- [ブラジル/2026年第1四半期農業輸出]2026年第1四半期のブラジル農業関連輸出は、対米関係の変化と市場構造の転換を示す内容となった。米国向け輸出額は22億4,000万米ドルにとどまり、前年同期比31.2%の減少となり、ブラジル農業輸出全体のシェアは5.9%まで低下した。米国向け輸出全体でも減少が続いており、商務省データによれば、2026年第1四半期の米国向け輸出は前年同期比で18.7%減少している。特に農業関連は、従来耐性が強い分野であるが、輸出構造の再編が進んでいることも示している。
米国への輸出が減る一方でブラジルの市場開拓が進んでおり、農業畜産供給省(MAPA)によれば、ブラジルは2026年第1四半期だけで30の新たな農産物市場を開拓した。近年では、マテや、ピーナッツ、トウモロコシ油、動物飼料原料など、従来は参入できなかった地域に広がりつつある。
第1四半期の輸出を品目別に見ると、大豆関連で121億3,000万米ドルと全体の31.8%を占め、価格下落にもかかわらず前年比11.5%増加した。食肉は81億2,000万米ドルと21.3%を占め、前年比21.8%増と大きく伸びた。なお、コーヒーや砂糖・エタノールは価格下落の影響もあり、輸出額を減らしている。
数量面では、大豆の出荷量が過去最高の2,347万トンに達し、前年から5.9%増加した。大豆ミールも過去最高の543万トンとなった。牛肉輸出は金額・数量ともに記録を更新した。
ただし、市場開拓が進む中でも中国への依存も大きくなってきている。米中貿易戦争によって中国向け米国大豆が減少した局面ではブラジルが代替供給国となった。中国はブラジル農業ビジネス輸出の約30%、大豆では約80%を占めており、中国の調達方針の変化は、米国関税以上の影響を及ぼす可能性がある。また、農業だけでなくイラン戦争を受け第1四半期の中国への原油輸出は前年同月比98%増加しており、農業とエネルギー分野での結びつきが鮮明となっている。輸出数量は増加したが、懸念事項も多い。価格下落が収入を押し下げた品目も多く、統計院(IBGE)の予測では、2026年の穀物・油糧種子生産量は前年比3.7%減少する見通しも出ている。さらに、高金利政策は農業融資の負担を高め、2026年末に本格化するEUの森林破壊規制への対応も、供給網に混乱をもたらす可能性がある。また、イラン戦争による肥料、エネルギーコストの上昇も懸念されている。
- [ECB/政策金利据え置き材料]欧州中央銀行(ECB)は4月27日、「企業の資金調達状況に関する調査」(SAFE)の結果を公表した。それによると、域内の企業は、銀行融資金利や他の条件が厳格化したと報告した。資金需要は安定的だったが、銀行融資の利用可能性はわずかに悪化した。
企業は販売価格や非労働投入費用の上昇を予想している。賃金見通しは緩やかな動きにとどまっている。今後1年間で販売価格が3.5%上昇すると予想された(前回は2.9%上昇)。2024年Q2から25年Q4まで7四半期連続で3%を下回っていたものの、今回調査では3.5%まで上昇した。その一方で、賃上げは2.8%と前回の3.1%からやや緩やかなものになった。賃上げや雇用増加についての見通しは安定している。
短期的なインフレ期待は著しく上昇した一方で、中期のインフレ期待は安定的だった。1年先(中央値)は前回の2.6%から3.0%へ上昇した。3年先や5年先は3.0%で、前回から横ばい。ただし、5年先の物価見通しについて、全体の65%が上振れリスクを指摘しており、前回の56%から増加した。
販売価格やコストについては上昇見通しが一段と強まった一方で、ECB高官が警戒している賃上げ見通しや中長期的な期待インフレ率は比較的安定していた。そのため、4月30日の理事会に向けて、政策金利を据え置く上での判断材料の1つになったとみられる。
- [ロシア・イラン/首脳会議]4月27、イランのアッバス・アラグチ外相は、ロシアのサンクトペテルブルクでプーチン大統領と会談した。プーチンはイランの主権擁護を評価しつつ、中東での早期平和実現に向け、ロシアが貢献する用意があると表明。一方で「イランの利益」と「地域全体の利益」を並列的に語り、無条件の支援ではない姿勢もにじませた。
背景には、米・イランの軍事的緊張が続く一方、停戦延長と水面下で停戦交渉が模索されていることがある。報道によれば、イランは①米・イスラエルによる軍事行動停止、②ホルムズ海峡など地域問題の協議、③核交渉という段階的解決案を提示した可能性があり、核交渉を後回しにする狙いもうかがえる。トランプ政権も停戦を延長しており、双方とも「完全な行き詰まり」からの脱却を探っている。
ロシアは公式に仲介の用意を示しており、中東安定は「南北回廊」などロシアの戦略的経済プロジェクトとも直結する。ただし、ロシアとイランの利害は必ずしも完全一致ではなく、特に核問題では温度差が指摘される。
また、イラン国内では交渉を主導する人物や権力バランスが流動化しており、最終的な意思決定プロセスが不透明である点もリスク要因だ。専門家の間では、交渉進展の可能性を認めつつも、米イラン対立の再激化を排除できないとの慎重な見方が根強い。
- [チャド/水資源と治安]4月26日、チャド東部で井戸の使用をめぐり2つの家族間で衝突が発生し、少なくとも42人が死亡したと報じられている(4月26日付、仏AFP紙)。サハラ砂漠以南の半乾燥地域である「サヘル地域」に位置するチャド北・中・東部では、遊牧民のアラブ系と、農耕民の間でたびたび水資源の争奪をめぐった衝突が発生している。2025年11月にも井戸をめぐる部族間の争いにより33人が死亡した。気候変動による干ばつや洪水のサイクルの変化が、水利用に関する衝突に拍車をかけている。アフリカで第4位の大きさのチャド湖を有するチャド南部は、比較的湿潤な地域で農業に適しており、フランス植民地時代にも「使える(Tchad utile)」と形容されていた。チャド湖は気候変動の影響もあり、1990年代には90%以上の水域が消滅し、「失われる湖」として世界的な注目が集められたが、近年は温暖化による海水の蒸発量の増加により洪水が増加。水位が上昇・回復に転じていると報じられている(2025年7月、仏Le Monde)。これにより放牧適地が縮小したため、新たに遊牧民と農耕民の衝突もみられるほか、同地域で活動するイスラム系過激派組織・「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」は新たにチャド湖上にできた島・砂丘を活用して戦闘を続けるなど、水資源が地域の治安情勢も影響を及ぼしている。
特に今回チャド東部で起きた衝突は、気候変動の影響以上に、2023年から続く隣国スーダンでの内戦により、100万人を超える難民がチャド東部の州に流入していることも要因となっている。チャドのマハマト・デビー大統領の出身である非アラブ系遊牧民のザガワ族は、チャド東部からスーダン南部にまたがって生活している。しかし、スーダン南部での実効支配を強めるアラブ系の反政府勢力・「即応支援部隊(RSF)」はザガワ族などの非アラブ系住民を狙った攻撃を続けている。2月にはRSFと、RSFに対峙するスーダン国軍(SAF)と、SAFと連携を示すチャド系武装勢力との衝突がスーダン・チャド国境周辺で激化。チャド政府は、チャド国内の治安維持のために無期限で国境の閉鎖を発表するなど情勢が不安定化している。しかし、スーダンとチャドの国境は約1,300kmに及び、両国とも国境管理を十分にできていない状況からチャドへのスーダンからの難民の流入が続いている状況だ。難民の流入が続き、人口増加圧力が高まれば、ただでも希少な水資源へのアクセスをめぐってさらに衝突が拡大していく恐れもある。
一方で、チャドによるスーダン国境の封鎖の背景には治安情勢への対処以上に、国内での政治的な理由によるとの見方も強い。スーダンのRSFに対しては、公式には認めていないがアラブ首長国連邦(UAE)が軍事支援を行っているとみられている。そのUAEからスーダンへの武器・食糧等の搬入にあたり、UAEはチャドの空港を使用しているとみられており、これはデビー大統領が間接的にUAEとRSFを支援してきたことを意味している。この見返りに、チャドはUAEから投資や金融面での支援を受けてきたが、スーダンでRSFの攻撃対象となっているザガワ族の政治エリート層が、デビー大統領のRSF・UAE支援を行わないよう圧力を強めているとみられている。
チャド国内での反仏感情から、デビー大統領は2024年にフランスとの軍事協定を破棄。駐留していた約1,000人のフランス軍は撤退した。しかし、こうしたチャド国内の政治的圧力もあり、デビー大統領は1月にフランスでマクロン大統領と会談。二国間での安全保障や情報面での協力を再開について協議が行われた。サヘル地域の安定の要ともなるチャドの安全保障・治安問題の動向に注視が必要だ。
- [マレーシア/汚職取締機関の長官交代]4月25日、マレーシア政府は、マレーシア汚職防止委員会(MACC)の長官に、新たにハリム・アマン元高等裁判所判事が就任すると発表した。元判事の起用は初めて。現長官であるアザム・バキ氏はMACCの前進である旧汚職防止局(ACA)所属時代より汚職取締り業務に従事していた。MACCの長官は法律上、首相の助言を基に国王が決定する。バキ氏の任期は5月12日までであるため、翌13日よりアマン氏が長官に就任する。
マレーシアでは、首相府に属するマレーシア汚職防止委員会と司法長官室(AGC)の2機関が汚職を取り締まる。MACCは2009年の汚職防止委員会設置法(MACC法)成立により汚職捜査に取り組む専門機関として設立。汚職の捜査・調査に特化しており、起訴権限を有しない。他方でAGCはマレーシア独立時から存在し、起訴権限を有する。MACCについては、直近ではイスマイル前首相による25年2月に首相時の汚職とマネーロンダリングの容疑で側近を拘束している。
なおMACCとAGCは独立した機関ではなく首相府に属しているため、国民・連立与党より独立性の低さや与党が政敵を排除するためのツールと位置付けている疑惑が指摘されていた。特にMACCのバキ長官に関しては、2021年に公務員の保有制限を超過して金融機関の株式を保有していることが発覚したほか、2026年2月にはBloombergが、MACCの職員らが実業家グループと結託し、特定企業の汚職捜査を名目に銀行口座を凍結・株式譲渡を強制させることで実業家グループに経営権を移す「コーポレートマフィア」問題が取り上げられた(Bloomberg、2026年2月12日付記事)。
これらを発端に、国民による抗議デモが発生した。独立系メディアMasaの世論調査によると、汚職問題は物価・インフレに次ぐ懸念事項であり、支持率に直結する要素である。加えてアンワル首相が所属する与党連合である中道リベラル政党希望連盟(PH)の構成政党である民主行動党(DAP)からも、コーポレートマフィア問題に関する独立調査委員会設立を要求されている。2022年の総選挙にて「改革」を旗印に勝利したアンワル政権にとり、MACCそのものの汚職疑惑浮上や政府による対応の遅れは、自らのアイデンティティを否定する要素になりかねない。加えて2027年12月までに実施される総選挙に関し、経済状況が好調であることを踏まえ、ユーラシア・グループは今年に前倒しして実施する可能性も指摘している。国民の支持率低下やPHの離反を防ぐためにも、アンワル政権にとりMACCを刷新することが急務であった。今回、政府が元判事であるハリム氏を長官に任命した背景には、同氏が特定の政党やビジネスに関与しておらず、コーポレートマフィア問題のようなMACC内での汚職発生が起きにくいと考えたことが挙げられる。
他方で、MACC刷新や、その過程での内部調査により、これまで首相がMACCの捜査に恣意的に関与していた・与党内でも汚職が発生していたことが発覚すれば、逆にアンワル政権への国民・与党からの反対・批判が増加しかねない。Bloombergによると、コーポレートマフィア問題の被害者と名乗る元実業家のビクター・チン氏は、自身が経営する企業に対するMACCによる銀行口座凍結を解除してもらう代わりに(口座凍結はマネーロンダリング疑惑に基づくもの)、ある仲介者に対して950万リンギット(約3億円)を支払ったと暴露したが、仲介者がアンワル首相の所属政党PKRの議員ではないとの疑念が浮上している。このように、仮にアンワル首相周辺の政治家が過去の汚職疑惑に関与しており、それがMACCに対する調査により判明した場合は、国民・与党のアンワル政権に対する反対・離反を招きかねない。
- [中国/米メタにManus買収撤回を命令]4月27日、中国国家発展改革委員会(発改委)は米メタによるAI企業「Manus(マナス)」の買収(約20億ドル)を撤回するよう命じた。
Manusは中国発のAIスタートアップで、複雑なタスクを自律的に実行する「AIエージェント」を開発し注目を集めた企業である。同社は2025年にシンガポールへ拠点を移し、同年12月にメタが買収を発表、すでに事業の統合が進んでいた。しかし発改委は2026年4月、外国投資規制に基づきこの取引を禁止し、資金の返還や所有権の再登録、技術利用の停止などを含む「完全な巻き戻し」を要求した。
この措置の背景には、中国がAIを国家安全保障上の核心的技術と位置づけ、技術・人材・データの国外流出を強く警戒していることがある。Manusは、形式上はシンガポール企業であっても、開発人材や初期研究、データが中国に由来するため、取引が中国の産業安全に影響すると判断された。 特に近年、中国当局は「中国離れ」と呼ばれる動き、すなわち国内発企業が海外資本を受けて拠点や人材を移す動きを問題視しており、本件はそれを抑止する強いシグナルとみられる。
一方、米国や欧州、日本でもAIや先端技術分野の対内投資審査は強化されており、中国当局は本件も同様の安全保障審査の一環だとしている。ただし、すでに完了した取引を遡って無効化する措置は極めて異例であり、法的根拠や域外適用の範囲を巡る不透明性が大きい。
米中関係の文脈では、5月に予定されているトランプ米大統領と習近平国家主席の首脳会談を控え、AIを含む技術覇権が主要議題となる中で、中国が強硬姿勢を示した格好となった。米側も中国による技術獲得を批判しており、「技術流出」への警戒が相互に強まっている。
実務的には、買収の巻き戻しは極めて困難とみられる。すでにメタは技術統合を進めており、再売却や出資構造の再編など複雑な対応が必要となる。また、中国当局は関係者の出国制限や罰則適用の可能性も示唆しており、企業だけでなく個人にも圧力が及んでいる。
本件は、中国がAIを「重要インフラ」に準じる戦略資産として扱い始めたことを示すと同時に、規制の予測可能性の低さが企業活動に与える影響を浮き彫りにした。今後、同様のクロスボーダーM&Aは一層慎重になり、中国発AI企業の海外展開や資本調達にも強い制約がかかる可能性が高い。
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