わたしたちの日常【#26】2025年の注目点:⑦大事なのは日常生活
物価上昇率については、日米欧ともに2%を目標に掲げているため、それを上回るような賃上げとなれば、実質的な購買力は回復していきます。実際、米国の賃金上昇率は、物価上昇を上回っており、購買力は回復しつつあります。また、欧州でも、労使交渉の中で妥結賃金が高めで推移しており、実質的な購買力は持ち直しつつあります。ただし、欧州の物価上昇率は米国よりも高かかったため、回復には時間がかかると考えられます。日本でも、歴史的な賃金上昇となっているものの、物価上昇に追いつかず、依然として厳しいままです。
その一方で、経済構造が変化しつつあることが懸念されます。欧州や中国企業と競争を繰り広げ、優位性を確保している米国のIT企業は、従来の製造業のように米国内で雇用を創出しているわけではありません。欧州でも、中国企業との競争激化や経済安全保障の観点から供給網を分散させる中で、欧州域内の雇用が削減され得るケースも見られます。そうなると、これまで安定してきた雇用環境が崩れてしまう恐れがあるといえます。雇用環境、すなわち労働需給のバランスにおいて、供給超過となれば、賃金には低下圧力がかかりやすくなり、日常生活の改善がさらに遠のく恐れも出てきます。
気候変動対策やグリーン化などにはコストがかかり、それが物価上昇圧力になる一面もあります。その一方で、日常生活が厳しいままであれば、背に腹は代えられないと、長期的な課題が先送りされることも想定されます。先送りされても、その後適切に対応されればよいものの、先送りされた将来にはそのときの異なる問題が発生しており、対応策が不十分になるケースもあります。
先を見据えつつも、今どのように対応していくのかが重要になっています。今の生活苦が政権交代など政治の大きな変化の一因であるならば、新たに影響力を増したり、政権を担ったりするようになった首脳や与党、政党は、こうした対策を欠くことができません。十分改善できなければ、今度の選挙で支持を失う恐れがあります。クリントン元米大統領が当時大統領選のスローガンに掲げた「大事なのは、経済なんだよ!(It’s the economy, stupid!)」が、2025年には再び問われることになるでしょう。
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