ガーナ:通貨下落と債務危機
2022年09月13日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓
概要
ガーナの通貨であるセディの減価がさらに進んでいる。年初は1ドル=約6セディだったものが、現在は心理的な節目でもある1ドル=10セディ近辺でもみあっている。年初来、対ドルでは40%近く下落しており、通貨切り下げをおこなったスリランカ・ルピーに次いで世界で2番目にパフォーマンスの悪い通貨となっている。セディの価値が低下している大きな要因として、インフレや債務危機などによる経済成長へのリスクの高まりや、国自体への信頼の低下の反映などが考えられる。
債務危機の原因は、パンデミックとロシア・ウクライナ紛争の影響だけでなく、歳入を拡大できない政策面や輸出などのフロー面、銀行改革、電力インフラへの支出などのストック面など複合的な問題がある。フロー面では、ガーナの税収の対GDP比は約11.3%(世界銀行2020)とアフリカ諸国の平均値より低く、2022年には歳入を増やすべく、電子決済に対する課税である E-Levy法も施行されたが、多くの反対にあい、当初予定していた対象の一部にしか課税できていない。また、ガーナ経済は原材料輸出への依存度が高く、特に金、カカオ、石油の輸出に依存しており、一次産品価格の下落に対しては非常に脆弱な経済だ。そのなかでも、カカオ生産は、2022年は干ばつにより、生産が大幅に減少する可能性が報告されるなど輸出の減少が懸念されている。
一方、ストック面では、2022年6月にガーナ銀行が国の累積債務残高はGDPの78%と公表しているが、債務の拡大は、2017-19年にかけて破産や不正により免許を取り消した銀行の預金者への補償として210億セディ(約30億ドル)を費やしたことや、2010年代に国の電力不足の改革として、電力関連投資を行ってきたことが、今では政府財政にとって大きな負担になっている。現在の電化率は85%を超え、需要を超える供給能力を獲得できたものの、コスト高や余剰電力を隣国に輸出できていないことなどから、当初計画していた政府歳入の助けにできていないことも課題となっている。
政府は歳出の削減を行ってはいるが、大幅な歳出削減は経済成長を鈍化させることになり、ジレンマに陥っている。しかし、2024年に大統領選挙を控えているため、今後の政策はポピュリズムに転換し、拡張的な財政政策がとられる可能性もある。足元で高進するインフレは、7月には前年比で31.7%まで加速している。食料価格や輸入物価の高騰がインフレをけん引しており、資材価格の高騰がプロジェクト収益を悪化させるなど、国内経済の足かせになっている。また、金利上昇により債務の面においても、国内の借り換えコストの上昇につながっている。ようやくIMFとの30億ドル規模の支援プログラムについて協議を開始したものの、実行されるまでには半年以上は必要とみられており、当面通貨は弱含みの動きが続きそうだ。
以上
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