コモディティ・レポート 2018年10月号 ~エネルギーの強さ際立つも、不確実性は高い~

コモディティ・レポート

2018年10月04日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓

 

 

 9月は米国経済が引き続き堅調な一方、これまで資金が流出していた新興国市場への資金流入がみられるなど、これまでの流れの逆流がみられた。米国は金利正常化プロセスを順調に進め、利上げを実施するとともに、株式市場も高値を更新するなど堅調さを維持。これまで株も債券も為替も弱さが目立っていた新興国は総じて買われ、上海総合指数やトルコリラ、ブラジルレアル、ロシアルーブルなど下落幅の大きかったものへの逆流の動きがみられ市場ではリスクオフからリスクオンに転換との声も聞かれた。しかし、これまで新興国市場同様資金流出していた商品市場については戻りの力が弱く、ETFなどの動向をみても投資家が離れたままでリスクオフのまま。商品の中でもセクターごとに動きが異なり、エネルギーが大きく買われる一方、貴金属や農産物への資金注入は乏しく、狭いレンジでの動きに終始した。

 

主要原産国通貨推移(2018/5/31=100)(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

通貨別騰落率(2018年初来)(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 米国通商政策については、11月の中間選挙が迫る中、トランプ政権も強硬な姿勢を継続。NAFTA再交渉の合意は農産物市場では好意的に受け取られたものの、自動車輸出への上限導入など保護主義的な側面も強く、貴金属や産業金属への負の影響が懸念される。また、米中関係においては、依然関税の掛け合い合戦が継続中で、解決の道筋が見えてこず、不確実性を高めている。

 

 

 今後の商品市場は、引き続き米国の通商政策や新興国市場動向、中国の経済成長などの不確実性が高いことから、方向感の出づらい状況。特に米中の貿易摩擦は、中国の景気減速を招き産業金属や農産物を中心に多くの商品へ大きな負の影響を及ぼすことから予断を許さない状態が続く。但し、エネルギーについては別物で、総じて強気一色。これまではドル高、商品の主要原産国通貨安の流れから、商品価格に下方バイアスがかかりやすい状態が続いていた。その流れは9月に一服したが、米国金利上昇に伴い再びドルが強含めば、原産国通貨安を通じて商品市場に再び下方バイアスがかかりやすくなるため、注視したい。

 

 

 

主要商品年初来騰落率(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

商品セクター別[S&P GSCI]年初来推移(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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