クウェート ~クウェートの文化的変化:伝統と現代性のバランス~
中東・アフリカ
2023年11月15日
住友商事株式会社 クウェート事務所
Tarkawi Karim
クウェートは、何世紀にもさかのぼることができる豊かな文化遺産を持つ国です。しかし一方で急速に近代化が進んでおり、時代の変化に合わせて、その文化も進化しています。
クウェートで起きている最も大きな文化的な変化のひとつは、社会における女性の役割の拡大です。伝統的に、クウェートの女性の多くは家庭に「閉じ込められている」状態でしたが、他の中東地域同様に、近年教育や雇用の面で進展が見られるようになりました。かつてに比べて今日では、女性が政府、ビジネス、芸術の分野で、高い地位に就いているケースも見受けられます(*注1)。
(*注1)SCGR注釈:クウェートでは、2022年の女性の労働参加率(15歳以上の人口のうち労働市場に参加している率)は47.8%、男性は85.7%で、1990年以降、女性の労働参加率は総じて緩やかな増加傾向にあります。また、中東・北アフリカ地域の女性の労働参加率の平均値が25%弱であることと比べると、クウェートの女性の社会進出が近隣の地域と比較し大きく進んでいることも、データから読み取ることができるのではないでしょうか。
もうひとつの重要な文化的変化は、外国からの影響に対する開放性の高まりにみられます。かつてクウェートは比較的孤立した国でしたが、今日では世界とのつながりがより強くなっています。クウェート国民は多くの国々を訪問し、またメディアやインターネットを通じて、さまざまな文化に触れる機会が増えています。その結果、クウェートの文化はより多様化、国際化しています。
この現代性を受け入れる一方で、クウェートの価値観が伝統的な価値観に深く根ざしていることを認識することも重要です。イスラム教はクウェートの国教であり、社会の中心的な役割を担っています。クウェート人はまた、自国の遺産や文化に誇りを持ち、その保護に力を注いでいます。
以下に、クウェートの文化的な変化の特徴的な事例を挙げます:
- 教育:かつては、クウェートの多くの家庭にとって教育は優先事項ではありませんでした。しかし今日では、教育は非常に重視されており、男女ともに学校に通うことが求められています。さらに、海外でより高度な教育を受けることを選ぶクウェート人学生も増えています。
- 雇用:伝統的にクウェートでは、男性が家計を支えていました。しかし今日、多くのクウェート人女性が労働力として社会に参入し、その数は増える傾向にあります。事実、今やクウェートの労働力の割合を見ると、女性が占める割合は増加傾向にあります。
- 芸術と文化:クウェートは、芸術や文化が盛んでもあります。クウェートのアーティストや作家たちは、新しく革新的な表現方法を模索しています。加えて、国際的な文化イベントの開催も増えている状況です。
- 食事と料理:クウェート料理は、アラブ料理、イラン料理、インド料理、地中海料理の融合によって成り立っています。新鮮な食材、スパイス、米を使うのが特徴です。多くの若いクウェート人は、独自の創造的なスタイルで世界各国の料理を取り入れ、新たな料理の様式を構築しようとしています。
総じて、クウェートは文化的に大きな変化を経験しているといえるでしょう。この国は、伝統的な価値観に根ざしながらも、現代性を取り入れようとしています。この変化は、教育から雇用、芸術や文化に至るまで、クウェート社会のあらゆる分野で見られる傾向です。
クウェートの文化的な変化に伴う課題とチャンスを、いくつか紹介しましょう:
- 課題:最大の課題のひとつは、伝統と現代性のバランスを保つことです。クウェート人は近代化の果実を享受したいと考えていますが、同時に文化的遺産を守りたいとも考えています。もうひとつの課題は、過去の常識や偏見を克服することです。変化に抵抗感を持つ人もいるし、近代化の側面について、クウェートの伝統文化と相容れないものとみなす人もいるでしょう。
- チャンス:最大のチャンスのひとつは、より包括的で活気のある社会を作ることです。多様性を受け入れ、寛容さを促進することで、クウェートはすべての国民に受容され、繁栄する国になることができるはずです。もうひとつのチャンスは、クウェートの文化を世界に紹介することです。クウェートには、豊かでユニークな文化遺産が存在します。これらの遺産を他の国の人々と共有することが重要であると思われます。
クウェートの文化的な変化は、まだ初期の段階にあります。この国の文化は前向きな方向で変化していく可能性を秘めています。伝統と現代性のバランスをとり、多様性と寛容さを受け入れることで、クウェートはより包括的で活気のある社会となっていくでしょう。
以上
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