アクラ/ガーナ ~ガーナの魅力「和をもって貴しとなす」~

中東・アフリカ

2017年09月21日

住友商事株式会社 アクラ事務所
冨野 一郎

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当社アクラ事務所の窓外風景。ギニア湾の水平線が見える(筆者撮影)
当社アクラ事務所の窓外風景。ギニア湾の水平線が見える(筆者撮影)

 「アフリカは遠い。地理的にも心理的にも」と言われますが、ガーナという国名は日本人に比較的なじみがあります。某製菓会社が自社製品にその名を冠しているためですが、この国について、それ以外に何か知っていることはあるでしょうか?元国連事務総長のコフィ・アナン氏はガーナ人である、とか、1927年、船でアフリカに渡った野口英世博士が、黄熱病の研究中に客死した場所がガーナであった、とか?

 

 筆者は主に業務目的で長年アフリカ諸国を訪問し、いっぱしのアフリカ通を気取る浅学の徒でありますが、初めてガーナの首都アクラを訪れたときの印象は、失礼ながら「特徴のない田舎」でした。その後、駐在員として赴任し、周辺諸国を飛び回れば回るほど、この国のよさが身に染みてわかってきました。

 

 

野口英世博士記念日本庭園に立つ胸像(筆者撮影)
野口英世博士記念日本庭園に立つ胸像(筆者撮影)

 まず「平和」だということです。アフリカ諸国は言うに及ばず世界のあちこちで争いが続いており、テロにより無辜の民(むこのたみ)が命を落とし、あるいはその危険にさらされています。また、産業基盤の破壊により経済発展を阻害されている国々も少なくありません。ガーナは、1957年の独立以来、一時の例外的な期間を除き、一貫して平和を維持してきています。最初の大統領であったクワメ・エンクルマ氏が特定の氏族や地域のみに利する政党の結成を禁じ、全政党が国内全ての州に拠点を有するよう義務付けたことがこの国の平和の礎であると聞きます。選挙は民主的に行われ、国家元首が存命でも地位にしがみつかず政権交代が行われてきており、民主主義の模範となっています。

 

 

奴隷輸出基地だったエルミナ城の奴隷懲罰室での体験ツアー(筆者撮影)
奴隷輸出基地だったエルミナ城の奴隷懲罰室での体験ツアー(筆者撮影)

 次に「人柄のよさ」が挙げられます。これは多くの日本人の一致した感想で、汚職度の低さ以外に証拠を挙げるとすれば、ガーナ人男性と結婚してガーナに住む日本人女性は50人ほどいます。この数字は正式な統計データではないものの、見聞する範囲では、アフリカ諸国の中で突出して多いです。賢明なわが同胞女性がアフリカ人男性の中から選ぶとすればガーナ人がベストというわけです。世界を舞台に短距離走でその名をはせているサニー=ブラウン・ハキーム君は、日本在住ですが、父上はガーナ人と側聞します。ちなみに日本国内で在留届を出しているアフリカ人で数が多いのは、1位がナイジェリア人で、2位は僅差でガーナ人です。本国の人口を比べるとナイジェリアはガーナの7倍近く多いのに在留外国人数では僅差である理由に定説はなく筆者が思うに、ガーナ人の気質が日本古来の価値観である「和をもって貴しとなす」に適合しているためではないでしょうか。かつて、奴隷貿易の輸出基地のあったこの国の人々は、輸出先だった国々を恨み続けてはいません。

 

 

伝統的な布地のデザインを模したカラフルな色彩の高級マンション。屋上にはバーやプールがある(筆者撮影)
伝統的な布地のデザインを模したカラフルな色彩の高級マンション。屋上にはバーやプールがある(筆者撮影)

 そして「文化の豊かさ」があります。色鮮やかな民族衣装の伝統に裏打ちされたファッション、多様な食材と天然調味料を使った郷土料理、ジャンベ(西アフリカの太鼓)に代表される音楽や舞踏、日本とは全く異なる冠婚葬祭、キリスト教・イスラム教・地元信仰の入り混じる寛容な宗教観などなど、魅力の尽きないガーナ。筆者がこの国のパワースポットのひとつと信じてやまない野口英世博士記念日本庭園にたたずめば、野口博士の激しい情熱を感じることができるでしょう。

 

Akwaaba (ようこそ、ガーナへ)!

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