グラフで見るASEAN経済の魅力(2016年9月)
2016年09月21日
住友商事グローバルリサーチ 経済部大西 貴也
2015年の日本の対外直接投資額において、ASEANは中国の2.2倍であり、近年日本からASEAN諸国への進出企業数(特に非製造業)は増加の一途を辿っている。また、世銀やIMFなどの国際機関による経済見通しではASEANが世界で最も成長が期待できる地域となっている。特に足元ではフィリピンの勢いが強く直近四半期の経済成長率は世界でも最速の7%で、インドネシアやタイにも復調の兆しが見られる。以下、ASEAN経済の魅力を事業環境、規模、経済成長率、貿易の各観点から見ていきたい。
◆事業環境
ASEANは中国と比べ、事業環境において優位に立っている。その主な理由は、低賃金と生産年齢人口の増加にある。ASEAN諸国の賃金は中国と比べ割安で、一番高いタイでさえ中国の8割、一番低いミャンマーでは中国の3割の金額である。また、2010年頃に生産年齢人口比率のピークを迎えた中国に対し、ASEAN全体では2020年頃まで増加し同程度の比率が長期的に維持される見込みとなっている。これは、シンガポール、タイ、ベトナムのように高齢化が進み生産年齢比率を下げる国の影響を、フィリピン、インドネシア、ミャンマーのように生産年齢人口が増加する国の影響が相殺しているためである。絶対値を比較すると2015年で中国はASEANの2.4倍だが2050年には1.6倍まで差が縮まる。
◆規模
ASEANは世界有数の規模を誇る巨大経済圏であり、消費市場としても生産拠点としても魅力的である。2015年の人口(予測値)は中国、インドに次いで3番目の規模となる約6.3億人で、EUの約5.1億人や米国の約3.2億人よりも多い。ASEANの名目GDP(2015年)はフランスやインドよりも大きく、2兆4,360億ドルである。
◆経済成長率
ASEAN-5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)は中期的に中国と同程度の成長率を維持し、CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)は中期的に中国よりも高い成長率を維持すると予測されている。ASEANは今後更に経済規模が拡大し、将来性のある市場に成長すると期待が高まっている。
◆貿易
ASEANは現在の体制(カンボジアの加入、1999年)の確立後、貿易は順調に拡大しており、貿易額はAECブループリント発表の2008年から2015年にかけて3,762億ドル増加している(19.8%増)。同期間のNAFTAの貿易額は1,853億ドル増加(3.6%増)に留まっており、EUに至っては1兆4,886億ドル減少(12.3%減)しているのと比べると、ASEANの貿易は増加額・増加率ともにNAFTA・EUを大きく上回っており、その成長力は魅力的と言える。地域別ではASEAN域内が最大の貿易相手で、域内だけでも貿易額は2008年から2015年にかけて745億ドル増加している(15.8%増)。また、国別では中国との貿易が大きく増加した事が全体の貿易額を押し上げている。
以上
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