2024年12月24日 (火)
[ブラジル] 先週、ブラジルレアルは一時1ドル=6.3レアルという過去最安値を記録した。10月末以降だけで、ドルに対して約10%下落している。大規模為替介入と、次期中銀総裁のタカ派発言により一旦は下げ止まっているものの、財政への信頼は崩れたままであり、今後も不安定な展開が予想されている。
[モザンビーク] 12月23日、憲法評議会は10月9日に実施された大統領選・国民議会選挙の結果を宣言した。与党・モザンビーク解放戦線(FRELIMO)のダニエル・シャポ候補が得票率65.2%で勝利し、次期大統領に就任することが確定した。10月24日に選挙管理委員会(CNE)がシャポ氏勝利を発表した後、無所属で出馬したヴェナンシオ・モンドラーネ氏(得票率24.2%)を中心とする抗議デモが拡大し、これまで死者は100名以上に上っている。モンドラーネ氏は憲法評議会の決定を不服とし、12月27日までの抗議デモを国民に呼びかけている。憲法評議会は選挙に「不正行為」があったことを認めたが、「結果に実質的な影響は与えなかった」として得票率を修正の上、最終結果を公表した。
[フィリピン] 12月19日、フィリピン中央銀行(BSP)は政策金利(翌日物リバースレポ金利)を25bps引き下げ、5.75%とした。これは3会合連続の利下げであり、今後数四半期にわたり同程度の利下げが続く可能性が高いことを示唆している。堅調な経済成長とインフレ率の低下が、BSPによる段階的な利下げを後押ししている。また、12月4日に国際通貨基金(IMF)はフィリピンに関する2024年の第4条協議を終了した。IMFは、2024年および2025年の実質国内総生産(GDP)成長率をそれぞれ5.8%、6.1%と見通し、2024年から2025年にかけて成長が加速すると予測している。
[日本] 厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、10月の実質賃金は前年同月比▲0.4%となり、速報時点のゼロ%から下方修正された。これにより、3か月連続のマイナスとなった。名目賃金(現金給与総額)は+2.2%と9月(+2.5%)から縮小し、消費者物価指数(帰属家賃を除く総合)の+2.6%に追いつかなかった。内訳をみると、所定内給与(基本給)は+2.5%と上昇した一方で、特別に支払われた給与(ボーナスなど)が▲2.2%と前年の反動などから低下した影響が見られた。物価と賃金の好循環の実現には、まだ距離がある。
[米国] 領土に関するトランプ次期大統領の3つの発言。まず、グリーンランドは米国の安全保障と自由にとって絶対に必要と述べている。その明確な根拠は明らかにされていないが前政権時にも同様の発言をしており、米国の購入提案に対しデンマークは拒否したと伝えられている。次にパナマ運河については通行料の高さに不満を感じており、通行料を下げるか、1999年末に手放した所有権を米国に返還するように要求している。米国の海上輸送上重要な地域で、最近では同地域への中国の関与が強まっていることも背景として考えられている。最後にカナダを51番目の州になることを提案。冗談との受け止めもあるがカナダが政情不安定なことやUSMCA見直し前の時期ということもあって緊張感が高まりつつある。
[台湾] 12月20日、台湾立法院で財政収支劃分法、公職人員選挙罷免法、憲法訴訟法の3つの改正案が与野党の激しい攻防の中、成立した。立法院周辺には1万人以上に市民が集まり、野党の強行採決に抗議した。財政収支劃分法は、中央と地方の予算配分を現在の中央75→65%、地方25%→35%とするもので、南部の都市は地方間格差が広がると反対している。公職辞任選挙罷免法の改正では、罷免を求める提案や署名に身分証明書コピーを必要とすることになった。また憲法訴訟法の改正では、憲法法廷の審議は大法官が最低10名必要で、意見判決には9名上の同意が必要となった。
[シリア] 米国の国務次官補やトルコの外相、ヨルダンの外相、カタールの外務担当国務相やサウジの代表団などが相次いでシリアのダマスカスを訪問し、シリアの暫定政権を主導する元反体制派のリーダーであるアフマド・シャラア氏との会談を実施している。シャラア氏は3月1日までと期限を決めて暫定首相や閣僚を任命しており、少数派の人権を重視し、包摂的な政府を作ると主張している。今後3月1日までに選挙が行われるのかなどは明確になっていないが、各国がシリアとの国交回復をにらんで関係構築を進めている。
[米国/中国] 12月23日、米通商代表部(USTR)は、中国による、いわゆるレガシー半導体、そしてシリコン・カーバイドの生産が米国通商を不当に制限している可能性について調査を開始すると発表した。通商法301条に基づく措置で、国防、自動車、医療機器、航空宇宙、情報通信、発送電の各分野において組み込まれている中国製半導体が対象として挙げられている。USTRは、2025年2月までパブリックコメントを受け付け、12か月以内に調査結果を発表する予定となっている。
[米国] 12月22日、トランプ次期大統領は国務省の中南米担当特使に第1期トランプ政権でホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)西半球問題担当上級部長や米州開発銀行(IDB)の米国人初の総裁を歴任したマウリシオ・クラベルカロネ氏の起用を発表した。中南米情勢に精通したクラベルカロネ氏が特使に起用された背景として、メキシコとの国境経由で米国に流入する不法移民と麻薬を取り締まる狙いがあると見られている。
[ロシア] 2024年の経済成長率は前年比+3.9%になると国内の著名な経済研究所、ロシア科学アカデミー経済予測研究所(IEF RAS)が最新の分析レポートで発表している。2024年の経済成長の主な要因は個人消費の拡大や軍需による産業生産の拡大であり、純輸出の貢献度は中立またはわずかにマイナスになったと予想している。
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