大連/中国 ~海の恵み、経済発展と生鮮魚介~
大連は遼東半島の最南端に位置し、黄海と渤海にほぼ四方を囲まれています。中国東北三省(遼寧省、吉林省および黒竜江省)の玄関口で「北方の真珠」とも称される大連の歴史と経済発展は、恵まれた海洋資源を抜きには語れないといっても過言ではありません。
小さな漁村であった大連が19世紀末から約50年間ロシア・日本によって統治されたのは、「冬も凍らず、十分な水深のある天然の良港・大連湾」を目当てにロシアが遼東半島を租借したことがきっかけでした。
中国最初の経済技術開発区として1984年に大連港周辺に設置された大連経済技術開発区は、OA機器、モーターや医療機器製造業における日本企業の進出をきっかけに目覚ましい成功を収めました。1940年代のピーク時に約20万人の日本人が居留した背景もあり、現在でも大連には大学などで日本語を学ぶ人が多く、中国全土に日本語ができる人材を輩出する拠点になっています。毎年恒例の日中共催の日本語スピーチコンテストは非常にレベルが高く、その30年以上続く歴史は当地に根付いた日本語学習熱の象徴にもなっています。
造船業や、海水温が年間を通して1~25℃で栄養分が豊富という文字通り「海の恵み」を強みとした漁業・水産業の発展も大連経済の特徴です。フカヒレ、アワビ等と並ぶ中華料理の高級食材であるナマコの大連の漁獲量は年間約5万トンで、中国全体の25%を占める産地であり、その他、ホタテ、カキ、アサリ、ワカメ、昆布、ウニなどの貝や甲殻類、多くの海産物の養殖などが盛んです(2021年数値)。
大連を訪れた日本人には地元の海鮮レストランに足を運ぶことをお薦めします。
店内に並ぶいけすで泳ぐ多種多様な活きのいい魚介から客が直接選び、分量や調理法を店員と相談しながら注文内容を作り上げていく大連流は、日本ではなかなか経験できないものです。
また、カキフライ、焼き魚、刺身といった日本人になじみ深い料理に近いものを新鮮かつ安価に食べられることも特徴です。中でも生ウニは特に日本人に喜ばれます。
大連市のウニの漁獲量は日本全体の漁獲量に匹敵する年間約8,000トン(約20億人民元≒約380億円)で、中国全土の6割程度を占める最大の産地です(日本2020年、中国2021年数値)。
いけすからすくい上げた新鮮なウニの殻を半分程度の高さで水平にカットし、わさび醤油を垂らしてから身をスプーンですくって食べるスタイルは北海道産のバフンウニやエゾバフンウニに比べて身が柔らかい大連産のキタムラサキウニ(中国では大連ムラサキウニとも呼ばれる)を最も効率的かつ新鮮に味わえる産地ならではの楽しみ方です。
過去約3年にわたって続いたゼロコロナ政策による入国時の隔離措置が撤廃され、中国渡航へのハードルも下がってきました。
人々の往来が復活し、ロシアや日本による建造物と近代建築が融合した異国情緒あふれるロマンチックな街並みを楽しみながら新鮮な海鮮料理を堪能する、そんな大連の海の恵みを実感する方が今後ますます増えることを期待しています。
以上
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