- [米国・イラン/第2回核協議]2月17日、米国とイランはスイス・ジュネーブで、2月6日に続く核協議第2回目を行った。イランのアラグチ外相は終了後、「前回よりも真剣で建設的な議論ができた」と述べ、合意の指針となる主要原則について大筋で理解に達したと明らかにした。今後は合意文書の草案作成に入る方針だが、「直ちに最終合意に至ることを意味しない」とも強調した。米当局者も、双方の立場に残る隔たりを埋めるため、イランが2週間以内に追加提案を示すことで一致したと説明している。
ただし両者の溝は依然として大きい。米国はイラン国内でのウラン濃縮を一切認めず、高濃縮ウランの引き渡しや弾道ミサイル開発の制限、中東の親イラン武装勢力への支援停止を求めている。これに対しイランは制裁の全面解除を優先条件とし、核問題以外は交渉対象にしない姿勢を崩していない。濃縮度を60%から引き下げる可能性には言及したものの、米側の包括的要求は「一線を超えている」と反発している。
トランプ大統領は空母打撃群の追加派遣を指示し、交渉期限を約1か月とすることを示唆するなど軍事圧力を強める。イランも2月16、17日の2日間、対抗措置としてホルムズ海峡で軍事演習を実施し、地域の緊張は高まっている。専門家は、交渉は継続されるものの実質的進展は乏しく、武力衝突の可能性はなお残ると分析する。合意実現の鍵は、米側が核問題に限定した妥協を受け入れられるかどうかにかかっている。
- [トルコ・エチオピア/首脳会談]2月17日、トルコのエルドアン大統領はエチオピアを公式訪問し、エチオピアのアビィ首相と首脳会談を行った。エルドアン大統領のエチオピア訪問は11年ぶりで、両国の国交樹立100周年のタイミングで行われた。
会談後、アビィ首相はエチオピアの「海へのアクセスの確保」が協議の中心的な焦点だったと説明し、トルコに外交的支援を要請したと報じられている(2月17日付、アナドル通信社)。内陸国のエチオピアは紅海へのアクセス確保に意欲的であり、これが周辺国のエリトリア、ソマリアとの間での緊張を高めている。2024年1月にエチオピアがソマリア国内の国連未承認国家・ソマリランドのベルベラ港の使用権を得るのと引き換えに、エチオピアがソマリランドを国家承認する方針を示した際には、主権侵害だとしてソマリアをはじめアラブ諸国などからの強い反発を招いた。その緊張を解きほぐしたのがエチオピア・ソマリア両国と深い関係を持つトルコのエルドアン大統領だ。2024年12月にエルドアン大統領はアビィ首相とソマリアのハッサン大統領をトルコに招き、和平合意の仲介を行った(「アンカラ宣言」)。その際、エチオピアはソマリランドをあくまで商業的に利用することに基本合意し、ソマリアとエチオピアとの関係は改善に向かった。しかし、今回のエルドアン大統領との会談において改めて海へのアクセスが主要な議題となったことからも、アビィ首相が依然として紅海へのアクセスに強いこだわりを有している点が浮き彫りとなった。エルドアン大統領側がどのような反応を示したかは明らかになっていない。
エチオピアには縫製、建設、農業加工などを中心にトルコ企業が260社以上進出し、数万人のエチオピア人を雇用するなど両国間の経済関係は良好だ(2月17日付、Africa Report紙)。首脳会談後には水力発電所などの再生可能エネルギー分野での協力で合意。また、トルコはエチオピアに軍事用ドローンを提供するなど安全保障面の協力も強化している。
他方で、トルコはソマリアとの安全保障協定のもと、海外では最大規模の軍事基地である「TURKSOM」を設置しており、ソマリア国内のイスラム系過激派組織「アル・シャバブ」対策やアデン湾周辺の海上の治安対策を行っている。また、トルコは全輸入の約2割が石油・ガスなどのエネルギーで占められており、これが経常赤字やロシア依存の要因となっていることから、ソマリア沖で大規模な資源開発を進めようとしている。このため、トルコとしてはエチオピア、ソマリア間の安定がトルコの国益につながることから、アフリカの角地域での影響力拡大に積極的であるとみられる。
そのような中で、1月にイスラエルがソマリランドを国家承認すると発表したこともトルコがエチオピアへの圧力を強める動機となっている可能性がある。トルコはイスラエルによるガザ侵攻にもっとも強く反発している国の一つであり、現在両国の貿易・経済関係は断交状態にある。イスラエルはソマリランドを拠点として、アデン湾をはさんで対岸にあるイエメンのフーシ派対策を強化したい意図があるとみられるが、こうした動きはエチオピアとソマリアの安定を求めるトルコにとっては厄介だ。また、イスラエルの背後にはソマリランドのベルベラ港の運営権を持つアラブ首長国連邦(UAE)がいるとみられている。エチオピアはUAEとも緊密な経済・軍事関係を結んでいることから、トルコとしてはこのタイミングでエチオピアをけん制したい意図があるとも推測できる。
なお、ソマリアは1月にサウジアラビア連合軍などが対抗しているイエメン南部暫定評議会(STC)のリーダーを、UAEがベルベラ港経由でUAEに避難させたことを「敵対的行為」だと非難。UAEとの間の長年の軍事・経済・港湾協定などを破棄した。その直後にソマリアはカタール、サウジアラビアとの安全保障協定に切り替える動きを見せている。アフリカの角地域は、トルコ、サウジアラビア、カタール、UAE、イスラエルなど様々な外部勢力がそれぞれの思惑をもとに影響力を競う中心地となっている。
- [ペルー/大統領また罷免]ペルー議会は、就任からわずか4か月の暫定大統領ホセ・ヘリ氏を解任した。これで、10年間で8人目の大統領交代となった。ヘリ氏は議会議長としての権限も失うことになった。
ヘリ氏は、2024年10月にボルアルテ前大統領が議会により解任された後、暫定大統領に就任した。しかし、中国人実業家との非公開会合が明らかになり、その内容に不透明さが指摘されてスキャンダルに発展した。今回のスキャンダルは、中華料理店の名称にちなんで「チファゲート」と呼ばれている。ヘリ氏は不正を否定しているが、説明責任を果たしていないとの批判が強まった。政治家たちが犯罪や汚職に十分対応できていない状況は、有権者の不満をさらに高めている。議会は新たな暫定大統領を選出する必要があり、選出は2月18日に行われる見込みである。
ペルーは総選挙を2か月後に控えながら政治的混乱が続いている。2021年の選挙以降では、急進左派のペドロ・カスティージョ氏、ディナ・ボルアルテ氏、そしてヘリ氏と、短期間に3人の大統領が弾劾された。
4月の大統領選挙と連邦議会選挙を前に、治安の悪化は有権者にとって最大の関心事となっている。公式統計によれば、2025年1?9月の恐喝事件は20,705件で前年比29%増、殺人事件も2,213件と2017年のデータ集計開始以降最多を記録した。
こうした政治の不安定さにもかかわらず、ペルーの鉱業中心の経済は2025年に3%前後成長し、インフレ率も2%以下の低水準を維持した見込みとなっており、経済は比較的好調に推移している。
しかし、政治的な不安定さは、米中の関係が敏感な時期であり、影響が懸念される。先週、ペルーの米国大使館は中国資本のチャンカイ港の港湾施設がペルーの主権に影響を及ぼす恐れがあると警告を発している。一方、1月には、ペルーの裁判所が、ペルー政府の規制当局はチャンカイ港を監督・監査してはならないという判決を出し、港を運営する中国のCOSCO側の民間港だから政府の不当な介入は拒絶するという主張を援護しており、今後のペルーの政治的な判断が注目を高めている。
次期大統領選は予定通り4月におこなわれるが、候補者は36人と過去最多であり、有権者の支持が大きく割れている。現在の世論では右派候補が優勢だが、有権者の判断は流動的であり、議会においても大統領が安定した多数派を得る可能性は低いとされ、政策の大幅な転換を制約する一方で、政治的な不安定さが続くリスクを高めている。
- [日本/貿易赤字は3か月ぶり]財務省によると、1月の輸出額は9兆1,875億円(前年同月比+16.8%)へ5か月連続増加、1月として過去最多を記録した。また、輸出数量も+8.9%と、2か月ぶりに増加に転じた。輸出額の内訳を見ると、半導体等電子部品(+39.2%)や非鉄金属(+36.0%)、プラスチック(+17.8%)などが増加した。
それに対して、輸入額は10兆3,401億円(▲2.5%)へ5か月ぶりに減少したものの、1月として過去2位の大きさだった。輸入数量は▲0.5%で、5か月ぶりに減少した。輸入のうち半導体等電子部品(+42.7%)や非鉄金属(+31.6%)などが増加した一方で、エネルギー価格が低下した影響などから、液化天然ガス(▲18.1%)や原粗油(▲8.1%)、石油製品(▲25.2%)などが減少した。この結果、差し引きは▲1兆1,526億円(▲58.0%)の赤字であり、3か月ぶりに赤字に転じた。2025年1月の貿易赤字(▲2兆7,417億円)から縮小した。
対米国の輸出額は1兆4,621億円(▲5.0%)、2か月連続で減少した。特に、建設用・鉱山用機械(+35.3%)が増加した半面、医薬品(▲70.6%)や自動車(▲9.9%)などが減少した。輸入額は1兆951億円(+3.0%)へ、6か月連続で増加した。医薬品(▲42.6%)が減少した一方で、原粗油(+759.6%)や非鉄金属鉱(+181.5%)、穀物(+26.7%)などが増加した。差し引きは3,670億円(▲23.0%)の黒字だったものの、2か月連続で減少した。
対中国の輸出額は1兆5,498億円(+32.0%)へ2か月連続で増加した。半導体等電子部品(+51.7%)やプラスチック(+37.1%)、原料品(+64.3%)などの増加が目立った。輸入額は2兆6,335億円(+0.6%)へ6カ月連続で増加した。半導体等電子部品(+58.7%)や石油製品(+80.9%)、電算機類(+5.0%)などがけん引役だった。差し引きは▲1兆837億円(▲24.9%)、58か月連続の赤字になった。ただし、2026年の春節休暇の時期が2月中旬以降になったこともあり、対中国やアジア貿易については、ここ数か月をならして基調を判断する必要がある。
- [フォード/EV戦略]フォードの電気自動車(EV)戦略が話題になっている。EV事業の赤字を抜本的に改善するために、空力性能・軽量化・システム効率の向上で少ない電力量で航続距離を確保する方針を示した。航続距離を伸ばすために大型で高価なバッテリーを使う設計思想からの大きな転換。バッテリー容量は意図的に小型化し、リン酸鉄(LFP)バッテリーを採用することでコスト低下を測り資源制約を回避する。これにより車両全体を一つのシステムとして再設計したと見られており、価格競争力を確保することで先行するEVメーカーを追う。
2027年発売予定としているEVピックアップトラックではテスラが採用しているユニキャスティングを本格的に導入する。これは巨大な鋳造機で車体構造を一体成型する手法で、部品点数・重量・組立工程を大幅に削減できるメリットがある。車両重量は競合より25~30%の軽量化が可能とされる。そのため、バッテリーを大型化させなくても航続距離が確保でき、コストと性能向上を同時実現する狙い。ユニキャスティングは溶かしたアルミをプレスする一体成形。前後構造はこれまでの部品数が140点以上だったものから2部品で構成するとしている。この結果、販売価格は3万ドルに抑えられる意向だ。
いずれにしても、安いEVは利益が出にくいというこれまでの前提を打破することを狙っている。今後の注目点は素材に関する関税やサプライチェーンの変化だろう。現在鉄鋼やアルミにかけられている関税率はなんらかの形で修正される可能性も浮上するし、組み立てのために往来している作業は、この車種については集約されることでサプライチェーンが短縮化する可能性もある。また、近年の自動車は大型化してきたが、トレンドが反転して機能を追求したよりスマートな形状が目指されていくのかもしれない。
- [ロシア/情報統制]2026年2月、ロシア当局がTelegramやWhatsApp、YouTubeなど主要な海外インターネットサービスに対し、接続制限や遮断を強化している現状が報じられている。検閲や国産アプリ「Max」への移行を目的としたこれらの措置により、メッセージの送受信や動画の読み込みに深刻な支障が生じ、その影響は全土に広がっている。さらに、一部の報道では、4月1日からTelegramの利用が不可能になるとの報道も出ている。
この事態は、単なる通信手段の喪失にとどまらず、モバイル開発や観光業、暗号資産エコシステムといった幅広い経済活動に打撃を与えるとみられる。軍事関係者や政治家からも不満の声が上がるなか、当局はさらなる大規模な遮断に向けた技術的な試行を続けているとみられる。ユーザーにはVPNの活用や、検閲を回避できる代替アプリの導入が推奨されるなど、情報統制との攻防は激化している。
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