- [アフリカ開発銀行/経済成長予測]アフリカ開発銀行(AfDB)が5月26日に発表した「アフリカ経済見通し2026」によると、アフリカの実質GDP成長率は2025年の4.4%(推計)から2026年に4.2%に鈍化する見込みだ。2027年は4.4%に回復するとの予測を示している。
AfDBは2026年の経済減速の要因として、中東で続く紛争によるサプライチェーンの混乱や、世界のエネルギー・肥料価格の高騰などを挙げている。2026年の成長率予測は、紛争開始前の1月に同行が「マクロ経済実績と見通し(MEO)」で示した4.5%から0.3pt下方修正された。AfDBはあくまで中東紛争による世界的ショックが2~3か月間で収束することを前提とした予測を示しているが、紛争が3~6か月継続する場合は、2026年の成長率は4.0%に留まるとしている。
2026年の地域別成長率では、東アフリカが5.9%と最も高いものの、2025年の6.6%から減速する見通しだ。1月時点では2026年の成長率は6.4%との予測だったが、0.5ptもの引き下げは同地域が石油精製品の約75%以上、肥料の約30%を中東諸国からの輸入に依存しているため、価格や供給の変動に対して脆弱であることを反映している。南部アフリカも東アフリカと同様に中東紛争による悪影響が及ぶとみられていることから、1月時点の2.4%成長予測から2.1%に引き下げられた。一方で、産油国が多い西アフリカの2026年の成長率予測は4.7%で1月時点の発表から0.1pt引き上げられた。
2026年の成長率予測を国別にみると、隣国スーダンの内戦で影響を受けた経済の回復が期待される南スーダンが22.0%ともっとも高く、シマンドゥ鉄鉱山の本格的な生産が見込まれるギニアが9.3%で続いた。構造改革と金生産の拡大が続くエチオピアも7.8%、内需と公共投資が堅調なルワンダも7.0%と高成長が見込まれている。サブサハラの主要国であるケニアは同4.6%、ナイジェリアは4.1%とほぼアフリカ平均の成長が見込まれているが、域内最大の経済規模を持つ南アフリカは1.2%に留まり、域内の成長を押し下げている。
AfDBは、サプライチェーンの混乱や、中東紛争後のアフリカ各国の自国通貨安の進展を受けて、2026年の平均インフレ率は10.4%と、紛争前の予測から0.9pt引き上げた。しかし、各国での農業生産の拡大や金融引締め政策が奏功していることにより、2025年の13.7%から低下するとの予測を示している。
また、財政赤字は産油国グループで縮小が期待される一方で、非産油国では対GDP比4%台に悪化すると予測。各国の経済成長と財政再建努力により公的債務は2026年に対GDP比で61.4%に低下する見通しであるものの、政府歳入に占める対外債務返済の割合が30%以上に増加していると指摘している。
- [フィリピン/上院での政治的混乱]6月2日、フィリピン内務・自治省は治水事業に絡む汚職事件でジンゴイ・エストラダ上院議員及び政府職員を横領容疑で逮捕した。エストラーダ議員は、2025年度国家予算に治水事業の予算を盛り込み、それにより5億7,300万ペソ(約920万ドル)を超えるリベートを着服したことが疑われている。
今年5月に下院にてサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾訴追案が可決され、上院にて弾劾裁判が開始されて以降、上院ではドゥテルテ陣営とマルコス陣営間での対立が深まっている。現在、上院は全体で24名の議員から構成される。このうち、マルコス陣営に所属しているのは11名であるのに対し、ドゥテルテ陣営には13名が所属しているため、マルコス陣営の議員が過半数以上を占める下院に比べ、ドゥテルテ陣営の影響力が大きい。弾劾訴追案が下院にて可決された日には、ドゥテルテ陣営の議員の動議により、マルコス陣営のビセンテ・ソット上院議長が解任され、ドゥテルテ家の長年の盟友であるアラン・ピーター・カエタノ議員が新たな上院議長に就任するなど、ドゥテルテ陣営の影響力が拡大していた。マルコス陣営はドゥテルテ陣営の影響力を削ぐべく、ドゥテルテ陣営の議員の拘束を試みている。例えばデラロサ議員はドゥテルテ前政権下で警察長官として薬物犯罪対策に従事し、超法規的な殺人を行ったとして国際司法裁判所(ICC)より逮捕状が発出されていたため、フィリピン警察が拘束を試みた。現在、デラロサ議員は逃走中である。今回のエストラーダ議員の逮捕も、同様の政治的力学の中で、マルコス陣営主導で実施されたものとみられる。この結果、ドゥテルテ・マルコス陣営のうち上院に出席可能な議員数は双方11名となった。
このような動きに対し、ドゥテルテ陣営は議会ボイコットにより対抗している。カエタノ議長は、6月1日よりドゥテルテ陣営の議員に対し上院本会議への欠席を呼びかけた。フィリピン上院の定足数は過半数である13名のため、ドゥテルテ陣営議員の出席なしでは本会議を開催できないことになる。これにより、イラン情勢を受けた家計への補助金支援策などの裏付けとなる法案を含めた複数法案の審議も停滞することになる。そのため、上院でのマルコス陣営・ドゥテルテ陣営間の確執が、マルコス政権による政策運営を停滞させるリスクが増加している。
- [アルゼンチン/経常収支改善]今年(2026年)のアルゼンチンは、財政収支に加えて経常収支がほぼ均衡に達する可能性が高くなっている。2025年初頭には貿易黒字が大きく落ち込み、経常収支はGDP比で約3%の赤字に転落する懸念もあったが、その後の政策運営と外部環境の変化により状況は大きく改善している。経常収支の均衡は、対外的な支払い能力への懸念を和らげ、外貨準備の積み上げを可能にする。
改善の中心は貿易収支の回復で、貿易黒字は2025年の底である40億ドルから、2026年通年では約270億ドル(GDP比3.5%)に達する見込みとなっている。この動きは輸入の抑制だけでなく、輸出の力強い拡大によるところが大きい。バカ・ムエルタを中心としたエネルギー輸出だけでなく、農産物、加工食品、製造業製品もそれぞれ増加しており、輸出量は過去最高を更新し、2022年のピークを17%上回っている(金額ベースで2022年と同水準)。
実質為替レートは相対的に強かったものの、規制緩和とマクロ経済の安定により、従来は輸入規制により難しかった中間財や資本財の確保が可能となり、企業の生産計画や投資判断が改善したことも背景に挙げられる。
一方で、輸入は減少している。2026年の年初から4月にかけて輸入量は前年同期比で約10%減少し、国内経済活動の弱さを反映している。
サービス収支は依然として赤字であり、2026年は約120億ドルの赤字が見込まれ、利子・配当などを含む貿易外収支も赤字となっているが、貿易黒字によってサービスおよび所得収支の赤字がほぼ相殺され、結果として経常収支は均衡に近づく構造となる。
また、外貨準備の動向も改善している。中央銀行は2026年初から積極的にドル買いを進め、5月時点で約100億ドルの年間目標にほぼ到達した。純外貨準備も増加し、IMFプログラム開始以降では初めて目標を上回る可能性が高まっている。
この好転が持続するかどうかは、為替水準とマクロ政策の信認に依存する。国内経済活動の弱さは依然として課題であり、政治的な支持基盤にも影響を与える可能性があり、今後もこの傾向が続くのかどうかが注目される。
- [日本/法人企業統計調査(1~3月期)]6月1日、財務省は2026年1~3月期の四半期別法人企業統計調査を公表した。日本企業の活動実態を明らかにするため、営利法人等を対象に、その資産、負債、純資産の状況、損益等について調査している。
金融業、保険業を除く全産業の1~3月期の売上高は408兆6,614億円と前年同期比+1.1%となった。この金額は統計開始後比較可能な1954年以降、288期中で最大。
経常利益は32兆6,271億円と前年同期比+14.6%で、6四半期連続のプラスとなった。
経常利益の内訳を製造業・非製造業別にみると、製造業は12兆9,231億円と金額は過去最大となり、前年同期比+42.9%で3四半期連続プラスとなった。
製造業の内、業種別で増益をけん引したのは、情報通信機械で対前年同期増加率+174.7%、電気機械で+42.3%、落ち込んだのは業務用機械で▲14.5%。一方、金融業、保険業除く非製造業は前年同期比+1.4%。運輸業・郵便業で+50.5%、資源価格上昇により利益を拡大した商社等の卸売業・小売業で+6.7%となった。一方、建設業と電気業は減益。
ソフトウェア投資額を含む設備投資は18兆8,064億円で前年同期比ほぼ横ばいとなった。製造業は前年同期比▲0.4%、非製造業は+0.3%で、合わせて横ばいという形。季節調整済みの前期比では全産業で▲2.0%となり、2四半期ぶりのマイナス。
今回の1~3月期の企業業績は全体として好調な結果となったが、4月以降に中東情勢の影響が表れるため、注視が必要。
- [牛不足が続く米国牛肉市場に忍び寄る寄生虫リスク]米国の牛肉価格は2020年以降約75%上昇し、過去最高値圏にある。食料インフレの主要因の一つとなっており、米司法省は牛肉加工大手4社(Tyson Foods、JBS、Cargill、National Beef)による市場支配や反競争的行為の有無について調査を進めている。ただし、これら4社による高い市場集中は過去30年以上続いており、足元の価格高騰は主に需給要因によるものとみられている。
背景には、長引く干ばつや飼料・労働コストの上昇を受けた牛群縮小がある。米国の牛飼養頭数は1950年代以来の低水準まで減少している一方、タンパク質需要は底堅く、需給が逼迫している。牛肉卸売価格は高騰しているが、生体牛価格の上昇ペースはそれを上回っており、食肉加工業者の収益を圧迫している。過去のサイクルであれば高価格を受けて増産が進んだが、現在は干ばつリスクや土地利用競争、資金負担の増加などから牛群再建が進みにくい状況にある。
こうした中、新たな懸念材料として新世界ラセンウジバエ(New World Screwworm:NWS)が浮上している。この寄生虫は恒温動物の傷口などに産卵し、孵化した幼虫が生きた組織を食べることで家畜に深刻な被害をもたらす。米国では1960年代までに根絶されたが、中南米で再発生した後、近年はメキシコを経由して北上している。米国は2025年からメキシコ産生体牛の輸入停止など警戒措置を講じている。
さらに6月3日には、テキサス州南部の子牛から採取されたサンプルについてNWSの可能性があるとしてUSDAが確認作業を進めていることが明らかになった。現時点で影響は限定的だが、仮に米国内での発生が確認されれば、家畜移動の制限や追加的な防疫措置につながる可能性がある。既に歴史的な牛不足に直面する米国牛肉市場では、供給制約の長期化リスクとして注目されている。
- [ロシア/中長期国家リスクと将来シナリオ]5月3日に開幕したサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIF)では、ロシアの長期的な発展戦略をテーマにしたパネルディスカッションが行われ、ロシアの中長期的な国家リスクとして、人口減少、アルコール問題、技術的遅れを中心に、地政学・経済・安全保障上の複合的脅威が提示された。報告では、①戦争敗北や国家分裂等の地政学リスク、②文化アイデンティティ喪失等の政治・イデオロギー、③人口減少・移民依存等の社会構造、④サプライチェーン断絶や資源統制喪失等の経済、⑤AI・バイオ分野を含む技術依存の5領域が指摘された。特に技術的遅れは「最も深刻な構造問題」とされ、デジタル主権確立の必要性が強調された。将来シナリオとしては、西側に敗北し従属化する悲観ケース、米国・中国の覇権下で地位低下が続く惰性ケース、イデオロギー的勝利を通じて自立回復する楽観ケースの3類型が示された。また、西側による「核回避・漸進的圧力」という戦略認識の下、非対称戦争や社会内部の脆弱性が長期的な不安定要因と位置づけられた。
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