マスカット/オマーン ~異彩を放つスルタン王国~
中東・アフリカ
2016年03月02日
住友商事株式会社 マスカット事務所
石塚 尚

正式名称 : スルタネート・オブ・オマーン。"スルタン(=イスラム君主)"という古典的な響きがエキゾチシズムをかき立てますが、国家財政の8割を石油・ガスに依存する近代的な湾岸産油国です。スンニ・シーア両者の覇権争いに巻きこまれることなく平和と安定を保ち続ける中東アラブの王国、オマーンを紹介します。
• アラブとアジアの交差点
オマーンは中東の東端に位置し、アジアから一番近いアラブの国です。その影響か、生活習慣や気質など日本人にも馴染み深いアジア的な要素が随所に見られます。米食が中心で、シーフードを好んで食べます。砂漠の国でありながら潅漑システムを利用した農業が盛んで、かぼちゃやインゲンなど地場野菜も多種にわたります。気質は温和で控えめで、合理的で欧米化が進んでいる湾岸のアラブ人にあっては異質な感じを受けます。意思表示が不明瞭なところや合意に時間がかかるところなど、良きにつけ悪しきにつけアジア的な面が多々あります。
• 豊かな観光資源

国土面積は日本の約4分の3です。3%が平野、15%が山岳地帯で残りの82%が砂漠です。国土の大半が砂漠ではありますが、各地で美しい自然の姿を見ることができます。マスカットから約240キロメートル離れたオマーン最高峰ジャバルシャムスは標高3,000メートルを超えており、道中の景観はグランドキャニオンを髣髴(ほうふつ)させます。海の美しさも素晴らしく、ダイビング、ヨット、ドルフィンウォッチ、ウミガメの産卵保護区見学など様々なアクティビティーが可能です。世界のトップブランドによる豪華リゾートも揃っており、観光シーズンは欧米客を中心に活況を呈します。美しい自然は観光産業を発展させる可能性を大いに秘めており、脱石油・ガス産業分野の柱の一つとして期待されています。
• シンドバッドの夢

オマーンは原油可採年数が16年と短く採掘コストも高いことから、近い将来「湾岸産油国」というグループから外れ、独自の道を歩んでいくと思われます。油価低迷の今こそ、石油に頼らない国づくりを進める時です。政府も観光産業や中継貿易基地の開発に対し、国運をかけた巨額投資を実施しています。石油の時代のはるか昔、オマーンはインド洋を自由に行き交う海洋大国として栄華を極めました。主要港であるソハールは、千夜一夜物語のシンドバッドが船出をした場所と言われます。世界を冒険した栄光の夢を再び見ることができるのでしょうか、誇り高きスルタン国・オマーンの新たな挑戦に注目です。
(中東協力センターニュース1月号掲載の寄稿を再編集)
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
SCGRランキング
- 2025年2月17日(月)
21:00~22:00、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」に当社チーフエコノミスト 本間 隆行が出演しました。 - 2025年2月17日(月)
『Quick Money World』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年2月16日(日)
『日経ヴェリタス』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年2月13日(木)
16:00~17:30、東京外国語大学 国際関係研究所 主催「分断・衝突に向かう世界の新しい国際秩序」研究会に、当社シニアアナリスト 前田 宏子が登壇しました。 - 2025年2月9日(日)
『Bloomberg News』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコメントが掲載されました。