コモディティ・レポート 2018年9月号 ~ファンダメンタルズへ回帰も、資金流出続く~

コモディティ・レポート

2018年09月06日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓

 

 

 6月、7月の商品市場は、全面的な資金流出により大きく値を下げていたが、8月に入ると再び個々のファンダメンタルズに基づく動きに回帰。但し、エネルギーを除いては、ファンドポジションがショートに傾く他、ETFからの資金流出も観測され、軟調な地合いが継続している。

 

 

主要商品年初来騰落率(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

商品セクター別[S&P GSCI]年初来推移(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 米中貿易摩擦については、交渉再開も大きな進展がみられず、相場全体を重くする要因になっている。トランプ米政権も、11月の中間選挙が迫る中、強硬的な姿勢を継続。農業関連への120億ドルの支援プログラムを打ち出すなど、長期化の様相をみせている。中国が一部軟化の姿勢を示すも、譲歩余地は限られ、当面は膠着状態継続か。

 

 

 米国経済が引き続き堅調さを維持し、株や債券へも継続的な資金流入が続いているのに対し、新興国は都度、売り込まれる主役が変わりながらも、全体的な弱さが続く二極化の様相。米ドルの強さも継続しており、ドルインデックスが高値を更新したこともドル建ての商品市況へのマイナス要因になっている。中でも新興国のアルゼンチン、トルコ、ブラジル、南アフリカやロシアなどの通貨安が目を引く。農産品や貴金属の主産地にもなっている国も多く、大幅な通貨安がコモディティにも波及し、弱さを助長する展開。トルコは、コモディティの産地ではないものの欧州を中心にトルコへの債権を抱える国が多くあり、財政が破たんすればグローバル市場への波及は避けられない。

 

 

通貨別騰落率(2018年初来)(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 9月以降も引き続き、選挙や制裁など地政学要因は多い。米国の強硬な通商政策による各国との対立拡大や、新興国の政治リスクも懸念されるところ。米国経済については「調整が必須」としていた弱気派もいったんは後退しているが、米国の金融引き締めは、新興国からの資金流出を今後も拡大させ、世界的な減速につながる可能性もある。現在は落ち着きをみせているVIX指数も「好調な」米国株だけを反映したボラティリティであり、通貨安などを契機に経済危機となり、危機が蔓延するリスクも頭に入れておきたい。

 

 

アルゼンチンペソ トルコリラ ユーロチャート(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

S&P500株価指数と上海総合株価指数とGSCI(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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