コモディティ・レポート 2018年7月・8月合併号 ~米通商政策への懸念深まる~
2018年07月19日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
6月に入ると米国の通商政策への懸念があらゆる商品に影を落とし始めた。対中国においては、一旦は交渉により追加関税は阻止できるとの楽観論が強まっていたものの、トランプ大統領が強硬な姿勢を崩さずに貿易戦争が現実味を強めると、農産物や産業金属など直接的に影響のある商品を中心に下げ足を早め、多くの商品が売られる展開となった。
米国では引き続き堅調な経済指標や企業業績を背景にドルが強含む展開が継続。ユーロも持ち直しているため、ドル指数こそ高値を更新していないものの、特に対新興国通貨に対してのドル高が目立つ。世界的な資金フローもリスクオフで、新興国の債券や株式から資金の引き揚げが加速し、また商品ファンドからも資金が流出。CFTCのポジションをみてもファンド勢がロングポジションを落としているのは明らかで、商品市況下落の大きな要因となっている。一方で、引き揚げられた資金は米国内に投資する動き。米長期金利は2.8%台まで低下するも米国債への需要も減退しなかった。これまでの量的緩和政策からの金利正常化プロセスが続く見通しであり、今後も資金還流は継続する可能性がある。
現時点では強めの経済指標から、FRBは緩やかな利上げを継続する方針であり、米経済の強さは継続するとみる向きが多い。IMFも16日に発表した世界経済見通しにおいて米国のGDPなどを据え置いた。しかし、拡大する貿易戦争が実体経済に与えるリスクへの懸念を表明しており不透明感は強まってきている。
7月以降も引き続き、潜在的な地政学要因は多い。米国の通商政策に基づく対立が中国だけでなくグローバルに拡大し世界経済を減速させるリスクが懸念される一方、選挙に前後し不透明感を抱える国も多い。商品市場は短期的に大きく売り込まれたものも多く、テクニカル上は反発する動きも出やすくはなるが、材料はなかなか出尽くしとはならず、不透明感をかかえたまま予断の許さない状況が継続するとみる。
以上
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