デイリー・アップデート

2024年4月15日 (月)

[アフリカ/米国] 4月9日、米国平和研究所(USIP)は「アフリカのクリティカルミネラル(重要鉱物)」を発表し、米国の経済・国家安全保障、そしてアフリカの平和構築の観点から、米国政府・企業はアフリカの重要鉱物への関与を強めるべきだと提言した。米国はコバルトや黒鉛といった重要鉱物の輸入を、中国をはじめとする特定の国に大きく依存しているため、サプライチェーンの多様化を目指し、重要鉱物の主要産出国であるアフリカ各国との貿易・投資・国際協力を促進すべきとしている。バイデン政権下では特にコンゴ民主共和国(DRC)とザンビアとのパートナーシップに進展が見られたが、2025年に失効する「アフリカ成長機会法(AGOA)」の延長をはじめ、中国とは異なるアプローチでの対アフリカ戦略の強化を訴えている。

[米国] 3月13日、下院本会議で、動画共有アプリTikTokの中国親会社ByteDanceに対し、半年以内に同社がTikTokを米国企業に売却するよう求め、応じない場合、米国内でのTikTokの配信を禁止する法案が賛成多数で可決された。現在、上院で審議されている。上院商業・科学・運輸委員会のカントウェル委員長は、TikTokの売却期限を6か月から1年に延長する議論が浮上してきていることを記者らに明らかにし、同法案が2025年1月召集の第119議会に持ち越される可能性が浮上している。

[アジア] 4月11日、アジア開発銀行(ADB)は、最新の経済見通しを発表し、2024年のアジア新興国・地域の経済成長率見通しを4.9%とし、2023年12月時点の4.8%からやや上方修正した。中国は、不動産セクターの弱さが続くため2024年は4.8%、2025年は4.5%とやや鈍化する見込み。韓国などの東アジアの高所得技術輸出国では、半導体の回復から恩恵を受ける見込み。南アジアは、インドを中心に世界最速で成長し、インフレの緩和により、内需が改善するにつれ、2024年には6.3%、2025年には6.6%に達する見通し。東南アジアは、力強い国内需要と持続的な観光業の回復によって押し上げられ、2024年は4.6%、2025年は4.7%となる見通し。

[米国/英国/ロシア] 米国・英国両政府は12日、ロシアの戦費獲得を阻む目的で新たな制裁を発表。ロンドン金属取引所(LME)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は、4月13日以降に生産されるロシア原産のアルミニウム・銅・ニッケルの新規受け入れを停止。米国はそれら金属の米国への輸入も禁止する。2018年に米国が導入したロシアRusalへの制裁が大混乱を招いた経験から、今回は「パートナーや同盟国を望ましくない波及効果から守るため、的を絞った方法で」の規制とし、既に流通しているロシア原産の金属は対象外。既に米国・英国のロシア産アルミ・銅・ニッケル輸入は限定的で、貿易フローへの影響は限られる見込み。ロシアの新規生産分は2大金属取引所から排除され、中国などに安値で出回る可能性大。週明け、LME市場でアルミ・ニッケル価格は急騰している。

[米国] 4月13日、バイデン大統領は、イランによる対イスラエル攻撃を非難する声明を発表し、イスラエルの防空能力と支援に携わった米軍部隊を称賛し、イスラエル支援の米国の姿勢は揺るがないと述べた。国務長官、国防長官もイランを非難すると同時に紛争拡大を欲しないと、発表している。G7首脳声明も発出され、事態悪化を回避する必要性に言及。今回の空爆と防空努力において、イラン、イスラエル双方は相応の弾薬を消費したとみられており、報復と攻撃の応酬につながらないよう各国が外交努力を重ねている。

[フィリピン/米国/日本] 4月11日、日米比3か国の初の首脳会談が米ホワイトハウスで開催された。共同声明では、南シナ海における中国の「危険かつ攻撃的な行動」について深刻な懸念を表明するとし、特に最近のセカンド・トーマス礁におけるフィリピンの補給活動への妨害への懸念が強調された。海上自衛隊と米比海軍による人道支援・災害対応訓練の創設、海上保安機関の合同訓練、海洋協議の設置、防衛協力の強化等を発表した。経済面では、半導体や重要鉱物のサプライチェーンの強靭化、「ルソン経済回廊」の立ち上げ等を発表した。

[イラン/イスラエル] 4月13日夜、イランはイスラエル本土に対してミサイルやドローンによる攻撃を実施した。使用されたのは、弾道ミサイル120発、巡航ミサイル30発、ドローン170機。一部が空軍基地などに着弾し、1人が負傷したとのことだが、攻撃の99%は迎撃された。攻撃は事前に通告されたていたとみられている。今回の攻撃は、4月1日に在シリア・イラン大使館領事部がイスラエルによるものとみられる空爆を受けて革命防衛隊7人が殺害されたことに対する報復攻撃である。今回の攻撃に対して、イスラエルがどのように反応するかが注目される。

[欧州/イスラエル/イラン] 4月13日夜のイラン革命防衛隊のイスラエルに対する攻撃に対し、欧州各国が非難。スーナク英首相は、中東地域の緊張を煽り、不安定化する行動として非難し、ガザの危機終結とさらなる地域のエスカレーション回避のための努力を続けることを表明。一方、ボレルEU上級代表は、前例のないエスカレーションとして、4月16日に緊急EU外相会合を開催することを発表。4月17日、18日に予定されているEU首脳会合でも協議される予定。

[中国] 4月15日の「国家安全教育の日」を前に、中国国内ではスパイ防止や摘発を奨励する一連の宣伝報道がなされている。CCTVは、レアアースや食品問題を標的とする海外機関のためにスパイ行為に関与した人物が、懲役や罰金刑に課せられた事件を報じている。また『環球時報』は専門家の言葉を引用しながら、今年、国家安全機関が公表した案件は例年より範囲が広く具体性が増しており、国家安全保障の伝統的な分野に加え、エネルギー、食糧、気象など国民の生活や発展に関わる分野も、外国人スパイや諜報機関の標的となっているとしている。

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