2025年3月10日 (月)
[インド/金] インド中銀がゴールドローンに対する規制強化に動いている。インドの金選好は伝統的なもので、家計は貯蓄を金購入に費やし、経済的苦境時には金を担保に融資を受ける。銀行の無担保ローンに比べると借り入れが容易で、金価格上昇で同量に対する融資可能額も増加。今会計年度の最初の9か月でゴールドローンは前年同期比+68%と、貸出全体の伸びを大幅に上回る。しかし同時にデフォルト率も上昇。一つの担保から複数の融資が引き出された事例や、金の査定や価格評価についても問題が発覚。金価格が急落した場合に銀行が保有する担保価値が下がる懸念もある。
[コンゴ民主共和国(DRC)/米国] 3月8日、英FT紙は、DRC国内の重要鉱物への米国のアクセスに関して両国間で予備的な協議を行っていると報じた。DRCからルビオ米国務長官宛の書簡によると、米国企業に銅、コバルト、ウラン等の探査・採掘権を付与する代わりに、DRC国軍向けの訓練や装備提供の支援を要請しているとのこと。1月以降、DRC東部のルワンダ国境周辺では、ルワンダの支援を受けている反政府勢力「M23」の実効支配が続いている。M23に対して効果的な打撃を与えられていないDRCのチセケディ大統領に対する野党および国民からの批判が高まっていることから、米国との「取引」をもとに戦況を好転させたいものとみられる。
[米国] 労働省によると、2月の非農業部門雇用者数は前月から15.1万人増加した。市場予想(16万人増)を下回った。失業率は4.1%となり、1月(4.0%)から上昇した。平均時給は前年同月比+4.0%となり、1月(+3.9%)から上昇率を拡大させた。雇用環境はまだ底堅く推移しているものの、今後の連邦政府職員の失業の増加などが懸念されることもあり、市場では利下げ観測がやや強まった。
[ミャンマー/ベラルーシ] 3月7日、ミンアウンフライン国軍司令官がロシアに続いてベラルーシを訪問し、ミンスクでルカシェンコ大統領と会談したが、会談後の共同記者会見で「今年(2025年)12月または来年1月に総選挙を実施する」と発言した。同司令官は今年総選挙を実施すると表明していたが、具体的な日程を示したのは初めて。
[米国/イラン/イラク] 3月9日、米国務省は、イラクが制裁下のイランから電力を購入することを許可する制裁免除措置(ウェイバー)を更新しないことを発表した。イラクは自国で消費する電力の3分の1をイランからの燃料ガス・電力輸入に依存しているが、トランプ米大統領はイランに対して最大限の圧力をかけることを公約としており、米政府はこの政策に沿ってウェイバーの更新をしない決断を下した。これにより、イラクは自国での発電もしくは他国からの電力輸入を増やす必要があるが、短期的な対応は難しいと思われる。
[スペイン] インバウンドの経済効果は輸出と似ているものの、既存の設備を外需に活用できるため政府や関係業界にはすこぶる評判がよい。一方で、適切な投資と管理が行われなければ住民と当局や観光客との間で強い軋轢(あつれき)が生じることで逆風にもなってしまう。欧州でフランスに次いで観光客の多いスペインでは、観光客を歓迎するものの、規制を少し強化することとなった。観光客の増加で都市部では渋滞が深刻化しており、バルセロナやマドリードでは地元住民の生活にも影響が出ているという。また、観光客向けの短期賃貸物件が増加したことで、地元住民のための物件そのものが見つからず、家賃が高騰している。そのため、バルセロナでは民泊を禁止することになった。また、新規ホテルの建設を禁止することで都市の過密化を防ぐという。また、土産物屋のこれ以上の増加を防ぐため、新規店舗の開設を制限する地域もあるという。観光に対する規制は移民受け入れと関係があるともみられている。少子化と労働力不足に悩むスペイン政府は移民受入れに積極的であり、観光業拡大よりも定住者の優先を目指しているとみることもできる。
[中国] 再びデフレ懸念が強まっている。中国国家統計局が3月9日に発表した2月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で▲0.7%となり、13か月ぶりにマイナスに転じた。春節時期のズレ(2025年は1月、前年は2月)に伴う食品や観光関連価格の変動が主な要因であり、前月の+0.5%から急落した。春節連休の影響を除いた場合のCPIは+0.1%とプラスだった。同時に発表されたコア指数(食品とエネルギーを除く)は▲0.1%となり前月の+0.6%からマイナスに転じ、内需の弱さを示した。また、2月の生産者物価指数(PPI)も1月の前年同月比▲2.3%から▲2.2%となったが、マイナスは29か月連続で、引き続きデフレ圏内にある。
[ロシア/ウクライナ] ウクライナ侵略を続けるロシア国防省は3月8~9日、ウクライナ軍の越境攻撃下にあるロシア西部クルスク州で、ロシア軍が計7集落を奪還したと主張した。一部の海外メディアでは、同地域の状況として、越境攻撃するウクライナ軍兵士約1万人が、ロシア軍による包囲の危機にあると報じられた。
[EU] 3月21日に行われた特別首脳会合で、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が提案したReArm Europeに基づく欧州防衛強化計画について、27の全加盟国の首脳らが合意した。さらに、「戦略的依存関係の削減・ヨーロッパの産業・技術競争力強化に貢献する」ことを目的として、欧州委員会に対して民間資本動員のための措置の検討や、加盟各国に特化した防衛支出促進のための措置の検討などを要請した。
[韓国] 3月8日、韓国の尹錫悦大統領が52日ぶりに釈放された。大統領側は、検察は身柄拘束が可能な期間を過ぎてから尹氏を拘束したと訴えており、ソウル中央地裁がその主張を受け入れた形。検察は地裁の決定に対する即時抗告を断念した。最大野党「共に民主党」は沈雨廷(シム・ウジョン)検事総長の辞任を要求し、拒否した場合は弾劾訴追を行うと批判している。ソウル市内では弾劾賛成派と反対派がともに大規模集会を開催した。3月半ばには憲法裁判所が尹錫悦大統領の弾劾について判決を下すとみられている。
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