キト/エクアドル ~奇妙でユニークな国、エクアドル~
19世紀初頭、ドイツの著名な地理学者であり探検家でもあるアレクサンダー・フォン・フンボルトは、次のように言いました。「エクアドル人は奇妙でユニークな存在だ。煙を吹く火山のもとで安らかに眠り、比類なき富の中で貧しい生活を送り、悲しげな音楽を演奏して楽しく過ごしている」。このときフンボルトは、複雑な地形の中に存在する都市、膨大な天然資源に比べ少ない工業活動や貿易活動、祭りの際に聞こえるメランコリックな音楽について述べていたのです。この有名な言葉は、現代においてもエクアドルの人々が逆境に強いことを思い出させてくれますが、今回はこのアンデスの国の地理的な特徴に焦点を当てたいと思います。
エクアドルは1822年にスペインから独立した比較的若い国ですが、今年で建国200周年を迎えます。この間、近隣諸国との領土問題で多くの国土が失われ、現在では28万3,560平方キロメートル、日本の約4分の3の領土が残されています。小さな国ですが、世界でも有数の生物学的多様性に恵まれた国なのです。
皆さんはきっと、ガラパゴス諸島とそのすばらしい生態系について聞いたことがあるでしょう。ご存知ないなら、一生に一度は、ぜひガラパゴス諸島の国立公園と海洋保護区を訪れてみてください。チャールズ・ダーウィンはこの島で、自然淘汰説と進化論の基礎となるいくつかの観察と発見をしました。しかし、エクアドルの魅力はこれだけではありません。本土には、太平洋沿岸地帯、アンデス高地、アマゾンの熱帯雨林という、非常に特徴的な三つの地域を見ることができます。言葉では表現しきれませんが、ひとつひとつ見ていきましょう。
太平洋沿岸地帯には多くの魅力的な場所がありますが、グアヤキルはその筆頭です。「太平洋の真珠」と呼ばれ、2022年現在、都市圏の人口は約270万人、エクアドル第2の大都市です。17世紀には、アジアとラテンアメリカの交易の要所として、イギリスやフランスの海賊に襲われて略奪を受けたこともありました。現在でも、同国で最も重要な港を擁し、観光客が楽しめる多くの商業施設があります。
歴史ある旧市街、豊かな食文化、そして親しみやすい人々など、この国ならではの体験ができるでしょう。また、隣接するサンタエレナ県には美しいビーチがあり、一年中楽しむことができます。運が良ければ、晴天の下、クジラの回遊に出会えるかもしれません。
アンデス高地では、キトが際立っています。エクアドル最大の都市であり、2022年現在、都市圏の人口は280万人を超えています。海抜2,850メートルのキトは、世界で2番目の高地にある首都であり、1978年にユネスコの世界遺産に登録された最初の都市でもあります。さらに、キトは赤道から南に約1キロメートルと、赤道に最も近い都市でもあります。ご推察のとおり、エクアドルという国名は赤道に由来しています。キトには、首都にふさわしい多様な文化的側面のほか、コロニアル様式の教会が数多く残る歴史的な旧市街があります。1809年にイスパノアメリカからの最初の独立運動を起こしたことにちなんで、「アメリカの光」とも呼ばれています。また、近隣のエクアドル高地には、地球上で最も高い活火山の1つである、標高5,897メートルのコトパクシ火山があります。これに対して、赤道直下にある標高6,263メートルのチンボラソ火山は、赤道付近の膨らみにより地球の中心から最も遠いところにある休火山となっています。
最後はアマゾンの熱帯雨林です。国土全体の43%以上を占めながら、2022年現在、人口が100万人にも満たないこの地域は、石油を産出し、国の経済に非常に重要な貢献を果たしています。この地域の魅力は、すばらしい植物と野生動物、いくつもの川、そして他の追随を許さない熱帯性気候です。また、熱帯雨林には先住民や未接触部族の人々が暮らしており、グローバル化やハイパーコネクテッド化がすばらしいことだと思いがちなこの世界の中で、他にないユニークな場所となっています。
この記事を書くのは楽しい作業でしたが、エクアドルのすばらしさはまだまだ他にもあります。皆さんがこの国を実際に訪れ、さまざまな発見をし、ご自分の目で観察するならば、間違いなく驚かれることでしょう。ぜひともご訪問ください。
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