2025年3月12日 (水)
[ギニア] 3月5日、暫定政府のアマドゥ・ウリ・バー首相は、2025年中に国民投票と大統領選を実施する予定だと発表した。2021年のクーデターで権力を掌握した暫定軍事政権は、2024年末までの選挙と民政移管を公約していたが、選挙人名簿の作成の遅れ等を理由に実施されていなかった。選挙の具体的な日程は明らかにされていないが、先に実施される新憲法改正にかかる国民投票で軍人の大統領選への立候補が可能となり、暫定大統領を務めるママディ・ドゥンブヤ氏が出馬・当選するとの見方が多い。なお、軍事政権下でも英豪・リオティントらが進めてきた世界最大級のシマンドゥ鉄鉱山プロジェクトの生産開始は2025年後半の見込み。
[米国/インドネシア/ベトナム/南アフリカ/セネガル] 3月6日、米財務省は、米国の価値や経済・環境面での目標に合致しないとして、石炭から再生可能エネルギーへの移行を支援する「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」からの脱退を発表し、ベトナム、インドネシア、南アフリカとのJETP契約を解消した。JETPは、日本や欧米が新興国の石炭火力からのエネルギー移行を支援する制度であり、2021年に英国・スコットランドのグラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で発表された。米国の脱退後、加盟国・地域は日本、欧州連合(EU)、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ノルウェー、デンマークの9か国・地域となる。
[米国] 労働省の「雇用動態統計(JOLTS)」によると、1月の求人件数は774.0万件となり、12月から23.2万件増加した。2024年9月(710.3万件)を直近の底にして、そこから緩やかに持ち直しており、労働需要は底堅く推移している。失業者1人当たりの求人件数は1.13件となり、12月(1.09件)から上昇した。ただし、採用件数(539.3万件)は2019年平均(583.3万件)を下回っており、雇用主の慎重な姿勢も見えている。
[フィリピン] 3月11日、フィリピン大統領府は、国際刑事裁判所(ICC)からドゥテルテ前大統領に対する逮捕状を正式に受け取り、執行したと発表した。ドゥテルテ前大統領は9日に香港で政治集会に出席し、11日午前にマニラ空港に帰国したところで国家警察に逮捕された。11日夜、マルコス大統領はドゥテルテ前大統領をICCの本部があるハーグに移送したと発表した。ドゥテルテ前大統領は2016~22年の任期中、強権的な薬物犯罪対策を実施し、政府発表によると6,000人以上、人権団体によると3万人以上の死者が発生した。その多くは超法規的殺人とみられ、ICCは「人道に対する罪」にあたる疑いがあるとの告発を受け、18年から予備調査を始めた。ドゥテルテ大統領(当時)は反発し、フィリピンは19年にICCから脱退した。しかしICCは、超法規的殺人は脱退前に起きたとして管轄権を認定。マルコス政権は当初、管轄権を認めず、ICCの捜査に協力しないと表明していたが、ドゥテルテ家と政治対立を深める中、事実上の協力姿勢に転じた。5月12日に統一国政・地方選挙(中間選挙)が予定され、マルコス大統領とドゥテルテ家の支持勢力の争いが激しくなっている。
[イスラエル] イスラエル民主主義研究所が3月9日に結果を公表した世論調査によると、イスラエル人の72.5%が、ネタニヤフ首相が10月7日事件(2023年のハマスによるイスラエル奇襲)の責任を取って辞任すべきと回答(48%は即時辞任すべき、24.5%はガザ戦争終結後に辞任すべきと回答)。また、87%という圧倒的多数が、辞任すべきかどうかにかかわらず、ネタニヤフ首相が10月7日事件の責任を取るべきだと考えていることもわかった。さらに、73%の人が、ガザの停戦・人質返還合意の第2段階に進むべきだと回答した。
[米国/ウクライナ] 3月11日、サウジアラビアで米国、ウクライナ両政府による協議が行われ、ウクライナ側は30日間の停戦に合意した。同協議に参加したルビオ国務長官は、今後、同様の提案がロシア側に伝達され、ロシア政府の決定を待つ、と発言した。公表された米・ウクライナ共同声明によれば、30日間の停戦と同時にロシアとウクライナ両国は終戦に向けた交渉に入り、両国の利益をくんだ内容での合意を目指す。
[パナマ] パナマの移民当局機構のデータによると、パナマ・コロンビア国境にあるダリエン地峡を通って米国へと向かう移民の数は、この2月は前年同月比で99%減少した。移民の大幅減で米・パナマ間の緊張は若干緩和される可能性がある。これまでは、非常に危険なダリエン地峡を越えて米国を目指す南米からの不法移民が絶えなかった。パナマ当局によれば、2023年にダリエンギャップを越えた移民が520,085人という記録的な数に達した。2024年上半期も月平均で約3万7,000人がこの地域を通過していたが、2025年2月は408人に留まった。151人がベネズエラ、43人がカメルーン、22人がバングラデシュからと記録されている。2024年1月に2,900人ほどいた中国人は2025年2月にはゼロとなった。トランプ政権が強い姿勢を見せていることで米国を目指すことを諦めた人々が逆流するという新たな問題をパナマは抱えることになっている。コスタリカを経由したパナマへの入国者は2月に2,000人以上に上っている。パナマ政府はコスタリカ政府と協力し、こうした入国者を排除することなく、人権に配慮し、安全に帰国させるための支援を行っているという。
[ポルトガル] 3月11日にモンテネグロ首相一族が所有するコンサルティング会社、Spinumviva社に対して利益相反疑惑があるとして議会審議が行われていたところ、政府が提出した信任動議投票が行われた結果、信任88、不信任142(棄権なし)で否決された。5月に3年間で3度目となる早期選挙が実施される可能性がある。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年3月11日(火)
オンライン経済メディア『NewsPicks』のプロピッカーに当社シニアアナリスト 石井 順也が就任しました。 - 2025年3月5日(水)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年3月5日(水)
『日経ビジネスオンライン』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコメントが掲載されました。 - 2025年3月5日(水)
『東洋経済ONLINE』に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司のコラムが掲載されました。 - 2025年3月4日(火)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。