アフリカ

2023年09月15日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 

 この夏から秋にかけて、アフリカに関するさまざまな話題がありました。日本にとって明るい話題となったバスケットボールのW杯では、日本チームが来年のパリ五輪への出場権獲得を決めた試合の相手が、カーボベルデでした。普段ほとんど耳にすることのないこの国、西アフリカの西の沖合に浮かぶいくつかの島からなる国で、1975年にポルトガルから独立しました。人口60万人弱で最貧国の一つですが、W杯に出てくるのですから大したものです。

 

 7月には、西アフリカのニジェールでクーデターが発生しました。その際には、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の対応が注目されましたが、カーボベルデもECOWASの一角を占めています。加盟国は15か国ですが、現在では、ニジェールを含め、4か国がクーデターにより資格停止になっています。そのニジェールも、日本ではあまり取り上げられませんが、EUにとっては一定の存在感のある国です。ウラン生産量は世界で7位、2021年にはEUへのウランの供給量の24%がニジェール産でした。このクーデターで印象的だったのは、旧宗主国フランスへの反感をあらわにし、ロシアの旗を掲げる人たちの映像でした。ニジェールに続いてクーデターがあったのがガボン。こちらは、ECOWAS地域の少し南にあり、ECOWAS加盟国ではないですが、製鉄や電池に使われるマンガンの生産量は南アフリカ(南ア)に次いで世界2位です。

 

 そして8月下旬、南アでBRICS首脳会議が開催されました。アフリカのエジプト、エチオピアを含め、6か国の新規加盟が決まり、また南ア開催ということで、アフリカからは15か国以上の参加となりました。旧宗主国を含む西側諸国に対する不信感の表れともいえるような動きです。新しいBRICS加盟国のGDPは、G7の3分の2を超える規模となり、上海協力機構とともにグローバルサウスの軸となりそうです。今回アフリカの諸国がBRICS首脳会議に参加したのは、南ア開催という理由があったわけですが、今後彼らがどのように活動するのか注目されます。欧米もにわかに支援の姿勢を強めています。

 

 9月に入ってからは、モロッコでの地震、リビアでの暴風雨と、立て続けに大きな天災がアフリカを襲いました。インフラがぜい弱という面もあるのか、いずれも4桁にのぼる犠牲者を出す大災害となってしまいました。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた皆さまが一日も早く生活を再建されることを祈念します。

 

 50を超える国を擁するアフリカ。各国の事情や動きを十分に理解しながら、協力し、サポートし、彼らのためになるビジネスをそれぞれの企業・政府関連機関が持つ強みを発揮しながら進めることが重要と感じます。

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