人の力を使う
9月に開催された大相撲九州場所では、大の里関が2度目の優勝を飾り、来場所から大関に昇進することになりました。私も子どもの頃よく砂場などで仲間と相撲をしました。そんなに大きい方ではありませんでしたし、腕力がとび抜けて強いということもありませんでしたが、ちょっとした工夫で意外と勝ってました。大相撲でも小兵が大男を倒して大いに沸くことがありますが、それを可能にするポイントは、相手がいつ、どこに力を入れて、どのように動くかを的確に見抜いて、それを利用することにあります。それがうまくいくと、まともにぶつかったらびくともしないような相手が小兵に動かされたり、倒されたりするものです。特に大きい相手であればあるほど、大きな船のように一度ある方向に動き出すと簡単に止まったり、向きを変えたりすることができないので、その力を自分のものとして使ってしまえばいいということです。柔道のような格闘技もよく似ています。
この、相手の力を使う、タイミングを見計らう、というのは、スポーツだけでなく、仕事でも日常生活でもいろいろな場面で役に立ちます。自分の力だけでできることはそんなに多いものでもありませんから。組織の中でも、上司の力を借りたり、部下に助けてもらったり、よくあることですが、そういう周囲の人たちの力を見極めて、的確な場面で使わせてもらう。相手が何か手を出したいなと思えるようなシチュエーションを作って、いいタイミングで水を向けてみる。自分も助かるし相手も気持ちよく力を貸してくれる。ほかの組織との交渉でも、いつ、どんな状況でカードを切るかが大事なものです。相手がどんな状況にあり、何を考えているのかをよく分析し、いつ、どのように動いてきそうかを予測しておければ、効果的な仕掛けが可能になります。
新しいことを考えて実践するときにも似たようなことがあります。面白そうだなと思えるようなアイディアが浮かんだらちょっと貯めておく。ある分野で何かソリューションが必要、という話題になったときに、貯めておいたアイディアの中から関連するものを披露してみると、「渡りに船」的に食いついてくる人が多い。そういうことと関係なく思いついたときに、やみくもにそれを誰かに表明してもなかなか共感が得られなくても、タイミングを見計らって、相手の力を使ってしまうと、成功確率が急速に高まるものです。
スポーツに、仕事に、生活に。ちょっとしたヒントだと思って、自分以外の人の力をタイミングよく使って、難しいと思うことでも乗り越えましょう。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年11月18日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為11月レビューが掲載されました。 - 2024年11月15日(金)
TBSラジオ『週刊・アメリカ大統領選2024(にーまるにーよん)』TBS Podcastに、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が出演しました。 - 2024年11月14日(木)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2024年11月13日(水)
『朝日新聞GLOBE+』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のインタビュー記事が掲載されました。 - 2024年11月8日(金)
NHK World 『Newsline』に当社シニアアナリスト 浅野 貴昭が出演しました。