2025年3月14日 (金)
[エチオピア/エリトリア] エチオピア北部ティグライ州での緊張が再び高まっている。3月12日、「ティグライ人民解放戦線(TPLF)」の一派がティグライ州北部の町・アディグラトを掌握したとティグライ州暫定政府が報じた。2022年の連邦政府とTPLFとの間での和平合意の後、ティグライ州暫定政府が発足。以降、TPLFは行政を司るゲタチウ・レダ州知事派と、TPLF議長を務めるデブレツィオン・ゲブレミカエル氏派の二つの派閥が権力争いを続けている。連邦政府はゲタチウ氏派を、隣国エリトリアはエチオピア政府との関係悪化からゲブレミカエル氏派を支援しているとの見方もあり、ティグライ州での衝突は二国間の紛争に発展する恐れがある。
[非鉄金属] 3月13日、LMEスズ先物が前日比7.4%急伸し、2022年6月以来の高値を記録。世界のスズ鉱石生産の約10%を占めるミャンマーでは2023年8月から、少数民族・ワ族民兵組織の支配地域にある鉱山で探鉱・採掘・加工を停止。2024年にはインドネシアの採掘ライセンス制度変更をめぐる混乱で同国の生産・輸出量が減り、中国の製錬所は原料の代替調達を余儀なくされていた。既に投機筋の買いは膨らんでおり、ミャンマー・インドネシアの供給回復なら調整安が見込まれたところ、さらにコンゴ民主共和国で反政府組織M23との戦闘が激化しているのを受け、世界供給の約4%のシェアを持つBisie鉱山が操業停止に。供給の脆弱性が改めて浮き彫りとなっている。
[アルゼンチン] 3月12日、ミレイ大統領の緊縮財政に対する年金受給者による抗議活動が暴徒化した。インフレ率は継続的に低下してきているものの、年金受給者の実質支給額は減少しており不満が高まっている。これまで、痛みを伴う改革にも関わらず、高支持率を維持してきたミレイ大統領ではあるが、今回、左翼過激派やフーリガンも巻き込んで暴徒化したことで、今後全国的な広がりへの発展が懸念される。
[バングラデシュ] 3月12日、米国の大手格付け会社ムーディーズは、バングラデシュの銀行システムの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。主な理由として、不良債権の増加、経済成長の鈍化、高インフレなどが挙げられ、これらが銀行の収益性や金融安定性に悪影響を及ぼすと指摘している。2024年9月時点で、不良債権比率は9%から17%へと急上昇し、資産の質の悪化が深刻化している。また、高インフレと失業率の上昇により、暫定政府の財政支援能力も低下している。
[米国] 労働省によると、3月8日までの1週間の新規失業保険申請件数は22.0万件だった。前週から▲0.2万件と小幅に減少し、市場予想(22.5万件)を下回った。1週間遅れて報告される連邦職員失業保険制度(UCFE)の申請件数は1,580件となり、前年同期(393件)から大幅に増加している。また、3月1日までの週の継続受給者数は187.0万人(前週比▲2.7万人)と、2週連続で減少した。2024年12月以降、前週比プラス・マイナスを繰り返しており、180万人台を横ばいで推移している。
[グリーンランド/デンマーク] 3月11日に実施された総選挙の結果、野党のDemokraatit党が得票率約30%で第1党となった。与党2党が大幅に得票率を減らしたことから、野党Naleraq党が約25%の得票率で第2党を獲得。Demokraatit党もNaleraq党もグリーンランドのデンマークからの独立を掲げているが、穏健派のDemokraatit党に対してNaleraq党は急進派という違いがあり、今後はDemokraatit党と旧与党との連立交渉開始の可能性が高い。
[米国/ベトナム/オーストラリア] 3月12日、米国が全貿易相手国からの鉄鋼・アルミ製品の輸入に対して25%の追加関税を課した。ベトナムの鉄鋼・鉄鋼製品の対米輸出額は近年急拡大しており、2024年は26億5,000万ドル(前年比+32%)に上り、国・地域別では、カナダ、ブラジル、EU、メキシコ、韓国に次ぐ。ただしベトナム産の鉄鋼とアルミは以前から追加関税の対象となっていた。したがってこれまで適用除外が認められていたブラジル、EU、メキシコ、韓国と比べて競争条件は改善する。もっとも米国市場以外での競争が激しくなる可能性や、ベトナムを対象とする追加関税を課されるリスクがある。オーストラリアは当初、適用除外となる期待があり、交渉が続けられていたが、例外とはされなかった。
[米国/イラン] 3月12日、イランのアラグチ外相がイランのテヘランでガルガーシュUAE大統領外交顧問との会談を行い、その際にトランプ米大統領からイランのハメネイ最高指導者への書簡を受け取った。先週トランプ氏はハメネイ師に書簡を送ったことを公表していたが、ハメネイ師は、トランプ政権がイランに対する最大限の圧力キャンペーンを行う中での交渉の実施に懸念を示している。イランは欧州3か国(英・独・仏)とは核協議を継続しており、中国・ロシアとの協議も3月14日に北京で実施する予定であることを明らかにしている。
[米国] 3月13日、上院民主党は、共和党が可決を目指しているつなぎ予算案(CR)を阻止しない方針であることを明らかにした。これによって、14日金曜日の深夜に暫定予算が失効し、連邦政府が閉鎖する事態は回避される見込みとなった。下院では11日にCRが可決しており、上院での帰趨(きすう)が注目されていた。民主党側は、政府閉鎖となれば、公務員の大幅削減を進めるトランプ政権にとって、好ましい政治環境になると判断したもよう。議事規則によって、上院では単純過半数では採決を通らないため、民主党から8票以上の賛成を得られない限り、政府閉鎖に陥る可能性があった。
[ロシア/ウクライナ] 3月13日、プーチン大統領は、米国が提案した一時停戦案について前向きな姿勢を示す一方で、「長期的な平和につながるものである必要がある」と主張し、協議が必要との考えを示した。米国のウィトコフ特使が3月13日、ロシア首都モスクワに到着し、停戦案についてプーチン大統領と協議し、意向を確認するものとみられる。
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