選挙あれこれ

2024年07月23日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 6月から7月にかけて行われた世界各地での選挙は、予想外のことも多くありました。欧州議会では右派が伸長しましたが、中道勢力も予想以上に踏ん張り、議席数の変化は比較的軽微なものとなりました。フォンデアライエン委員長も先週、無事に欧州議会において再任されましたが、全般的に右派が台頭したことで、今後の気候変動関連の法令の実施においては、一定の遅れや細部の変更が生じる可能性も否定できません。英国では労働党が、歴史的とも言える圧倒的な勝利をおさめ14年ぶりに政権を奪還。スターマー氏が首相に選出されました。こちらは、前政権が延期した内燃機関自動車の販売の停止期限を再び、元の2030年に戻しています。フランスでは2回の週末で選挙が行われましたが、1回目に最多得票となった極右の国民連合が、決選投票では一転して第3党になるという驚きの展開でした。左派と中道が極右政権の阻止という点で一致して候補者の調整(絞り込み)を数日の間に行ったことがその原因です。結果的に過半数を獲得した勢力がないため、連立か少数与党かという状況が不可避となり、オリンピックの開幕を間近に控えながら、首相選びに向けてまだまだ波乱含みです。

 

 大統領の死亡を受けたイランの大統領選挙では、候補者と認められた6人中保守派が5人を占めていたにもかかわらず、結果的に唯一の改革派候補のペゼシュキアン氏が勝利。これも予想外でした。保守派に批判的な人たちのガス抜きが一定程度できたということなのか、そんなつもりではなかったのか。最高指導者の感想を聞いてみたいところです。もっとも最高指導者が国の大きな方向性を決定する点は変わらないので、体制が大きく変わることはないと思われますが。

 

 日本でも7月初めに都知事選挙が行われ、小池さんが再選を果たしました。蓮舫さんはまさかの3位。2位に入った石丸氏はネットを通じて予想をはるかに上回る支持を獲得しました。選挙後、一気に注目度が上がり、全国的にメディアへの露出が増え、実際にさまざまな相手とやり取りする姿が報じられると、選挙中とは異なる評価も出てきており、ネット選挙のインパクトを含めていろいろと考えさせられます。

 

 11月の大統領選挙に向けて大きく動いている米国。暗殺未遂で一気に求心力を高めたトランプ氏が、その勢いで自身に考えの近いヴァンス氏を副大統領候補に指名。暗殺未遂事件で一時的に少し関心がそれたものの、討論会での失態に加えコロナ罹患の追い打ちもあって窮地に追い込まれたバイデン大統領は、ついに撤退を決断しハリス氏を大統領候補に指名しました。ハリス氏が正式に指名されて奮闘するのか、副大統領候補がどうなるのか。トランプ氏優勢が変わらないのか、ヴァンス氏の指名がどう影響するのか。まだ100日ほどあるだけに予断を許しません。

 

 民主主義の最大のイベントである選挙。十分な情報に基づいた賢い民意による選択なのか、首をかしげたくなることもありますが、それが現在の民主主義の実情なのでしょう。

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