イスタンブール/トルコ ~トルコ建国100周年に向けて~
中東・アフリカ
2015年11月18日
トルコ住友商事会社
山本 彰洋
• トルコ建国100周年に向けて
トルコは地政学的な要衝で、ローマ帝国、ビザンチン帝国、オスマン帝国の首都であったイスタンブールがあり、欧州・中東への陸路、黒海・地中海への海路に加え、近年では空路でも国際ハブとして重要性を増しています(2015年2月現在、トルコ航空の就航空港数は280で世界第4位)。
名目GDPは2002年の2,320億ドルから2013年には8,230億ドルに急成長しました。2008年に1人当たりGDPが1万ドルを突破、また同年に人口ボーナス期に突入し、今後20~30年間続きます。同政府は建国100周年となる2023年に、名目GDP2兆ドル、1人当たりGDP2.5万ドルという野心的な目標を掲げています。
• 日本との良好な関係
日本とトルコの良好な関係を象徴するふたつの出来事があります。ひとつはエルトゥールル号遭難事件、もうひとつはイラン・イラク戦争時のトルコ政府による日本人救出です。
エルトゥールル号遭難事件とは、1890年、オスマン帝国使節団を乗せた軍艦エルトゥールル号が、帰国途次に和歌山県串本町沖で座礁し、串本町大島の住人が必死の救助にあたり、乗員650人の内69人を救出、その後日本海軍の巡洋艦で本国まで送り届けたというものです。
これには続きがあります。約100年後の1985年、イラン・イラク戦争時に、イラクのサダム・フセインが「3月19日20時半以降にイラン上空を飛ぶ飛行機は全て攻撃する」と発言しました。イランの空港に取り残された日本人215人を日本政府が救出機を飛ばせないなか、トルコ政府の命を受けたトルコ航空が救出しました。この救出劇について、当時の在日トルコ大使は「われわれにはエルトゥールル号の恩があります」と発言しました。
このふたつの感動的な出来事は、2015年12月5日に日本で公開予定の日・トルコ合作『海難1890』という映画で見ることができます。
• トルコ文化とトルコ人気質
日本とトルコは文化的に似ているところが多くあります。まず言語で、諸説ありますが、同じウラル・アルタイ語族に属し、語順ならびに動詞の語尾が変化する点が似ていて、とっつきやすいです。また客人をもてなす文化、年上を敬うところが似ています。
一方で異なる点は、日本人が1か月先程度の予定は結構明確に立てるのに対し、トルコ人にとって予定は未定です。例えば友人と1週間後に会う約束をしていたとしても、当日確認の連絡がないと、自動的にキャンセルになる可能性がかなり高いです。
トルコ人は家族・親族を大事にし、おしゃべり好きで、仲間思い、また好奇心旺盛です。仕事場でもよく家族と電話をしていますが、それは普通です。好奇心旺盛なトルコ人は、革新的な新しい物を欲しがります。iPhoneの最新版が出ると我先にと購入し、机の上にそれとなく置いてアピールするおちゃめな一面があります。一方、食生活に関してはかなり保守的で、街中のレストランも9割以上がトルコ料理店です。筆者がお世話になったトルコ人に、「御礼に日本料理をごちそうしたい」と言ったところ、「トルコ料理がいい」と断られました。トルコ料理は世界三大料理のひとつで、ケバブ、キョフテといった肉料理、ナス、トマトを使ったサラダ、またバクラバー、ロクムといったデザートが有名です。駐在中の日本人がトルコ料理を毎日食べ続けると、少し脂っこい、少し甘すぎると思うことがありますが、料理自体はとてもおいしいです。
• 難民問題
トルコ人は弱者に優しく、公共交通機関で老人・妊婦を見ると、すぐに席を譲ります。弱者に対する優しい姿勢は、難民対応にも通じるところがあります。トルコはシリア難民400万人のうち約200万人を受け入れており、ニュースで騒がれている欧州各国の数万人規模とは数が2桁違うのに、同国はこれを喧伝していません。中東のバランサーであるトルコの懐の深さを感じます。実際に、筆者が生活していて、日に日にシリア難民と思われる人が増えていると感じます。
筆者は現地に溶け込むに連れて、ますますトルコの魅力に引かれています。建国100周年に向けてさらなる経済発展を願う同国において、その経済発展に貢献できるようなビジネスを作っていきたいです。
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