シリコンバレー/米国 ~環境がニューテクノロジーを生むシリコンバレー~

2018年09月06日

米州住友商事会社 シリコンバレー店
仁木 毅

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 シリコンバレー店のあるカリフォルニアは、2018年現在約4,000万人が住む、米国でも非常に大きな州です。州全体の面積は約42万3,967平方キロメートルと全米3位の規模で、日本の国土面積(約37万7,962平方キロメートル)よりも広いです。経済規模も大きく、2017年のカリフォルニア州GDPは2兆7,000億ドルを記録し、英国を抜いています。州とはいえ、国と仮定すれば世界5位の経済規模です。そして、この経済を大きくけん引しているのが、ロサンゼルス地域のメディアエンタテインメント産業とシリコンバレーのIT産業です。

 

 シリコンバレーとは、サンフランシスコ湾南部に面した盆地地帯(Valley)に広がるエリア一帯を指しており、半導体(の原料であるSilicon)関連企業が多く立地していたことから命名されています。実はこのシリコンバレーは一般的な地名ではなく、地元の人などからはBay Area(ベイエリア)とも呼ばれています。

 気候は、寒流の影響を受けた地中海性気候で、日中は湿気が少なく温度が高くなる割には大変快適で、降雨量も極めて少なく、1年を通して過ごしやすい環境です。

 

スタンフォード大学のエントランスに広がるOval型(楕円型)の広場は圧巻です(筆者撮影)
スタンフォード大学のエントランスに広がるOval型(楕円型)の広場は圧巻です(筆者撮影)

 もともとの発祥は、スタンフォード大学の学生であった、ビル・ヒューレット氏とデイブ・パッカード氏が、ガレージを拠点として1939年に「Hewlett-Packard社(HP/ヒューレット・パッカード社)」を設立したことに始まります。このガレージは米国国立公園局によって史跡として登録されています。

 

こうした背景もあってスタンフォード大学の周辺がシリコンバレーの中心になっており、多くのスタートアップ企業や大手ベンチャーキャピタルがオフィスを構えています。スタンフォード大学は多数の著名な人材を輩出しており、MBAでは全米1位の実績があります。また卒業生の約3割が起業する、とても先進的な大学です。敷地が東京ドーム700個分以上と広大で、非常にオープンなキャンパスですのでシリコンバレーにお越しの際はぜひ訪問されることをお勧めします。

 

Golden State Warriorsのホーム、Oracle Arena(オラクル・アリーナ)の一体感のある盛り上がりは必見です(筆者撮影)
Golden State Warriorsのホーム、Oracle Arena(オラクル・アリーナ)の一体感のある盛り上がりは必見です(筆者撮影)

 スタートアップ企業やベンチャーキャピタルの方々が熱心に働くからなのか、夜中まで繁盛しているような繁華街はほとんどありません。一方でスポーツ観戦は盛んで娯楽の中心になっています。野球ではサンフランシスコを拠点とするジャイアンツと、オークランド拠点のアスレチックスがあり4~10月まで盛り上がります。また、NFL(アメリカンフットボール)では49ers(フォーティナイナーズ)のホームスタジアムがサンタクララにあり、試合のある日はスタジアム付近が渋滞します。そしてなんと言っても大人気なのがNBA(バスケットボール)のGolden State Warriors(ゴールデンステート・ウォリアーズ)です。近年急速に力をつけ、目下2連覇中で全米最強のチームになっています。

 

絶景が広がるヨセミテ国立公園(筆者撮影)
絶景が広がるヨセミテ国立公園(筆者撮影)

 もう一つの楽しみは自然散策です。シリコンバレーと聞くとITに囲まれた都市を想像されるかもしれませんが、実のところは、のどかなアメリカの田舎町で、とても多額の資本が行き来する町には思えません。山と湾に囲まれた立地のため、トレッキングなどを気軽に楽しむことができます。また片道4時間かかりますがヨセミテ国立公園も非常に人気の観光地です。

 

 快適な気候、広大なオープンキャンパス、スポーツ文化、そして豊かな自然環境、こうした要素がスタートアップ企業の既成概念に縛られないユニークなアイディアの源泉なのかもしれません。

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