コモディティ・レポート 2018年3月号 ~株式市場の乱高下に翻弄~
2018年03月06日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
鈴木 直美
2月は、適温相場を支えてきた低金利・低ボラティリティの前提が揺らぎつつあることを痛感する月となった。株式市場は、米国のインフレ・金利上昇加速懸念やVIXショックなどで世界同時株安が発生するなど乱高下。商品市場でも、適温相場が演出したリスクオンムードを追い風に流入していた足の速い資金が流出、株価と連動した不安定な値動きとなった。
原油や工業系メタル価格は、需給改善傾向にあるとはいえ投機資金の流入で年初から過熱気味だったが、プレミアムが剥落したことで、より実態を反映した価格に近づいたといえよう。依然としてインフレヘッジや逆ザヤによるロール益狙いの投機筋には選好されやすいものの、2月の調整局面で高値からの急落懸念が和らいだことで、市場は需給ファンダメンタルズなど商品固有の材料に目が向きやすくなっている。この傾向は、原油・工業系メタルにとって不需要期の第1四半期が過ぎた4月以降さらに顕著になるとみられる。一方、これまで供給過剰が嫌気され軟調一辺倒だった農産品市場では、天候懸念が顕在化したことで価格が反発。年初来6.2%高と商品のなかで最も高いパフォーマンスを記録した。
3月1日には、トランプ米大統領が輸入関税(アルミ10%・鉄鋼製品25%)の導入方針を表明。政権が意図した米国内のアルミ・鉄鋼業界の保護は達成される一方、貿易相手国が報復措置に出る恐れやアルミ・鉄鋼製品価格上昇による投入原価コスト増で米国の自動車・エネルギー・建設産業などは打撃を被るなど全体としてデメリットの方が大きいとみられる。特に中国や欧州は報復措置として米国の輸出シェアの高い米国製品輸入を減らす意向を示しており、商品市場においては農産品(特に大豆・コーン)がトランプ政権の近視眼的な政策の被害者となる可能性が高い。
適温相場に変調が訪れたとはいえ、世界好況による需要拡大期待が継続すれば、商品にとっては引き続き追い風が吹く見通し。3月は、中国・全人代で明らかになる経済政策の方向性や、日米欧での金融政策会合が今後の経済の行方を見極める材料となろう。
以上
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