クアラルンプール/マレーシア ~世界のゴム手袋産業の中心地~
「マレーシアは休日が多いね」と出張者や外国人の同僚からよく言われます。これは多様な文化を持つ多民族国家であることに由来します。メーデー、独立記念日、ハリラヤ・プアサ[*1]、ディワリ[*2]、中国旧正月、国王誕生日など年間14日の国の祝日があり、さらに国内各州が独自に定める宗教的・文化的祝祭日(連邦加盟記念日[*3]、収穫祭、ガワイ・ダヤク、タイプーサム等)や地方君主の誕生日もあります。
マレーシア国民は主にマレー系、中国系、インド系で構成されています。この主要3民族に加え、ダヤク、カダザン=ドゥスン、イバンなどの少数民族もおり、それぞれ異なる言語を話し、独自の宗教や文化に基づくユニークな風習を守っています。
バハサ・マレーシア(マレー語)はマレー人の母語で、標準語として大半の国民が話せます。中国系の人々は北京語・広東語さらには閩南語(びんなんご)などの中国語方言を、インド系の多くは南インドのタミル・ナドゥ州にルーツがあり、タミル語を話します。かつて大英帝国の植民地だった歴史から特にビジネスでは英語が一般的です。
多くのマレーシア人は「バイリンガル」以上で、筆者も英語、マレー語、北京語、広東語を話します。英語で会話中にマレー語・中国語など母語の単語を1、2個はさみ込んでしまうことは日常茶飯事です。マレーシア風英語のことを「マングリッシュ」と呼びますが、マレー語・タミル語・中国語から単語を多く借用した一種のクレオール語(混成語)で、隣国シンガポールの「シングリッシュ」の親戚です。
マレー系の人々はイスラム教を信仰し、国内に数あるモスクで礼拝します。中国系は主に仏教や道教を信じ、インド系は大半がヒンズー教徒です。サラワク州・サバ州に住む民族は主にキリスト教徒ですが、イスラム教ほかの宗教を信ずる人々もいます。
当国で最大の祝祭はやはり三大民族が祝う祭りです。マレー系の人々は前述のハリラヤを、中国系は中国旧正月を、インド系はディワリやタイプ―サムを祝います。
民族・文化の多様性ゆえに、料理や味付けもバラエティに富んでいます。当地で人気の料理は、マレー系のナシレマック[*4]やナシクラブ[*5]、中華系のバクテー(肉骨茶)[*6]、チキンライス[*7]、チャークイティオ(炒粿條)[*8]、インド系のロティ・チャナイ[*9]やバナナリーフ[*10]などです。
残念ながらコロナ禍のため、祭りも静かに行うしかなく、この状況は人々が集まることが危険でなくなるまで続きそうです。コロナ前、マレーシア人は祭りを祝い、家族と旅行するために、暦で調べた祝祭日に合わせて有給休暇を取っていました。しかし、自宅でのテレワークが新常態となり、大半の人々が旅行は当面無理となった今、祝祭日の多さもあまり意味がなくなってしまいました。
当国でも旅行・観光・小売業界が軒並み大きな痛手を受けている一方、医療用手袋、PPE(防護服やマスクなどの防護具)、手指消毒液、食品包装材などは需要が急増しています。
マレーシアには医療用手袋の世界10大メーカーが軒を並べており、住友商事は、この重要な業界に、ニトリルブタジエンゴムやクロロプレンラテックスなどの化学資材を供給しています。
2020年はわれわれ、そして世界中の人々にとって実に多難な年でした。当国も3月から新型コロナ禍に見舞われ、第3四半期から状況は再び悪化しています。まだ世界はトンネルを抜けきっていないものの、各国で実施されるワクチン接種の結果を待ちたいと思います。そして、2021年中には全世界の人々が普通の日常生活と旅行を取り戻せる、明るい未来が到来することを祈念してやみません。
[*1]ハリラヤ(別名イード・アル=フィトルとも呼ばれる)はイスラム教の断食月(ラマダン)明けを祝う休日。
[*3]連邦加盟記念日(Federal Day)は、サバ州・サラワク州で祝われる祝日。収穫祭はサバ州、ガワイ・ダヤクはサラワク州独自の祝日。タイプーサムはヒンズー教の奇祭とも呼ばれる。
[*4]ナシレマックは、ココナツミルクで炊いた、あるいは蒸したご飯。
[*5]ナシクラブは、鶏肉などのサラダにチョウマメの花弁で炊いた青色のご飯を盛りつけた料理。
[*7]チキンライス(海南鶏飯)は、蒸し鶏にご飯を盛りつけたセット料理。
[*8]チャークイティオ(炒粿條)は、きしめん状の平たい米粉麺でつくる焼きそば。
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