コモディティ・レポート 2018年2月号 ~世界同時好況・ドル全面安で商品価格上昇に弾み~
2018年02月05日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
鈴木 直美
経済部 シニアアナリスト 鈴木 直美
経済部 シニアアナリスト 舘 美公子
2018年1月の商品市況は世界好況による需要拡大期待、ドル安、インフレ加速観測等を追い風に上昇。バリュエーションが割高になった株式や債券などからファンダメンタルズが良好なエネルギー・金属関連商品への資金循環もあったとみられ、ブレント原油70ドル、銅7,000ドル、金1,300ドルなど次々と節目の水準を突破。Bloomberg商品指数は終値で2015年以来となる90超えを記録した。季節的要因としては、北米や中国の寒波、アルゼンチンの乾燥などの天候要因がエネルギーや穀物価格の上昇に一定程度寄与した。この価格上昇のスピードは、年末時点の想定を上回っている。
金融正常化にいち早く着手した米国は2015年以降、計5回の利上げを実施し、2017年10月からはバランスシート縮小も開始。だが世界同時好況で利上げや緩和縮小に動く国が相次いだ2017年はドル安の年となり、2018年に入り下げが加速している。このことは商品価格の押し上げに大きく寄与したが、ドル以外の通貨建てでの商品価格の上昇幅は限定的であり、値上がりによる需要への影響は抑制されている。
米国経済が好調を維持する中、トランプ政権は2017年末にほぼ30年ぶりの大規模減税を実現する税制改革法を成立。FRBがバランスシートを縮小する中での財政赤字拡大で国債需給が悪化する懸念のほか、ドル安・株高・原油高に減税が重なりインフレ圧力が高まることへの警戒も加わり、これまで伸び悩んでいた米長期金利も上昇ペースを速め、月末には2.7%を突破した。金利急騰は景気や株式市場に逆風となることから、市場の高揚感に水を差す場面も見られた。企業決算でも資源価格上昇が業績改善に寄与する一方、コスト上昇圧力の高まりを指摘する声も聞かれる。低位安定が続いていたVIX指数は月末にかけ幾分上昇の兆しを見せている。景気過熱・資産バブル抑制に向けた利上げ加速の可能性も取り沙汰されるが、景気・相場のオーバーキルにも繋がりかねず、2月に就任するFRB新議長は難しい舵取りを迫られる。
税制改革を成立させたトランプ政権は通商政策に軸足を移している。NAFTAやTPPについては、態度軟化とも取れる発言を行っているが、昨年来、通商拡大法232条(鉄鋼・アルミ輸入による安全保障への影響)、通商法301条(知的財産権侵害)に基づく調査を進めており、向こう数か月中に何らかの発表がされる見込み。1月には輸入洗濯機・太陽光パネルへのセーフガード発動や、為替に関する政府当局者の発言を受け、『貿易戦争』への警戒感も強まっている。2018年の大きなテーマになりそうだ。
以上
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年11月18日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為11月レビューが掲載されました。 - 2024年11月15日(金)
TBSラジオ『週刊・アメリカ大統領選2024(にーまるにーよん)』TBS Podcastに、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が出演しました。 - 2024年11月14日(木)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2024年11月13日(水)
『朝日新聞GLOBE+』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のインタビュー記事が掲載されました。 - 2024年11月8日(金)
NHK World 『Newsline』に当社シニアアナリスト 浅野 貴昭が出演しました。