バンコク/タイ ~世界中の人々を惹きつける多様な魅力~
タイはアジア有数の観光立国で、2024年に訪れた外国人観光客数は、年間3,500万人を超えました[*1]。また、500万人以上の外国人も在住しており[*2]、タイは世界中の人々を魅了している国です。タイの何が魅力かは人それぞれ異なりますが、タイ在住歴1年未満の私なりに感じた魅力をご紹介します。
芸術・音楽
バンコクではBangkok International Festival of Dance & Musicというイベントが毎年開催され、世界トップレベルのバレエやオペラが鑑賞できます。昨年(2024年)は、なんとロシアのボリショイバレエ団が登場しました。世界でロシアの芸術家の活躍の場が限られている中、タイの全方位外交政策のおかげで、世界最高レベルの「白鳥の湖」を満喫する貴重な機会が得られました。
また、バンコクにはRoyal Bangkok Symphony OrchestraとThailand Philharmonic Orchestraという二つのプロオーケストラがあり、いずれも日本のプロオケにひけをとらないレベルの演奏が楽しめます。タイのオーケストラのサウンドは明るく華やかな点が魅力的ですが、一方で深い悲しみや暗く重々しい曲調の表現には、音色が合わないと感じることもありました。それは、年中温暖な気候、明るいタイ人気質、ASEANで唯一植民地支配を受けていないこと等々の影響があるのかなと想像しています。
タイ産ワイン
バンコクから南西に車で2~3時間のホアヒン(Hua Hin)近郊にあるMonsoon Valleyというワイナリーのワインは、どのブドウ品種もバランスがよく、味わう価値が大いにあります。ここのワインを初めて飲んだワイン輸入業を営むタイ人の友人は、ここの赤は欧州のワインよりコスパが相当高いと評価しています。ほかの地域のワイナリーにも2軒行きましたが、まだ発展途上でした。しかしながら、タイワインは「新緯度帯ワイン」の一つとして、今後注目度が高まっていくと思われます。
風光明媚な景勝地
タイには自然の景勝地が非常に多くあり、整った観光インフラのおかげでどこに行くにもアクセスが容易、大変tourist friendlyと言えます。心から感動した絶景スポットもいくつかあり、次の4か所は特にお勧めです。
旧日本軍ゆかりの地
第二次世界大戦中に日本軍が進駐していた次の二つの場所も訪れて意義深い時間を過ごしました。
カンチャナブリ(Kanchanaburi)は、映画『戦場にかける橋』(The Bridge on the River Kwai)の舞台となったクウェー川鉄橋があるほか、日本軍による泰緬鉄道建設がいかに過酷でどれだけ多くの犠牲者がいたかを伝える博物館がいくつかあります。死者数は、日本軍が約1,000人、連合軍捕虜が約16,000人、マレー人・ビルマ人が約82,000人を数え、まさにDeath Railwayといわれる所以を実感し、心が痛みます。亡くなられた全ての方々を慰霊する日本軍が建てた慰霊塔もあり、現在はタイ国日本人会が管理し、毎年法要を行っています。
タイ北部のミャンマーとの国境に近いクンユアム(Khun Yuam)には、日本軍兵士の遺品約1,000点がある「タイ日友好記念館」と遺骨が埋葬されている寺院があります。この地に、1942年から日本軍兵士が5,000~6,000人駐留してビルマ(現ミャンマー)に通じる道路を建設し、道路完成後はビルマ戦線から敗走してきた多くの日本軍兵士が命からがら辿り着きました。道路建設にあたり日本軍は現地労働者に賃金を支払い、住民は敗走してきた兵士を家に住まわせ、兵士は農作業や子守りを手伝うなど、戦中も戦後も日本軍兵士とクンユアム住民の間には友好的な関係が築かれていたそうです。
戦後も多数の兵士がその地に残って家庭を持ち、クンユアムで亡くなった兵士は約7,000人と言われます。その後、各家庭で日本軍兵士の遺品が大切に保管されていることを知った警察署長が、それらを集めて1996年に記念館を建てました。記念館近くのワットムアイトーという寺院に兵士の遺骨が埋葬されており、そこの石碑に誰かが供えた靖國神社のお札を見た時は、自然と涙が溢れ出ました。そして現在は、地元で日本語を学ぶ高校生が墓守をして掃除もしているそうです。
クンユアムを訪れて史実に触れ、先人たちに思いを馳せる中で、タイ人の懐の深さを身に沁みて感じました。そして、この懐の深さが、世界中からこれだけ多くの外国人を受け入れている理由なのだろうと実感しました。
[*1] The Tourism Authority of Thailandより(Thailand Welcomes Over 35 Million Visitors in 2024: A Milestone Paving the Way for 2025 - TAT Newsroom)
[*2] WHO-Thailand Migration Report 2024より(Thailand Migration Report 2024)
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
SCGRランキング
- 2025年1月27日(月)
毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2025年2月4日号に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2025年1月24日(金)
『読売中高生新聞』2025年1月24日号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司の取材対応記事が掲載されました。 - 2025年1月22日(水)
雑誌『経済界』2025年3月号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が寄稿しました。 - 2025年1月21日(火)
『朝日新聞GLOBE+』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のインタビュー記事が掲載されました。 - 2025年1月21日(火)
『東洋経済ONLINE』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコラムが掲載されました。