緊迫するロシア関連情勢

2022年10月05日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

出典: Wikimedia commons(Press Service of the President of the Republic of Azerbaijan)https://president.az/en/articles/view/57224

 ロシアをめぐる動きが急になってきました。転換点になったと感じられるのが9月中旬にウズベキスタンで開催された上海協力機構の首脳会議。この会議自体というよりは、その際に集まったメンバー国(中国、ロシア、インド、パキスタンと中央アジア4か国)およびオブザーバー国(イランなど)、対話パートナー国(トルコ、カンボジアなど)の首脳間のやりとりが重要だったようです。

 

 中露首脳会談では、ロシア側が中国が示してきていた懸念への配慮に言及する一方、中国側からはウクライナへの言及がなく、両国間の共同宣言も出ず。2月の首脳会談の時と比較すると両国に隔たりがあり、特に中国側が距離を取ろうとしたことが感じられました。イランは対米でのロシアとの協調の姿勢でしたが、インドのモディ首相は、「今は戦争の時代ではない」とロシアの行動に対する懸念を率直に表明しました。

 

 これで孤立感が増したのか、この会議の直後にロシアはウクライナ4州での住民投票を行うことを決め、9月下旬にそれを断行。予備役の動員も命じました。さらに住民投票の結果を受けて9月30日には4州の併合を宣言し、同時にウクライナに対して停戦を要求。これ以上の領土拡大が難しいとみて、ここで領土確定をしつつ、戦争状態を終結させて中印などの理解を得ようとしたのでしょうか。

 

 ウクライナ側は停戦要求を拒否するとともに、プーチン大統領以外の大統領とでなければ交渉しないと明言。さらに、10月1日には、東部の要衝リマンを奪還したのに続き、多くの都市で反攻に出て勢力を戻しています。ロシア国内でも国を脱出する人が国境に殺到し、政権や軍への批判の声も大きくなっています。一方で欧州に脱出するロシア人に対して、欧州は、「動員逃れは戦争反対を意味しない」としてビザの規制を強化。ウクライナのケースと同様に、欧州内のロシア人を守るとの名目で、ロシアが何か仕掛けてくるのを警戒しているのかもしれませんが、普段人権保護を声高に叫んでいる欧州人だけに、ご都合主義のようにも見えてしまいます。

 

 長期戦なら有利ということでもなさそうになってきたロシア。あらゆる手段を使うとの姿勢が単なる威嚇であってほしいところです。事態が緊迫の度を増していることは間違いなさそうです。

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