リニア
3月29日に、JR東海がリニア中央新幹線の品川~名古屋間の開業を2027年から延期することを発表しました。開業は、2034年以降になるとのことです。その一つの要因となったのは静岡県内での工事が順調に進まないことですが、反対の急先鋒であった川勝静岡県知事は4月1日の入庁式での職業差別発言をきっかけに翌日辞任を表明しました。それでも、品川~名古屋間の開業が2034年以降というのは変わらないようです。
リニアの研究が開始されたのは1962年ですから、私が生まれた年です。強力な磁石で重い車体を浮かせて車輪とレールの摩擦による抵抗をなくすことで超高速運転が可能になるわけですが、上海で既に走っているリニアとは少し方式が違い、より速い時速500キロメートルを超える運転が可能だそうです。電気抵抗をほぼゼロにして、強力な磁力を発生させながら、熱を発生させないことでエネルギーロスもない状態を実現する鍵になるのは超電導ですが、リニア中央新幹線の場合は、その材料としてニオブチタン合金が使われます。液体ヘリウムをマイナス269度にしてそれを冷やすことで超電導状態を実現します。夢のような技術の粋が詰まったリニア、鉄オタでなくても、見てみたい、一度は乗ってみたいという人も多いことでしょう。
総工費は名古屋までで約7兆円と試算されています。東海道山陽新幹線の利用者が一日平均66万人、すなわち年間2億人強という規模です。これは品川~名古屋に限ったものではないので単純な割り算はできませんが、この総工費だけ考えると、意外とお手頃な価格でも数年でカバーできる計算になりそうです。実際に2010年時点でのJR東海の試算では、のぞみの料金に1,000円弱の上乗せと想定されていました。では、どれだけ速いのかと言えば、品川から名古屋まで40分、大阪まで67分と発表されています。少しでも早くという人もいれば、のぞみで名古屋まで1時間半、大阪まで2時間20分くらいで到着できれば十分だし、スマホを見たりweb会議をしたり、お弁当を食べたりするのにちょうどよい、という人もいるでしょう。大阪まで飛行機でCO2を排出しながらいくのをやめて、リニアにしようという考えもあるでしょう。開発や運行による自然へのマイナスのインパクトや振動などが気になる人もいるでしょう。もしマイナスのインパクトがあるなら、料金を上乗せしてその分でネイチャーポジティブの投資をするということもできそうです。開業が延期になることで生まれた時間、乗る側がいろいろと思いを巡らせたり、外国人観光客も含めて乗る人の効用や感じる価値に応じた価格設定を検討したり、負の外部効果があり得るのならそれを減殺する方策を考えたり、有効に使いたいものです。
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