デイリー・アップデート

2025年3月11日 (火)

[マリ] 3月7日、鉱山省は2022年から停止している採掘権の更新・譲渡申請の手続きに関し、3月15日から再開すると発表した。2021年のクーデターで暫定軍事政権が発足した後、暫定政府は金をはじめとする鉱山の外国企業に対する採掘権の割り当てを見直し、2023年にマリ政府の鉱山所有権を最大35%まで引き上げる新鉱業法を制定した。同国で採掘活動を行ってきた加・バリックゴールド社や豪・リゾリュート・マイニング社など、主要な外国企業とマリ政府との間で新鉱業法に基づいた契約の見直しがおおむね合意に達したため、今回の発表に至ったとみられる。マリの輸出の約8割を占める金は、反政府勢力と対峙する軍事政権にとって貴重な資金源となっている。

[カナダ] カナダのオンタリオ州は、米国のミネソタ、ミシガン、ニューヨーク各州に電力を供給している。今回の米国政府による対カナダ関税の引き上げを受けて、オンタリオ州政府は送電網を運営する独立系統運用者に米国向け電力料金を25%相当、1メガワットあたり10カナダドルの料金引き上げを指示した。カナダ政府の関税措置とは別の、あくまでも州レベルでの対応となる。米国内の家庭や企業合わせて150万世帯/社が価格引き上げの影響を受けるとみられている。米国内で発送電に余力があれば切り替えが進むことでカナダの発電企業は電力消費市場を失うことになるだろうし、そうでない場合は該当地域の消費者はこれまでよりも高めの電力料金を支払うことになる。

[ベトナム] 財務省外国投資局(FIA)の発表によると、1~2月の海外直接投資(FDI)の認可額は前年同期比+35.5%の69億ドル、実行額は+5.4%の29億5,000万ドルとなった。新規投資の認可額は▲48.4%の21億9,000万ドル、認可件数は+10.0%の516件だった。追加投資の認可額は7.4倍の41億8,000万ドルと大幅に増加し、認可件数では+42.2%の256件だった。合併・買収(M&A)による出資額は+88.8%の5億2,980万ドル、認可件数は▲26.3%の553件だった。新規認可額の減少は、大型案件が少なかったことが原因とされている。

[日本] 内閣府によると、2024年第4四半期(Q4)の実質GDP成長率は、前期比+0.6%(年率+2.2%)だった。1次速報の+0.7%(+2.8%)から下方修正された。内訳を見ると、個人消費は宿泊・飲食などのサービスの影響によって前期比0.0%と、速報(+0.1%)から下方修正された。その一方、企業設備投資はソフトウェア投資などの影響で+0.6%へと、速報(+0.5%)から小幅に上方修正された。民間在庫の取り崩しもあり、内需の寄与度は▲0.2ptと、速報(▲0.1pt)から下方修正された。輸入の減少が経済成長率を押し上げる構図には変わりなかった。

[ブラジル] 統計局は、2024年のGDP成長率を3.4%と発表し、2023年の3.2%をわずかに上回り、2021年以来の高水準となった。しかし、第3四半期の成長率は前期比+0.7%に下方修正され、第4半期は前期比+0.2%と減速していることが明らかになり、ブラジルの経済成長が急速に鈍化していることが示された。財政政策をめぐる不確実性の高まりや為替レートの弱さ、また、目標を上回るインフレに対抗する政策金利の大幅上昇などが影響したとみられる。

[米国] 3月10日、ライト・エネルギー長官がテキサス州にて、エネルギー政策の方針について講演した。長官は、バイデン前政権による再生可能エネルギー普及策が米国民の負担増につながったと批判した。気候変動は豊かな社会を構築してきたことに伴う結果であるとの認識の下、トランプ政権は米国産エネルギー増産、原子力活用などで産業力を強化すると述べた。また、米国が人工知能(AI)の技術開発を率いていくことが決定的に重要であって、そのためにも安価で安定したエネルギー供給を実現する必要があると発言した。

[ロシア] 石油・ガス部門からの余剰収入を積み立てたロシア政府系ファンド、福祉基金(国民福祉基金、NWF)の流動資産は減少傾向にある。2025年3月の時点でNWFの総資産の残高は、11兆8,800 億ルーブル(約1,355億ドル:GDP 比5.5%)であるが、財政赤字の穴埋めにすぐ利用できるNWFの流動資産は3.4兆ルーブル(約387億ドル、対GDP比1.6%)で、2019年以来の低水準となった。一方、シルアノフ財務相は、今年中にNWFの流動資産を追加で1.3~1.4兆ルーブル増額する予定であると発表した。

[ドイツ] 3月8日に最大野党CDU/CSUと中道左派政党SPDが非公式予備協議の結果、基本政策の合意に達したことを発表した。今後正式な連立協議が開始される見込み。次期首相候補のメルツCDU党首は、復活祭(4月20日)までの新連立政権発足を目指している。

[シリア] 3月10日、暫定政権のシャラア大統領は、シリア民主軍(SDF)のアブディ司令官とダマスカスで会談を行い、SDFをシリアの国家機関に統合することで合意に達した。SDFは、2015年以来同国北東部の広大なエリアを実効支配してきたクルド勢力。同合意では、シリア北東部のすべての民間および軍事機関は国家行政に統合されると規定され、同地域は中央政府の完全な支配下に入ることになる。隣国トルコでのPKK解散の動きや米軍のシリア撤退の可能性がささやかれる中で、SDFとシリア暫定政府は同合意を結んだ。

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