苦悩する首脳によるG7サミット
社長コラム
2024年06月18日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之
6月13~14日にイタリア南部のファサーノでG7首脳会議が開催され、凍結したロシアの資産を活用したウクライナへの支援、ガザの即時停戦、中国の過剰生産への懸念表明などを盛り込んだ首脳声明が採択されて閉幕しました。大事な合意なのですが、気になるのは、7か国の首脳とEUの2首脳の多くが今抱えている苦しい状況です。米国のバイデン大統領が11月の選挙で当選できるのかどうか、健康は大丈夫なのか、何とも不安なところであるのは、衆目の一致するところでしょう。日本でも内閣支持率が低迷しており、直近では6月7~10日の時事通信社の調査で16.4%。自民党が政権に復帰した2012年以降で最低の数字で、9月の総裁選がどうなるのか、その後の総選挙の結果がどうなるのか、不透明な状況です。
欧州の各国も波乱含みです。フランスのマクロン大統領は、6月上旬の欧州議会選挙においてルペン氏が率いる極右政党の国民連合にフランス国内で大敗したことを受けて下院を解散しました。6月30日と7月7日の選挙の結果が直接大統領を変えるわけではなくても、国民連合の首相が誕生し、政権運営が混乱する可能性が出てきています。英国も5月後半にスーナク首相が議会を解散し、7月4日に総選挙を実施すると発表。与党保守党の劣勢が伝えられ、現時点では、野党労働党のスターマー党首への支持がスーナク首相(保守党党首)への支持を上回っています。選挙で保守党が過半数を失う可能性は非常に高く、スーナク首相の続投は厳しそうです。ドイツでも、3党連立で構成する与党にとって欧州議会選挙は厳しい結果となりました。ショルツ首相は総選挙を求めることはしないとしていますが、任期は2025年秋まで。来年のG7首脳会議の時点では厳しい状況であることが予想されます。
カナダのトルドー首相は、自由党と野党の新民主党との合意により、2025年6月までの政権存続が合意されていますが、来年、自国が議長国を務めるG7サミットの頃に重要な時期を迎えることになります。最も安定していると思われるのは、今回ホスト国となったイタリアのメローニ首相。自らが率いる右派の「イタリアの同胞」が欧州議会選挙では国内で第一党となり、国内の基盤も欧州における影響力も拡大しつつあります。欧州委員長と欧州理事会の議長も間もなく任期を迎え、来年はともに交代している可能性もあります。
果たして来年のG7首脳会議のときに、今年集まった9人のうち何人が残っているのか、確固たる政権基盤を維持しているのか。会議の結果にも注目していましたが、イタリアに集まった各国の首脳たちの苦悩も気になるG7サミットでした。
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