デュッセルドルフ/ドイツ ~2020年、デュッセルドルフで過ごした春~

2020年08月11日

ドイツ住友商事会社
西原 隆広

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 「国民の皆さん。現在、コロナウイルスはわが国の日常生活を著しく変えています。普通であること、普段の暮らし、社会的つながり、これら全てがこれまでにない試練に直面しています」と語り始めたメルケル首相の3月18日の演説はドイツのコロナ対策にとって大きなターニングポイントになりました。「この問題が自分の課題であると心から理解するならば、私たちはこの試練を乗り越えられると信じています。ただ、この状況は深刻です。東西ドイツ統一以来、いいえ第二次世界大戦以来、私たちが連帯意識をもって行動することがこれほど大事になる試練は、わが国にはありませんでした」と厳しい内容ですが、「寄り添う力」にあふれた穏やかな演説は国民の心に届き、その行動を変えました。ドイツが、欧州の中では被害を最小限に抑えたコロナ対策の優等生と言われ、現在も相対的に感染者の死亡率が低いレベルでコントロールされている理由の一つがここにあります。

 

黄色が鮮やかな菜の花畑、ライン川と青空、白アスパラガス(シュパーゲル)(撮影:西原隆広、西原陽子)
黄色が鮮やかな菜の花畑、ライン川と青空、白アスパラガス(シュパーゲル)(撮影:西原隆広、西原陽子)

 

 欧州に滞在したことがある人は異口同音に「欧州の春は素晴らしい」と言うことでしょう。イースターが明けた時のぱっと明るくなる解放感。菜の花畑。ライン川と青空。そして、名物白アスパラガス (シュパーゲル)。ゆでた白アスパラガスにバターと卵黄をベースにしたホランデーズソースをかけるのが伝統的な食べ方です。

ヤーパンターク(日本デー)にボランティアで参加(撮影:久野泰典・前ドイツ住商社長)
ヤーパンターク(日本デー)にボランティアで参加(撮影:久野泰典・前ドイツ住商社長)

5月には毎年「日本デー」(ヤーパンターク)が開催されます。デュッセルドルフは日本人が約6,000人、周辺都市も合わせると1万人以上が暮らす欧州有数の日本人街です。日本の伝統文化を伝える目的で2002年から始まった「日本デー」には、デュッセルドルフ市の総人口62万人(2019年末現在)を上回る数の観光客がライン川沿いに集結します。実はその半分近くが日本のアニメキャラクターに扮(ふん)した若者で、奇抜なコスチュームで街を闊歩(かっぽ)することでも有名です。残念ながら2020年はコロナの影響で開催が見送られましたが、2021年は白アスパラガスと一緒にぜひ楽しみたいものです。

 

 

 

ドイツ住商新社屋(筆者撮影)
ドイツ住商新社屋(筆者撮影)

 一方、私たちがコロナ環境下でもなんとかやり遂げた意義あるイベントがありました。ドイツ住商の新オフィス移転プロジェクトです。直線距離では1キロメートルにも満たない近所への移動ですが、コロナ禍でもあり、引っ越し作業は綿密に計画・準備をして5月22日に実行に移し、無事移転が完了しました。新オフィスは5階建てのインテリジェントビルの2~3階。スペースも十分ある新オフィスは「ウィズ・コロナ(コロナとの共存)」や「ポスト・コロナ(コロナ収束後)」の状況にもしっかり対応した従業員に優しい空間になるはずです。

 

 

 

14世紀に始まったクリスマスマーケット(撮影:西原陽子)
14世紀に始まったクリスマスマーケット(撮影:西原陽子)

 今では、日本とドイツの産業界の結節点として存在するデュッセルドルフ。第二次世界大戦前は、メルケル首相の出生地である港町ハンブルクに大半の日本企業が進出していました。2019年そのハンブルクに宿泊した時、ホテルのフロント担当者が残念そうに言いました。「日本人がなぜデュッセルドルフを選んだのか知っているかい?日本人学校がそこにできたからさ」。その日本人学校も2021年で設立50年。今や、デュッセルドルフ日本商工会議所に登録された企業は590社にも上ります。日独両国のコロナ対策が実を結び、復活したデュッセルドルフ直行便で来訪される日本の皆さんをクリスマスマーケット名物のホットワインでお迎えできることを心待ちにしています。

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