サンクトペテルブルク/ロシア ~歴史の街サンクトペテルブルク、欧米制裁の影響もあってしばらくは低成長が続く~
欧州・CIS
2017年07月11日
CIS住友商事会社 サンクトペテルブルク支店
太田 徹
安倍晋三首相の訪ロ、プーチン大統領の訪日など日本とロシアの政治的な関係はかつてないほど近づいているものの、欧米ほどではないですがロシアについては偏向と思えるほど否定的な報道が目立ちます。在米のロシア外交官とその家族が72時間で国外退去となり、身近なところでは小生の娘が通っているアングロアメリカンスクールがロシア政府の命令によって閉鎖されるというニュースがCNNで年末・クリスマス休暇中に流れ、生徒やPTAでは大騒ぎになったものの、捏造報道だったという顛末(てんまつ)にロシアに駐在している者にとってはやりきれない思いがしました。
サンクトペテルブルクは人口約490万人、欧州への窓口として1703年にピョートル大帝によって作られた港と運河と橋の町で、歴史建造物も多く、バレイを中心とした劇場、文学、美術館、大学が街の魅力を際立たせ、1990年に歴史地区が世界遺産に登録された、ロシアの文化の中心となっている街です。モスクワに強い憧れと対抗意識もあり、ロシアらしさと欧州志向の脱ロシアの気持ちが一体となった独特の雰囲気を醸し出しています。
プーチン大統領、メドベージェフ首相、マトビエンコ連邦院議長(元市長)などを輩出し、強い政治的背景も持っています。1997年から始まった経済フォーラムも2017年で21回目を迎え、白夜の一大イベントとして定着し、2006年にG8サミットが2013年にG20サミットがそれぞれ開催され、2017年はサッカーのコンフェデレーションズカップの決勝、そして2018年はワールドカップの準決勝(決勝はモスクワのルジニキ・オリンピックスタジアムの予定)が行われる予定です。同市は白夜と芸術の観光都市として以前から有名で、これらのイベントを通じて同市への来訪者がさらに増えることを期待しています。
一方、ガスプロムの本社機能移転や、海外自動車メーカーの生産施設が誘致され、ハイテク経済特区の開発と同地域の活性化に力が入れられ、欧州へのゲートウエイとして同市は期待されていたものの、リーマンショックの傷が完全に癒えない状況で2014年から欧米日の経済制裁が始まり、石油ガス分野への投資資金減や、ロシア5大銀行に対する制裁でロシア企業の資金繰りの悪化、各企業の投資計画の先送りなどの深刻な影響が出ています。さらにEUでは2018年1月末までの制裁延長が合意され、米国では大統領選挙へのロシアの介入に関して新たな制裁を課す法案が上院で可決されました。ウクライナ、ロシア間の関係改善は当分の間期待できないため、欧米の制裁も当面続くことが想定され、しばらくは安定した低成長で続くのではないでしょうか。
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