- [対イラン戦争中にUAEも空爆に参加したとの報道]米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、UAEは米国・イスラエルとイランの戦闘期間中、両国と連携しながらイラン国内に対して数十回の空爆を実施していた。攻撃は戦争初期から4月の停戦発表直後まで続き、ホルムズ海峡の島嶼部やバンダル・アッバース、そのほか主要な石油・ガス施設などが標的になったとされる。一部の攻撃は、イランによるUAEの石油・ガスインフラへの攻撃に対する報復だったという。特にイスラエルと共同で実施されたエネルギー施設への攻撃は国際的な反発を招き、米国がイスラエルにエネルギー施設への攻撃自制を求める事態となった。
背景には、UAEが他の湾岸諸国よりも強い危機感を抱いていたことがある。戦争中、イランはUAEに対して2,800発以上のミサイルやドローンを発射し、主要都市や空港、石油・ガス施設を攻撃した。これを受け、UAEはサウジアラビアやカタールにも対イラン共同軍事行動を呼びかけたが、各国は参加を拒否した。特にサウジアラビアは対立激化を避け、外交的解決を重視する姿勢を維持したため、両国の溝はさらに深まった。
UAEはその後、OPECから離脱し、米国・イスラエルとの安全保障協力を強化したほか、国連でホルムズ海峡におけるイランの影響力を抑制するための強硬措置を支持した。また、国内のイラン関連施設の閉鎖やイラン国民へのビザ制限なども実施し、長年維持してきた対イラン経済関係を大幅に縮小した。これに対しイランは、UAEが米国・イスラエルの対イラン戦略に加担していると繰り返し非難している。
もっとも、UAEの攻撃規模は、米国とイスラエルが主導した大規模な航空・ミサイル攻撃作戦全体から見れば限定的だった。米国防当局者やシンクタンクの分析によれば、米イスラエル両国は戦争期間中に2万件を超える攻撃目標を打撃したとされており、UAEによる攻撃はその一部にとどまる。しかし、UAEが従来の湾岸諸国より踏み込んだ軍事行動を取ったことは、同国の対イラン姿勢の変化を示す重要な動きといえる。
一方で、その積極的な関与はイランからの報復リスクを高めており、実際にUAEの石油港や原子力発電所周辺が攻撃対象となった。こうした状況を受け、最近のUAEは外交的解決を模索する姿勢も強めており、大統領自らトランプ大統領に対してイランとの和平合意を促したとされる。
この戦争を通じて、UAEとイスラエルの関係は大きく深化した。イスラエルはUAE防衛のために防空システムや部隊を派遣し、現在も軍事協力を継続している。さらに、ネタニヤフ首相や情報機関トップらが戦争中に極秘裏にUAEを訪問し、対イラン戦略について協議していたと報じられており、両国の関係は戦術的協力を超えた長期的な戦略パートナーシップへ発展しつつある。
- [コンゴ民主共和国/エボラ出血熱]6月2日、世界保健機関(WHO)はコンゴ民主共和国(DRC)におけるブンディブギョ株によるエボラ出血熱の確定症例は321件で、疑い例は116件だと発表した。同国での確定死者は48人、疑い死者は240人以上となっている。WHOは5月15日に「公衆衛生上の緊急事態宣言」を発表し、事態の早期収束のために5月29日にテドロス事務局長がDRCを訪問した。同日にWHOは996件の感染疑い例があり、うち223件の死亡疑い例があると発表していたが、調査の結果、確定症例数は大幅に減少した形だ。エボラウイルスの感染拡大の中心地であるDRC東部・イトゥリ州に隣接するウガンダでも6月2日までに確定症例15件、関連死1件が確認されている(6月2日付、ロイター通信)。
現在の感染拡大はDRCとウガンダの2か国に留まっているが、その波紋はウガンダの隣国のケニアにも広がっている。5月29日にケニアの高等裁判所は、ケニア中部・ナニュキの空軍基地内に米国人の感染者および感染疑い例の隔離施設を設置しようとするケニア政府の計画の一時停止を求めた。これは米国政府の要請に基づくもので、6月1日にケニアのルト大統領は「トランプ大統領自身から個人的な要請を受けたため承諾した。米国はケニアと30~40年にわたる友人だからだ」と述べ、裁判所の決定を退ける発言を行っている(6月2日付、BBC)。同日には隔離施設予定との周辺で100人以上が集まる抗議デモが発生し、これまで2人が死亡。6月2日に高等裁判所は建設差し止め要請を1週間延長し、施設の詳細に関する情報開示を政府に求めているが、準備は進んでいるとみられている(6月2日付、The Guardian)。米国は2024年にケニアをサブサハラ・アフリカで初めて「主要な非NATO同盟国(Major Non-NATO Allies)」に認定するなど両国は極めて良好な関係を維持していることから、ルト大統領にとってもトランプ政権の意向を重視したい意図が垣間見える。
これまで過去16回、エボラウイルスの感染拡大が起こっているが、その多くがブンディブギョ株ではなくザイール株によるもので、平均致死率は50%となっている。新型コロナやインフルエンザのように空気感染しないため感染力は弱いが、ブンディブギョ型のエボラウイルスに対する有効性が確認されているワクチンが存在しない。また、流行の中心地が紛争地帯にあるため発見が遅れていること、正確な感染拡大の実態が難しいこと、予防・医療支援の体制が不十分であることなどが不安を助長させている。エボラウイルスの発生源については、広く保菌宿主とみられるフルーツコウモリへのヒト・動物の接触・食用などが疑われているが、これについてもいまだに科学的な証明はなされていない。なかにはウイルスに感染した動物の死骸を食する軍隊アリが宿主となっているのと見方もある(5月28日付、Le Monde)
- [インド/ミャンマーとの首脳会談]6月1日、インドを訪問中のミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は、モディ首相と会談した。ミン・アウン・フライン氏にとり、大統領選出後初めての外遊先となる。
今回の会談におけるインド側の狙いとしては、ミャンマーにおけるレアアース権益の確保と、インド北東部を起点としたミャンマー・東南アジア諸国との貿易ルート開拓が挙げられる。レアアースに関し、ミャンマーは中国、米国に次ぐ世界第3位のレアアース生産国である。同国では主に中国と国境を接する北東部カチン州で重希土類(テルビウムとジスプロシウムが主。スマホ、EV、風力タービンに使用される)の埋蔵が確認されている。現在、カチン州でのレアアース採掘事業は、同州を実効支配する少数民族組織「カチン独立軍(KIA)」の保護の下で主に中国系企業が運営しており、かつ生産量の大宗が中国向けに輸出されている。中国からのレアアース輸入依存脱却を目指すインド政府は、ミャンマーからのレアアース輸入を狙っている。ロイター通信によると、インド政府は2025年に国営レアアース採掘精錬企業や民間企業にカチン州の鉱石サンプルを取得するように命じたもよう(ロイター通信、2025年9月10日付記事)。また2025年に実施されたモディ首相とミン・アウン・フライン総司令官(当時)との会談でも、レアアース開発に関して協議された。今回の会談でも、同様に協議されたもよう。KIAとしても、レアアースの販売先多様化の観点からインド向けに輸出することに前向きであるとの見方もあるほか、軍事政権としてもレアアースをテコに中国に加えインドとの関係深化を目指している。他方で、KIAは軍事政権と対立しており、レアアースが採掘される地域の支配を軍事政権に譲渡することは考えにくいため、インド政府と軍事政権間での協議がインド企業による採掘事業参画やレアアース輸入に結びつきにくい。そのため、今回の協議がインドの中国へのレアアース輸入依存脱却に繋がるとは考えにくい。なお、国軍は直近でカチン州への攻勢を強めている。レアアースの採掘地域の支配をKIAから奪還することが狙いと考えられる。今後国軍が同地域の支配を奪還した場合には、インド企業もレアアース採掘事業に参画できる可能性がある。
東南アジアとの貿易ルート開拓に関し、今回の会談では、インド北東部マニプール州からミャンマーのマンダレー・ネピドーを通過し、タイ西部のメーソッドを結ぶ全長1,360kmの「インド・ミャンマー・タイ三カ国間高速道路」の完工を目指すことが確認された。2023年時点では約70%の建設工事が完了したとの報道があるが、その後はミャンマーにおける内戦激化により工事が遅れていた。本高速道路開通により、インド政府は経済発展が停滞しているインド北東部の開発やタイを含む東南アジア向けの輸出を促進できるなど経済的なメリットに加え、中国のミャンマーにおける影響力抑止を狙える。特に中国は、一帯一路の一環で道路・鉄道・エネルギーなどのインフラ網整備プロジェクトを含む中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)をテコに、近年ミャンマーとの関係深化を狙っている。インド政府としては、ベンガル湾やインド洋における中国の影響拡大を抑えることを目指している。
- [中国はWHOで米国の空白を埋められるか]『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙が、米国のWHO(世界保健機関)脱退による空白を中国が埋められるのかについて記事を掲載している。2026年の世界保健総会(WHA)は米国不在で初めて開催され、中国は初めてWHO最大の分担金拠出国となった(後述するように、各国の拠出金には「任意拠出金」もある)。2026~27年の中国の分担金は年間約1億3,800万ドルで、WHO予算の約20%を占める。また、中国政府は今後5年間で総額5億ドルの追加支援も表明している。
しかし、中国の存在感が高まったとはいえ、米国の撤退による資金不足を埋めるには至っていない。米国は2024~25年だけで約9億5,800万ドルを拠出しており、さらに毎年数億ドル規模の任意拠出金を提供してきた。これらの資金が失われた結果、WHOは職員の約25%削減や予算縮小を余儀なくされている。WHOのテドロス事務局長は、依然として予算の一部が確保できていない状況にあると説明している。
WHO財政の課題は、資金総額の不足に加え、資金の使い勝手にもある。WHOの収入は、加盟国が義務的に支払う「分担金」と、各国・団体が任意で提供する「任意拠出金」に大別される。近年は任意拠出金の比重が高まったが、その多くは特定の事業や地域に使途が限定されており、WHOが必要に応じて柔軟に配分することが難しい。米国の脱退は、こうした使途指定付き資金を特定の大口ドナーに依存することの危うさを示した。このためWHOは、安定的に確保でき、かつ組織の判断で使いやすい分担金の比率を高めようとしている。
中国の特徴は、拠出金の大部分が分担金で構成されている点にある。2025年には中国のWHO向け資金の97%が柔軟に使用できる分担金だった。一方で、中国の任意拠出金はわずか300万ドル程度にとどまり、総拠出額ではドイツ、英国、サウジアラビアなどを下回る。このため、中国はWHO最大の分担金拠出国ではあるものの、全体としては依然として主要資金提供国の一つに過ぎず、米国の代替とは言い難い。
専門家の間では、中国が米国のような主導的地位を引き受ける可能性は限定的との見方が多い。中国はWHOを支援しつつも、「健康シルクロード」など独自の国際保健協力を重視しており、WHOへの巨額の任意拠出を通じて組織全体を主導する姿勢は見られない。2027年の次期事務局長選挙は中国の影響力を測る重要な機会となるが、現時点では中国は米国の空白を完全に埋めるのではなく、自国の利益と能力に応じた限定的な関与を続ける可能性が高いとみられている。
- [ブラジルへ再び関税措置]2026年6月2日、米国通商代表部(USTR)はブラジルを対象とした通商法301条調査の結果を公表した。ブラジルの通商慣行が米国の商業利益を不当に制限していると認定し、一定の例外品目を設けつつ、多くのブラジル製品に対し25%の懲罰的関税を新たに課す方針を示した。関税措置は7月15日までの手続きを経て発動予定であり、それまでにパブリックコメントの募集と7月6日の公聴会が予定されている。
今回の25%関税は、前年にトランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課した最大50%の関税を部分的に置き換える位置づけとなっている。従来の関税は2026年2月に米連邦最高裁により無効と判断されたため、今回の措置はより法的根拠の明確な301条に移行した形になるが、牛肉、コーヒー、希土類、エネルギー関連製品、航空機部品などは除外される。また、鉄鋼やアルミニウム、自動車など国家安全保障を理由に既に232条で関税が課されている品目も対象外となる。さらに、果物やナッツ、原油、医薬品原料、化学品、肥料なども除外対象に含まれている。
ブラジルのルーラ大統領は、今回の関税提案に対して反発し、マルコ・ルビオ米国務長官が反ラテンアメリカ的であると非難した。また、両国の通商交渉はここ数週間で3回行われたものの、いまだ合意には至らなかったことも明らかにしている。さらに、米国が関税措置を進める一方で、中国がブラジルを口蹄疫のない国と宣言した点を挙げ、対外関係の重心をより中国に移行する可能性も示唆し、先日のブラジルの犯罪組織のテロ指定に加えて対米関係の悪化を印象付けた。
ただし、今回の決定は、ルーラ大統領にとっては、政治的にはメリットがあるとの指摘が多い。25%という税率は従来の50%より大幅に低く、さらに対象外品目も広い。ブラジルの対米輸出依存度はもともと高くないため、経済全体への影響は小さく、マクロ経済への影響が限定的である点が挙げられる(ブラジル商工省によれば、25%関税の対象となるのは対米輸出の約21%程度)。また、IEEPA下の50%関税は、元大統領ジャイール・ボルソナロの拘束と関連づけられていたが、今回の301条関税は公式には純粋に通商問題に基づくものであり、ボルソナロ元大統領への言及はなかった。さらに、米国の対応は再びブラジル国内で反発を招き、ルーラ大統領の再選を後押しする可能性がある。
それでも、今後の通商交渉はむしろ停滞する可能性が高まっている。合意に至るには、エタノール市場の開放(現在は約18%の関税)や重要鉱物を含む包括的な通商協定など、より踏み込んだ譲歩が必要になるが、大統領選を前にして、その可能性は低いとみられる。7月15日までに交渉がまとまる公算は小さく、関税は予定通り発効する見通しとなっている。
- [日本/東京都区部消費者物価指数(5月)]5月29日、総務省は全国結果の先行指標とされる、東京都23区の消費者物価指数(中旬速報値)5月分を公表した。
2020年を100とした総合指数は112.7で前年同月比+1.4%となった。値動きの大きい生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は112.0で前年同月比+1.3%と、4月の前年同月比+1.5%に対して上昇率は0.2ポイント縮小し、4か月連続で2%を下回った。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は111.4で前年同月比+1.6%となり、4月の前年同期比+1.9%から2か月連続で2%を下回った。
内訳をみると、前年同月比で下落したのは東京都の政策によるところが大きく、2025年9月より第一子(0~2歳)の保育料が無償化されたことにより保育所保育料が▲100%、水道基本料金の無償化(4か月間実施)により▲34.6%となり、総合の上昇幅を0.23ポイント縮小させた。
上昇したのは、チョコレートで+28.6%、弁当で+26.7%、コーヒー豆で+46.0%、通勤定期(JR)で2026年3月の運賃改定があり+17.3%、通信料(携帯電話)で+11.0%、宿泊料で+4.8%、民営家賃で+1.5%など。
価格高騰していたコメ類は2022年9月から前年同月比プラスが続いていたが、5月は▲1.1%と下落に転じた。
全体として、政府のガソリン・灯油補助金や東京都独自の水道基本料金・保育料無償化など、政策による物価の押し下げ効果が目立つ結果となった。
- [ユーロ圏/消費者物価指数]EU統計局(Eurostat)によると、5月の消費者物価指数(HICP)は前年同期比+3.2%だった。上昇率は4月(+3.0%)から拡大した。拡大は4か月連続になった。中東紛争前の2月(+1.9%)まで2%前後だった。また、物価の基調を表す食料品とエネルギーを除くコア指数は+2.5%となり、4月(+2.2%)から拡大し、2025年4月(+2.7%)以来の大きさになった。
内訳をみると、食料品(+2.0%)で4月(+2.4%)から縮小し、2021年10月以来の低い伸びだった。エネルギー(+10.9%)は4月(+10.8%)並みの上昇率で、3カ月連続のプラスになった。2月まではマイナスだった。財(+0.9%)も4月(+0.8%)並みだった。2月までの半年間(平均0.5%)からやや拡大している。サービスは+3.5%、4月(+3.0%)から拡大したものの、2月までの半年間(平均3.3%)からやや拡大している。
国別に見ると、ドイツ(+2.7%)は4月(+2.9%)から縮小したものの、2月(+2.0%)から拡大している。フランス(+2.8%)は4月(+2.5%)から拡大、2月(+1.1%)の2倍以上の上昇率になっている。イタリア(+3.3%)は4月(+2.8%)からさらに拡大、2月(+1.5%)の2倍以上になった。スペインは(+3.6%)は4月(+3.5%)並み。2月(+2.5%)から1ポイント超拡大している。域内で高かったのはブルガリア(+6.5%)やリトアニア(+5.1%)、ギリシャ(+5.0%)などであり、反対に低かったのはマルタ(+2.1%)やドイツ(+2.7%)、イタリア(+3.3%)などだった。
エネルギー価格の2桁上昇が目立つ一方で、物価の基調を表すコア指数も2.5%まで拡大し、物価上昇の根強さを印象付けた。この物価動向は、来週の6月ECBの理事会での利上げ決定を後押しする結果になったと考えられる。
- [中央銀行の金準備に関する最近の動向]6月2日に欧州中央銀行(ECB)が公表した年次報告書「The International Role of the Euro」は、世界の通貨体制が変化の途上にあることを示している。ユーロの国際シェアは約20%と経済規模以上の存在感を維持し、国際通貨としての役割を担っているが、依然としてドル(57%)との差は大きい。世界の分断や代替決済網の発展によりドル一極体制に揺らぎもみられるとはいえ、直ちに新たな基軸通貨が台頭しているわけではない。
そうした中で注目されたのが、外貨準備に占める金の比率が2025年末時点で27%となり、米国債(22%)やユーロ(15%)を上回ったことだ。しかしECBは、これを単純な「脱ドル化」とは位置付けていない。金比率上昇の主因は2024~25年にかけての金価格急騰による評価益であり、2023年末価格で評価すると金とユーロの比率はいずれも16%程度と、米国債の26%とは大きな開きがある。
もちろん、各国中銀が金保有を積み増している背景にはポートフォリオ分散だけでなく、地政学リスクへの備えもある。ECBは、ロシア制裁以降、外貨準備の凍結リスクへの警戒が強まり、紛争リスクの高い地域ほど金保有を増やす傾向がみられると指摘している。一方で、金は価格変動が大きく、金利もつかず、保管コストもかかるため、公的準備資産としての制約も大きいとも述べている。
危機対応ではなおドル流動性の重要性が際立つ。ECBは、中東での戦争勃発後、トルコなど一部中銀が経済や通貨を支えるために金と米国債を売却した例を提示。Bloomberg Economicsは、インドが通貨安や資本流出圧力への対応として、中銀が5月22日までの2週間に120億ドル相当の金準備を売却し、外貨資産を購入したと分析している。インドは外貨流出阻止策として、金・銀輸入関税の引き上げや銀輸入規制の強化にも動いている。
金需要の増加は「脱ドル化」の象徴として語られることが多い。しかし、各国中銀が地政学リスクに備える一方で、市場安定化や通貨防衛の局面では依然として流動性の高いドル資産を必要としている現実もある。ドル一極体制からの多極化は複雑な経路をたどっている。
- [米国]間もなくワールドカップ。しかし、FIFAが今回のW杯で初めて本格的に導入したダイナミックプライシングが、本来スタジアムに来てほしいサッカーファンを遠ざけ、結果的に需要を弱めているとの指摘が見られている。今大会は米国・カナダ・メキシコの3か国、16都市、104試合で行われるが、特に米国ではスポーツ・エンタメ市場で変動価格制が一般化しておりFIFAも「米国の市場価格」に合わせる形で価格を動かしている。このFIFAのチケット販売についてニューヨーク州とニュージャージー州の司法長官が、5月27日に召喚状を出した。調査対象には、価格高騰、段階的なチケット放出による希少性演出、席区分の変更、購入時に想定した席と実際の割当が違うとの苦情などが含まれている。AP通信などによると、2026年5月1日時点で多くのグループステージ一般販売チケットがまだ残っていた一方で価格は380ドルから4,105ドルの範囲で、米国代表の開幕戦などは非常に高額になっていると報じている。決勝や準決勝、人気国の試合ではさらに高額で、公式リセール市場では決勝チケットが数百万ドルで出品された例もあり、FIFAはその公式リセールから売買成立時に大きな手数料を得る仕組みにもなっている。Fortuneはこの高すぎる価格が需要を冷やし始めている、つまりBackfiringが起きているとしている。依然として価格は高いが平均リセール価格はこの30日間で23%下落したとされ、NBC Bay Areaもサンタクララで開催される試合のリセール価格は約24%下落したとも報じられている。つまり、FIFAや転売市場が想定しているほど高価格で買い続ける層は厚くはない。周辺経済の弱さも指摘されてようになった。米国ホテル協会のレポートでは、米国11開催都市のホテル事業者調査で80%が「予約が当初予測を下回っている」と回答しており、ビザ・地政学的懸念・旅費上昇・FIFAの客室ブロック解除などが需要軟化の要因として挙げられている。FIFAはすでに500万枚を売っているため収益は確保するだろうが、価格戦略として成功したかはまだ分からないようだ。
- [ハンガリー・ウクライナ関係]ハンガリーのマジャール新政権は、EU、NATO、およびウクライナとの関係修復に向けた方針転換を推進。POLITICOの報道によると、ハンガリーはEU諸国によるウクライナへの武器支援の払い戻しに対する拒否権を解除するとともに、ウクライナのEU加盟申請に対する反対姿勢の取り下げを示唆したと報じられている。
EUの「欧州平和ファシリティ(EPF)」は、加盟国がパートナー国に提供した武器費用の約40%を払い戻す予算外の枠組みだが、全会一致が原則であり、前政権が拒否権を行使したことで400億ユーロ以上の未払いが生じていた。今回の解除により、まずは66億ユーロの払い戻しが即座に解放されると報じられている。
さらにハンガリーは、ウクライナのEU加盟申請への長年の反対姿勢を取り下げる意向を示していると報じられている。これまで、ウクライナ在住のハンガリー系マイノリティの権利保護を巡ってハンガリーは反対姿勢を示していたが、ウクライナ側が新たな法改正を必要としない形で懸念の大半を解決する保証を示したことが進展の鍵となったとされている。
ハンガリー当局者は「交渉中であり未決定」としているが、ウクライナとモルドバは6月15日の政府間会議で、正式な加盟交渉を開始できる見通しという。6月上旬までにEU大使らが立場を最終決定し、全27加盟国による全会一致の承認を目指すとされている。
Pick up
2026年06月03日
コラム
- コラム 2026年06月02日
- コモディティ市場の現在地:①...
- 調査レポート 2026年05月29日
- AIと安全保障を巡る最近の動き
- 社長コラム 2026年05月29日
- 現物世界へ回帰するグローバル...
- コラム 2026年05月29日
- AIは意識や感情を持っている...
What's New
- 2026年06月03日 コラム
- コモディティ市場の現在地:②「過去最大級」のエネルギー危機
- 2026年06月03日 統計・グラフ集
- 「世界の貿易動向グラフ」を更新しました
- 2026年06月02日 コラム
- コモディティ市場の現在地:①市場はなぜ変質したのか
- 2026年06月02日 統計・グラフ集
- 「金融関連指標グラフ」を更新しました
- 2026年06月02日 統計・グラフ集
- 「マクロ経済指標統計表」を更新しました
- 2026年06月03日 コラム
- コモディティ市場の現在地:②「過去最大級」のエネルギー危機
- 2026年06月03日 統計・グラフ集
- 「世界の貿易動向グラフ」を更新しました
- 2026年06月02日 コラム
- コモディティ市場の現在地:①市場はなぜ変質したのか
- 2026年06月02日 統計・グラフ集
- 「金融関連指標グラフ」を更新しました
- 2026年06月02日 統計・グラフ集
- 「マクロ経済指標統計表」を更新しました
- 2025年06月06日 中東・アフリカ
- マプト/モザンビーク ~独立50周年を迎え飛躍を期す~
- 2025年05月08日 アジア・オセアニア
- ソウル/韓国 ~日韓国交正常化60周年を迎えたソウルの今~
- 2025年04月11日 欧州・CIS
- オスロ/ノルウェー ~ノルウェーから「幸福」「平和」を考える~
- 2025年02月25日 アジア・オセアニア
- オークランド/ニュージーランド ~ニュージーランドとマオリ:最新の政治動向~
- 2025年02月05日 中東・アフリカ
- ダルエスサラーム/タンザニア ~「ポレポレ」(のんびり・ゆったり)の豊かな国~
SCGRランキング
- 2026年6月1日(月)
『Bloomberg News』に、当社チーフエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2026年6月1日(月)
霞山会出版『月刊 東亜』2026年6月号に、当社チーフアナリスト 前田 宏子が寄稿しました。 - 2026年6月1日(月)
『月刊金融ジャーナル』2026年6月号に、当社チーフアナリスト 前田 宏子のインタビュー記事が掲載されました。 - 2026年5月25日(月)
『NIKKEI Mobility』に、当社経済部長 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2026年5月25日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社チーフエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為5月レビューが掲載されました。
過去最大級の供給ショックにもかかわらず、原油価格は高値から反落。その解釈により今後の見通しは異なる。今回、供給不足がより深刻だったのは原油より石油製品。精製能力や連産品制約がボトルネックに。天然ガスは欧州・アジアで価格高騰の一方、米国市場は供給... 