アイデンティティ

2023年06月27日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 6月初めに出張でNYを訪れました。日曜日の日中に到着すると、5番街などでデモが行われ、大変な賑わいと混雑でした。繰り広げられていたのは、イスラエルの旗を掲げたユダヤ人ソサエティのパレード、フィリピンに関係のある人たちのお祝い、そして、LGBTの人たちのお祭りでした。いずれも大変な熱気でした。LGBTといえば、フロリダ州で性的マイノリティをめぐる教育を学校で一部禁止にする州法に、ディズニーが反発し、今度は、知事がディズニーに対する税制優遇を取消すといった争いが起きています。これも同じフロリダ州ですが、年金基金のファンドマネージャーによるESGの考慮を認めない決議案が可決され、ESGの重要性を主張するBlackRockが運用する20億ドルの資産を昨年中に売却するといった動きがありました。いずれも共和党の保守派やその支持者の人たちの主張です。

 

 多くの日本人の感覚からすると、LGBTも認めた方がいいでしょう、ESGは大切ですよね、となりがちですが、米国ではだいぶ様子が違います。多様性に富んだ社会であるだけに、それぞれが自らの居場所や存在感を明確にするためにその主張を声を大にして言い、それを否定する人たちも本気でぶつかり合う、というのが当然のようです。どちらがいい、悪い、理屈として美しい、ではなく、それぞれがアイデンティティの確保に必死なのを感じます。日本でもLGBT理解増進法が6月23日に施行され、一部ではそれに否定的な議員連盟などの活動も行われているようですが、米国とはそのうねりの大きさ、国民的な議論や関心、活動の熱量が違うように思います。自分のアイデンティティを確保し、必死に主張しなければいけない社会が住みやすいのかどうかはわかりませんが、そんな社会でどのようにダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)が成り立っていくのか、いろいろ学ぶべきところがあるように感じました。

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