ジェッダ/サウジアラビア~変わりつつあるイスラム教発祥の国
中東・アフリカ
2024年08月01日
Abdul Latif Jameel Summit
武田 義和、熊谷 誠、澤田 健吾、長瀬 陽一郎
「Saudi Vision 2030」
サウジアラビアは、サルマン国王を頂点とする絶対君主制を敷く国で、イスラム教の二大聖地といわれるメッカとメディナをかかえる「イスラム教発祥地」ということもあって、イスラム諸国の中でも最も戒律が厳しい国と言われています。しかし、2016年、同国の実質的な指導者であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子により「Saudi Vision 2030」が発表され、石油一本足打法経済からの脱却を実現すべく、Giga Projectと呼ばれる大型国家プロジェクトが次々と発表されました。その中でも北西部に建設予定の全長170キロメートル超に及ぶ直線型未来都市THE LINE(4つのプロジェクトから成るNEOMの目玉プロジェクト)はひときわ注目を集めました。最近はその規模を2.4キロメートルに縮小するとの憶測が報道され、建設機械の販売を行う当事業会社としては市場の変化対応に苦慮している状況ですが、鉱業分野に注力することへの期待などもあり、サウジアラビアが中東諸国の中で依然としてポテンシャルの高い国であることに変わりありません。
「Saudi Vision 2030」には、文化娯楽の促進や女性のさらなる社会進出も含まれています。ここジェッダでも、一定規模のモールにはほぼ映画館が入っており、アバヤ(イスラム教徒の女性が全身を覆う衣装)をまとった多くのサウジ人女性が働いています。かつて市中を監視していたムタワと呼ばれる宗教警察はほぼ見られませんが、戒律の厳しい国なので、アバヤを着用し、顔や髪も隠す女性が多く、モール内でもポップスなどのBGMを耳にすることはほとんどありません。また残念ながらお酒が解禁される見通しはなく、現地駐在員は禁酒生活を余儀なくされていますが、彼らの肝臓たちはほっとしていることでしょう。
サウジ人は夜型人間?
ジェッダは紅海に面しているため、年間を通して高温多湿な気候です。夏場の気温は40度を超え、日中は屋外活動が困難なため、多くのサウジ人の行動は、早朝か夕方以降に活発になるようです。Cornicheと呼ばれる紅海沿いの遊歩道は、早朝5時30分過ぎには散歩や休憩する家族やグループを見かけますし、また、夕涼みとは言えない気温ではあるものの、夕方から涼みに来る人たちで賑わいます。モールなどもようやく気温が下がり始める18時過ぎくらいから混雑し始めます。夜22時を過ぎても、公園で小さな子どもが家族と遊んでいる風景もよく見られます。
生活面のこと
物価は高めですが、スーパーやモールで一通りの物資は揃います。数は多くはありませんが、日中韓の料理店もありますし、イスラム諸国からの出稼ぎ労働者も多いことから、エジプト・レバノン・パキスタンなどのレストランもあり、いろいろな地域の料理を楽しむことができます。一方、電車・バスなどの公共交通機関は未発達で、完全な車社会という事情から、現地駐在員も車通勤をしています。そもそも歩道というものが整備されておらず、運転も荒いため、道路を歩くことは多くの危険をはらんでいるのが実状で、ランチ後にオフィス周辺を散歩、というわけにもいかず、1日の歩数は合計わずか900歩程度と運動不足になりがちです。そのようなこともあり、若手駐在員はソフトボールやテニスの日本人同好会に所属し、毎週末汗を流しています(ソフトボールは場所がないので、いじましくスタジアムと称した空き地でプレーしています)。
ダイビングスポットとしても有名な紅海は大変美しい海で、釣りにチャレンジしている現地駐在員もいます(ただし、海岸沿いはプライベート化が進み、海岸自体へのアクセスが難しくなってきています)。
またアラブ文化においては古くから猫が敬愛されている中、野良猫を家族に迎え入れ、冷房の効いた家の中で、猫たちとゆったりとした時間を過ごす駐在員もいます。都会的な楽しみではありませんが、駐在員それぞれが工夫しながら、リフレッシュしています。
Abdul Latif Jameel Summit
当事業会社は、現地財閥Abdul Latif Jameelグループと住友商事が50:50の出資比率で設立した合弁会社で、主にコマツ製建設機械を販売しています。社員は約130名、従業員の出身国は15か国にわたります。社員のバックグラウンドが多様であるため、日本や欧米の価値観がなかなか通じない場面も多く、円滑なコミュニケーションのためには工夫が必要です。市況も難しい局面にありますが、コマツ社の同国のポテンシャルに対する期待は依然として大きく、両株主と密にコミュニケーションを取りながら、業績の改善に向けて邁進中です。
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