人の力を使う

社長コラム

2024年10月02日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 

 9月に開催された大相撲九州場所では、大の里関が2度目の優勝を飾り、来場所から大関に昇進することになりました。私も子どもの頃よく砂場などで仲間と相撲をしました。そんなに大きい方ではありませんでしたし、腕力がとび抜けて強いということもありませんでしたが、ちょっとした工夫で意外と勝ってました。大相撲でも小兵が大男を倒して大いに沸くことがありますが、それを可能にするポイントは、相手がいつ、どこに力を入れて、どのように動くかを的確に見抜いて、それを利用することにあります。それがうまくいくと、まともにぶつかったらびくともしないような相手が小兵に動かされたり、倒されたりするものです。特に大きい相手であればあるほど、大きな船のように一度ある方向に動き出すと簡単に止まったり、向きを変えたりすることができないので、その力を自分のものとして使ってしまえばいいということです。柔道のような格闘技もよく似ています。

 

 この、相手の力を使う、タイミングを見計らう、というのは、スポーツだけでなく、仕事でも日常生活でもいろいろな場面で役に立ちます。自分の力だけでできることはそんなに多いものでもありませんから。組織の中でも、上司の力を借りたり、部下に助けてもらったり、よくあることですが、そういう周囲の人たちの力を見極めて、的確な場面で使わせてもらう。相手が何か手を出したいなと思えるようなシチュエーションを作って、いいタイミングで水を向けてみる。自分も助かるし相手も気持ちよく力を貸してくれる。ほかの組織との交渉でも、いつ、どんな状況でカードを切るかが大事なものです。相手がどんな状況にあり、何を考えているのかをよく分析し、いつ、どのように動いてきそうかを予測しておければ、効果的な仕掛けが可能になります。

 

 新しいことを考えて実践するときにも似たようなことがあります。面白そうだなと思えるようなアイディアが浮かんだらちょっと貯めておく。ある分野で何かソリューションが必要、という話題になったときに、貯めておいたアイディアの中から関連するものを披露してみると、「渡りに船」的に食いついてくる人が多い。そういうことと関係なく思いついたときに、やみくもにそれを誰かに表明してもなかなか共感が得られなくても、タイミングを見計らって、相手の力を使ってしまうと、成功確率が急速に高まるものです。

 

 スポーツに、仕事に、生活に。ちょっとしたヒントだと思って、自分以外の人の力をタイミングよく使って、難しいと思うことでも乗り越えましょう。

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