「トルコとイスラエルが外交関係の完全正常化に合意」中東フラッシュレポート(2022年8月後半号)
調査レポート
- JCPOA
- イラン
- イラン/カントリーリスク
- イラン/テロ・戦争・内戦
- イラン/政治・外交・安保
- イラン/為替・金利
- イラン/経済・市況・通商
- ウクライナ
- ウクライナ/政治・外交・安保
- ウクライナ問題
- カントリーリスク
- テロ・戦争・内戦
- トルコ
- トルコ/カントリーリスク
- トルコ/テロ・戦争・内戦
- トルコ/政治・外交・安保
- トルコ/為替・金利
- トルコ/経済・市況・通商
- ロシア
- ロシア・CIS/政治・外交・安保
- ロシア/政治・外交・安保
- 中東・北アフリカ/カントリーリスク
- 中東・北アフリカ/テロ・戦争・内戦
- 中東・北アフリカ/政治・外交・安保
- 中東・北アフリカ/為替・金利
- 中東・北アフリカ/経済・市況・通商
- 為替・金利
2022年09月12日
住友商事グローバルリサーチ 国際部
広瀬 真司
2022年9月6日執筆
1.トルコとイスラエルが外交関係の完全正常化に合意
8月17日、トルコとイスラエルは二国間の外交関係を正常化し、今後双方の国に大使を復帰させることを発表した。同日、トルコのエルドアン大統領とイスラエルのラピード首相も電話会談を実施。両国の関係は、2010年にトルコがパレスチナ自治区ガザに送った支援船団をイスラエル軍が海上で強襲しトルコ側に10人の死者が出た事件以降悪化した。その後紆余曲折があったが、2022年に入ってイスラエルの大統領によるトルコ訪問や、両国外相の相互訪問なども行われ、信頼回復に向けた機運が醸成されていた。
その1週間後の8月23日、パレスチナ自治政府のアッバス大統領がトルコを訪問しエルドアン大統領との会談を実施。エルドアン大統領は、イスラエルとの関係正常化はパレスチナへの支持を犠牲にするものではなく、パレスチナ問題の解決に資することを強調。アッバス大統領は、トルコがパレスチナを支援し続けてくれていることに謝意を表明した。
2.トルコ:インフレ80%でも利下げ
8月18日、トルコ中央銀行は政策金利を1%ポイント下げて13%とすることを発表した。世界的な商品価格の上昇で、トルコでも8月のインフレ率が80%を超え24年ぶりの高水準を記録。主要諸国が利上げに動く中、トルコは経済活動を優先して利下げを実施。予想外の利下げで、リラは1ドル=18.1リラを割り込み、年初来安値を更新した。
3.イラン外相がロシアを訪問し、ウクライナ問題を終わらせるための欧州の仲介案を提示
8月31日、イランのアブドラヒアン外相がモスクワを訪問し、ロシアのラブロフ外相と会談を実施した。欧米の制裁下にある両国は、軍事協力や経済・エネルギー協力で関係を強化している。アブドラヒアン外相は記者会見で、ウクライナ問題を終わらせるための欧州指導者による「和平イニシアチブ」提案をラブロフ外相に手渡したことを発表。誰の提案かは明言しなかったが、イラン現地紙はこれがフランスのマクロン大統領であると報道している。イランがウクライナ問題に関してロシアと欧州の仲介を公式に行っていることを発表したのは初めて。9月1日、マクロン大統領はイラン核合意(JCPOA)の再建交渉が数日中に合意に至ることを望むと発言した。
4.UAEとクウェートが6年ぶりに駐イラン大使を復帰させる
8月21日、UAE外務・国際協力省は、駐イランUAE大使を復帰させることを発表した。2016年1月にサウジアラビアでシーア派の高位聖職者ニムル師が処刑されたことに反発したイランの国民が、イラン国内でサウジの外交施設を襲撃したことを受けて、サウジはイランとの国交断絶を発表。この時UAEやクウェートもサウジに同調して自国大使を召還しイランとの外交関係を格下げした。UAE大使がイランに戻るのは6年ぶりのこと。8月14日にはクウェートも駐イラン大使の復帰を発表、またサウジも2021年以降イラクの仲介でイランとの対話を開始しており、イランと対岸の湾岸諸国が関係修復に動き始めている。
5.JCPOAを巡って米国とイランの駆け引きが続く
8月8日にEUが提出したイラン核合意(JCPOA)再建のための最終合意案に対して、8月15日にイランが意見を提出、その後8月24日に米国がそれに対する返答を提出し、さらに9月2日にイランが返答を提出した。米国務省はイランの返答が"建設的ではない"とし、米国は再度返答の準備をしているとのこと。なお最終草案では、JCPOA再建合意署名後165日(5か月半)で、イランの核開発に対する制限と米国による制裁緩和が完全発効するとしている。
6.リビア情勢
- 8月27日未明から、トリポリ市内で、同国で対立する2つの政府を支援する民兵集団による武力衝突が発生し、 32人が死亡、159人が負傷した(同国保健省発表)。2つの政府とは、国連主導の会議で2021年に誕生したドゥベイバ首相率いる国民統一政府(GNU)と、2022年2月にリビアの議会が任命したバシャガ首相率いる国家安定政府(GNS)。GNS誕生以降、対立する2つの政府を支援する武装勢力の衝突が散発的に発生しており、今回の衝突は2020年10月の停戦以降で最大のものとなった。8月29日、GNUの軍事裁判所は、バシャガ首相や同氏を支持する軍司令官など4人に対する逮捕状を発行し、出国禁止を命じた。
- 8月24~25日、リビア国営石油会社(NOC)のベングダラ新会長はローマとパリを訪問し、対リビアのエネルギーセクター投資の中心であるイタリアのEniおよびフランスのTotalEnergies両社のCEOとの会談を実施した。同会長は、政治的混乱がリビアのエネルギーセクターに悪影響を及ぼす中でリビアへのさらなる投資を両社に呼びかけるとともに、7月に前会長を追い出したドタバタ劇の中で新会長に就任した自身の存在を内外に認知させる意図もあったものと思われる。
- 2022年第1四半期のリビアの輸出相手国トップ5は、1位イタリア、2位ドイツ、3位スペイン、4位中国、5位米国。輸出の96%は石油。一方、リビアの輸入相手国のトップ4は、1位トルコ、2位中国、3位イタリア、4位ギリシャとなっている。
以上
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年4月14日(月)
毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2025年4月22日号に、当社シニアアナリスト 鈴木 直美が寄稿しました。 - 2025年4月8日(火)
『日刊産業新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年4月8日(火)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年4月3日(木)
『日刊産業新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年3月24日(月)
『東洋経済ONLINE』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコラムが掲載されました。