コモディティ・レポート 2018年5月号 ~ファンダメンタルズの背景にある地政学~
2018年05月01日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
4月の商品市場は、個別のファンダメンタルズそのものよりも、その背景にある地政学が意識されたといってもいいのではないか。地政学と言っても、その多くは米国、(もっと言えば)トランプ大統領の発言に左右される形で、米中貿易戦争、対ロシア追加制裁、イランの核合意破棄の可能性、OPECへの発言、対北朝鮮政策、TPP復帰示唆などが話題となった。特に、アルミ大手・露Rusalへの制裁動向はアルミ価格の暴騰・暴落を招き、OPECに対する発言では原油価格に影響を与えるなどトランプ相場の色合いが強かったといえる。
また市場全体では、イールドカーブのフラット化と長期金利3%突破が注目を集めた。短期的には米国経済は上向きで、減税などを背景に企業業績も好調を続ける中、米FRBは金融引き締めを継続している。また、短期債利回り上昇は米政府の発行国債のデュレーション短期化の影響もある。こうした中、長期金利にも上昇圧力がかかったが、金利上昇は資金繰りの悪化から中長期的なリスク要因と受け止められ、金利のイールドカーブは中期以降右肩下がりになっている。このことは、市場が長期的にみて景気減速を織り込み始めたとも捉えられる。米国株が1月高値を超えられずにいるのも、既に好業績は株価に織り込み済みである故の可能性が高く、商品価格や金利の上昇、関税に伴うコスト高を先行きの業績悪化リスクとして挙げる企業が多く見られる。これらのことは商品市場には弱気となるが、足元では地政学要因が大きく、金利の影響は限定的となっている。
一方、地政学の動きとも関連するが、年初から為替相場が大きく動いている。特にトルコリラ、ロシアルーブル、アルゼンチンペソなどの米ドルに対する減価が大きく、原油や農産品など減価された通貨の輸出競争力に影響を与えている。
5月はイラン核制裁復活の判断期限到来や、米国の北朝鮮との会談の可能性など政治イベントが目白押し。米の通商政策に関する進展も含めて注目される。
以上
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