20周年記念コラム【#12】サブサハラ・アフリカの20年を振り返って
中国との20年
サブサハラの2005~2014年の平均実質GDP成長率は+5.0%となり、その前の10年の+4.2%成長を上回りました。日本でも紛争や貧困といったイメージで括られていたアフリカが「最後のフロンティア」としてビジネス面でも注目を集めたのはこの時期です。1993年からアフリカの「開発支援」のために始まった「アフリカ開発会議(TICAD)」の主要議題が「援助から投資へ」に変わったのも、2013年に横浜で開催されたTICAD V(ファイブ)でした。その2013年には、習近平主席が「一帯一路」構想を発表。中国からアフリカ向けの投資額や融資額も、サブサハラの成長にあわせて右肩上がりで上昇を続けました。
こうした中国からのインフラプロジェクトをはじめとする融資や、中国への資源輸出によって経済成長を続けてきたサブサハラですが、転機が訪れます。それは、2014年に始まった「コモディティ価格ショック」です。米国によるシェールガス等の開発普及を受け、原油をはじめとする資源価格が下落。もともと単一産品の輸出に経済を依存するいわゆる「モノカルチャー」の国がほとんどであるサブサハラ諸国の経済は大打撃を受け、その後、低成長の時代が続くこととなりました。
私が、サブサハラ経済の中心である南アフリカのヨハネスブルグに赴任したのが2015年の終わりころ(その後、2021年夏まで駐在)。ちょうどサブサハラ経済全体が冷えかかってきたタイミングでしたが、赴任直後に私のオフィスの向かいの国際会議場で、中国政府が「第6回FOCAC」を開催。中国が600億ドルのアフリカ向け支援を決定するなど、まだまだアフリカでの中国の勢いは衰えてはいないことを肌で感じました(*)。実際に中国からのアフリカ向け融資は、コモディティショックから2年遅い2016年にピークを迎えました。経済が下向き加減にあったサブサハラ諸国にとって、引き続き資源を購入し、インフラ向けの融資をしてくれる中国の「パートナー」としての重要性が高まり、それに応じてトップ外交も活発になった印象があります。
対中債務重しで、揺り戻し
さらに2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は世界の食糧価格と原油価格に影響をもたらしました。自国の農業の生産性が低いために、食糧を輸入に頼る国が多いサブサハラでは、食糧輸入価格の高騰によりインフレが急伸。金融引き締め策により金利が上昇し、民間消費は冷え込み、さらに経済の悪化を招くかたちとなりました。2022年以降、ガーナとエチオピアがザンビアに続いてデフォルトに陥りました。現在もこうした国々の経済の回復は道半ばです。
サブサハラでは1980~90年代にも累積債務問題から国際通貨基金(IMF)や世界銀行による「構造調整」を受け入れた歴史がありますが、また近年も重い対中債務解消、経済安定化のために、再び西側諸国へのアプローチを強める国も多くみられます。そうした国際金融機関が財政支援向けの譲許的な融資の条件として定める「コンディショナリティ」に沿って、より透明性の高い情報開示に基づいてマクロ経済の安定化に努めているのがコロナ禍以降のサブサハラの姿でしょう。さらに、上述のデフォルトに陥った国々では、従来の西側債権国である「パリクラブ」に加え、中国らの新興国の債権国も加わった「G20共通枠組み」の下で債務再編が進められるなど新しい形の協力もみられるようになりました。このように、現在のサブサハラ諸国の政治・経済・外交を形成している要因の元を辿ると、2000年以降、中国が推し進めてきたアフリカへのアプローチ(資源獲得と大規模融資)が影響を与えているのです。
中国とはつかず離れずか
サブサハラの今後
もちろん、2014年以降のサブサハラが経験したように、経済成長なき人口増加(実質GDP成長率と人口増加率が均衡、ないしは人口増加が上回る)は一人当たりの所得が減少して貧困が進むことになります。その結果、現在、欧州の政治を揺るがすほどに問題となっているアフリカからの難民問題や、食糧問題、そして紛争・テロの拡大につながる可能性があります。サブサハラでは長年の課題となっている農業や教育の質の問題、そして気候災害への対応がさらに今後必要となっていくでしょう。このようにサブサハラの人口増は世界の不安定化をもたらす可能性があることに留意しつつも、「この国のこの分野であればビジネスチャンスがあるかもしれない」という種を探る視点でサブサハラの政治経済と向き合っていきたいと思います。
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