アフリカ経済:金融引き締め姿勢強まる
調査レポート
2022年06月10日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
概要
アフリカでもインフレ圧力の高まりから、多くの国が金融引き締め姿勢を強めている。すでにインフレ率は中央銀行の目標値の上限付近、もしくは超えてきてしまっているが、ウクライナ戦争がもたらす波及効果により、今後数か月間にわたってさらに押し上げられる可能性が高い。インフレは実質賃金を縮小させ、より生活を厳しくさせるが、今後数か月の間、さらなる金融引き締めへとつながると考えられる。
南アフリカ準備銀行は、5月に引き締めペースを速め、政策金利を50bp引き上げて4.75%とした。4月のインフレ率は前年同月比+5.9%となり、依然としてインフレ期待も低下していないとの判断があったとみられる。一方で、4月のクワズール・ナタール州の洪水以前から、製造業の活動は弱含んでおり、現在でも停電が続いているなど厳しい経済状況が続いている。
ガーナでは、2022年初めの通貨セディ急落の影響が、経済に重くのしかかっている。セディは対ドルで年初来約20%下落し、輸入を通じてインフレ率も急上昇し、4月には前年同月比+23.6%となっている。中央銀行は5月に金利をさらに200bp引き上げ、年率19.00%とした。第1四半期の企業および消費者信頼感は弱まり、指数は90を割り込んでおり(2019=100)、4月のPMIは小幅に上昇したものの、依然として50以下と低迷している。財政への海外投資家の懸念も高まり、ドル建て債のスプレッドは年初から500bp程度拡大し1,500bpに達している。政府はIMFのプログラムに対して反対しており、自国だけで財政再建の取り組みを強化するとしている。今後数年間の債務返済は大きくないものの、経済回復が遅れれば財政政策がうまくいかず、IMFに頼らざるを得なくなる可能性も残る。
エチオピアは、世界銀行から3億ドルの補助金を得たが、これはティグライ紛争により荒廃した地域の復興を目的としている。政府は3月に休戦を宣言し、国内情勢は落ち着きを取り戻しつつあるものの、和平交渉は進んでいない。また、3期連続で干ばつとなり、食料生産にも問題を抱えている。食料コストの急騰もあり、インフレ率は2021年12月に+30%を超えてから高止まりしていたが、4月に入りさらに加速し前年同期比+36.6%と苦しい状況が続いている。なお、中銀は2017年から政策金利を変更していないが、銀行の貸出金利への影響が小さく、影響は限定的となっている。
以上
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