フランス/パリ ~新交通文化もすばやく受容する花の都~

2018年11月02日

フランス住友商事会社
新宅 裕一

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伊藤若冲展はパリっ子にも大人気(筆者撮影)
伊藤若冲展はパリっ子にも大人気(筆者撮影)

 今パリは、「ジャポニスム2018」で盛り上がっています。

 19世紀のフランスで浮世絵を中心に日本文化が紹介され、ゴッホやモネの芸術にも影響を与えたとされる「ジャポニスム」。2018年が日仏友好160周年であることを記念し、2018年7月から2019年2月まで、フランス各地で「ジャポニスム2018」が開催されています。

 特にパリでは、日本でもこれだけの規模の展示はなかなか見られないと思われる伊藤若冲展(33点を一挙公開)、中村獅童・中村七之助による松竹大歌舞伎、野村万作・萬斎・裕基の親子三代による狂言、野田秀樹の現代演劇、さらに、初音ミクのコンサートや香取慎吾の個展まで、さまざまなイベントが催されています。

 

 2017年末にロンドンからパリに移って来た時は、街路樹の葉っぱはすっかり落ちて寒風吹きすさび、いろいろ事情はあるのだろうけどパリ市議会がシャンゼリゼ通りのクリスマス・マーケットの中止を決定していました。おまけに、不動産屋から聞いたアパートの玄関の暗証番号が違っていて、初日から締め出されてしまい、とぼとぼ歩く暗い歩道のあちこちにはワンちゃんの落とし物という状態。

 パリは花の都じゃなかったのか?と途方に暮れた年末でしたが、年が明け、生活にも慣れ、車も運転するようになって、いろいろ見えてきました。

 

 ここではパリの観光ガイドは割愛して(一言、モンサンミッシェルはやはりおすすめ)、パリで次々と主役が交代する新しい交通手段について紹介します。

 パリに来て最初に目に付いたのは、オートリブという電気自動車を使ったカーシェアリングで、2011年から始まったサービスとのことですが、近年は赤字が続き、2018年7月にあえなく廃業しました。

 ロンドンでは交通当局と揉めていたウーバーもパリではしっかり根付いているようで、他にもレンタル自転車や電動スクーターなどなど、たくさんの業者が提供しています。

 

最初は「何だこれ?」って感じで、道端にちょろちょろ(筆者撮影)
最初は「何だこれ?」って感じで、道端にちょろちょろ(筆者撮影)

 そんな中、この原稿を書いている2018年10月にとんでもない勢いで数が増えているのが、レンタル電動キックスケーターです。

 フランス語では、Trottinettes (トロティネット)というそうですが、全然、とろくありません。

 時速15キロメートルといわれているけど、絶対もっと(?)出ているはずです。

 当然のことながら、既に数百件の事故報告があります。パリに加え、他都市でもレンタルサービスが開始された上、個人向け販売の急増も見込まれることから、今後間違いなく事故は増えるでしょう。自転車用レーンでは、時速25キロメートル以下、歩道上では時速6キロメートル以下までは許容されている一方で、公道上の通行は禁止されているそうですが、厳格な法規制はなく、現状やりたい放題です。

 

音はしないけど、これ、暴走ですね(筆者撮影)
音はしないけど、これ、暴走ですね(筆者撮影)

 さすがに、近いうちに歩道の走行は禁止されて、自転車やスケーター専用レーンの建設も進められているようですが、とにかく、法規制とレーン拡充の前に、がんがん普及してしまっている状況です。

 ファッションや芸術に代表されるように常に世界の先端を走り、情報発信を続ける花の都パリは、街並みを含めて伝統文化を大切にしつつ、新しい文化への対応力もとんでもなく高いと感心する今日この頃です。

 

シャンゼリゼ通りにも自転車やスケーター専用レーンを建設中(筆者撮影)
シャンゼリゼ通りにも自転車やスケーター専用レーンを建設中(筆者撮影)

 皆さんが次にパリに訪問の際は、どんな新しい乗り物が走っているでしょう?
でも、くれぐれも事故のないようにご注意ください。

 

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