わたしたちの日常【#22】2025年の注目点:③実質賃金

個人的には、何よりも重要です。賃金。社長の口から賃上げという言葉を聞くと、世の中はさておき、弊社の……自分の……と日ごろ思っています。いくつかの企業は先行して2024年のうちに大幅な賃上げを発表しました。また、複数の労働組合が2024年度よりも高めの賃上げ目標を掲げています。2025年度の賃金を巡っては、賃金上昇の機運は継続すると予想される中で、2024年度以上の賃上げが実現するかが注目されます。
賃金といっても、特に、物価上昇率の影響を除いた、実質賃金への注目が高まります。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、物価上昇率が2%を上回った2022年4月から2024年5月まで、2年近くにわたって、実質賃金の上昇率はマイナスになりました。つまり、物価の上昇ペースに名目賃金が追いつかず、実質的に賃金が目減りしていたことになります。
2024年度の春闘での歴史的な賃上げなどもあって、実質賃金は2024年6月に前年同月比+1.1%とプラス圏に顔を出しました。しかし、プラスになったのは6月と7月のわずか2か月間にすぎず、再び8月からマイナス圏に戻りました。2024年末時点で公表されている11月の実質賃金の上昇率は▲0.3%であり、実質賃金はまだ低下傾向を継続しているようです。
日銀が期待する賃金と物価の好循環という姿には、実質賃金がプラスになることが必要です。実質賃金がプラス、すなわち実質的な購買力が持ち直すことで、それに応じて個人消費も盛り上がり、それが物価に対して押し上げ圧力になります。また、実質賃金が一時的にプラスになるのではなく、長い間プラスになることも欠かせません。2年以上にわたってマイナスに転じた実質賃金を回復させるには、相応の長い期間のプラス期間が必要だからです。さらに、賃金が上昇していくという期待感を持てるような環境になることも大切です。将来も引き続き賃金が上昇していくと考えられるからこその人生設計、個人消費や住宅投資があります。将来の賃上げが期待できない、または良くて現状維持という見通しであれば、消費の増加幅は限られます。
2025年度に向けて、引き続き前向きな声が聞かれています。物価見合いで賃金を上げるならば、実質賃金は横ばいです。物価上昇以上に賃金を引き上げるならば、生産性の向上という裏付けが必要になります。つまり、もっと効率的に多く仕事をこなしていかなければ……ということになります。世の中はもちろん、自分の賃金もとても重要なので、まずは、自分の仕事のやり方から見直してみます。
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