コモディティ・レポート 2018年4月号 ~米中貿易戦争をにらみながら、ファンダメンタルズに注目~
2018年04月05日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
3月はVIXショック後の相場。引き続き米国経済指標は堅調で、FOMCでは予定通り1.75%へ利上げ、年内利上げ回数も4回となる可能性を織り込みつつある。インフレ、金利上昇加速懸念は株式や商品相場を重くする要因ではあるものの、市場はトランプ大統領が仕掛ける保護主義政策の行方に注目。過剰流動性と、低ボラティリティによる過剰なリスクはもはや取れなくはなっているものの、打ち出す政策を交渉のカードに水面下で駆け引きをしている段階で本格的なリスクオフとまではいかず、ニュースによりリスクオン/オフの議論となり振られやすい展開となった。
トランプ大統領により輸入関税の導入が決定されたが、EUなどが当面対象外、韓国は輸出数量を順守することで期限を設けず対象外にされた。アルミ・鉄鋼業界の保護よりも、実態は二国間交渉のカードとしての意味合いが強くなっている。対中国では301条関連で緊張が高まっている。制裁対象には双方に痛手となる大豆なども含まれ、水面下で交渉が継続するも貿易戦争突入のリスクはつきまとう。
上記を受けて金などが質への逃避の的とされる一方、産業メタルは中国の需要低調に対する懸念などから軟調な展開。一方、エネルギーは生産調整などファンダメンタルズが意識される中、トランプ政権の人事刷新で対イラン・対北朝鮮強硬派が任命されたことが地政学的リスクを再燃させ、ブレント原油が一時$70/バレルを回復するなどしっかりした展開となった。農産品も需給要因が主要な価格変動要因になるなど商品それぞれの動きを見せている。
米国の企業業績は引き続き堅調で、商品にとっては追い風だが、トランプ政策の「効果」が数字に表れてくるのはもう少し先か。商品市場はそれぞれの需給ファンダメンタルズが主要テーマとなってきているものの、米国中間選挙まではトランプ大統領の強気の政策は続くとみられ政治情勢をにらみながら一喜一憂の相場展開が続きそうだ。
以上
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