プラハ/チェコ ~東欧の自動車王国-チェコ共和国~
欧州・CIS
2016年03月22日
欧州住友商事会社プラハ支店
森 正浩
東欧にはドイツ、フランス、イタリアなどの欧州、ならびに日本を含むアジアを国籍とする自動車メーカーの生産工場が多数存在します。とりわけチェコ共和国は年間約125万台(2014年)を生産し、東欧諸国で最多を誇ります。日本国内の自動車生産台数が約1,000万台、中国は2,000万台を超えることに比べると大きな数字ではありませんが、同国は総人口が約1,000万人と小国でありながら、1人当たりの自動車生産台数では世界2位にランクされています。しかも同1位は1993年に旧チェコ・スロバキアから静かに分離独立したかつて同じ国であったスロバキアですから、この地域の自動車生産「密度」の高いことがみてとれます。
旧チェコ・スロバキアは第1次世界大戦の戦勝国として1918年にオーストリア・ハンガリー帝国から分離独立を果たしました。元来教育水準が高く優秀な技術者および技能者を多数輩出してきたことに加え、ドイツに隣接して技術的影響も受けてきたことから、独立以前から機械産業が盛んでした。そのため1886年にガソリンエンジンを搭載する四輪車が世界で初めてダイムラーの手によりドイツで完成してから、わずか11年後の1897年には早くもチェコ人の手で同様の自動車が製造されています。ちなみに日本はさらに10年後のことです。その後第2次世界大戦前のチェコには10社を超える自動車メーカーが設立され、世界に先駆けた新技術の開発も活発に行われました。
これらの自動車メーカーは社会主義時代を含む長い歴史のなかで統廃合を繰り返し、現在は乗用車などを生産するシュコダ社とトラックなどを生産するタトラ社がチェコを代表する総合輸送機メーカーとして存続しています。両社の製品は日本にほとんど輸入されていないため知名度は低いですが、欧州内外の各国へ広く輸出されており世界では名前の通ったメーカーです。
チェコは1948年から1989年の民主化革命まで約40年間続いた社会主義・計画経済の時代に技術革新が停滞し、自動車工業も西欧地域に大きく水を開けられました。しかし、民主化から四半世紀の間には技術的にも追いつき、また同国は西欧のすぐ東に隣接している地理的優位性があり、さらに優秀な人材も得られることから、自動車と自動車関連部品の外国企業の進出も多数みられます。昨今好調なチェコの経済は自動車産業によるところが大きく、これからも同国の経済発展を大きく支えてゆくことでしょう。
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