きつねとたぬき?

2024年05月21日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 5月上旬に中国の習近平国家主席が欧州を訪問しました。米国の対中姿勢がさらに厳しくなる中、欧州との関係の強化で西側を切り崩せたらとの思いが習主席にはあったと思われます。その前に北京を訪問したドイツのショルツ首相は、国内の政治・経済両面での苦悩もあり、中国に救いを求めたいということなのか、ある程度柔軟な姿勢だったようで、その流れをさらに確固たるものにしたいとの期待もあったことでしょう。パリでは、習主席は、マクロン大統領とフォンデアライエン欧州委員会委員長と面談。会談後には、欧州委員長が、中国からのEVなど、過剰な工業製品の生産に関する厳しい姿勢と対抗措置の可能性に言及するなど、厳しい議論があったことがうかがわれます。欧州委員会は、例えば公正な公共調達を阻害する補助金の調査を行っており、5月13日には中国企業がルーマニアの太陽光施設に関する入札から撤退したと発表しています。主催者的な立場であったマクロン大統領としては、ドイツのショルツ首相を同席させることはかなわず、欧州一体の演出はできなかったものの、厳しい欧州委員会との関係では少し「優しい人」を演じつつ、欧州全体で強硬という姿勢は示したようです。ただ、中仏間の共同声明では、イスラエルのラファ侵攻への反対を表明しています。また、中国側は目前に迫るパリオリンピックの成功を重視しているフランスに対して、ウクライナ戦争のオリンピック期間の休戦を提案するという駆け引きもしています。実際に5月16日のプーチン大統領の中国訪問に際しては、ウクライナに関する政治的解決の必要性で合意しており、休戦への含みを残して、ロシアへの影響力を誇示した感があります。ゼレンスキー大統領は拒否の姿勢を5月17日に示していますが。

 

 習主席は、パリの後にハンガリーを訪問し、歓待を受けました。ロシア寄りの傾向があるハンガリー。中国にとってもイタリアが脱退した一帯一路との関係で重要な国であるとともに、対中政策において欧州を分断するのに格好の相手国であり、欧州に楔を打ち込んだ形です。

 

 真剣な外交を通じて、腹の探り合い、駆け引きが続く中国と欧州。さらに米国の存在が状況を複雑にします。5月14日にEVなどの関税を大幅に引き上げた米国と同様の措置を、今後欧州委員会が採るとの見方もあります。一方、トランプ氏が大統領になると、米欧関係が厳しいものになる分、中欧が接近するのではともみられています。

 

 「中国と欧州」とかけて何と解く?

 「カップ麺」

 その心は?

 「赤いきつねと緑のたぬき」

 ちょっと古くてわからない人も多いかもしれませんが、お後がよろしいようで。

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