリサービスの価格に転嫁されたことがある。南ア政府は中東紛争勃発後の燃料高騰ショックを回避するために、燃料税を一時的に減税する措置をとったが、その後の油価下落等を受けて7月1日に同措置は失効した。そのため7月以降のインフレ率は燃料費の高騰によってさらに加速する可能性がある。7月のインフレ率は中銀のインフレ目標である3%±1%を大幅に超えていることから、7月23日に開催される中銀の金融政策委員会(MPC)で二会合連続の利上げが行われるとの見方が強い。
ナイジェリア、アンゴラといった産油国を擁しながらも、ほとんどの国が石油精製品を輸入に依存しているサブサハラでは、南ア以外にもエチオピア(6月、13.9%)や、ガーナ(6月、5.3%)などでインフレが加速傾向にある。エチオピアとタンザニアは7月に政策金利の利上げに踏み切った一方、産油国のアンゴラでは利下げ、ナイジェリアとガーナではリスクバランスを評価しながらも7月に金利を維持するなど対応はまちまちだ。インフレの加速を抑制し、市民生活への影響を軽減したいケニアやエチオピアといった国々では時限付きでの燃料税減税や燃料補助金の支給を続けているが、こうした取り組みは財政面での負担を拡大させうる。一方で、ナイジェリアは長年財政赤字の要因となっていた燃料補助金を2023年に廃止。その後インフレが急上昇した影響は今も残るが、痛みを伴う改革によって国際通貨基金(IMF)や市場からの信頼を得るなどサブサハラにおいては各国の置かれた状況や優先順位ごとに異なる対応がみられる。なお、フランス政府の兌換保証によりユーロペッグされた通貨・西アフリカCFAフランを使用する「西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)」に加盟するコートジボワールとセネガルでは6月のインフレ率はそれぞれ1.8%、0.4%とサブサハラ域内で最も低く、安定した水準を維持している。他方で、UEMOA域内でも通貨主権を求める声が高まっており、2027年中の域内共通通貨「ECO(エコ)」の段階的導入を目指している。 - [インドネシア/国際金融センター構想]7月21日、インドネシア議会は、国際金融センター(PFII)の設立を許可する法案を満場一致で可決した。投資銀行を含む世界の大手銀行、資産運用サービス、ならびに航空機・船舶リース会社からの投資を誘致することで、これまでシンガポール等へ流出していたインドネシア富裕層の資産を国内に引き留めつつ、海外投資家の資金流入も促す狙いがあると考えられる。ロイター通信によると、政府系ファンドのダナンタラが今後立ち上げるPFIIの運営企業向けに出資を行う見込みである(ロイター通信、2026年7月21日付記事)。
法案には、条件を満たした企業に対する最長50年間の法人税免除や、ゴールデンビザを保有する外国人労働者・居住者に対する個人所得税の免除、VATや奢侈税の免除などが盛り込まれている。法制度についても、インドネシアで採用されている大陸法ではなく、ドバイ・香港を参考にしてコモンローを採用する予定である。このほか、PFII専用の独立仲裁機関が設置される見込みである。PFIIの設置場所は未定であるが、バリ島のクラクラ経済特区が有力候補として挙げられている。バリ島を含む小スンダ列島は人口が約1,570万人程度(人口全体の約5.6%)、GDPに占める割合は国全体の2.8%程度である。過去より観光業が発展しており、産業別構成比のうち第3次産業(サービス業)が占める割合は60.1%と他の地域(スマトラ島は34.8%、ジャワ島は53.3%)と突出して高い。他方で金融・不動産業など高度なサービス業は未発達である。観光業への過度な依存を是正しつつ、資産運用・投資銀行業務などの高度なサービス業育成のために、バリ島が候補地となっているもよう。ジャカルタに比べて交通渋滞が少ないほか、美しい自然環境が揃っていることなども海外投資家にとり魅力となるとの見方も存在する(Asia Times、2026年7月15日付記事)。
他方で、株式市場の不透明性が投資受け入れへのボトルネックになる可能性が高い。直近ではMSCI・S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が、投資家向けの情報開示が十分でないなど株式市場の不透明性の高さを理由に市場区分を現在の「新興国」から「フロンティア市場」に格下げする可能性を示唆している。このように海外投資家の金融市場に対する警戒感が解消しない限り、資金呼び込みは困難との見方が多い(The Business Times、2026年7月21日付記事)。 - [アルゼンチン尿素製造推進]アルゼンチン最大の独立系エネルギー企業であるパンパ・エネルヒアは、国内唯一の合成ゴム工場を閉鎖する一方で、シェールガス資源を活用した27億米ドル規模の尿素製造・輸出プロジェクトを推進している。これまでの国内需要中心の事業から輸出志向型事業へ転換することを目指す。
閉鎖の背景には、アルゼンチン国内のタイヤ産業における需要低迷やブラジル向け輸出の減少がある。さらに、世界的な供給過剰によって合成ゴム価格が下落し、同工場の競争力が大きく損なわれた。同社は、ゴム事業が短期間で収益性を回復する可能性は低いと判断した。
一方で、同社は成長分野への投資を加速している。その中核となるのが、アルゼンチン南部の港湾都市バイア・ブランカで計画されている「Fertil Pampa」尿素プラントである。この施設は、世界有数のシェールガス埋蔵層であるバカ・ムエルタから供給される低コストの天然ガスを原料とし、ガスパイプラインに直接接続される計画である。
同プロジェクトでは、生産された尿素はアルゼンチン国内の肥料需要を補うとともに、主にブラジル向けに輸出される予定となっている。年間で約10億米ドルの経済効果が期待されている。
この投資を支えているのが、アルゼンチン政府が導入したRIGI(大規模投資インセンティブ制度)である。同制度は、大規模投資案件に対し、税制や関税、外貨規制などのルールを長期間にわたり安定的に適用する仕組みであり、投資家にとっては、利益送金や法人税に関する制度変更リスクを抑えられるため、数十億ドル規模の長期投資を判断しやすくなる。
今回の動きは、アルゼンチン産業の構造変化を示している。国内需要に依存する伝統的な製造業は厳しい競争環境に直面している一方、バカ・ムエルタの豊富で安価な天然ガスを活用した輸出型事業には大きな成長機会が存在する。新たな雇用創出や不動産需要、サービス需要の拡大も期待される。
今後の焦点は、Fertil Pampaプロジェクトの最終投資決定と建設計画が予定通り進展するかどうかである。これらは、RIGI制度がアルゼンチンへの大型投資を実際に呼び込めるかを測る重要な試金石となる。
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