ブエノスアイレス/アルゼンチン ~変えよう、アルゼンチン!!~
2015年12月24日
アルゼンチン住友商事会社
岩谷 政史
日本からみると地球のほぼ正反対に位置するアルゼンチンは、面積約278万平方キロメートル(世界8位)、人口約4,100万人、北は世界最大のイグアスの滝から、南は世界で3番目に大きいエル・カラファテ氷河までを包含する南米の大国です。中央には温帯気候で平坦(へいたん)かつ肥沃(ひよく)な農牧業地帯であるパンパ草原が日本全土の約1.5倍(約50万平方キロメートル)の大きさで広がっており、南半球の国々でこれほど自然条件に恵まれた国はないでしょう。
パンパ草原の東端、大河ラプラタ川を臨む首都ブエノスアイレスは、19世紀後半から新天地を求めてスペイン・イタリアをはじめとする欧州からの移民が大量に流入した、現在、人口約300万人(大都市圏では約1,500万人)の都市です。20世紀初頭には穀物・牛肉などの輸出により、GDPが世界5位になるほどの繁栄を誇りました。フランス風の建築物、カフェ、劇場、美術館などが至る所にあり、古くから「南米のパリ」と呼ばれ欧州の雰囲気を漂わせています。街の人々はしゃれたレストランで、彼らが世界一おいしいと自慢するビーフステーキを、隠れた名産品であるワインと一緒に楽しんでいます。
多くの人に豊かな国という印象を与えるアルゼンチンは、70年代の軍事政権から民主政権に戻った1983年以降、何度かの通貨大幅切り下げ、ハイパーインフレ、さらに対外債務不履行(デフォルト)を起こしており、海外からの同国経済に対するイメージは大変ネガティブなまま推移しています。
2003年から現在まで12年間国政を担ってきた政権は、2001年末のデフォルトの混乱を数年で解決したように見えましたが、実際には大衆迎合主義による財政支出の増大、高インフレ、外貨不足による輸入制限、外貨送金・両替規制の実施、米国の投資ファンドとの債務支払問題などにより、特に過去4年間は経済成長がほぼゼロの状態です。海外企業の関心もブラジルや近隣諸国に比べ非常に低い状態が続いています。
しかし、ようやくこの国もこの状況に決別しようとしています。2015年11月22日の大統領決選投票で、野党連合のマクリ候補が与党の候補に対し歴史的な勝利を飾り、同12月10日に新大統領に就任します。野党連合の名前「カンビエーモス」は「(この国を)変えよう」という意味です。これまで政治・経済・社会面で停滞していたアルゼンチンに倦怠(けんたい)感・危機感を募らせた国民が、自分たちでこの国を変えていきたい、という気持ちを新大統領に託しました。新政権は国民それぞれの異なった考えを尊重しながら、アルゼンチンを誰からも信用される国に皆で変えていこう、と既に発足前からアクションを開始しています。ビジネス・経済市場にフレンドリーな政策を取ると予想され、経済界・海外からもそのかじ取りに期待が高まっています。
もともと農業・鉱業・エネルギー分野での天然資源、また教育水準の高い人的資源の豊富なこの国が、「普通の国」に変わるだけでさまざまなビジネス機会も広がり、100年前のように繁栄したアルゼンチンに復活する可能性がすぐそこにあります。
皆さんも、これから変わっていくアルゼンチンをぜひ訪問し、おいしいステーキとワインを楽しみながら、この国の大きな将来性を実感し、新たなビジネスチャンスにつなげてほしいと願っております。
(2015年12月2日執筆)
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