コモディティ・レポート 2018年11月号 ~リスクオフも不透明感は消えず~
2018年11月06日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
10月は、2018年2月のVIXショック後から続いていた米国株の強気相場が終焉し、先進国・新興国ともに大きく株が売り込まれるとともに、リスクオフが意識される月となった。米国経済は引き続き堅調な一方で、サウジアラビアの著名ジャーナリスト殺害におけるサウジ政府関与疑惑や、イタリアの債務問題、米中貿易摩擦継続、対イラン制裁再開、Brexitのハードランディングなどいくつもの政治問題が顕在化すると、市況は一気にリスクオフに傾倒。これまで商品市場を牽引してきたエネルギー商品も、軒並み1か月で約10%の下落をみせるなど大きく売り込まれた。非鉄金属が下げ幅を拡大させ年初来のパフォーマンスを悪化させた一方、ようやく「安全資産」として見直され資金流入のあった貴金属は上昇、農産品は一部商品を除いて軟調な展開となった。
ブラジル、アルゼンチンやトルコなど、これまで株や為替が大きく売り込まれていた国においては、個別事情により巻き戻しのフローが入るも、リスクオフの観点からドルへの回帰がみられ、ドルインデックスは年初来高値更新。一方、ブラジルレアルなど増価がみられた国を原産国とする砂糖やコーヒーなどの商品については、これまでのショートカバーも加わり、大きく反転をみせた。一方、ドル高はドル建て商品価格の下押し圧力としても商品市場を重くしていた。
米国通商政策については、11月の中間選挙を控えて、強硬な姿勢を継続も、NAFTA再交渉の合意や中国との交渉の報道が伝わるなど、進展する可能性もでてきているが、保護貿易が経済全体に波及し、不況に突入する可能性も指摘されるなど注意が必要。
今後の商品市場は、引き続き米国の通商政策や新興国の市場動向、中国の経済成長や、中東の地政学問題など不確実性の高まりを反映した不安定推移になりやすく、上記による経済全体への波及効果が確認されれば、リスクオフとして一段の下押しも考えられる。
以上
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