20周年記念コラム【#10】過去20年間の経済・人口構成・市況の変化
住友商事グローバルリサーチ(SCGR)は2024年、前身の住友商事総合研究所の設立から20周年を迎えました。20年前の2004年といいますと、ベルリンの壁崩壊から15年、通貨ユーロ誕生から5年、BRICSという言葉が誕生して3年、Facebook創立の年、初代iPhone発売の3年前、にあたります。SCGRの20年はグローバル化、新興国の台頭の中で始まり、技術も急速に進歩して、世界が大きく変わってきた局面と重なります。
2004年に65億人だった世界人口は、昨年80億人を超えました。世界経済も、新興国の台頭とともに成長のギアを上げました。この20年で人口が約25%増える間に世界の名目GDPは2.5倍となっています。ただ、1人当たりGDPでみると、米中間ですらまだ6.5倍の差があります。情報伝達のスピードが飛躍的に早まったこともあり、国内外に根強く残る、あるいは拡大すらする、格差の問題にも焦点があたったように思います。
人口の増え方も変わっています。今年の国連人口統計のテーマは、増える方ではなく、ピークが早まる話です。日本の人口は2008年がピークですが、世界でも少子高齢化が進み、いまでは4人に1人以上が人口減少国に住んでいます。労働力としての移民は双方のニーズを満たす一方、紛争や政治経済の混乱から逃れる移民も増え、治安問題・欧州難民危機・Brexitやトランプ大統領誕生へとつながり、今なお大きな社会問題となっています。
人口を国連統計の分類でみますと、新興途上国のシェアが伸びていく形ですが、冷戦終結とグローバル化により加速した民主化の潮流が2010年代に変調したため、スウェーデンのV-DEM研究所が出している国家体制別の区分では、民主主義国に住む人口の割合は1980年代に戻ってしまったそうです。西側と異なる価値観を持った国が人口だけでなく経済や貿易においても勢力を拡大している形です。「独裁者の政策」に影響されやすくなったともいえ、西側では、サプライチェーンを独裁国家に依存することが供給安全保障のリスクとして改めて認識されています。
GDPは、普段成長率ばかりが注目されますが、例えばIMF統計の実数値でみますと、昔は上位7か国をG7が占めていたところ、カナダやイタリアが順位を下げています。日本もドイツと、もうじきインドにも抜かれて5位転落、と予想されています。このIMFの数値は「自国通貨建てGDPを市場為替レートでドル換算」しており、為替レートが大きく影響するため、順位低下をもって「だから日本はだめなんだ」というのも違うと思う一方、相対的な停滞感は強かったともいえます。2024年の「名目ドル建てGDP」で計算した場合、アメリカ1国と、その他G7にEU加盟国を加えたグループと、BRICS9か国が約28~29兆ドル、26~27%ずつでほぼ同じ、という勢力図になります。
その為替と株価の推移です。ドル円はリーマン・ショックから民主党政権時代に大きく円高に振れ、75円台からアベノミクス相場を経て今年162円手前まで円安が進んだのと、日経平均株価が今年やっとバブルのときの高値を超えたのは記憶に新しいところです。日経平均は1985年のプラザ合意から4年で3倍になりましたが、バブル崩壊から既往高値を回復するまで34年かかりました。中国は2005年の人民元切り上げから2年で上海総合指数が6倍になり、リーマン・ショック後は人民元をドルペッグして元高を止めて輸出を支え、2015年に株式市場の「官製バブル」崩壊後に人民元を切り下げ、現在も通貨管理やさまざまな規制を続けています。アメリカは経済も人口も伸びて、基軸通貨を持ち、株価は高値更新を続けていますが、選挙では国民の半分が現政権の継続を望んでいないようです。その大きな理由の一つが「経済」といわれています。GDPや株価では測れないモノは多くあります。
相場の面での大きな変化は、超高速取引とかアルゴリズム取引といわれる機械的売買が圧倒的になったことです。統計やニュースに「ミリ秒」単位で反応したり、人間だったら怖くて手が出ないような価格で売買が成立したりします。しかしながら、ずっと続くように思えたトレンドが突然変わることもよくあります。実は機械売買のプログラムがアクセスする表面の数字や一見正しそうなセオリーとは別のところに本質があって、ひずみが重なり、何かの拍子に軌道修正が入るということかもしれません。現在から先を予測することは極めて困難ですが、歴史に学ぶところも多いです。情報の氾濫に悩まされる今日この頃ですが、短期的についていくべき方向性と、難しくても正しいことの本質、両方を見極める必要性がますます高まっているのが現在地だととらえています。
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