マプト/モザンビーク ~輝く笑顔とともに発展する町~
筆者がモザンビークの首都マプトへ赴任すると聞いて、多くの人は「たしかアフリカの国だよね?」「住商も事務所があったような…」「昔PKO(国連平和維持活動)で話題になったのでは……」といった反応でした。かくいう私もまだ赴任して2か月ほどなので知らないことも多いのですが、これまで率直に感じたことに同僚からの情報なども織り交ぜて伝えたいと思います。
モザンビークは、インド洋に面した南北2,500キロメートルに及ぶ海岸線を持ち、天然の良港を擁し、近隣アフリカ内陸国へのゲートウェイにもなっている地理的に恵まれた国です。
加えて、天然ガス、石炭や重砂など豊富な天然資源にも恵まれています。北部のカーボデルガド州での天然ガス開発は、日本企業も参画して進められており、現在債務超過に苦しんでいるこの国の経済発展に大きく寄与することが期待されています。農業も主要産業の一つで、GDPの4分の1を占め、産業別雇用率では実に7割を超えています。FAO(国連食糧農業機関)によれば、約320万戸が零細農家で農業生産量全体の約95%を占めており(2021年)、農業の効率化や農地開拓も大きな課題となっています。
マプトは海に面した開放的な印象の町で、そこに住む人々は非常にオープンで明るく、たまたま乗り合わせたエレベーターでも、挨拶はもちろん、いろいろと話しかけてきてくれます。ただし、当国の公用語であるポルトガル語で話しかけてくるため会話が弾まず、ポルトガル語を習得せねばと日々思っているところです。一方、異国で感じがちな、刺すような視線や過度に強引な物売りや客引きなどはおらず、控えめでシャイなところもあり、親近感が持てます。単身赴任で駐在員ひとりの事務所で働くものとしては、ありがたいところです。コロナ禍で各種の制限も多くありましたが、マスク着用やソーシャルディスタンス確保、手指消毒など、日本と比較しても、当局の規制・締め付けが厳しいという側面はあるのでしょうが、まじめに守られています。ただ、地方に行くと状況は違うようで、実際に北部のナンプラ州に出張して郊外(田舎)を車で走っていると、マスクをしている人はほぼおらず、一瞬コロナ禍ということを忘れそうになるほど、のどかな風景が広がっていました。
ポルトガルが旧宗主国であったことから、マプトには、ポルトガル料理店が数多くありますし、酒屋(ボトルショップ)には、隣国南アフリカのワインとともにポルトガルワインが豊富にそろっています。VINHO VERDE (ヴィーニョ・ヴェルデ、緑色のワイン)という若い微発泡のワインはポルトガル風海鮮料理にピッタリで特におすすめです。度数も低めなので、ビールがわりにゴクゴク飲めて最高です。
また、外国人が楽しめる娯楽や文化的な観光地が豊富な場所ではないものの、市内を車で走っていると特徴的なポルトガル植民地時代の建物に遭遇します。例えば、パリのエッフェル塔を建築したエッフェルが設計した色使いも鮮やかなマプト鉄道駅。同じく同氏の手になるアイアンハウスは、3階建てのコンテナハウスのようですがとても趣があります。
他にも、セントラルマーケットの正面ゲートやローマ法王も来訪されたというカテドラルなど、思わず振り返ってしまうような美しく特徴的な建築物が散在しています。
当国は1975年に独立し、初代大統領のサモラ・マシェルはその優れた統治能力で多くの国民から今も敬愛されており、人々は、独立に誇りをもって生活をしています。一方で、国連開発計画(UNDP)の統計HDI(Human Development Index; 2020年)のランキングでは、189か国中181位と最貧国の一つであり、非開示債務問題を含む債務超過の状況下、各国からの資金援助を受けることが難しい現状です。汚職や北部地域のテロ・治安問題、気候変動、感染症などの複合的な影響があるなかでも、新型コロナウイルスが直撃した2020年度を除き、基本的には高いGDP成長率を維持している国であり、中長期的にみるとその成長性には大きな期待が持てると考えられています。筆者もこの国の成長の実現を楽しみにしています。
(筆者注:本稿執筆にあたり、マルシア・ムシャシャ マプト事務所員から多くの情報と示唆を受けました。謝意を表します。)
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