デイリー・アップデート

2024年4月10日 (水)

[スペイン/ イタリア/ ギリシャ] 南欧はグリーンエネルギー、青い海、眩しい太陽のおかげで、欧州大陸の新たな経済成長の原動力となっている。裕福な近隣諸国と比べ軽く見られてきた南欧経済は、いまでは形勢が逆転しユーロ圏で経済成長のけん引役となっており、地中海沿岸諸国の経済はユーロ圏でも優位に立っている。苦境にあえぐドイツやフランスを横目に、スペイン、イタリア、ギリシャでは、観光業や輸出の回復と急増、再生可能エネルギーの好調とロシア産天然ガスへの依存度が低いことにより低水準なエネルギー価格の設定が可能であるという条件を原動力に、景気拡大基調が続いている。特にスペインは、金融から製造業まであらゆる分野の輸出が加速しており、中でも一歩抜きん出ている。化石燃料価格上昇の影響が小さいほかに、フランス、ドイツよりも低賃金で熟練した労働力と適切な医療システムは、持続的な強みとなる可能性が指摘されている。新型コロナウイルス感染症のパンデミック前には金融システム危機が危惧されたイタリアは、経済的苦境にあると誤解されることがあるが、実際のところ対外純資産保有国で景気停滞に備えるバッファーはある。

[日本] 日本銀行「企業物価指数」によると、3月の国内企業物価指数は前年比+0.8%だった。電気・ガス価格補助制度の影響が一巡したこともあり、上昇率は2月(+0.7%)から拡大し、2023年10月(+1.1%)以来の大きさになった。また、輸入物価指数(円ベース)は+1.4%で、2か月連続のプラスだった。上昇率は2月(+0.2%)から拡大した。輸入物価が2月に上昇に転じ、3月も上昇が続いたため、川上からの物価上昇圧力が今後も続く可能性がある。

[鉄鋼] 世界鉄鋼協会の報告によると、世界の鉄鋼需要は前年割れとなった2022~2023年を経て、2024年は前年比+1.7%増の17億9,310万トン、2025年は同+1.2%増の18億1,520万トンと持ち直しの動きが予想される。中国は、不動産投資減少による落ち込みをインフラ投資・製造業による需要増加が相殺し、2024年も需要は前年並み(8億9,570万トン)。ただし2025年には再び減少に転じ、中期的に鉄鋼需要はピークに達したとの見解。インドでは2023年の+14.8%増に続き、2024~25年も需要は+8.2%成長の予想。欧州の2024年の需要は2020年をわずか150万トン上回る程度。業種別では、住宅建設部門の有意な回復は2025年以降となり、製造設備・公共インフラ部門で堅調な需要を見込む。

[南部アフリカ] 4月3日、国際NGO・オックスファム(Oxfam)は、南部アフリカのマラウイ、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク中部で、2,400万人以上が飢餓の危機に瀕していると発表した。同地域ではエルニーニョの影響により記録的な干ばつが続き、食糧生産の減少や水不足が生じている。ザンビア、マラウイ、ジンバブエは過去2か月間で相次いで非常事態宣言を発出しており、国際機関らが食糧支援などにあたっている。他方でモザンビーク南部では、3月中旬にサイクロン「フィリポ」が上陸した後も豪雨が続き、5万人以上が被災する大規模な洪水被害が発生。国連児童基金(UNICEF)は、衛生状態の悪化によるコレラの感染拡大への警戒を強めている。

[フランス/エジプト/ヨルダン] 4月8日付の米ワシントン・ポストのウェブサイトに、マクロン・仏大統領、シシ・エジプト大統領、アブダッラー2世・ヨルダン国王の連名で「今すぐガザでの停戦を」と題する寄稿記事が掲載された。記事中で3人は、3月25日に採択された安保理決議2728の即時履行を求め、ガザでの恒久的な停戦と人質の即時解放を強調した。また、民間人に対する暴力・テロ・無差別攻撃は国際人道法違反であるとし、民間人の保護とあらゆる国境・境界からのガザへの人道支援物資の搬入拡大を強く要請した。

[米国/英国/豪州] 4月8日、米英豪3カ国の国防相は共同声明を発表し、3か国の安全保障協力枠組み(AUKUS)の下、豪州の原子力潜水艦配備と防衛関連技術の開発に向けた協力が着実に進展していると述べた。豪州西部の海軍基地に米英原潜を循環配備し、豪州の支援能力構築を重ねながら、最終的に豪州自身の原潜取得につなげる考え。さらに先端技術開発においては、日本との協力関係を模索していることも公表した。詳細は明らかになっていないが、AUKUSの下で、サイバー、AI、量子、極超音速、海中作戦能力、電子戦能力などの分野で協力を重ねていくと発表されている。

[米国] 4月9日、米議会は2週間の復活祭休会を終え、審議を再開させた。注目される法案は対ウクライナ追加軍事支援法案である。トランプ前大統領に近い超保守派共和党下院議員らは、対ウクライナ追加軍事支援に反対し、米国の国境管理強化も主張している。ジョンソン下院議長に対しては、トランプ派のグリーン下院議員が、下院議長解任動議を既に提出しており、対ウクライナ追加軍事支援法案の審議を進めようとすると議長解任の圧力が強まるリスクに直面している。

[米国/ロシア/ウクライナ] 4月9日、ロシア連邦捜査委員会は、ウクライナによるロシアでのテロ行為のための資金の一部が、バイデン米大統領の長男ハンター・バイデン氏が関わりを持つウクライナの石油ガス企業「ブリスマ・ホールディングス」 からテロリストらに渡っていたと発表した。ウクライナのテロリストは、この資金によって無人機を製造したとされ、それらがロシア領内の民間居住地へのテロ攻撃に使われていたと、当委員会は主張している。

[英国/米国] キャメロン外相が4月8日から2日間にかけて米国を訪問した。主な目的は米国の対ウクライナ軍事支援承認のためとされ、トランプ前大統領とも会談。キャメロン外相は会談の詳細には触れなかったものの、ガザやウクライナなどの地政学上の重要問題を協議したとされる。一方、英国の対イスラエル武器輸出に関して、国内で政府に対する法的助言の公表圧力があるものの、キャメロン外相は、公表は慣例にないとして拒否の姿勢を維持した。

[EU/中国] EUのマルグレーテ・ベスタエアー執行副委員長は、米プリンストン大学での講演で、スペイン、ギリシャ、フランス、ルーマニア、ブルガリアにおける風力発電所への中国の関与について、初期段階の調査を行うことを明らかにした。この措置は予備的なものだが、最終的に中国政府による不当な補助金の証拠が発見されれば、EUは罰金を科したり、入札の停止を命じたり、企業買収を阻止する権限をもつ。

[豪州/日本/中国] 4月8日、豪米英の国防相が、3か国の安全保障協力枠組み(AUKUS)に関する共同声明を発表し、第2の柱(先端技術分野での協力)における日本との協力を検討していると表明した。第2の柱にはニュージーランドも参加を検討する意向を示しているが、AUKUSが新しい協力国を正式に明らかにするのは初めて。中国は、軍備拡大を激化させ地域の平和と安定を破壊する行為は控えるべきとコメントした。

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