正論
2024年11月22日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之
大接戦の予想に反し、意外な大差でトランプ氏が勝利した米国大統領選挙。激戦7州のすべてでトランプ氏が勝利。トランプ氏の選挙人獲得数は、過半数(270人)を大きく超えて312人となり、全米での得票もトランプ氏がハリス氏を上回りました。また、上院でも過半数の53議席、下院でも過半数(218議席)を確保し、共和党がホワイトハウス、上院、下院すべてを支配することになりました。米国民は何を望んだのかわかりませんが、これが民主主義の現実です。どういう正論が通ったのでしょうか?
注目されることの一つは、トランプ大統領下でのロシア・ウクライナの戦争の行方。トランプ氏は、2023年5月に「自分が大統領であれば、戦争は24時間以内に終結できる」と述べており、ウクライナ停戦協議に意欲を示しています。もちろん容易なことではないでしょうが、ちょうど米国大統領選挙の結果が出た11月6日にモスクワでお目にかかった人たちからは、トランプ氏の勝利を歓迎する声がありました。また、翌7日には、公式の発表はないものの、プーチン大統領とトランプ氏がさっそく電話で話をしたとも報じられています。
直接的な将来のリスクも気になる欧州の立場も複雑です。ウクライナ軍がなかなか戦果を挙げられていないこと、時間が経過するほど状況は厳しくなる可能性があること、トランプ政権下で米国からの支援が減るのであれば、経済の停滞の中でますます支援の負担が重くなると考えられることなどから、正直に言えば戦争の終結を望む国も多くあるでしょう。しかし、それを言い出すわけにはいかない。また、停戦が望ましいにしても、どういう条件になるか、特に、現在ロシアが自らの領土と主張している4州をどうするかは問題です。ゼレンスキー大統領はどうしても譲れないと言っている部分ですが。
日本にしてみると戦争の終結は望ましい一方、領土の問題には強い関心があるところです。現在の支配地をベースにした解決になると、力による国境の変更を西側が認めたことになり、それが台湾問題に与える影響が懸念されるからです。それも正論。一方で戦争は一刻も早く止めるべき、というのも正論。それらが両立する合意になればよいのですが、仮に前者の正論が成り立たない合意になりそうなときに、日本の外交力が試されることになりそうです。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2024年12月13日(金)
日経CNBC『World Watch』に当社シニアアナリスト 石井 順也が出演しました。 - 2024年12月10日(火)
金融ファクシミリ新聞・GM版に、当社シニアエコノミスト 片白 恵理子が寄稿しました。 - 2024年12月6日(金)
外務省発行『外交』Vol.88に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2024年12月3日(火)
『日本経済新聞(夕刊)』に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2024年11月28日(木)
ラジオNIKKEI第1『マーケットプレス』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が出演しました。